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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.29 これが未来の文房具だ!(その3)

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。Vol.29では、ブング・ジャムの3人が考える「未来の文房具」を紹介してもらいました。

第3回目は、きだてさんが紹介した「インフォINF10」です

写真左から他故さん、高畑編集長、きだてさん

*その1はこちら
*その2はこちら

ウェアラブル端末としてのスマートペンに期待大!

インフォ.jpgインフォ」INF10(キングジム) Bluetoothでスマートフォンと連携し、電話の着信やメール、 LINEなどのプッシュ通知をバイブレーションや小型液晶でお知らせするスマートボールペン。プッシュ通知はペンのディスプレイに表示され、バイブレーションやLEDでお知らせするため、スマートフォンを使わずに確認することができる。さらに、ディスプレイ上のタッチボタンで音楽の曲や音量変更、カメラ撮影などスマートフォンの操作を行うことも可能。また、ペアリングしているスマートフォンを呼び出すことができるので、スマートフォンが見当たらないときは「インフォ」を使って探し出せる。税抜12,000円。

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【高畑】「しゅくだいやる気ペン」が出たところで、今度はきだてさん持参の文房具が出てくる訳だよ。

【きだて】はい。キングジムの「インフォ」でございます。

【高畑】「大人のやる気ペン」というか(笑)。

【きだて】やる気はちょっとねぇ…。

【高畑】やる気というか、仕事がメールで降ってくるペンじゃん。

【他故】わはは(笑)。

【きだて】これで仕事の連絡を常時受けちゃうから、つらいばっかりだな。

【他故】「仕事から逃れられないペン」だ(笑)。

【きだて】いや~、これも監視社会といえば監視社会だよね。

【高畑】だってさ、ここに「進捗どうですか?」って出てくるんだよね(笑)。

【きだて】あのね、まさに出てきた。

(一同爆笑)

【高畑】来るよね。「今日締切ですが」っていうメールが来ちゃうじゃない(笑)。

【他故】うわ~恐い。

【高畑】とにかく、商品の話をしなきゃ。

【きだて】えっと、要はキングジムが出したスマートペンです。アップルウォッチみたいなスマートウォッチ系のウェアラブル端末っていろいろ出てるけど、俺、基本的に腕時計が苦手なんですわ。

【他故】ああ、腕にはめるのがね。

【きだて】本当にね、手首に違和感を感じていると、もう耐えられなくて。手錠とかはめられたら、相当つらいだろうなと思って。だから、悪いことはしないどこうと思ってるんだけど。

【高畑】手錠はめられたときはあきらめろよ(笑)。

【他故】手錠をはめられて気持ちいい人は、別の嗜好の人だから(笑)。

【高畑】じゃあ、指輪とかもダメなんだ。

【きだて】手に何かを付けるのが本当にダメで。

――金属アレルギーがあるとかじゃないんですね。

【きだて】アレルギーは無いんだけど、とにかく関節の周りを締め付けるのがとにかく苦手で。まあ、付け慣れてないというのもあるんだろうけどね。でも、ウェアラブルな端末は使ってみたいのよ。それこそ、携帯の着信音を消して、カバンの中に放り込んでいると全然気が付かないし。LINEやメッセで原稿の催促されたときに、すぐに対応しないと感じ悪いじゃん。

【他故】まあね。

【きだて】だから、プッシュ情報を受けてくれるツールは欲しかったんだ。じゃあ、ウェアラブル端末で、自分が身につけていられるものは何だろうと思ったときに思い浮かんだのは、まずはメガネ。で、次に普段から身につけている可能性が高いものは何だろうなと思ったら、やっぱりボールペンだったという。

【他故】うん。

【きだて】そういう意味で、情報端末としてのスマートペンというものを世に出してくれたキングジムは、偉い。

【他故】なるほど。

【きだて】ただ、実際の機能の部分でいくと、気になる部分はいくつかある。

【高畑】あっ、そう?

【きだて】まず、このクリップの短さは何なのっていう。

【高畑】画面の表示を大きくしたかったからかな。

【きだて】それならば、90°とか180°ずらしてクリップを付ければいいじゃん。液晶と同軸上にクリップはなくていいよ。

【高畑】ああ、そうだね。

【他故】別に、そこじゃなくてもいいよね。

【きだて】もしかしたら、画面の保護的な意味はあるのかもだけど。でもほら、シャツの胸ポケットにひっかからないクリップってどうなの、という。

【高畑】そうか、そこにクリップで留められないんだ。

【きだて】だから、かがめないんだよ。かがんだら、コロンと落ちそうで。スーツの内ポケットとか、それくらいの深さがないとダメなの。

――スーツのポケットにはさむ想定なのかしら。

【きだて】あと、連動してるスマホカメラのコントロールとか、音楽のボリュームコントロール機能があるのね。それはいいんだけど、操作用のタッチパネルがポケットの縁に擦れて勝手にコントロールされて。

【他故】反応しちゃうんだ。

【きだて】何度か、突然聞いてる音楽のボリュームがグワッと大きくなって「うわぁ」って(笑)。

【高畑】あるある。汗かいてたりすると、電気が伝わっちゃうんだよね。

【他故】ロック機能はないの?

【きだて】ない。タッチすると絶対に反応するので、それ以外は電源切るしかない。

【他故】電源切っちゃったら意味ないよね。

【きだて】電源切ると、プッシュ通信もなくなるからね。

【他故】じゃあ、いいところは?

【きだて】いいところは、そもそもの“スマートペン”という概念を提唱したことだよ。

【高畑】通知が来たというのは、使っていて分かるの?

【きだて】バイブと、あとクリップのとこにLEDがあって、そのLEDの色とバイブのパターンでまずどのアプリからの通知かが分かって、あとは液晶に、誰からどういう通知が来たかの内容が流れて。

インフォ2.jpg
【他故】うん。

【きだて】会議や打ち合わせ中だと、何か通知が来たなと思っても、スマホの画面を見るわけにいかないときってあるじゃない。

【他故】分かる分かる。

【きだて】これだと、相手に画面とLEDを隠して何となく確認することができるから。

【高畑】自分の方に液晶を向けながらね。

【きだて】アップルウォッチでも画面見ないとダメじゃない。画面を自分に向けないと表示が出ないから。

【他故】そうだね。

【きだて】そういう意味では、時計型のウェアラブル端末より、こっちの方が優れている可能性がある。さりげなさでいうと。

【高畑】なるほどね。

【きだて】ただ、バイブが強いので、手で持っていてもバイブ音が聞こえちゃうと思うんだけどね。だから、面と向かってる場合だと、「ん、何かあったの?」という感じで反応はされるんだけども、もうちょっと人数の多い会議でわいわいした感じだと、気付かれずにいくかなと思う。

【高畑】バイブの強さは1種類?

【きだて】強さは同じで、振動のパターンが変えられる。

【高畑】あれは何なんだろうね、会議中にバイブ音がしてるのに、みんな何もなかったかのように振る舞わないといけないのって。

【きだて】そう、バイブ振る舞いというか、マナー的なやつがあるよね(笑)。

【高畑】着信音が鳴ったら「もう~」という顔をしてもいいのに、バイブで鳴っているときはみんな無視しないといけないという(笑)。

【他故】みんな頭の中でモヤモヤしているからね(笑)。

【高畑】しゃべってるのに、ずっとバイブ音が鳴っていることがあるでしょ。もうね、頭の中が真っ白になって話してたことがわかんなくなっちゃうのよ。

【きだて】なるなる。そういう時は、「もう早くバイブが止まってくれ」としかいえないよ(笑)。

【高畑】だから、会議なんかではマナーモードも多分ダメなんですよ。そういう意味では、アップルウォッチは腕で鳴ってても自分が緩衝材になるから全く聞こえなくて良いんだよ。何か来てると思ったら、その場で出られなくても後で見られるじゃん。他の人が話をしているときに、ちょっと見ることもできるので。自分に知らせる方法としては、ちょうどいいなという感じはするね。そこら辺はウェアラブルのいいところだと思うよ。

【他故】そうだね。

【きだて】これ面白いのは、筆記するように握った状態でも、親指をすべらせてタッチパネルの操作ができるのよ。

【他故】ほぉ~。

【きだて】だから、操作してる動きがさりげない。ちょっと指動かすだけでバレずにメッセージが読めたりするのはいいよ。あとはバイブが気付かれないように弱くできるともっといいかな。もしくは、指先がチクッとなる電気刺激を流すとかさ。

【他故】震えるんじゃなくて、ちょっとピリっとしびれるぐらいの(笑)。

【高畑】昔見たマンガで、緊急事態が起こったら、腕にはめたリングがギュッてしまるというのがあったけどね。

【きだて】あ~、それでもいいよね。

【高畑】そういう別のシグナルの送り方があったらね。

【きだて】瞬間的にえらく熱くなるとか。冷たくなるのは難しそうだけど。

【高畑】でも、人間は温度に対しては反応が遅いからさ。

【きだて】個人差もあるし、そのときの環境温度もあるからな。

【高畑】でも、携帯がブイブイいうよりは全然いいということだよ。

【きだて】そういう意味では、非常にスマートだよ。

【高畑】腕時計よりメリットがあるとすれば、その場で画面を見て、スクロールもできるということかな。そこは腕時計の弱点ですわ。

――人と会っているときに、ペンを見るのは構わないけど、腕時計を見るのは失礼ですよね。

【きだて】そうね。「時間気にしてるの?」ってなっちゃうからね。だから、これだと気付かれずに時間も見られるから。

【他故】それいいね。

【きだて】シヤチハタの「テゼット」を紹介したときにもあれこれ言ってたけど、ただ通知受信用のウェアラブル端末にペンがなる、という未来は想定外だったよね。むしろ「ペン1本でなんでもできるようになる」ぐらいの未来を考えてたぐらいだから。

【他故】うん。

【きだて】プッシュされた情報を受信するだけって、すごくささやかじゃない。でも実際に使ってみると、「ああ、これの延長線上にある未来」でちょうどいいかな、って思った。

【他故】そうだね、ペン型の万能の何かって思ってたところがあったからね。

【きだて】そう、ペン型の万能端末を想定してたんだけど、でも今やスマホがすでに存在するんだから、それが情報コアで全然問題ないわけじゃん。

【高畑】アップルウォッチ付けててもさ、時間はついスマホを見ちゃうんだよな。

【きだて】何やってんだよ(笑)。

【高畑】画面見てると、上の方に時間が出るじゃん。わざわざ腕を見ることがないから。じゃあ、何でアップルウォッチしているのというと、メールや電話の着信とかの通知がくることの方が重要だから。

【きだて】プッシュって意外に大事だよね。身の回りのものにプッシュが来るって。

【他故】そうだね。

【高畑】その次にいくとしたら、きだてさんは腕時計がダメだからメガネだよ。それで、こめかみがギュウッってやつとか、骨振動で伝わるやつとか。

【きだて】骨振動で直に電話受けてくれていいんだけどね。いやでもね、未来を感じさせてくれるという意味では、すごい面白いので、文句を言いたいポイントはあるけど、すごい気に入ってます。

――きだてさんの話を聞いていると、使ってみたいという気になりますよね。

【他故】ちょっといいですよね。使ってみたいですよ。

【高畑】これ、家帰って充電するんだよね。

【きだて】専用スタンドがあります。

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【高畑】きだてさんの好きそうなデザインじゃん(笑)。

【他故】これは、持って行かれると鳴るやつとは違うの(笑)。

【きだて】同じキングジムだけど違う(笑)。これ、バイブがうるさいから電源オフにした状態で充電しようと思っても、スタンドに挿した段階で電源が自動的にオンになって、受信ガンガンしちゃうのよ。

【他故】あっ、そうなの?

【きだて】机の上に立てて充電してても、受信するたびにウィンウィン鳴って結構うるさい。

【他故】充電器に入れちゃうと電源を切れないんだ。

【きだて】電源を切った状態で充電したい。

【高畑】その辺は、ファームウェアのアップデートで何とでもなる話だからね。

【他故】なってほしいよね。

【きだて】ちなみに、ファームウェアのアップデートも充電器でやります。

【高畑】そこはペンだから、ペン立てみたいにできるのはいいよね。

【きだて】かたちとしては正しい。

【高畑】ちなみに、ボールペンとしてはどうなのさ?

【きだて】面白いことに、意外と使える。

【高畑】ああ、そうなの。

【きだて】真鍮製でめちゃめちゃ重いんだけど、前の方に相当重りを持ってきているので、書き出すと意外とバランスがとれる。

【他故】ペンとしては、そんなに悪くないんだ。

【高畑】これはツイスト式?

【きだて】いや、振り子式ノック。

【高畑】どっちが下になってるかで色が変わるんだ。

【他故】この小っちゃいボタンが懐かしいねぇ。

【きだて】このボタンは、充電器に挿すと自動的に芯が戻るようになってる。

【高畑】それは重要だね。

――なるほど。

【高畑】(インフォをいじりながら)いろんな意味で、手のモーションだけで色々とコントルールしようとする感じがね。

【きだて】本当に、手の中でクルクルと動かす感じ。

――ああ、それ触ってるの画面じゃないですか。

【きだて】あっ、スマホから音楽鳴ってる!いま再生を押したな!

(一同爆笑)

【高畑】そんなこと言われたって、分かんないよ。

【他故】他人に貸すと色々と弊害があるな(笑)。

【きだて】だから、ここは何らかのロック機能がほしいな。プッシュ通知を受けるだけで、後の操作は要らないという場面があるので。

【高畑】これ1号機だから、その辺に関してはまだまだ気負いが感じられるじゃない。そこら辺は、こなれてくると普通な感じになってくると思うよ。

【きだて】俺としては、このペン型ウェアラブルツールをガンガン応援して、今後進化してくれないと、俺の使えるウェアラブルツールはメガネが登場するまでないんだよ(笑)。

――でも、時計をしない人って、世の中にいっぱいいるから、そういう人たちにはけっこう刺さる商品ですよ。あと、腕時計はするけどアップルウォッチみたいなのはしなくないという人はいるでしょうし。

【高畑】ああ、それはあるね。時計をおしゃれでしている人たちがいるから。逆に、ペンがおしゃれという人もいるから、これももっとデザインバリエーションができたらいいと思うよ。

【他故】もっと細身になってくれたら嬉しいとか、カラーバリエーションが出たら嬉しいとか、ここから先に行ってほしいよね。

【きだて】行ってくれないと困る。あと、もう一つ問題があって、セキュリティがない。誰にでも見られちゃう。

(一同)あ~。

【きだて】会社に充電して置いておいたら、誰でも見放題になっちゃう。本当は、グリップに指紋センサーがあるとかさ。

【他故】そこまで行けるかな?

【高畑】でも、そこに親指がくるから、指紋センサーという方向性としては分かる気がする。

【きだて】だって、握りながら液晶を見ようとするから、自然と指を置く位置はだいたい決まっちゃうでしょ。だったらそこに指紋認証があればスマートでしょ。いずれ実現して欲しいなぁ。「インフォ20.0」ぐらいでいいから(笑)。

【他故】これ、バッテリー交換はできないのかな。

【きだて】できない。

【他故】まあ、そうだよね。修理交換になるのかもね。

【高畑】そこまでいったら、次の世代のが出ているから、それに乗り換えるとかね。

――そんなにバッテリーを消耗しないんじゃないですか。

【きだて】結構バッテリーも保つよ。

【他故】普通に充電して、何日ぐらいほったらかしにできるの?

【きだて】とりあえず、4、5日はほったらかしにしてるね。

――結構保ちますね。

【きだて】とにかく俺は、ウェアラブル端末としてのスマートペンという概念を作ってくれただけでも、「キングジムありがとう」という気持ちなんだよ。

【他故】でも、こうやって実物を見ながら話を聞いていたら、欲しくなってきたな。

――面白そうですよね。

【きだて】イライラする部分はあるけど、概念は正しいから。概念が正しければ、いくらでもブラッシュアップできるから。ここで終わらなければね。

【高畑】終わらないのが大事だね。

【きだて】ここで終わらずに、新しいバージョンをどんどん出していってほしいし、他のメーカーも追随してほしいんだ。文具メーカーじゃなくても出せるじゃん。

【他故】これはね。

【高畑】もっと簡素化して、それこそ液晶もなくして、バイブだけで着信しかお知らせしません、というものでもいいわけじゃん。

【きだて】そういうのもアリだと思うよ。

【高畑】それをクリップみたいに、いろんなペンに付けられるようにしたらいいよね。

【きだて】だから、まだまだ発展の余地があるという意味で、かなり期待する未来なわけだよ、これは。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。

たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


*このほか、ブング・ジャム名義による著書として『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)と、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。

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