【連載】月刊ブング・ジャム Vol.10

タテでもヨコでも使えます!

――新春スペシャルの後は、いつも通りの平常運転ということで、今回は最新の気になる文房具を集めてみました。まずは、2017年10月発売の「タテモ」です。立つペンケースの最新版ですね。
【他故】前面にマグネットが入っているんですよね。
――そうなんですよ。
【きだて】これ、かなり気に入ってます。
【他故】ほう。
【きだて】秋口からしばらく、空き時間は2月に出る本の校正作業を喫茶店とかでやってたんだけど、喫煙席の狭いカウンターなんかだと、いつもの「どや文ペンケース」をザラザラッと広げるスペースはないわけですよ。なので、立つペンケース系を本格的に試すいいチャンスだと思って。で、中でも「タテモ」が容量的にもかなり使えることが分かったんですよ。
【他故】お~、はいはい。
――これ、20本ぐらい入るみたいですよ。
【きだて】もうちょっと入る印象かな。
――ダブルファスナーになってるので、入れようと思えば入れられるんですよね。
【きだて】 そうそう、見た目の容量よりは無理が効く感じというかね。あと、その場の空きスペースに合わせて使い分けられるのもいいんだ。本当に狭いところだと立てて使うし、もうょい余裕があるときは寝かせてペントレーにした方が色々と小物の出し入れもしやすい。自分の好きに使えるところは好感が持てた。
【高畑】なるほど。
【きだて】似たような構造で、ソニックの「スマスタ」もあるんだけど、「スマスタ」はあんまりモノが入らなかったんだ。カマボコ型で意外と面積がないというか。
――「タテモ」はそこまで極端なかたちはしてないですね。
【きだて】ほぼ箱だから。
――そうですね。まあ、「スマスタ」のようにスマホを立てるのは難しそうですが。
【きだて】「立てるペンケース選手権」的に勝ち抜き方式であれこれ使ってた中で、今のところこれが生き残ってるね。ここしばらくメインで使ってるぐらい気に入りました。
【他故】これ、出っ張ったところがないんでね、カバンの中にこの太さのスペースさえあれば、引っ掛からずにスポッと入れられるから。
【高畑】それは分かるな。
【他故】僕は、ペンケースはいろんなのをたくさん使っちゃってるので、これはモバイルバッテリーとケーブルを常に入れて持ち歩くやつにしているんですよ。
――あ~、なるほど。
【他故】ちょっと大きめのモバイルバッテリーを入れて、上にACアダプターをちょこっと乗せて、ケーブル類をまとめてというカタチにしているんですけど、非常にスマートに持ち運べて、ペンケースとして使えばいいじゃんと思うけど、こういう使い方もできるということで、重宝はしてます。立てておいておけるからいいよね。
【高畑】割と安定するね。これ、簡単だけど。
――安定感はありますね。
【他故】モバイルバッテリーを入れたままで、ケーブルつないで充電できますからね。
【高畑】思った以上に安定するのと、さっき他故さんが言ったみたいに、立てたときに直方体でちょうど四角いというのは、スペースの効率でカバンの中にも入れやすいよね。そのメリットはあるのかな。
【他故】カバンの中にノートや手帳を入れて、それでバッグインバッグを入れると、不思議な空間ができるんですよ(笑)。それで、いいのがないかなと思ったら、これがスポッと入ったんですよね。
【きだて】あ~、誂えたように。
【他故】そう、誂えたように(笑)。
【高畑】用途限定でいくつかペンケースを使う場合でも、丸いかたちだと、2つ重ねるとデッドスペースができるけど、四角いと並べてもすき間ができないからいいよね。
【きだて】用途別コンテナだと、「スマスタ」の方がそれらしいよね。サンダーバード2号みたいだから(笑)。
――その中から潜水艦が出てくるんですよね(笑)。
【きだて】そうそう(笑)。
【高畑】この四角い収まりのよさが気持ちいいペンケースだよね。
――見た感じ、そんなにたっぷり入るようには思えませんけどね。
【きだて】でも、手に持ってみるとわりと厚みが感じられるんで、「うん、やっぱり入るよな」とは思うんだけど。
【他故】ギッシリ入れれば、ヘビー級になりますよ。
【高畑】やっぱり、ムダが少ないよね。
【きだて】全然、派手な見た目じゃないんだけどね。意外とやるなという印象。
【高畑】この底断面で立たせるのは、以外と難しいんですよ。でも、これ折り返したときに、不思議なくらい安定するね。
【他故】そうそう、そうなんだよ。
――パイロットの人も「安定感は抜群ですよ」と言っていましたからね。
【高畑】確かにそうなんですよね。ペンケースを閉じた状態だと、立たないんだよね。これはすごいな~。
――なんか立ちそうですけどね。
【他故】そうなんですよ。なかなか難しいところですが。
【高畑】広げたときの、この安定感は何なんだ。
【きだて】広げた状態でも「本当に立つのか」と思うじゃん。
――重りが入っているわけでも何でもないですよね。
【他故】何でもないですよ。
【高畑】これは、設計がいいんだろうね。
――いいんでしょうね。
【高畑】手前のポケットも、この位置は悪くないね。これなら確かに使える感じはするね。
――ちゃんとベルクロが付いていて中の物が出ないようになっているし。
【他故】ひっくり返しますからね。
【きだて】とはいえ、似た形式の「スマスタ」でも思ったけど、フタ側のポケットはどうやったって使いにくいわ。
【高畑】でも、立つペンケースで、サイドポケットがすごく使えるものなんてなくない?
【きだて】え~何、そもそもその話?
【高畑】いや、違うよ。立つペンケースのサイドポケットとしたら、これはすごい使いやすい位置にあると思うけど、そんなことない?
【きだて】う~ん。
【高畑】他のものにもポケットがあるけど、どっちかというと手がつっこみにくい位置にあったりするじゃない。
【きだて】これもね、つっこみにくいんだよ。消しゴムを入れて、つまみ出すのがそもそも大変だし。
――きだてさんの太い指では難しいかな。
【きだて】ここに余裕がないので、厚みのあるものを入れにくいんですよ。
――あ~、ポケットの上がゴム紐じゃないから。
【高畑】もちろんそうなんだよ。立つペンケースって、逆に取り出しやすいものってある?
【他故】ないよ。
【きだて】だから、そこで満足したことはないよ。ポケット浅くして、ゴムベルトにしてくれてたらね。消しゴムを挟むだけとかでいいんだよ。
【他故】そうか、ゴムで挟むのか。そういう考え方もあったのか。
【きだて】これ、100円クラスのMONO消しゴムだと入らないんだよ。
【他故】そう、60円クラスを想定しているんじゃないか。
【きだて】60円クラスだと、またつまみ出すのが大変だから。
――そうか~、難しいですね。
【きだて】結局、替え芯とか入れても頭が出ちゃうし。なので、今のところこのポケットに正解はないなと思う。
【他故】ここは、ケーブルを入れる場所だよ。
――他故さんの使い方なら、それでいいでしょうね。
【きだて】そういう使い方しかないよな。
――ここを上手くやると、立つペンケースが完成型に近づくということですかね。
【きだて】うん、だと思います。
――「タテモ」の磁力って、「スマスタ」と比べてどうですか?
【他故】「スマスタ」の磁力って、ものすごい強いですよね。
【高畑】これは、そこまでは強くないよね。そんなに「パッチン」という感じではないので。
【きだて】「スマスタ」は、スチール机の上に寝かせて置いておくと磁力で貼り付いちゃうので、持ち上げるときに想定外の重さで「ウッ」ってなるんだけど、「タテモ」はフタの方にマグネットが入っているので、それがないんだよ。だから、寝かせても使いやすいんだよ。
【他故】フタだって認識できるから、問題ないんだよ。
――同じくマグネットで留める「パタリーノ」はどうなんです?
【きだて】「パタリーノ」も、上になる方に磁石が付いているから、問題ないです。
【高畑】「パタリーノ」もいいペンケースだけど、立たせるものではないじゃん。立ってくれる「タテモ」は好きだなぁ。
【きだて】うん。今、「立つペンケースは何がおすすめ」と訊かれたら、一つはこれをすすめるねというぐらい気に入っているよ。
【他故】僕が今使っているペンケースの中では、立つのはこれぐらいですね。
【高畑】そうね。まあ、容量的にはあれだけど。
【きだて】それは、文具王が使っている「デルデ」に比べるとだけど。
【高畑】まあ、それぞれだよね。でも、これはこれでアリだよね。カチッと四角いと安心する部分があるんだよ。
【他故】それはあるね。
【高畑】道具が四角いのって、収まりがいいし、しまいやすいし。立つペンケースの中で、四角いのはなくはないんだけど、ちょうどいい四角いかたちはありがたいな。
【きだて】文具女子全盛の時代では通らない意見だな(笑)。「機能的だから安心する」とか。
【高畑】いや、そうなんだよ。これは僕の、おじさんとしての意見なので。
――これは、どちらかというと、女子が使うみたいですよ。
【きだて】女性向けなのかな?
――ペンをいっぱい持っている、女子学生とか。
【きだて】へぇ~。まあ、容量的にはそうだね。
【他故】限定色がかわいらしいドット柄だったはずだよ。
――そうです。それで、化粧品とか入れている人もいるそうですよ。
【高畑】これ、色々と展開できるよね。
――これ、何色もありますよ。
【他故】6色ぐらいありますよね。
――そうですね。ピンクとか水色もありますし、さっき他故さんが言っていた限定発売のドット柄もありますし、結構女性向けの色柄がありますよ。
【きだて】なかなかいいんじゃないでしょうか。
ジャポニカ版“おじいちゃんのノート”


――では、次は11月に発売した「水平開きノート」です。
【きだて】ちょっと前にSNSで話題になった“おじいちゃんのノート”ですね。
【高畑】これは、紙の折りが1枚ずつで接着しているということなんだよね。
【他故】「はがして使えます」とうたってますよね。
【高畑】V字の天のりだからね。
――そういうことですね。
【高畑】これ、量産するのに時間がかかったよね。「ナカプリバイン」は手作業で時間がかかると言っていたから。
――これをそっくりそのまま応用するのは難しかったようですよ。
【高畑】手作業の工程が大分多いようだからね。
――中村印刷所では職人的なカンでできたところを、ジャポニカの工場の人たちも覚えなくてはいけないですからね。
【きだて】「出しますよ」と言ってから、まるまる1年くらいかかったよね。
――だから、その技術を習得するのに、かなり時間がかかったんでしょうね。
【高畑】ナカプリバインの工程はTVに出てて、1枚ずつ折った紙を積み重ねて、それを角を合わせてのりを手で塗るんだけど、そのおじいちゃんの手で塗る感じが大事らしくて。
――これで、ようやくめどが立ったわけですからね。でも、これ売れるでしょうね。
【高畑】これで上手く売れてくれれば、バリエーションが広がって、方眼ノートとかその辺にももっと行く可能性はあるよね。
【他故】まあ、小学生のノートは、これでカバーできちゃうからね。
【高畑】ジャポニカにもいろんなフォーマットがあって、「何マス」というものだとちょっと難しいから、この方眼マスだけでやっているんだろうけどね。
【きだて】そうだろうね。
――でも、元々方眼ノートなんですよね?
【他故】そうですね。方眼とあとは原稿用紙だっけ?
【きだて】そうそう、原稿用紙。
――そして、見開きにしたときに、まるでつながっているかのように、左右の罫線がピタッと合っているという。
【きだて】この丁合も面倒くさそうだよな。
――この技術がショウワノートに受け継がれたのはよかったのかな。
【きだて】だって、おじいちゃんが引退しちゃったら途絶えてしまう話だったわけですからね。
【高畑】こういうバリエーションが増えるのはいいことだよね。
【きだて】純粋に、ここまでフラットに開くと気持ちいいけどね。
【他故】ノドの方まできっちり字が書けるわけだし、今の授業がどういうかたちになっているか分かりませんが、板書を黒板のかたちでとれるので、横長のかたちで使えるのはすごくいいですね。
【きだて】それこそ、コクヨの「ソフトリングノート」みたいなもので、ここに手を置いて端っこまで書けるという話じゃない。
【高畑】きだてさん的には、このストレスのなさはいいんだね。
【きだて】やっぱり気持ちいいよ。
――タブレットを使った授業なんかだと、ノートを見開きでカシャッと撮って、それを電子黒板でプレゼンするみたいですから。
【きだて】あ~、これに書けばそれができるからいいよね。
【他故】開きやすいし。
【きだて】そのメソッドに合うんだね。
――アナログな作り方のノートだけど、意外とIT化に対応しているという(笑)。
【きだて】そうだよね。コピー機にかけても全然カゲがでなかったし。
――あ~、あれムカつくんですよね。ノートの真ん中が黒くなって。
【高畑】これ、本当にこだわるんだったら、1ページおきに使うと完全にフラットだよ。
【他故】そうね。
【高畑】紙を折ってそれをのり付けして製本しているからね。めっちゃこだわると、左右のページがシームレスにつながっているページが、2回に1回は出てくるからね。右端から左端まで、ペンで書いても引っかからないし。
――ああ、それは普通ないですからね。
【高畑】折り目があるページは段差があるから、そこもほぼゼロだけどゼロではないからね。そうじゃないところは、完全にゼロだからね。そこはすごいよね。
【他故】これ、授業で見開きで使うときは、下敷き2枚使うのかな?
【高畑】右と左で? それはどうかな?
【きだて】せっかく使うんだったら、そうしたいよね。
――板書を書き写すんだったらそうですよね。先生が気を遣ってくれて、まず左側から板書してくれればいいですけど(笑)。
【高畑】これ、板書もそうだけど、マインドマップ的なセンターを使いたいときにいいんじゃない。
【きだて】あ~KJ法的な、真ん中に書いて広げていくみたいな。
【高畑】そういうときに、真ん中が一番書きづらいから。
【きだて】そうだな。
【他故】(自分が使っているナカプリバインのノートを広げながら)これも、突き抜けて書いているよ。
――他故さんもそういう使い方をしているんですね。しかし、細かい字でビッシリ書いてますね(笑)。
【高畑】すごいノートが出てきたぞ(笑)。
【きだて】何だよ、あんたのそのノートはよ~(笑)。
【他故】横に突き抜けて書くこともあるし、補足を書き込むときは片側のページだけ折り返して書くというように、分けて書き込むことができるので。
【高畑】まあこれだと、サイズの割に大きく使えるよね。
【きだて】そうだよ、開いてA4だものね(*他故さんのノートはA5サイズ)。
【他故】どんどん、横に広げて書きたいという場合はそうだし。
【高畑】そうか、ショウワノートのだとB5サイズだから、実質はB4の紙を使っているのか。
【きだて】これで漫画原稿用紙と同じサイズだよ。だから、これで漫画が描けちゃうんだよ。
――そうか、見開きでタテで使えますものね。
【きだて】これ1冊描いて投稿しちゃうという。
【高畑】まあ、漫画のネームだったらこれで充分だよね。
【きだて】これコミック用品のアイシーから出たら面白いのにね(笑)。
【高畑】だから、用途開発して種類増やしてもいいということだよね。その第1弾として、元々のコンセプトが分かりやすくて、ショウワノートだからということもあるから学習帳というのは分かるけど、「何で大人用作ってくれないの」という人は出てくるよね。
――大人が使っても、全然いいものですよね。
【高畑】学習帳としてストレスないのがいいし、段差がないのが気持ちいいね。
【きだて】ほんと、書きやすくていいノートですよ。
マステに付けてどんどん使おう!

――次は「カルカット」のクリップタイプです。こちらも11月に発売されました。
【きだて】“クリカット”ね。
【高畑】これ“クリカット”っていうの?
【他故】みんなそういうふうに言っているよ。
【きだて】「カルカット」のクリップタイプだから。
【他故】これ、去年の「文具女子博」で堂々の1位になったんだよね。
――あ~、そうですよね。来場者の人気投票で。
【きだて】これは、最近非常にお気に入りでして。
【高畑】俺も持っているよ。
【きだて】マークスの「水性ペンで書けるマスキングテープ」と組み合わせて、非常に幸せに使っております。
【他故】その組み合わせは最高ですよ。
【高畑】そういうパートナーを決めて、携帯用として使うのもアリなんだけど、色んなマステにはさんで、要る分だけ切るという使い方が今までになかったんじゃないかな。1対1じゃなくて、1対多という立ち位置を作ったのがいいと思うんだよね。
――マステって、一人でいっぱい持ってますからね。
【きだて】ハーレムだよ。
――えっ? まあ、そういう感じですよね(笑)。
【高畑】これね、ヒモ付けたりして、これはこれだけでどこかに付けておけば、マステであれば相手は何でもこれだけでピッとはさんで使えるから。ビーッと伸びるリールのやつあるじゃん。あんなのを付けて、なくならないようにペンケースとかに引っかけておけば、すごい便利なんじゃないのと思う。
【他故】ストラップホールぐらいあいていてもおかしくないデザインだよね。
【高畑】そうなんだよ。何であけなかったんだろうと不思議に思うんだけど。
――じゃあ、第2弾はストラップ穴を付けるということで。
【高畑】マステが大分、色々と出てきたじゃないですか。それで、みんなそろそろ買うのに後ろめたさを感じていると思うんだよ。
【きだて】あ~、使わないマステをね。
【高畑】まだ使っていないマステが、家に30本もあると。また新作出たから買うとなると、30本じゃきかない人もいるじゃないですか。
【きだて】プラモマニアの人にも箱を積みあげちゃう積みプラってのがあるし。
【高畑】あれな。「プラモデルを作らないのに積んでるの」という嫁さんが、実は引き出しの中に使わないマステがたくさん入っているという。
【きだて】「お前もじゃないか」って(笑)。
【高畑】これ、大きな課題としては、これ以上マステを買ってもらうためにも、使ってもらいたいんだよね。
――なるほど。
【高畑】それに対して、マステメーカーが出していたテープカッターは、コンパクトなのもあるけど、1個のマステに1個のカッターをくっつけたら、しばらくそれ専用だったじゃん。
【きだて】そうだね。対応は1対1だ。
【高畑】これが、自由に取り外しできてバンバン使えて、しかも1個だけ持っていればいいというのがすげーなと思って。これはね、狙い所がすごい。
【きだて】mtにもマステに装着する型のテープカッターがあるんだけど、取り付けが思ったより面倒くさいんだよね。テープをいったんカッターの中に通して…とか。
【高畑】それだと、テープの本数分必要になるから。
【きだて】そう、付けたくなるんだよ。
【高畑】外すとしばらく使わなくて、「これ」というときに付け替えるんだよ。
【きだて】替える覚悟を持って替えないといけなかったんだよ。
【高畑】それが、これだと全然要らないんだよ。サンスターの「ラカット」も、あれはキッチンで使うことによって、テープをもっと消費しましょうという提案だったじゃないですか。そういう場所を提供するやり方もあるんだけど、これはいっぱいあるテープに対して、アプローチの仕方を変えることで、消費させようという考え方なんだよ。これはコクヨとして売れているんだろうけど、ある意味一番ありがたいのはmtなんだよ。
【きだて】そうだろうね。
【高畑】mtとしては、これが売れたら、これを買ってテープを持たない人は誰一人としていないんだから。これを買ったら、絶対にテープの消費が進むわけで。
――もちろん、コクヨもそれは狙って、クリップをこのかたちにデザインしているんでしょうし。
【きだて】それは、そうでしょう。何か、生物の生存戦略の話みたいだね。つがいだけじゃなくて浮気もすることで繁殖が広がるやつとか、色々とあるわけじゃない。
【他故】浮気(笑)。
【高畑】花とハチみたいな関係性があるわけですよ。
【きだて】そうそう、共生関係とかあるじゃない。だから、非常に面白い戦略をとっているね。今までになかったやり方で。
【高畑】それがさ、大手で一番堅いコクヨが出してきたというのが面白いというか、すごいよ。
【きだて】本当に、コクヨの底力というか、まだまだ底が見えないなと思うよ。
【高畑】他のメーカーからしてみたら、「コクヨさん、何気の利いたもの作ってきてるの」という感じで(笑)。中堅メーカーが悔しがる感じの商品だよ。
【他故】そうだよね。
【高畑】それでよくできているから。このギザギザも露出しているんだけど、当たらなくなってて、しかもキレイに切れるじゃん。
――それで、切り口もギザギザがなくて真っ直ぐに切れますからね。
【きだて】細かいパーツも気が利いているんだよ。クリップの裏の洗濯板みたいになっているところも、キレイに留まるから。
【高畑】そのままだとV字型に開くから、テープの厚みに合わせて平行にするために、下が動くんだよね。
【きだて】これで、カッターとテープが平行に付くから。本当に細かいところがよくできている。
【高畑】これが文具女子博で人気1位なのも納得だよ。あとね、コクヨブースは、5個商品を買うとピンバッジをくれたの。数あわせにちょうどいい値段だよね。
【きだて】あ~、そうな(笑)。
【高畑】サイズが2種類あるというのもあるけど、「もう1個ぐらいあってもいいかな」と思うぐらいの。
【他故】しかも、色が3色あるからね。
――これ、マステ付きのがあってもいいかなと思いましたよ。
【高畑】でも、そこでは勝負しないで、カッターだけを作ってきたのがすごいね。
――うちは、カッターだけをやりますということなんですね。
【他故】それで充分でしょ。
【高畑】俺は昔から、「もっとマステを普段使いしようよ」と言っているんだけど、そういう俺的には、こういう商品が出てくるのは、すごいいいなと思う。マスキングテープの実用品としての使用頻度は、もっと上がってもいいと思っているので。
マステタワーにはさみが付いた!

――次も、マステつながりで「キルノ」。これから発売の新商品ですね。
【高畑】これは、「スティッキールはさみ」の応用編なんだよね。それで、スティッキールを使っているのが、マステのユーザーと近いんだよ。マステ使うときに、スティッキールを使うという人が結構いるという事実があって、それでマステを組み合わせるために、このボディができた。
――刃が段差刃になってるんですよ。
【きだて】あっ、本当だ。3Dグルーレス刃だ。
【他故】マステを切るための刃になっているんだ。
【きだて】なるほど。じゃあ、新しくこの刃を作ったんだ。へぇ~。
【高畑】結構刃がしっかりしてるでしょ。
【他故】うん。大分しっかりしてるぞ。
【きだて】下の板の裏はどうなっているの?
【高畑】すべり止め。粘着にはなってないよ。俺的におすすめなのは、耐震の落下防止で使うゲルのやつあるじゃない。あれをペタッと付けて固定した方がいいよ。
【きだて】それはその方がいいよ。
【高畑】そうしたら、手で押さえていなくても、はさみがピッと取れるし。
【きだて】セメダインの粘着材「BBX」を塗るのもいいね。
【高畑】それだっていいしね。あと、この輪投げスタイル。これで5、6本は入るんだよね。難しいことを考えない、このかたちが楽でいいかなと思うけど。あと、軸が細いから、マークスの小さいやつも入るよ。
【他故】これはこれで、パパッと入れられるし。
【きだて】これ、はさみを取り出すときに、パッと開くことがあるからビックリするな。
【他故】初めてだとちょっとビックリするね。
【高畑】スティッキール全体でそういうところがあるじゃない。抜いたときに開いちゃうというのがあるけど、逆にここにロックがないから、抜いてすぐに使えるという良さがあるわけで、そこら辺はまあトレードオフかな。
【他故】これ、前回の「はさみの置き場」にも近い話になりますね。
【高畑】あ~、そうだね。
【他故】マステに限らず、はさみを置いておく場所として。
【きだて】はさみのベースステーションとして、こうやって作っちゃうのはいいね。
【他故】もちろん、マステも入れておけばいいけど、「ここにはさみがありますよ」という感じでいいかもしれないね。
――これ、最初はペンスタンドを考えてたみたいですよ。
【高畑】一緒に使うんだったら、はさみの方がいいよ。
【他故】それは正解ですよ。
【高畑】これ、普通のスティッキールでも大丈夫なんだけど、「テープを切るよ」とうたうためには、グルーレス必須でしょということになったんだよね。これ、キャップに互換性があれば、スティッキールはさみのアップグレードのためにこれを買うものアリなのかも。
――あ~、なるほど。
【他故】パッケージに、「マステをセットしたまま切れます」と書いてあるけど、どういうこと?
【高畑】入れたまま、びよーんと伸ばして切るんじゃない?
【他故】積んどいた状態でということか。なるほど。
――お代官様が、腰元の帯をグルグル取って「あ~れ~」というやつか。
【高畑】イメージが古い(苦笑)。
【きだて】いいね、「腰元マステスタンド」だ(笑)。
【他故】「はさみ付きマステタワー」だから、マステタワーが中心なんだね。
【きだて】あ~、マステタワー主軸で、はさみが付いているということになるのか。まあ、これは売れるでしょ。
――これは、絶対に売れますよ。
【きだて】みんなで「BBX」塗って使おう(笑)。
文具ソムリエールが考案した働く女性のための文具

――最後は、文具ソムリエールの菅未里さんと学研ステイフルがコラボしたシリーズです。
【きだて】もうね、男子では思いつかんわなというのがね。
――4アイテムあるんですけど、もう発想がうちらとは全く違うんですよ。ペンケースの中に、イヤリングを掛けられるフックが付いているとか。
【高畑】特にこれが象徴的なのかな。イヤリングホルダーが付いているというのがね。まあ、少なくとも僕は思いつかないし、提案できないな。
【きだて】だって、それを聞いても「えっ、そんなの要るの」という驚きがまずあったからね(笑)。
【高畑】心の中に乙女がいるきだてさんが?(*新春スペシャルその1参照)
【きだて】あのね~、うちの乙女、まだ化粧も覚えていないんだ(笑)。
【高畑】とにかく、ここはソムリエールならではだよね。俺やきだてさんが言うよりはさ。
【きだて】俺らが言うとしても、「気持ち悪い」で終わっちゃうじゃん。
【高畑】そういう場合は、顔を出さない方がいいよね。
【他故】そうだね。誰が作ったかを言わないようにして。
【きだて】仮面女子プロデューサーとして。
【他故】仮面女子(爆笑)。
【高畑】「文具女子博」で立ち話してた時に、菅さんに「外から見ると普通過ぎるじゃん」と言ったんだよ。そうしたら、「外から機能性が分かるように作るよりも、買ってから使うにはこのくらいシンプルな方がいいんです」と言っていたので。
【きだて】そこは全くの正論だし、ソムリエールは正しいよね。
【高畑】それで、高くなり過ぎないのと、軽いというのにこだわったということらしい。
【他故】軽いよね。
【きだて】値段の割に手触りがいいというか、素材もちゃんと選んでいるだろうね。
――IDホルダーは鏡が付いているんですよね。
【高畑】文具系の取材を受けたときに、「周りが男性ばかりだと化粧直しの時間をなかなか取ってもらえないから」と言ってたよ。
――これ、ストラップをグルグル巻きにして。
【きだて】そう、巻いてはさむような感じで。
【他故】パチンと閉じられるんだね。
【高畑】カバンの中に入れたときに、「他のものとからむのは嫌だね」というのを解決するためのものだよね。
【きだて】ただグルグル巻きにするだけだと、カバンの中でほぐれてからまるんだよね。
【高畑】もうこれ、「かわいいでしょ」と言われたら、俺の評論する外にあるので。
【きだて】「かわいい」って言われたら、「はぁ」って言うしかないんだろ(笑)。
【高畑】「そうですね」としか言いようがない(笑)。「かわいい」と言う権利が…。
【きだて】「かわいい」と言う権利?
【高畑】俺が「かわいい」って言っても、「かわいくないでしょ」と言われたらさ。
【きだて】もう、芯が通ってないな~(笑)。
【高畑】それはね、俺には無理。
――まあまあ(笑)。
【高畑】この、A4サイズを折らずにA5サイズにたたんで持ち運べるファイルというのも、過去からなかったわけではないけど、ポケットが付いたことと、あとは表紙のデザインがちょっと違うかな。
――中身が見えないように不透明にしたのもポイントみたいですよ。
【他故】透明なファイルが多いですからね。
――あと、菅さんが一番欲しかったと言っていたのが、「しおりメモ付箋」です。
【高畑】裏面の丸いところが粘着になってて、すごいギリギリ弱粘着だって言ってたね。本に滑らない程度に貼れるという。だから、外側じゃなくて内側に貼るんだよね。
【他故】本の中にね。
【高畑】しおりとしてはさむから、強粘着にするとページにくっついちゃうからね。だから、わざとギリギリ弱粘着にしたそうだよ。そして、見出しとして使うフィルムふせんと、メモとして使う紙ふせんは素材を分けている。
【きだて】このコメント残す用のメモふせんも、ちゃんとかわいい方向でデザインしているものね。我々がやると、ここは恐らく方眼のみにしちゃうじゃん。
(一同)あ~。
【高畑】これから発売なんでしたっけ?
――1月下旬くらいだと言ってましたよ。
【きだて】「文具女子博」は先行発売だったんだよね。
――あと、売り場で埋没しないように、パッケージを目立たせるようにしたと言ってましたね。
【高畑】こういうファイルなんかでも、「こだわりました」と言っていても、他のものと一緒に置かれるから、表紙にも菅さんの顔写真があるけど、背表紙にもあるんだよね。半分は女子目線でとういうのもあるんだけど、ソムリエール的な価値というのかさ、キャラクターとしてのソムリエールの価値を最大限生かしてるシリーズでもあるんだよ。
【きだて】そうだよね。
――まあ、我々の手の届かないところに(笑)。
【高畑】これに関しては、コメントをするのも無粋という気がするね。
【他故】まあね(笑)。
【高畑】こういう商品が増えてくると、「俺らでいいのか、このコーナー」って思うよ。
(一同爆笑)
――確かに(笑)。
【きだて】その場合は俺がやりますよ。ちゃんと野生の乙女が目覚めるから大丈夫だよ(笑)。
プロフィール
きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。東京・京橋の文具店・モリイチの文具コラムサイト「森市文具概論」の編集長も務める。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
【森市文具概論】http://shop.moriichi.net/blog/
他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。「森市文具概論」で「ブンボーグ・メモリーズ’80s」を連載中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/
*このほか、ブング・ジャム名義による著書に『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)があるほか、弊社よりKindle版電子書籍『ブング・ジャムの文具放談』シリーズを好評発売中。購入はこちらから。
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