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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.89 カラダやココロがCOOLになる文房具で厳しい残暑を乗り切ろう! その2
本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、ブング・ジャムのみなさんにカラダやココロが涼しくなるような文房具を紹介していただきました。
第2回目は、きだてさんイチ押しの「ZOOM L1」です。
(写真左からきだてさん、高畑編集長、他故さん)*2024年8月17日撮影
*鼎談は2024年6月24日にリモートで行われました。
“ひんやりした気分”になれるボールペン
――次はきだてさんですね。
【きだて】「見た目で涼しいものを選びましょうよ」という話の続きになるんだけども(前回記事)、トンボ鉛筆の「ZOOM L1」のマットブルーをおすすめします。
【高畑】その軸がちょっと透明っぽくていいよね。
【きだて】フロスティーな感じのこの透明軸と、このブルーの組み合わせっていうのが、今最強に涼しいんじゃないかということで。
【高畑】確かに。
【きだて】氷柱のような涼しさというか。
【高畑】中が銀色なのいいよね。
【きだて】本当に、持っているだけで結構ひんやりした気分になるというか。
【他故】「ひんやりした気分」ね。
【きだて】基本的に、気分以外ないじゃない。
【他故】積極的に冷えるわけじゃないからな(笑)。
【きだて】見た目涼しい以上に、ゲルインクのサラサラと異常にフローの良い感じって、書き味としても軽くて涼しげじゃない。
【他故】ああ。
【きだて】ウェットに水が流れる感じというか。油性のオイリーなヌルッと感よりは、ゲルや水性の方がいいかな、夏は。
【高畑】はいはい。
【きだて】なので、夏になるとわざわざ引き出しから「L1」を取り出して、書いているわけですよ。
【他故】夏になると登場するんだ。
【きだて】去年、夏場に使ったらすごく良かったので。秋口になると、さすがにひんやりし過ぎだなと思ってしまい込んで、それで今年の夏にまた取り出してきました。
【高畑】そうなんだ。
【他故】冬は使わないのね。
【きだて】冬は寒々とし過ぎだろ。
【高畑】まあ、カラバリで他の色もあるっちゃあるけどね。
【きだて】そうそう。でもね、この色は冬場には使いたくない(苦笑)。
【他故】「L1」は他にもあるよね。
【きだて】あるんだけど、軸が透明なんだよね。
【高畑】黒とかさ、メタリックのやつがあるじゃん。それとかはもうちょっと重い感じはするけど。
【きだて】黒はまあかろうじてだけど、メタリックもちょっとね。
【高畑】この「L1」のうち3色が、きだてさんが持ってるみたいなパステルカラー+透明なんだよね。
【きだて】なので、夏はこればっか使ってて、ペンケースにもこれが入っているわけなんですけども。そもそも俺は「L1」の書き味を相当気に入ってるんですよ。
――最初からすごい気に入ってましたもんね。
【きだて】そうそう。このシリーズの中でぶっちゃけこれが一番好きっていう。元々ゲル好きってのもあるんだけど、極端にフローが強いというかめちゃめちゃつゆだくで出て、好みな書き味なんですよ。
【高畑】軸が太いの持ちやすいよね。「ZOOM」シリーズの中では軽くて太いので、すごい楽なペンかなと思う。
【きだて】グリップもツルツルに見えて、実はゴム巻きなので、そこそこいくっていう。
【高畑】そこはきだてさんにとって大事。
【他故】めちゃめちゃ大事。
【きだて】これがツルツルだったら、さすがに俺も使いませんよ。
【高畑】いやでも、何かいいじゃないですか。
【きだて】そういう意味でね、色々と俺にとっての夏仕様っていう感じ。
【高畑】なるほどね。自分にとっての「夏といえばこれだよね」みたいな感じの、定番的なものがあるのはいいかもね。
【他故】そういうのがあるといいね。
【きだて】季節によって文房具を変えるのって、意外とあまり語られてきてない部分なんだけど、やっぱり小物に季節感って大事でしょ。最近はメーカーもだいぶ意識してきて、シーズンカラーを出してきたりもしてるけど。
【高畑】発売時期とかで布物とかは冬にしたりとか、そういうのはやっているけどね。
【きだて】もうちょっと積極的に、その辺で入れ替えていくっていうのも大事じゃないのかな。
【高畑】きだてさん的にも、やっぱり明るい色と透明っていうのが涼しい感じになるんだね。
【きだて】そう。それで、透明の中に銀色が入っている。
【高畑】銀色があるのがすごいいいね。「氷印」もそうなんだけど、凍っている感じというか雰囲気はあるよね。透明軸自体は珍しくないんだけど、「透明軸でインク見えています」とかじゃなくて、中にこの銀色が入っているところがさらにいい感じがするね。
【きだて】そうそう、その辺も上手い。
――このパステルの3色は、やっぱり夏場がいいみたいな感じですか?
【きだて】だと思うなー。爽やかさとポップさが。
【高畑】メタリックは冬でもいいと思うけど、パステルの3色は夏向きと言われたら確かにそんな気がする。
【他故】春先から夏に向けてという感じはあるよね。
――中でもこのブルーが一番涼しげですかね?
【きだて】そうかなと思ったんだけどね。今、限定色で「すみれ色」が出てるんだよね。これもね、なかなか涼しげでいいのよ。
ZOOM L1 sumire *関連記事
【他故】おお!
【きだて】前に実物を見て、「ああいいな」と思ったので。
――これは2月に出ているので、この記事が公開されたときに店頭で販売されているかどうかは微妙かもしれませんが。
【他故】「数量限定」と書いてありますね。
――まあでも、この色はいいですよね。
【きだて】透明部分もほんのり薄紫というか。
【他故】すみれ色になっているんだね。
【きだて】これはこれでとてもキレイで涼しげ。
【他故】いいね。
【きだて】爽やかな感じ。
【高畑】そうだね。
【きだて】この辺、「ZOOM」は上手いことしてくるなぁという。
【高畑】今大河ドラマもあったりして、紫系の色は今結構売れてたりとかしますよね。
【他故】そうだね。これいい色だな、確かに。
【きだて】もし店頭で見つけたら、こちらもおすすめだよ。
【高畑】見た目も大事よね。本人もそうだけど、周りにいる人も涼しげなペンで書いていると、なんかいいなって感じはする。
【きだて】見た目が暑苦しいペンってそんなにあるわけじゃないけど。
【高畑】見た目がどうかは分からないけど、クラシックな万年筆とか真っ黒でちょっと重々しい感じとかってあるじゃん。悪くはないんだけど。でもそこはやっぱり、そういう軽やかなイメージのものを使うのは悪くないんじゃないですか。
【きだて】こんだけ暑くなってくるとやっぱね、ちょっとでも何か涼しい要素っていうのを取り入れていかないと、もう脳が焼けてくるわけですよ。
【他故】あるある、うん。
【きだて】そういうのを積み重ねて、気分だけでも涼しくならないとね、もう本当無理。明日は埼玉 40度予想ですよ。
【他故】40度 はダメですよ(苦笑)。
――年々、切実さが増していますよね、この暑さはね。
【きだて】今年はまた特に異常じゃない。
【高畑】すごいよね。びっくりするぐらい暑いよね。
【きだて】なので、無理をせずに涼んでいこうぜということで。
――はい。
【きだて】あとはもう、こういうやつですよね。
――扇子が出ましたね(笑)。
【きだて】これは、西川庄六商店だったかな?
――近江八幡なんですね。
【きだて】滋賀の会社なんですけども、竹定規に扇子が付いている。いや、扇子に竹定規なのか、どっちが正しいんだ?
【高畑】扇子の骨が竹定規なんだね。
【他故】「定規扇子」か。
【きだて】そう、文具物ならこれは持っておこうぜって話よね。こういうので物理的に涼しくなりつつ、使っていこうぜっていう感じかね。
【高畑】長さが測れるのは、もはや言い訳でしかない(笑)。
【きだて】扇子ってさ、ぶっちゃけ日常生活で使うの難しいじゃない。
【高畑】どこで出すかっていうこと?
【きだて】やっぱり和装の小物なんで、洋服で使うとなんか微妙なズレを感じちゃって。
【高畑】次の一手を考える時に出してさ(笑)。
【きだて】そういう重苦しい場ならほどほど軽くていいんだけど、日常生活の中で使うのは難しいよ。
【他故】キャラクターの小道具感が出ちゃうよね。
【きだて】漫画っぽくなっちゃうというか。
【高畑】でも、うちわを持って歩くよりは携帯性は高いので。仰ぐっていうのもさ、最近はそれこそ小っちゃい何とかファンみたいなのとか。
【きだて】ハンディファンみたいなやつね。
【高畑】そういうのもあるけど、うちわとか扇子とか昔からある道具なんで、それはそれでいいんじゃないのかな。
【きだて】ただ、ちょっと気恥ずかしさがあるので、そこで「文房具ですから」っていう。
【他故】ははは(笑)。
【高畑】特に、我々の場合は、「これは文房具」っていうネタで持っているところもちょっとありましてね。
【きだて】そう、その言い訳がねあるじゃないですか。
【他故】もうすでにマクラじゃないか、それ。もうそれは噺家だよ(笑)。
【きだて】職業柄、我々は何でも文房具柄とかさ、文房具モチーフのものを持ちがちじゃない。
【他故】まあね。
【高畑】その中では無理が少ないパターンじゃん。元々竹の骨が入っているわけだから、そこはまあ嫌味が少ないというか。文房具的な柄のやつで、大人が使うギリギリの線かなって感じがするね。
【きだて】イロブン方向に目を向けると、とりあえず扇風機の付いたペンとかになっちゃうじゃない。
【高畑】そうなっちゃうじゃん。なんだけど、これはギリギリ踏みとどまっている感じがする。
【他故】ははは(笑)。
【きだて】そういうことですよ。
【高畑】趣味のやつですよっていうのは分かるけど、でもそこで扇風機付いているペンを出してきたら、それはちょっと(笑)。
【他故】「ちょっと待て」みたいな(笑)。
【高畑】一線を越えちゃっている感じはするじゃん。そこはやっぱり、ギリギリのところがいいんじゃないですか。
【きだて】そういうことだね。
【高畑】この扇子を、それこそ「シャレですから」って言って仰ぐのはいいけど、プロペラ付いているペンをおもむろに取り出すのは結構勇気がいるじゃん。イベントとかじゃない、普通に会社で「外回りから帰ってきました」って出してブイーンとやるのはさ。だったら、この扇子を出して「暑いですね」って言う方がいい。
【きだて】俺の体験上、扇風機の付いているペンを使って尊敬されることはないから。大体小ばかにされるので、社会人として踏みとどまるべきところは踏みとどまろうよ。
【高畑】この感じは、ギリギリ装飾的でもないので、割と気が付かない人は気が付かないし、気がついても「きだてさんって物好きね」ぐらいでいけるけど、扇風機はちょっと…。
【きだて】紹介しなくてよかった(笑)。
(一同爆笑)
【高畑】まあ、文具好きの持ち物としては、こういうの買っちゃうよねって感じで。だって、ここにいる4人全員持っているっていうところがおかしい。
【きだて】みんな買っちゃうよね。
【他故】これは買っちゃうよ。
【高畑】結構するんだけどさ。
【きだて】5,000円近くするよね。
【高畑】いやでもね、これ真面目に作っているからいいんだよ。この値段だからいいんであって、これが300円ぐらいのプラスチックの定規でできていますとかだと、ちょっと冗談としてもなんかね。おもちゃになっちゃうから。これは、ちゃんと作ってあるから良い。
【きだて】ちゃんとした扇子の会社が作っているやつだからね。
【他故】違うからね。
【高畑】作りは本当にしっかりして、普通にいいものですよ。
【きだて】という感じかね。
【高畑】これ、スチール定規のもあるんだね。
――スチールの方が見た目涼しげですかね?
【きだて】そうだね。
【高畑】涼しげだけど、ここは竹の方がいいだろ。
【他故】スチールはちょっと重そうだしな。
【高畑】見た目は竹の方がいいよ。
【きだて】でも、ちょっと欲しいなぁ。
【高畑】かっこいいね。
【他故】スチールかっこいいね。
*次回はクリップボードです
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プロフィール
高畑 正幸(たかばたけ まさゆき)
文具のとびら編集長。学生時代に「究極の文房具カタログ」を自費出版。「TVチャンピオン」(テレビ東京系列)の「文房具通選手権」では、3連覇を達成した。サンスター文具に入社し商品企画を担当。現在は同社とプロ契約を結び、個人活動も開始。弊社が運営する文房具のWebマガジン「文具のとびら」の編集長も務めている。著書は『究極の文房具カタログ―マストアイテム編―』(ロコモーションパブリッシング)、『究極の文房具ハック』(河出書房新社)、『そこまでやるか! 文具王高畑正幸の最強アイテム完全批評』(日経BP社)、『文具王 高畑正幸セレクション 一度は訪れたい文具店&イチ押し文具』(監修/玄光社)、『究極の文房具カタログ』(河出書房新社)、『文房具語辞典』(誠文堂新光社)と、翻訳を手がけた絵本『えんぴつとケシゴム』(KADOKAWA)。新著は『人生が確実に幸せになる文房具100』(主婦と生活社)。
https://bungu-o.com/
きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
他故 壁氏(たこ かべうじ)
小学生のころから文房具が好きで、それが高じて文具メーカーに就職。ただし発言は勤務先とは無関係で、個人の見解・感想である。好きなジャンルは書くものと書かれるもの、立つ文房具と薄いペンケース。30分間文房具のことしか語らないトーク番組・775ライブリーFM「他故となおみのブンボーグ大作戦!」パーソナリティ。たこなお文具情報室所属。
「他故となおみのブンボーグ大作戦!」番組ホームページ https://daisakusen.net/
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