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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.37 今、ペン型はさみが熱い! 注目はさみをまとめてチェック!!(その1)

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、今ブームとなっているペン型はさみについて取り上げました。

第1回目はサンスター文具の「スティッキールはさみ AKERUNO(アケルノ)」です。

写真右から他故さん、高畑編集長、きだてさん *2019年12月撮影

*今回の鼎談はリモートで行いました。

ダンボールの開梱にも便利な2WAYはさみ

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スティッキールはさみ AKERUNO(アケルノ)」(サンスター文具) スティック型携帯はさみ「スティッキールはさみ」の新アイテムで、カッターとはさみを持ち替えることなく、「切る」と「開ける」の2つの機能に切り替えられる2WAYタイプの便利なはさみ。細身で持ちやすく、開梱するときにはロックが掛かる安心の設計。はさみとして使うときも、PPバンドなどが切りやすいよう、力の伝わりやすい短めの刃渡りになっている。税抜800円。

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――今回のテーマは携帯はさみです。最近またちょっとブームっぽくなってきましたよね。新製品がいくつも出てきているので、その中からピックアップしてみました。まずは「スティッキールはさみアケルノ」です。きだてさんは愛用されているのかな?

【きだて】今回取り上げるハサミの中では、これが今のところ一番気に入ってるかも。

【他故】おお~。

【高畑】その評価ポイントは?

【きだて】もともとの切れ味がかなりいいし、開梱機能も思ったより使いやすかったよ。

【高畑】この、刃がズレる機構が案外よくできている。

【他故】ああ、先っぽのところね。

【高畑】はさみを閉じたときに、ちょっとズレるのさ。ズレていると「こんなかたちなのか」と思うんだけど、開くと普通のはさみに戻るんだよね。なんか不思議な感じで。

【他故】へぇ~。

【きだて】つまり、刃を閉じるときのロックが、刃のズレと連動しているので。

【高畑】面白いのは、刃が揃っている状態でズレてるのね。キャップしめると自動的にこの状態になるから、キャプを開けるとこの刃がズレている状態からスタート。だから、キャップを外してすぐダンボールをガーッとできて、はさみとして使うときにワンアクション必要という。

――刃を開くときに、スライドさせてロックを解除するんですよね。

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【きだて】これは自己責任になっちゃうけど、俺はキャップをしない状態で置いています。

【高畑】ああ、なるほどね。

【きだて】キャップ外すのがちょっと面倒なので。

【高畑】ペーパーナイフみたいな状態だよね。

【きだて】そうそう。でね、この刃先が5㎜ぐらい飛び出してるのかな。

【他故】そのぐらいあるのかな。

【きだて】開梱用の切っ先が5㎜もあると、ダンボールの合わせ目に刃を入れて切り開くときにズレないんだよ。オープナー機能付きハサミとして先輩のコクヨ「ハコアケ」は刃先1㎜以下でしょ。

【他故】そうだね、ちょっと短かったね。

【きだて】それだと、刃が入りきらずにズレたりして安定しないこともあってさ。さすがに5㎜あればダンボールの合わせ目にいい感じで入るね。

【他故】はい。

【きだて】あと、これ切れ味もいいよね。

――普通にはさみとして使った場合ですか。

【きだて】はさみとして使った場合ももちろんいいけど、ダンボールオープナーの状態でも、ズバッとカッターナイフのように切れるぐらい。まあ、カッターナイフは言い過ぎだけど。

――それくらい切れ味があるというイメージなんですね。

【他故】その刃先でさ、ダンボールの中を切っちゃうということはないの?

【きだて】5㎜あるので、ギリギリまで荷物が入っていたら、その可能性はなくはない。

【他故】ないとは言えないんだ。

【きだて】でも、デザインフィルの「ダンボールカッター」も刃が4㎜あるから。

【他故】ああ、そうね。

【きだて】だから、そんなに大差はないかなという感じ。

【高畑】僕も、デザインフィルのあのセラミックの刃が好きで、結構使ってるんだけど。あれぐらいだよ。これも結構厚みがあって、カッターみたいに薄くはないから、ダンボールの合わせ目のところには入るんだよね。そこからずれずに真っ直ぐ進むので。だから、切れすぎるカッターよりは全然いいし。

【他故】そうか。

【高畑】あと、刃が2枚あるから、もう1枚の刃の方で引っかかるので、あんまり入りすぎない。もちろん、力入れたら入るんだけど。

【きだて】刃の段差のところで止まるのね。

【他故】あっ、なるほどね。

【高畑】そこがガイドっぽくなる。

【きだて】普通にはさみとして使った場合も、こういうペンタイプのはさみとしては正当な使い方ではないんだろうけど、ダンボールが割と気持ちよくザクザク切れる。コピー用紙だったら10枚以上重ねてもいけるね。

――そんなにいけるんですか!

【高畑】これ、庭師のはさみみたいに、先が短くて柄が長いんだよ。だから、力がかけられる。

【きだて】刃もかなり鋭角に研がれてるよね、これ。研いである部分が、他のはさみより幅が広いし。

【高畑】そうだと思う。

【きだて】というのもあって、切っていて気持ちいい。

【他故】メーカーのホームページを見ると、「PPバンドが切りやすい」とはっきりと書いてあるんだけど、すごい切れるということだよね。

【きだて】そう、PPバンド切れた。

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――従来のスティッキールはさみより、刃渡りが短めなんでしたっけ?

【高畑】刃が短めで、ハンドルが長いんだよ。あと、他のスティッキールはさみは、ボディが丸軸なんだけど、これは四角いから。

【他故】ああ、四角いんだね。

【高畑】手の中で転がらないからいいよ。

【他故】四角いのはいいな。

【高畑】割と安定するよね。

【きだて】今まで何で四角柱タイプがなかったんだろう、と思うくらい安定するんだよね。

【他故】みんな丸だったよね。

【高畑】多分ね、印刷とかは向かないんだろうな。ここにキャラクターを入れたりとかさ。

【他故】ああ、そういうことね。

【高畑】これだと、そっちは向かないと思うな。

――丸くないと印刷しにくいでしょうね。

【高畑】回転の転写が使えなかったりするので、難しいんですよね。

――ただ、そのはさみにキャラクターを入れるかというと(笑)。

【高畑】だから、要らないんじゃない。普通のスティッキールは柄を入れれば売れるけど、多分これは柄を入れても売れないでしょ。

――かなり機能寄りの商品ですものね。

【高畑】これはキャラを入れて売る商品じゃないから。多分、名入れぐらいしかできない。

【他故】俺はこれ持ってないから、今度買ってこよう。

【きだて】最近出たスティック型はさみの中では、これが一番好き。っていうか、何でこんなに立て続けにスティック型はさみが出てるの?

【高畑】そうそう。

【他故】分かんないよ(苦笑)。

【高畑】今までの立つペンケースだと、“細長くないといけない”というルールがあったけど、最近よく出てくるトレー型のペンケースではそれがないから。今回の鼎談で取り上げるのは4つだけど、サンスター文具はもっと短いやつも出してるから。

――「スティッキールはさみmini」ですね。

【高畑】きだてさん的にはどうなの? このバネが外に出ているのは?

【きだて】そこは、見た目的にもスマートさに欠けるし、最初のスティッキールはさみもこうだったよね?

【高畑】スティッキールはずっとこれなのよ。それで、一ついいところは、刃がクロスしているところにボディがないじゃん。だから、紙を切り進めるときに引っかかりがないのがいいんだよ。

【他故】うん。

【高畑】クロスしているところからすぐ柄になると、紙がここで引っかかるんだよ。

【きだて】そうそう。チョキチョキ切り進めていくときにそこに当たるとね、それをよけていくのがうっとうしいんだよ。

【他故】そうか、そうか。

【高畑】このはさみは、プリントなんかの大きな紙を切るときに、ずっと引っかからずにこのまま進んでいけるからいいんだよ。この根元をプラスチックで覆わないというのが、スティッキールのルールっぽい。

【きだて】そこがこだわりなのね。

【高畑】あと、今回はダンボール用なのでフッ素加工を施しているんだよね。そこもいいと思うんだよね。

【他故】ああ、してるんだ。

【高畑】刃がちょっと黒っぽくなってる。

【他故】パッケージにも“フッ素加工”と書いてあるんだね。

【高畑】開梱モードでダンボールをガーッとやっちゃうと、刃にのりがついてはさみを開閉するときに引っかかっちゃうから。

【他故】ああ、それでね。

【高畑】刃先出てるから、飛行機に持ちこむのはダメと言われそうだけど。

【きだて】それはちょっと無理っぽいな。

【高畑】でも、その割り切りはいいよね。ちょっと匕首(あいくち)みたいな。見たらそのまんまという。

――これはスティック型になってますけど、持ち歩くというよりは家で使うという感じですか?

【高畑】ああ、そうなんじゃないですか。そんなことを言っていたような気がする。

【きだて】外で開梱することはないわな。

【高畑】さすがのきだてさんも、ダンボールを外で切ることはあっても、開梱はしないかなという気はするな。

【きだて】あ、いや、あるな。雑誌の物撮りに立ち会うと、メーカーから届いたサンプルのダンボールをバリバリ開けていくことあるから。あれば使うな。

【高畑】お店の品出しとかでバックヤードで使ったり、きだてさんが言うように撮影の裏方で使ったりとか。

【きだて】これ、書店員さんは普通に便利じゃないかな。

【高畑】いいんじゃないかな。開梱できてPPバンドも切れるし。

【きだて】エプロンに入れてもかさばらないんじゃないかな。

【他故】そうだね。

【きだて】そう考えると、これいいかもね。

【高畑】これは、「クリップが欲しい」と言われるみたいだね。書店員が使うんだったら、クリップで留めたいだろうね。

――前のスティッキールはさみは、クリップ付いてませんでしたっけ?

【他故】付いてましたね。

【高畑】あれは付いてたけど、今のは付いてないから。これもそうだし。これは特に、業務用で便利だから、落とさないようにしてほしかったとは言われるみたい。クリップとか、ヒモ付ける穴もないので、お店の人としては何かほしいと。

――その辺は、第2弾でクリップを付けてもいいかもしれませんね。

【きだて】ヒモを通すストラップ穴とかクリップが付いていると、キャップの紛失予防にもなるんだよね。

【高畑】なるほどね。

【きだて】そういう意味では、あった方がありがたいとは思うけどね。まあ、コスパやら何やらはあるんだろうけど。

【高畑】でも、箱開ける系のアイテムの中でも、これは場所とらないじゃん。それは悪くないよね。

【きだて】まあね。

【高畑】「ハコアケ」もはさみとしてはちょっとでかいし、「ダンボールカッター」はあれはあれでいいんだけど、これはこれで一番場所をとらない。

【きだて】リビングのペン立てなんかに立てておいて、そこで開梱作業するという。そういう使い方は全然いいと思う。

【高畑】うん。

【きだて】冷蔵庫まわりで使うなら、磁石が付いてる「ダンボールカッター」が便利だろうし。そこは適材適所ってことで。

【他故】そうだね。

【高畑】でも、新しいはさみが色々と出た中で、サンスター文具としては、今まで長いのと短いのはやっていたけど、そこに新たに加えてきたのが、強いやつと小っちゃいやつという。全部のジャンルを揃えようという気はするよね。

【きだて】うん。セグメント埋めに来てるよな。

【高畑】スティックはさみをハードな方向に持っていくというのが、レイメイ藤井のペンカットプレミアムでもあるけど、あれは本体自体の切れ味であれなんだけど、使い方としてハードな方向に振ってきているのがちょっと面白い。

【きだて】そうね、切れ味とか実際に使うときの取り回しとかを考えても、ややヘビーデューティー寄りな気がするよね。

【高畑】そう。これ使ってから他のを使うと、こっちの方が本気で切りにいっているんですよ。そこは、ヘビーデューティーなところをちゃんとやろうとしているから。PPバンド切れるというところはちゃんと評価したい。

【きだて】ただね、PPバンドを本気で切りに行くと、ちょいギザ刃の方が逃げないのでありがたい。

【他故】ああ、そうね。

【きだて】これも、切れるのは切れるんだけど、すべるんだよね。

【高畑】一応ね、刃が片方が真っ直ぐで、もう片方はカーブしてるんですよ。真っ直ぐな方を下に入れろだね。

【他故】あ~。

【高畑】両側カーブにしていないのも、何かこだわりっぽいんだよ。

【きだて】じゃあ、ひょっとしたら逆側でPPバンド切ってたかもな。

【高畑】どっちなんだろうね。でも、「両方をカーブ刃にすると逃げるから」とは言っていた。だから、片方の刃はまっすぐにしている。

【他故】ふむ。

【高畑】こっちはギザ刃じゃないけど、「スティッキールはさみmini」はギザ刃なんだよ。刃が短いので、逃げるとすぐ切れないので。

【きだて】ああ、そうね。

【高畑】miniは片方がギザ刃になっていて、PPのタグとか切るときに逃げないようになってる。

【きだて】あのminiも笑っちゃうぐらい小さいよね。


【高畑】あのぐらいやってくれてよかったと思うけどね。スティッキールには短めのはさみもあるので。

――まあ、きだてさん的には、「アケルノ」はイチオシということですね。

【きだて】今回の4本の中ではそうね。

【高畑】きだてさんは、切れ味とか強さが重要だものね。

【きだて】俺はダンボールを切るのが好きなので、評価テストの中にどうしても「ダンボールを切る」というのを入れちゃうのよ。

【高畑】まあ、確かにな。ガッツリ作業という感じでは、このはさみはいいよね。

【きだて】優秀。

次回はコクヨの「サクサポシェ」です。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。

たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


*このほか、ブング・ジャム名義による著書として『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)と、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。

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