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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.99 ブング・ジャム注目の"切る"アイテム その2
本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、ブング・ジャムのみなさんに注目の“切る”アイテムを紹介してもらいました。
第2回目はきだてさんが紹介する「フィットカットカーブ ツイッギー キャップレス」です。
(写真左からきだてさん、高畑編集長、他故さん)*2024年11月9日撮影
*鼎談は2025年5月31日にリモートで行われました。
安全・安心仕様のキャップレス携帯はさみ
――じゃあ次はきだてさんお願いします。
【きだて】プラスの「フィットカットカーブ ツイッギー キャップレス」です。
「フィットカットカーブ ツイッギー キャップレス」(プラス)*関連記事
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【他故】コクヨのライバルじゃん(笑)。
【きだて】ライバルなんだけど、「サクサ」とは進む方向性がだいぶ違うね、っていう(こちらの記事を参照)。
【高畑】あ違うね。
【きだて】コクヨがさ、改めて一から刃の再開発っていう、ある意味泥臭いことをちゃんとやってくれているでしょ。対してプラスは、自信のあるフィットカットカーブ刃にいかに新しくオプションを付けて広げていくか、みたいな感じの開発になってるよね。
【他故】うんうん。
【きだて】そんな中でも、これはわりと面白い。「ツイッギー」って、「フィットカットカーブ」シリーズのペンタイプなんだけど、今までキャップ付きだったわけですよ。
【他故】そうだね。
【きだて】我々というか、全ての人類は、はさみのキャップのことが嫌いじゃないですか。あんなものが好きな人はいないのよ。だって、すぐなくなっちゃうんだもん。
【他故】ははは、まあね(苦笑)。
【きだて】普通の事務用のはさみのキャップですらどっかいっちゃうんだから、外で使う前提のペン型はさみのキャップなんて、もう100%なくすわけですよ。で、なくしたら最後、もう2度と戻ってこない。だいたい定位置の決まってないところでキャップを外して置いたら、次の瞬間にはもう見失うんだよ。だから俺は、ペン型はさみはキャップを外して抜き身で筆箱に入れて持ち歩いてたぐらい。
【他故】おお(笑)。
【きだて】なんなら、最初からキャップを捨てたりとかもしてたしね。
【他故】捨てたらダメだよ(苦笑)。
【きだて】どうせなくすぐらいならいっそ俺の手で、みたいな。
【高畑】ああ、そういうこと(笑)。
【きだて】もちろん今までにも、キャップが要らないペン型ハサミはいくつか発売されてたんだけど、そういうのは刃をグリップに収納したりとか、わりとダイナミックに解決しようとしてたでしょ。
【高畑】そうだね。
【きだて】「ツイッギー キャップレス」は、刃の周りに手が触れないぐらいの厚みのカバーを着けるっていう。「あ、そうか、それで良かったのか」ぐらいのシンプルな解法で。
【他故】そうだね、うん。
【きだて】確かに、切り線がすごい見づらいとかの不具合はあるよ。ただ、外出先で繊細な紙工作をやることなんてほとんどないでしょ。ほとんどの場合、ちょっとチョキッと切れたらそれで十分なんだから。
【高畑】うん。
【きだて】で、このカバーの厚みがあれば、それこそ刃に触れて怪我をするような危険性って、ほぼほぼないと思うのよ。
【他故】ないんじゃないかな。
【きだて】どっちも厚いからさ、このカバーパーツが。
【高畑】それってさ、どっちかって言うと子ども用はさみなんだよね。その安全性の持ってき方がさ。
【きだて】幼稚園児が使うはさみでガードが付いてるやつみたいな。
【高畑】そうそう。多分あれと同じような作り方だけど、幼稚園児が安全なんだから、それは安全だよねっていう話だよね。
【きだて】プラスめ、キャップをなくす人間は幼稚園児レベルだと思ってるのか? バカにしやがって(笑)。
【他故】いやいやいや(苦笑)。
【きだて】でもありがとう! そうだよ、まさに求めてたのはこれだよ。幼稚園児でも安全なレベルなんでしょ。それはとてもありがたい。
【高畑】そうね。その中間でちゃんと使いたいんだったら、この間クツワが出したみたいに、キャップを外さないけどスライドさせるとかもあったりするけど(こちらの記事を参照)。そもそもスライドも何も、刃が安全だったらいいだろうっていうのは確かにそうだね。
【きだて】一瞬、本当にこれで大丈夫? と思ったんだけど、全然大丈夫だし。試してみてもかなり安全性は高いので、非常によくできてる。あと個人的に気に入ってるのが、刃を押し出すときのこのスライダーのセーフティ。
【高畑】はいはい。
【きだて】ほんのちょっと指で上から圧をかけつつ、前にスライドさせるみたいな感じでロック解除できるんだけど、この上からの圧って、本当にささやかなもので。だから、使ってる側はセーフティを外してるっていう意識はまったくないぐらい。
【他故】ほう。
【きだて】ちょっとスライダーを押し出そうかなと思ったら、それぐらいの圧は普通に指でかけちゃってるので、全然それで平気で開いちゃう。かといって、ちゃんとロックはかかってるから、勝手に外れることはあんまりなさそう。筆箱の中で揉まれても、圧をかけつつスライドさせる、みたいな複合の動きはほとんどないから。
【他故】ああ、そうかそうか。
【きだて】その辺の力具合は、結構いい感じに設計してあるようなイメージ。
【高畑】うーん、なるほど。
【きだて】だから、使うときにいらん手間をかけたくないっていう。キャップを外すだとか、セーフティを外すだとか、そういうものはやりたくないわけじゃない。そういう意味では、結構楽に作ってくれたなというイメージ。
【他故】うん、すっごい分かる。
【きだて】切れ味自体は、いつもの「フィットカットカーブ」じゃん。不満もないし。なかなかいいものを作ったんだけど、見た目が野暮ったいっていう思いがどうしても拭いきれない。
【他故】ええっ?
【きだて】ほら、文具王の推してる「サクサ」とかは、やっぱスタイリッシュじゃん。普通のはさみなんだけど。対してこのカバーとか色々とか、樹脂ハンドルの野暮ったさとかさ、その辺が悔しい。
【高畑】ああ、なるほどね。
【きだて】これのもうちょいアップデート版というかさ、どうすればいいのか俺にはまだ想像もつかないんだけど。これでメタルハンドルにするっていうのもまた違うしな。
【高畑】多分それって、カーブしてる上に、先端部分で分厚くしてるから。はさみなんだけど、根元から先端に向かって細くなってないじゃん。
【きだて】そうそう。
【高畑】だから真っ直ぐだし、むしろ前が膨れてるように見えてしまうじゃん。だから、はさみっていうか、鋭角的な感じがないんだよね。すごい良いことなんだけどさ。
【きだて】わざとそういうぼってりした感じにしているのは、安全性を出すというイメージ戦略としてやってるんだとは思うんだけど。
【高畑】それもあるだろうしね。あと、閉じたときに一応真っ直ぐになるようにはなってるよね。広がらないように。
【きだて】そうそう。
【高畑】閉じたときに真っ直ぐじゃないと、閉じたときに先端に向かってヒュって細くなってるのはまたそれはそれで危ないっていう感じなんじゃないかな。先端のRの部分って、実は外側はそこまで要らないんだよね。グっと広がってるから、割と先端が太く見えるんだよね。
【他故】ああ。
【きだて】どうしてもね、それこそ剪定はさみみたいなイメージになっちゃうのよ。刃の部分だけが大きく目立って。何かその辺がちょっとおしゃれっぽくない。
【他故】おしゃれっぽくない(笑)。
【きだて】うーん、「フィットカットカーブツイッギー」のシリーズって、どれも微妙に野暮ったさが抜けない感じがする。好きなんだけど。
【高畑】でも、普通の「ツイッギー」はキャップしてるから真っ直ぐで、かなり細くできてるから。まあヒュッてストレートな感じがするけど、やっぱり刃の部分がでかく見えちゃうっていうのはちょっとあるね。
【他故】そうかそうか。
【きだて】おしゃれなキャップレス欲しいなぁ。
【高畑】ははは(笑)。
【他故】おしゃれなねぇ(笑)。
【きだて】切れ味とか安全性には全然不満がないのよ。
【他故】おしゃれねぇ。どうすればいい?
――確かに、外見が可愛らしい感じがしますよね。
【高畑】それは確かにそうだね。軸の部分は丸軸だけど、刃の部分が割と平たいから。確かに刃の部分がすごい大きくて丸いのが前に出てる感じはすごくするね。特に刃を開くとね。
【他故】うん。そうだね。
【高畑】ちょっとタラコ唇感があるというか。
【きだて】ああそうそう、タラコ唇感分かる。
【高畑】何かそんな感じがちょっとしますね。シャープさがちょっとね。
【他故】そうか…。
【高畑】あと、普通の「ツイッギー」に比べてボディが短いじゃん。
【きだて】ああ、そうだね。
【高畑】収納のことを考えたりとか、普通に使うんだったら、この長さで十分なんだけど。とはいえ、きだてさんにそう言われてみると確かにね。
【きだて】あ、でも一緒か。
【高畑】そんなに変わらないのかな?
【きだて】ちょっと短いぐらいだね。
【他故】短いんじゃない?
【高畑】ロングサイズのやつがあるじゃない。
【きだて】ああ、はいはい。
【高畑】ショートと比べるとちょっと長いぐらいなんだね。で確かにプラスチックのところがかなり目立つっちゃ目立つよね。
【他故】ここがもうちょっとシャープなかたちになれば少しはいいのかしら?
【きだて】実際に、普通の「ツイッギー」のキャップ捨てた状態でこれなわけですよ。
【高畑】捨てない捨てない(苦笑)。
【他故】外した状態でね(苦笑)。
【きだて】これならまだちょっとおしゃれじゃん。
【高畑】でも、そのままだと先端突くと危ないよねっていうことだよね。
【きだて】まあでも、先っぽ丸めてるし、そこまで危険でもないだろう。これでペンケースを突き破ることもないしさ。
【高畑】でもやっぱり、「キャップなしでいいです」って言うには、ちゃんと先端を柔らかくしとかないと。
【他故】まあね。
【きだて】色々と文句言われることもあるだろうというので、分かるんだけどさ。
【高畑】まあでも、言わんとすることは分からんでもないな。気持ちは分かる。
【他故】おしゃれ案はちょっと考えてみないとな。
――もうちょっとシャープにすると「ちょっと危ない」みたいな意見があるかもしれないですね。
【きだて】多分、イメージとしてそうなってくんだと思うんだけど。またプラスが、最近は完全に女子の方向ばっか見てるじゃない。
【高畑】ははは、断言するね。
【きだて】僕ら男子のこともちょっとは見てよ、っていう。カッコよく、かつ安全性の高いペン型はさみを作ってよって、ここはちょっと言っておきたいな。
【高畑】このタイプの考え方でいくとさ、それこそ他故さんが持ってるような釣具はさみ的な要素もあってもいいよね。
【他故】ああいうやつね。
【高畑】キャップとかなくさなくて済むからさ。これにヒモを付けとけば釣りとかそういうアウトドアで使えるじゃん。
【他故】釣具はさみ自体は刃先がちっちゃくていいわけで。糸を切るだけだからさ。握ると刃がちょっと出るみたいな感じで、こういうのでいいわけですよ。実際にはね。
【高畑】そういうところでも使えるっちゃ使えるから、ちょっとカッコいい目のね、男子向けのデザインがあってもいいよね。
【きだて】実際俺も、上州屋とかをのぞくと、どうしてもその辺買っちゃうもんね。
【他故】買っちゃうよね。握る系が多いんだよね。
【きだて】そうだね。
【高畑】まあ、糸切りがメインだからね。
【他故】うん。めちゃくちゃかっこいいんだよ。
――他故さんは、釣り用のはさみは2つも持ってるんですね。
【他故】これは単純にカラビナでくっつけといて、で引っ張ってきて使うっていうだけのやつなんですけど、こっちはもうちょっと大きい刃が折りたたみで出てくるので、構造が違うんですよ。この途中で止まるのが面白いなと思って。
――ああ、確かに。
【他故】こうすると切りやすいらしいんですよ。糸を切ることだけを考えると。こういう工夫って、そういう業界であるからこそそうなってるものだなと思うので。
【高畑】今回の「フィットカットカーブ ツイッギー キャップレス」に関して言うと、糸を切るとか袋開けるとか、そういうちっちゃいところに使われるから。それこそ先端をキレイに切るみたいなのは逆にできないわけだよね。パチンって切ったところの先がまっすぐ切れるとかはできないわけだ。
【きだて】切り線が見えづらいので、プリントをノートに合うようにカットするみたいな作業は意外と苦手。
【他故】それはできないんだ。
【高畑】これはもう本当にそっちじゃないよね。
【きだて】ただ、中高生のペン型はさみの重要って、割とその辺じゃん。
【高畑】だから、これは中高生向けじゃないんじゃない?
【他故】ホームページを見る限りでは、コスメと一緒に入ってるので。
【きだて】ちょっと違うのか。
【高畑】一応、プリントを切ってる写真は出てくるね。だけど、それはないなって感じは確かにする。だからそこはね、普通に大人の持ち物としていいんじゃないかな。
【他故】ちょっと切るときにあるといいねっていうやつだよね。
【高畑】きだてさんは、持ち出す系のはさみとして今はこれを使ってるの?
【きだて】しばらく使ってた。結局のところ、細かい切り物がやりづらいので。
【高畑】そこはきだてさん的には、工作寄りのやつを。
【他故】メインにはなれない。
【きだて】外で工作することも大分なくなったけどね。
――このロックはしっかりしてるんですよね?
【きだて】しっかりしてるというか、むしろロックはかなり軽い。本当に意識しなくても、スライドを前に押しやるっていう動作の中で勝手にロック外しちゃうぐらい。
――でも、ペンケースに入れておいても開くことはないんですね?
【きだて】試したうちでは、なかった。押しつつスライドっていう2段階が必要になるんだけど、それはちゃんと意思を持ってそうやらないといけない動作だから。
――だから勝手に開いちゃうとことはないわけですね。
【きだて】実際に、1カ月ぐらいペンケースの中に放り込んで持ち歩いたけど、勝手に開いていることはゼロでした。
【高畑】キャップがない方法でスティック型ではさみっていうと、これまでは刃全体がスライドするタイプが多かったじゃないですか。あれは刃がちょっとグラグラするっていうのと、そのスライドのロックのところが不安なものがちょこちょこあったじゃないですか。キレイに収まるのはいいんだけれども、刃の使い勝手というところでいくと、このキャップレスはなかなかいいところには来てるよね。*次は「ヨンブンカッツ」です。
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プロフィール
高畑 正幸(たかばたけ まさゆき)
文具のとびら編集長。学生時代に「究極の文房具カタログ」を自費出版。「TVチャンピオン」(テレビ東京系列)の「文房具通選手権」では、3連覇を達成した。サンスター文具に入社し商品企画を担当。現在は同社とプロ契約を結び、個人活動も開始。弊社が運営する文房具のWebマガジン「文具のとびら」の編集長も務めている。著書は『究極の文房具カタログ―マストアイテム編―』(ロコモーションパブリッシング)、『究極の文房具ハック』(河出書房新社)、『そこまでやるか! 文具王高畑正幸の最強アイテム完全批評』(日経BP社)、『文具王 高畑正幸セレクション 一度は訪れたい文具店&イチ押し文具』(監修/玄光社)、『究極の文房具カタログ』(河出書房新社)、『文房具語辞典』(誠文堂新光社)と、翻訳を手がけた絵本『えんぴつとケシゴム』(KADOKAWA)。新著は『人生が確実に幸せになる文房具100』(主婦と生活社)。
https://bungu-o.com/
きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
他故 壁氏(たこ かべうじ)
小学生のころから文房具が好きで、それが高じて文具メーカーに就職。ただし発言は勤務先とは無関係で、個人の見解・感想である。好きなジャンルは書くものと書かれるもの、立つ文房具と薄いペンケース。30分間文房具のことしか語らないトーク番組・775ライブリーFM「他故となおみのブンボーグ大作戦!」パーソナリティ。たこなお文具情報室所属。
「他故となおみのブンボーグ大作戦!」番組ホームページ https://daisakusen.net/
https://buntobi.stores.jp/items/676b8e121008560336e05fac
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