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文具王の2020年文具重大ニュース

高畑正幸

激動の2020年も残りあとわずか。今年も文具関連で様々なトピックがありましたが、その中から文具王・高畑正幸編集長が「文具重大ニュース」を選びました。

コロナ禍で文具イベントが相次ぎ中止に

今年は新型コロナウイルスなくして語れないほどで、コロナのために世の中大きくが変わってしまいました。その中で私が一番肌で感じたことは、展示会やイベント、ワークショップなどが軒並み中止になったことです。私も、今までは年に数十回は店頭で実演イベントをやってましたが、それが一つもなくなってしまったほどです。

以前、「月刊ブング・ジャム」の2019年の文具予測で、「今年はワークショップみたいなイベントが来るよ」という話をしましたけど(こちらを参照)、去年までの流れというのは、「文具女子博」「紙博」「活版TOKYO」などがあって、店頭でいかに面白いことをするかという、リアルイベントの方に傾きかけてたはずなんですよ。そこにコロナがやってきたので、そこが苦しくなってきたかなと思います。

良いニュースではありませんが、これが今年一番のニュースかなと思います。

オンラインイベントへのシフト

イベントやセミナー、展示会などがオンラインにシフトしてきました。「文具女子博」が開催されるなど、11月あたりに一部リアルイベントの方に戻ってきましたが、ここに来て新型コロナウイルスの感染者が増えてきたので、また厳しくなってきました。

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11月27日~29日に東京で開催された「文具女子博2020」。2021年1月にオンラインでの開催も決定している(関連記事)。

ただ、オンラインでどうやって見せるか、上手くやっているところもありますが、なかなか伝わりにくい面もあるので試行錯誤している段階だと思います。オンラインショップの延長からなかなか抜け出せないようなところがあったりして、難しいかなと思います。

動画配信をする人も増えました。ワークショップをやる作家さんは動画の方へシフトしている人が結構います。インスタライブが手軽にできるので、メーカーや小売店でインスタライブをやるところが増えました。文具系ユーチューバーも増えてきていますし、これからは動画の時代なのかと思います。

私も2019年からYouTubeで動画を配信していて、文具の情報を発信しています(文具王動画はこちら)。今年は実演イベントができなかったので、YouTubeをやっていてよかったなと思います。

レジ袋の有料化

レジ袋の有料化も文具業界にとっては重大ニュースの一つで、エコバッグで結構な盛り上がりとなりました。エコバッグは純然な文房具ではありませんが、文具店で扱えて、文具メーカーが作れる商材なので、メーカー各社からアイデアエコバッグがどんどん発売されました。

法整備が整うとモノが作られるというのは昔からあって、個人情報保護法のときにシュレッダーやスタンプなどの個人情報保護グッズが出てきたのもそうですけど、こういうブームはあるんですね。今回は、レジ袋が有料になるので、「エコバッグを持ちましょう」ということで、エコバッグがすごく出てきましたし、実際売れているようです。

僕も持ち歩くようになりましたが、トレンドとしては「面倒くさくない」が多いような気がします。「かっこいい」よりも、「しまうときに楽」とか、「たたまなくていい」とか。文具系で話題になるのは、そういう機能性ですね。それも、面倒くさくない機能性です。



“エコバッグになるマスコット”で人気の「ecot(エコット)」(サンスター文具)

コロナ対策グッズ

コロナ対策アイテムも、文具メーカーからいろいろと出てきました。クリアファイルをフェイスシールドで使えるという話からはじまって、アクリルパーティションなども文具メーカー発売されています。

ウェブ会議が増えてくると、その背景用にダンボールメーカーがグリーンバックを作ったり、リモートワークで使えるような、デスク、事務用品、収納ケースとか、そういうものがどんどん増えてきたのかなと思います。


会議用バックスクリーンパネル 「リモパネ」RP-50(ジェコル)

“色”に注目した商品

色を使った製品がすごく出てきたのも、今年の特徴です。年初の「月刊ブング・ジャム」の新年予測で、今年は“色”の1年ということで「色物文具の年になりますよ」という話をしたのですが(こちらを参照)、その前年の「KOKUYO ME」あたりから始まった色のコーディネートを、今年はいろんなメーカーがやるようになりました。

トンボ鉛筆の「スモーキーカラーシリーズ」(写真)がものすごく売れましたが、今の流行りの色に上手くハマったのかなと思います。


あと、三菱鉛筆のゲルインクボールペン「ユニボールワン」は、発色の良さをうたっています。秋には限定色(写真)が出て、インクの色にもこだわっています。インクの色でいえば、サクラクレパスのゲルインクボールペン「ボールサインiD」は、黒色ばかりで6色という展開です。そういう微妙な色の違いで商品を出すようになってきました。さらに、コクヨのマーカー「マークタス」では、色の濃さの違いで強調の強弱を使い分けられるようになっていて、色の使い方が機能的にも変わってきました。



今年も“インク沼”で、インクは好調だったと思います。その関連で、インク色を楽しむものとしてガラスペンが人気になり、今年の「日本文具大賞」ではガラスペンが大賞をとりました(ハリオサイエンスの「毎日使いたいガラスペン BRIDE/GROOM、インクポット BOUQUET」)。また、セーラー万年筆は、「SHIKIORI―四季織―」 の万年筆用ボトルインクを、より手軽に使えるカートリッジインク「SHIKIORI―四季織―万年筆用 カートリッジインク」(写真)として出しています。これまでカートリッジインクは、わりとはっきりした色しかなかったのですが、ニュアンスのある色を入れてきたのが大きいと思います。


ということで、今年はあらゆる面で色を使ってきた1年でした。来年は「素材」とか「手触り」の1年になっていくのかなと思っていますが、それはまた別の機会にお話しします。

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