1. 連載企画
  2. 文具ジャム
  3. 【連載】月刊ブング・ジャム Vol.32 今、消しゴムが熱い! 気になる最新消しゴムをチェック!!(その3)

【連載】月刊ブング・ジャム Vol.32 今、消しゴムが熱い! 気になる最新消しゴムをチェック!!(その3)

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。Vol.32では、気になる新製品が続々発売されている消しゴムについて激論を交わしています。

第3回目は、トンボ鉛筆の「モノタフ」について取り上げました。

写真右から他故さん、高畑編集長、きだてさん

*その1はこちら
*その2はこちら

最強のモノケシが見参!!

モノタフ0.jpgMONO TOUGH(モノタフ)」(トンボ鉛筆) 同社比で約8倍強度を高めて折れ・裂けに強い消しゴム。生地のしなりにくさと硬さを高める配合と加工法を新たに導入。同時に、スリーブが食い込んでも生地を傷つけることを防止するため独自に考案した「ななめスリーブ」(特許出願中)を採用。強い消し圧にも外傷がつきにくい工夫をした。ななめカットの効果を長持ちさせるためスリーブ尾部にミシン目を入れているのもポイント。消耗に応じてスリーブをカットして使用する。また、消しゴムが折れにくい理想的な持ち位置をスリーブのマークで知らせている。サイズは2種で、大サイズ(23×11×55㎜)は税抜100円、小サイズ(17×11×43ミリ)は同60円。

『モノタフ』をAmazonでチェック



――そして、最後が「モノタフ」です。まあ、ビジュアルよりは機能性重視ですね。

【きだて】ビジュアルに関していえば、これはゼロだよ(笑)。「普通!」っていう(笑)。

――どうぞ、みなさん試してください。

【きだて】う~ん、ちょっと密度感がある硬さだな。

【高畑】何か、ちょっと硬くしたと言ってたね。

【きだて】言ってたね。横から押してもつぶれないくらいの密度感がある。

【他故】「折れ・割れ・欠けに強いタフな消しゴム」か。

【きだて】消し感どう? あまり硬さを感じない?

【他故】すごい硬いという感じでもないけど、跳ね返ってくるような弾力性を感じる。

【高畑】でも、よく消えるね。

【きだて】それはさすがに、MONOの名前を冠していて「消えません」じゃ済まないでしょうよ。

【高畑】同時期に、「モノタフ」と「クリアレーダー」というライバル同士が出てくるところが面白いじゃん。それぞれ、別のところを伸ばしましたみたいな話なわけで。

【他故】ああ、でも確かに安心感はあるね。軽く消しても全然問題なく、よく消えるわ。

――今は、軽い力で消せる消しゴムがトレンドなんですってね。

【きだて】うん、全体的にサラッと消せる方が人気は高いっぽいね。

【他故】力をかけずに、サラッと消える感じがいいみたいですね。クリアレーダーもそうだし。

【高畑】みんな握力がなくなってきて(笑)。

【きだて】っていうのが要因なのかね。あと、軽く消せる方がノートを傷めにくいというのはあるよね。

【他故】そんなイメージもあるのかな。

【きだて】子どもって力加減が分かんないところあるから、思いっきりグリッと消してノートをグシャッと破っちゃったりとか、結構あるんだよね。そう考えると、力を入れずにサラッと擦るだけでいいんだよ、という消しゴムに最初から慣れておいた方がいいのかもよ。

【他故】うちの子もやたらに力を入れてこするから、消しゴムの減りがすごいんだよな。

――この消しゴムは、折れにくいようにスリーブがななめにカットされていて、しかも消しゴムの素材に折れにくい成分を配合をしているようです。

【他故】三角形のところを握れとか、ミシン目になっていて後ろから切れるとか、あらゆる要素を取り入れているね。

モノタフ3.jpg
【きだて】うぬぬぬ!

【高畑】きだてさんが今、すごい力をかけてます。

【他故】あ、折りたいわけ?

【きだて】…あー、やっぱ折れないな。スリーブからちょろっと本体が出てるぐらいじゃ、大人が力をかけても大丈夫だわ。

【他故】どれだけしなりを与えられるかにもよるけど、こんだけ硬いとしなりを与える力が相当かかっちゃうよね。

【きだて】ツメでも刺さない限りは割れないね。

【他故】消しゴムを消すという力では割れそうもないわけか。

【きだて】うん。

【高畑】これは、持って消すときの角度に合わせてあるから、この稜線全部で力を均等に受けるというか、今までの真っ直ぐなスリーブだと、手がななめに持っているので、どっちかの角付近に力がかかっちゃうところを、このスリーブの縁全部で受けることで、力を分散させてますよという発想なので。

【他故】そこが「アーチ」と違うところだね。

【高畑】あれは、稜線が当たらないようにするために面で受けるという発想だから。

【きだて】似てるっぽいけど、そこは違うね。

【高畑】それで今回、「モノタフ」が出てきたのも、透明な消しゴムが出てきたのもそうなんだけど、「消す」っていう性能はもう極限まできているということなんだよ。

【きだて】ああ、なるほど。消せる性能の物理限界が見えちゃってる。

【高畑】「消えます」というのは、もうほんのちょっとしか差がないので、みんなよく消えるじゃんってなったときに、じゃあそれ以外のところで、見た目もそうだし、こういう折れにくいとか。ゴムの性能はもちろん高いんだけど、スリーブの性能だとか、もうそういうところまで行かないと、勝負できない。

【きだて】もう消字性能だけでは差別化ができなくなってるんだよな。

【高畑】そういう中で作らなくちゃいけない、消しゴムの企画も大変だよね。

【きだて】言ってみれば、カドケシ以降の “カド戦争”だって、そういう中での産物だったわけだもんね。行き詰まった消しゴム開発の、新しい突破口として。

【高畑】そこで「かたちでやれる」という新しい切り口が出たから、みんなぶわってやったんだけど、それが落ち着いて大人になったわけじゃん。今のはそういう奇をてらったところがなくなってきたので、ストレートに普通に使いやすいからね。特に変わったことをしていないように見えて、よく使えるという。

【きだて】そうだね。中に練り込むのも一段落しただろうし、次は何だろうという話になっちゃうよな。

【他故】そうだろうね。

【きだて】「エアカプセル練り込みました」とかよくやってたじゃん。

【高畑】かたちが違う方がわかりやすいけど、それに比べて今のはすごく些細な違いなんだよ。ボールペンでも言ったらみんな書けるじゃん。だけど、メーカーは書き味に個性を出そうとしていて、ユーザーもその違いが分かるという。

【きだて】だからといって、ユーザー全員にそのリテラシーがあるのかどうかは、ちょっと微妙なところなんだけどね。

【高畑】そもそもこれは、日本のようなところじゃないと成り立たない戦いだよ。

【きだて】「どれだって消えるし、イイジャナーイ」で終わっちゃって。

【他故】「何が違うんじゃ」って言われちゃう。

【高畑】「これが違うから、こっちを買おう」という発想が、じゃあアメリカにあるかといったら、それは違うんじゃないのという感じはする。

【きだて】とはいえ、日本人全員がこの消し感の差を感じ取ることができているかというと、どうかね。

【高畑】感じ取れているかどうかはともかく、消しゴムを選ぶという感覚がある時点で、かなり特異なところじゃない。

【きだて】うーん、やっぱり、みんな能書きが好きなんだよね。俺も超好きですけど。

【他故】新製品が出たら試したいという感覚が、結構みんなにあるんだな。消しゴムだってそうだよね。決まったのを使っていても「新しいのが出たから使ってみようか」となる。

【高畑】だって、今回紹介している消しゴムはみんな四角だよ。こんなの、「どれだっていいじゃん」って言われちゃったらそうなんだけど(笑)、「私はこのかわいいのがいい」とか「ノスタルジーなのがいい」とか、「機能的にこっちの方が消しやすい気がする」とか、そういうのがあるわけで、それが本当に必要か?という部分もなくはない (笑)。「どれでもいいじゃん」という方が大人なのかもしれないけど、そこが日本の文具の面白いところだけどね。

【きだて】俺的には、そういうところにこだわる方が楽しいしね。メーカーの書く能書きに踊らされて生きていきたい人間なので。

――これは、デザインが普通のMONO消しゴムと違いますよね。

【高畑】そう、3色ストライプをあえて捨てているところがさ。だって、MONOカラー50周年であんなに3色ストライプ推しだったのにもかかわらず。

――そこはちょっとストロング感を。

【きだて】やっぱ、黒・白のストロング感が欲しかったんだね。

【高畑】だって、このスリーブは黒・白・青の3色ストライプで出したっていいわけで。

【きだて】そこは差別化があるんだろうな。

――ここまで思い切ってデザインしないと、「折れない」というのが分からないじゃないですか。

【高畑】いや、最初はこれでやってるけど、気が付いたら普通のMONO消しゴムもスリーブがななめに切れている可能性はある。

【きだて】それはあるな(笑)。

――まあ、この消しゴムは注目度が高いんじゃないですか。

【きだて】これ、店頭でパッと見たときにMONO消しゴムだって分からない可能性があるよね。

【高畑】むしろ「keep」に近い。やっぱり異質感はかなりあるよね。

――セリースパックには3色デザインが入ってますけどね。

MONO3.jpg
【高畑】トンボが、自分たちが今まで作ってきたものと違うんだ、というのをあえて言いたいんだよね。

【他故】いや、売り方として、店頭の什器の中にはMONOがたくさんあるから、その中にこれが入っていると「あっ違う」と思ってくれるということじゃないの。かたまりとして什器の中でMONOというのが分かるから。

【高畑】確かに、MONOシリーズはすごい色々とあるけど、このはっきりとした打ち出しは、選ぶ方は分かりやすくてありがたいね。

【他故】それだけ自信があるんだと思うよ。

【高畑】3色が並んでいる中にこれがあると、「1回使ってみよう」となるからね。

【他故】そんな気がする。

【高畑】軽く消せる「モノエアタッチ」と、消しクズがくっつく「モノダストキャッチ」も、確かに質が違うからあえてパッケージを変えているじゃん。質が違うから、同じパッケージにしちゃうと、「MONOの消し心地が変わった」と言われちゃうから。MONOブランドの安定感をくずさないというのもあるかもしれないね。

【きだて】ね、本当にブランドを守るって大変だね。

【高畑】「モノタフ」を3色にしちゃうと、そういう問題があるのかもしれないね。

【きだて】確かに、それはありそうだわ。

【高畑】使い慣れている物を変えたときの、ユーザーの拒否反応はすごいからね。

【他故】あのMONOを変える気はないし、MONOがメインだと思っているから、これは変化球だと思っているんじゃないの。このスリーブは今後どこかで使うかもしれないけど、中身はあくまで変化球だよ。

【高畑】それで、普通のMONOのスリーブがななめにカットされる日はくるかもしれない。

【他故】それはありえるかもしれない。

【高畑】これで評判がよければね。

――これで、消しゴム折れない戦争になったりするんですか?

【高畑】これは、それこそ「クルトガ」の後に出てきた「オレンズ」や「デルガード」の立ち位置ですよ。折れないを明確に打ち出した「アーチ」があったから、それに対するトンボ鉛筆なりのアンサーなんだよね。

【きだて】そもそも中高生男子って、「頑丈」とか「ヘビーデューティー」という言葉にグッとくるでしょ。

【高畑】あと、テストのときにゴシゴシ消して折れるみたいなのは、やっぱり経験するよね。

【他故】あると思うよ。特に男の子はね。

【きだて】加減して使えよという話なんだけどさ(笑)。

【高畑】いや~、特にテストの時なんかは、あせるとそうなるよね。「制限時間が」とかはさ。とはいえ、最近の物の良さは、至れり尽くせりは過ぎると思うけど(笑)。

【他故】でも、こういうちょっと硬めで、カスが固まらないやつがまた主流に戻ってきたとなると、懐かしいというか、子どもの頃の感覚に戻ってきて、「じゃあkeepは間違ってなかったんだ」なと思うよ(笑)。

(一同爆笑)

【きだて】Keep原理主義者め(笑)。

【高畑】まあ、サクサク派が好きな人にはいいよね。

【他故】そうだね。

【高畑】MONOだっていい消しゴムなんだけど、その中でこういう新しいものも必要なんだろうね。

――デザイン的にかっこいいですよね。

【他故】男子中高生を根こそぎ持って行くようなデザインですよ。

【高畑】男子っぽいよね。

【他故】だから、次に出すのはもうちょっとかわいいやつ。

【きだて】ファンシー「モノタフ」?

【他故】これ、次出るとしたら、黒い消しゴムが出たらいいと思うよ。

【きだて】それはアリだな。

【他故】素材を硬くしたというのが、どれだけ影響あるのか分からないけど、黒にしたらすごい売れるんじゃないかな。

【高畑】片や「クリアレーダー」がありの、片や「モノタフ」がありのというのは、同じ消しゴムの中でどの要素を伸ばすかで違ってきているわけじゃないですか。

【きだて】何にせよ、売り場での選択肢が多いってのはそれだけで良いことだよ。いつも言ってる、生態系が豊穣という状態でさ。

【他故】それぞれが売れているわけだからいいことだよ。「モノタフ」だって、売れると思うんだよね。

【きだて】生態系が豊饒というか、どっちも極地の生き物っぽいんだけどね。

【高畑】深海にいる魚みたいにね。

【きだて】そう。特化し過ぎだろうと思うんだけど、まあいいことだよ。

【他故】消しゴム好きとしては、いろんな消しゴムがまた出てきて嬉しいところでもあるので。

【高畑】そうだよね。他故さんは選ぶものが増えたよね。

――ぜひ、こちらの消しゴムもお試し下さい。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。

たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


*このほか、ブング・ジャム名義による著書として『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)と、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。

弊社よりKindle版電子書籍『ブング・ジャムの文具放談』シリーズを好評発売中。最新刊の『ブング・ジャムの文具放談6』も発売。

『ブング・ジャムの文具放談6』をAmazonでチェック

【文具のとびら】が気に入ったらいいね!しよう