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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.89 カラダやココロがCOOLになる文房具で厳しい残暑を乗り切ろう! その1
本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、ブング・ジャムのみなさんにカラダやココロが涼しくなるような文房具を紹介していただきました。
第1回目は、高畑編集長イチ押しの「氷印(こおりじるし)」です。
(写真左からきだてさん、高畑編集長、他故さん)*2024年8月17日撮影
*鼎談は2024年6月24日にリモートで行われました。
まるで氷のような透明スタンプ
「氷印(こおりじるし)」(キングジム)*関連記事
【高畑】今年は、めちゃくちゃ暑くないですか。今年やばくない?
【きだて】もうほんとね、日傘なしで外を歩くのは自殺行為ですよ。
【他故】シャレにならないよね。
【高畑】日傘は本当にね、僕も必須アイテムで、一昨年からずっと使っているけど、今年はないと本当にやばいなって。帽子と日傘は必須になったなという感じはするんだけど。
【他故】私も、とうとうあのペルチェのネッククーラーを買いましたよ。
【高畑】うちの奥さんも買った。
【きだて】ネッククーラーのペルチェ素子って、冷たいのと暖かいのが裏表になるからね、モノによっては後頭部がモワッと暖まって辛いケースもあるね。なかなか選ぶのが難しいよ。
【高畑】排気の仕方とかを考えないといけないよね。
【きだて】最近の涼しい系だと、ベルトファンがなかなかイイ感じだよ。
【他故】ベルトファンね。
【きだて】腰のベルトにくっつけて、シャツの中に下から風を送り込む。風は気温と同じだけど、ひとまずシャツの中で空気が動くでしょ。すると肌が乾いてくれる。
【高畑】それはいいね。
【きだて】シャツが汗でベタベタにならないし、汗が気化熱を持っていってくれるし。
【高畑】なるほどね。
【きだて】ハンディファンより、今年はベルトファンの方が絶対いいよ。
【高畑】まあ、そこら辺の商品紹介はまた今度ということで、めちゃくちゃ暑いので涼みたい面はあるんだけども、文房具もちょっとは涼しい方がいいよねっていうお話しで。じゃあ、どうするっていうことで、とりあえず僕からは、ベタではあるんだけど、今年出た中で一番印象的に涼しかったのは、キングジムの「氷印」かなと思うんですよ。
【きだて】まあ、名前から涼しいけどね。
【他故】間違いない。
【高畑】透明なはんこで、はんことしてというよりも、置いてあるだけで製氷器から出てきた氷かたまりみたいなそんな印象があるので。やっぱり、見た目でいくのはあると思うんですよね。
【きだて】見た目ひんやりしてるのは、いいね。
【高畑】じゃあ、透明なだけかというと、透明なはんこだから捺しやすいというのもあって。インクがちゃんと付いているかどうかが分かるのと、どこに捺したのかがすごい分かるので、組み合わせ捺しとか重ね捺しというのがすごいしやすいというのはいいところかな。
【高畑】キングジムはこの前から、透明マスキングテープの「SODA」をやっていて、それも涼しいんだけど。
【他故】あれはいいよね。
【高畑】「HITOTOKI」というシリーズがあるじゃないですか。マスキングテープの「KITTA」とか「SODA」とかそういうテープを系やっていたんだけど、実はキングジムってハンコって後発なんだよね。
【きだて】確かに、あんまりやっているイメージないね。
【高畑】いろんなアーティストと組んで、可愛いイラストとかを使ったもので。付箋はあるけど、女子に人気のジャンルで、じゃあ次にどこを抑えていくかみたいになったときに、スタンプっていうジャンルが最近伸びているじゃない。
【きだて】事務用はんこじゃないところが。
【高畑】スタンプって、最近ちょっと伸びている感じするよね。
【他故】あるよ。すごいよね。
【きだて】メーカーが生き残りをかけて、だいぶ頑張ったなという感じはするじゃない。
【高畑】いわゆる会社ではんこを捺すことが、コロナの時にけちょんけちょんに言われて。「事務用のはんこを捺すのって本当に意味ないよね」みたいなことを結構言われちゃったので、そういう意味では生き残りをかけたっていうところもあるのかもしれないけど。でも、はんこメーカーはその対応が割と早かったじゃない。
【他故】ああ、そうだね。
【高畑】キングジムが今年になってからスタンプ始めるっていう意味では、結構後発感があるんだけど、後から来てるなりにやっぱなんか手土産がないとっていうか、ちょっと話題になる要素がないと、「私も始めました」で終わっちゃうから、そこでこの見た目上手かったんじゃない?「その手できましたか」みたいな。
【他故】すごいよな。
【高畑】透明なアクリルの板に樹脂版を貼り付けて捺すっていうのは、以前からあるんだよね。
【他故】そうね。
【高畑】薄っぺらい樹脂版がいっぱい売っていて、アクリルのブロックに貼り付けて使ってねというのは実は前からあったから、仕掛けとして全くなかったわけではないのにもかかわらず、それを最初から組み合わせとして作っちゃって。コスパで考えたら、あのペロンとしたやつの方が良いのにもかかわらず、置いてある風情を見たら確かに欲しくなる感じがあって、そこが上手いなという感じ。
【きだて】そこら辺は、「HITOTOKI」ブランドのセンスというか、その辺の統一感が取れているなっていうのがある。あと感心したのは、図柄がベタが少なくて暑苦しくないんですよ。
【高畑】ベタが少ないというのは、ベタ面が少ないということ?
【きだて】そう。広くインクが付きそうな面は、網点とか斜線で表現してるんですよ。ベタのもあるんだけど、割とドットで表現してる。要は階調を付けているような表現が多くて、ベタが少ない分、見た目の風通しが良くて涼しげなんですよ。捺したときの風情が。
【高畑】それももしかしたら、全体のイメージとして一緒なのかもしれないね。
【きだて】だから、その涼しげな素材感と、デザインもそういう風にしてるっていう意味で、この辺はね「キング上手えな」って、見た瞬間感心した。
【高畑】これ「HITOTOKI」のシリーズだから、何人かのアーティストにそれぞれデザインをさせているからテイストがそれぞれ違うんだよね。何個かずつテイストが違う。なので、いろんなアーティストが参加できるっていうのはいいなと思うし、今後また増えるのかなという気がするけど。
【きだて】うん。
【高畑】まあ、涼しくていいなと思うし。別に関連しているわけじゃないとは思うけど、でも「SODA」のシリーズも「マスキングテープを透明にしました」って、最早何をマスクしているのかよく分かんないけど(笑)。
【きだて】ははは(笑)。
【高畑】全然、和紙とかでもなくて樹脂素材なんだけど。ただ、めっちゃ普通に可愛いんだよね。あとキングジムはこれだけじゃなくて、透明塩ビでカラーの付いているやつ。それを使わせたら、メッシュのミドリ、色透明塩ビのキングジムみたいな感じがするんでね。
【きだて】「CHEERS!」シリーズとかあの辺の。
【高畑】蛍光のさ、ネオンカラーの透明とかうまいこと使うじゃん。そこら辺も含めて、キングジムって全体的に涼しいのが得意なのかなって思うんだけど。
【他故】それはあるよね。
【高畑】上手く軽い感じを出しているので、夏の文房具としていいのかなという気がしますね。
――「SODA」は新柄が出たんですよね(関連記事)。
【他故】新柄が出たんですか。
【高畑】箔押しが入ったやつとか、型抜きが入ったやつとか、新しい柄が出てきたので。「SODA」も透明感があって涼しいので。どっちもデコるやつだから、併せて使ってもいいし。
【きだて】「SODA」は透明だけあって、特に重ね貼りが楽しいじゃない。その辺の楽しみ方が、明確に素材感から見えてるっていうのも上手いよね。
【高畑】だから、「HITOTOKI」シリーズがちゃんとグループで上手く機能しているのかな。だから、「氷印」で捺した上に、「SODA」のテープを貼ってもいいわけだし、そこら辺は上手いことやれそうな気もするし。自分はそんなにセンスがないんだけど、そこはちょっと憧れる的なところはあるよね。
――「氷印」って、これ自体を写真に撮って、SNSに上げてとかできそうですよね。
【高畑】そうそう。捺した後のはんこ状態以前の問題として、ただもうそれだけでも映えるみたいな感じの。そこら辺は、あざといと言えばあざといんだけども、なんか上手いよね。
【他故】よくできているよね。
【きだて】記事を書く側としては写真撮りづらいから、地味に嫌なんだけどね(苦笑)。
【高畑】透明素材はね。
――ピントが合わないし(笑)。
【高畑】映り込みはするし。透明だからエッジが見えなくなったりとかするし。
【きだて】切り抜きも面倒くさいんだけど、とはいえやっぱり夏場に売れちゃうのも分かるしなぁーっていう。
【他故】きれいだしね。
【高畑】「氷印」は発売のタイミングも良かったしね。ちょうど暑くなってくる前だったから。逆に、冬になると温かい感じの塊が。今度は何がいいんだろう?
【他故】温かい塊?
【高畑】「練炭」みたいな。
【きだて】いいのか、それ(笑)。
【高畑】冬になると、モケモケのものとか出すじゃん。
【きだて】ああ、ファー素材みたいなやつな。
【高畑】スタンプは難しいと思うけど、ファブリック系に行くとかさ。「SODA」も透明で夏場はいいけどさ、冬場になってくるともうちょっと質感のあるやつで、ファブリック系のテープとか。そういう季節感が出てくるのもいいよね。暑中見舞いがあったりとか、「夏といえば」みたいなところはちょっとあったりするけど。最近は定番商品はあんまり季節感っていうのがないけれども、売り場的には結構季節感の演出ってめっちゃ頑張って色々やってるわけよ。
【他故】そうだね。
【高畑】夏のシーズンだからみたいなのもあると思うし。
【きだて】こないだ見た現代短歌みたいなやつで、塩ビのバッグっていうのが季語になってたからさ。
【他故】マジか。
【高畑】塩ビのバックが夏の季語になってるの?
【きだて】そう。言われると「ああなるほど」って感じで。透明ペンケースも、そろそろ夏の季語になっても良いのではないかという。
【他故】ああ、いいね。涼しげなやつね。
【高畑】ガラスペンとかそういうのは夏涼しくていいじゃないですか。見た目に涼しいしね。インクも明るい色とかの、ちょっとボトルが透けて見えるぐらいの感じのインクなんかだと、すごくいい感じに見えるので。だから文具関係だと、氷とかガラスとか透明感があって硬いのは、涼しいイメージあるのかな。
【他故】そうだね。
【きだて】ガラスペンって、夏場でも持つとちょっとひんやりするじゃない。そういうのも含めていいよね。
【高畑】たしかにね。
【きだて】塩ビは見た目だけで、持つと熱くてしょうがないんだけど。
【他故】塩ビは冷たくないからね(笑)。
【高畑】そういう意味ではメッシュもいいんだけどね。デザインフィルとかのメッシュのやつも涼しくていいし。確かにそうやって考えると、案外あるなという気はしてきたね。夏だけっていうのもなんかちょっともったいない気もしなくもないけど、でもせっかくだから、ファッションの一部としてとか、身につけるものの一部としてちょっと涼しいものを選んでみるのもいいよね。最近、本当にガラスペンとかも流行っているし、ちょうどいいんじゃないのかな。
【きだて】選択委が増えたからね。質感で選べるようになったのは間違いないよ。あとあれだね、台湾のコンクリートのペンとかあったじゃん。あれなんかも夏いいかもね。
【高畑】あれいいの?
【きだて】コンクリもひんやりするじゃん。
【高畑】ひんやりするけど、やっぱり重たい感じはちょっとするじゃん。
【他故】見た目が涼しいかどうかは(苦笑)。
【高畑】本当はひんやりするかもしれないんだけど、例えば南部鉄のテープカッター(関連記事)とか触るとひんやりとするんだけどさ。
【きだて】ちょっと暑苦しいか。
【高畑】ちょっと鉄瓶の感じが暑苦しいから。
【きだて】どうしてもチラつくよね。
【高畑】お湯が出てきそうじゃん。そんなことを考えると、見た目的にはやっぱガラス強いね。透明な素材って。
【他故】やっぱり透明か。
【高畑】そういえば、透明素材の文房具はいっぱいあるね。
【他故】あるある。
【高畑】まあ、目で見て涼しいのを楽しんでいくっていうのはあるね。狙い通りなんだけどね。「氷印」っていって、「かき氷始めました」みたいなビジュアルで売っているじゃない。別に俺の工夫も何もなくて、とにかく涼しいものを紹介しましたっていうだけなんだけど(笑)。今年はとにかく暑いから、ちょっとでも涼しい感じにするといいよ。
【他故】間違いないよ。
――「氷印はじめました」みたいな感じでね。
【高畑】そう、お店に暖簾みたいなやつがピロンって下がっているのもいいなぁなんて思うので。本当に暑いから、そういうのがいいです。
*次回はきだてさんおすすめの「ZOOM L1」です
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プロフィール
高畑 正幸(たかばたけ まさゆき)
文具のとびら編集長。学生時代に「究極の文房具カタログ」を自費出版。「TVチャンピオン」(テレビ東京系列)の「文房具通選手権」では、3連覇を達成した。サンスター文具に入社し商品企画を担当。現在は同社とプロ契約を結び、個人活動も開始。弊社が運営する文房具のWebマガジン「文具のとびら」の編集長も務めている。著書は『究極の文房具カタログ―マストアイテム編―』(ロコモーションパブリッシング)、『究極の文房具ハック』(河出書房新社)、『そこまでやるか! 文具王高畑正幸の最強アイテム完全批評』(日経BP社)、『文具王 高畑正幸セレクション 一度は訪れたい文具店&イチ押し文具』(監修/玄光社)、『究極の文房具カタログ』(河出書房新社)、『文房具語辞典』(誠文堂新光社)と、翻訳を手がけた絵本『えんぴつとケシゴム』(KADOKAWA)。新著は『人生が確実に幸せになる文房具100』(主婦と生活社)。
https://bungu-o.com/
きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
他故 壁氏(たこ かべうじ)
小学生のころから文房具が好きで、それが高じて文具メーカーに就職。ただし発言は勤務先とは無関係で、個人の見解・感想である。好きなジャンルは書くものと書かれるもの、立つ文房具と薄いペンケース。30分間文房具のことしか語らないトーク番組・775ライブリーFM「他故となおみのブンボーグ大作戦!」パーソナリティ。たこなお文具情報室所属。
「他故となおみのブンボーグ大作戦!」番組ホームページ https://daisakusen.net/
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