【連載】月刊ブング・ジャム Vol.75 ブング・ジャムの2023年上半期ベストバイ文具 その1
本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、2023年上半期のベストバイ文具を紹介してもらいました。
第1回目は、他故さんが紹介するマークス「EDiT 手帳用紙を使った小さな方眼ノート・B7」です。
(写真左から高畑編集長、他故さん、きだてさん)*2023年6月3日撮影
*鼎談は2023年5月29日にリモートで行われました。
手のひらサイズの方眼ノート
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――早いもので、2023年になってすでに半年が過ぎました。というわけで、今回は恒例の「上半期ベストバイ」です。今年上半期に購入された文具の中から、ベストバイと思うものを紹介してください。じゃあ、他故さんからお願いします。
【他故】文具王が「EDiT B7ダイアリーを3 年間使ってます」という話をしてたのが、去年の終わりぐらいだったっけ?
【高畑】そうそう。今でも使ってるよ。
【他故】それを見て「ああいいな」って思った時に、たまたまマークスが去年の冬のリリースで、「ダイアリーじゃなくて、同じ大きさで手帳用紙を使ったミニノートを出すよ」っていう話をしてて、「ああ、それもいいな」と。この大きさちょっといいなって思ってたとこだったんですよ。もちろんダイアリーの方も買って、今も使ってるし。やっぱ同じ大きさで併せて持ってられるっていうこと自体が僕にとってすごくかっこいいと思ってるので。小さくて持ち運びもいいし。何枚あるんだっけ? この手帳の方でも結構な枚数があるんじゃなかったっけ? これ薄っぺらい紙だから。
【高畑】あるある。ちょっと少ないんだよね。
【他故】でも、320ページって書いてある。結構あるなあ。
【高畑】だから、1日1ページのやつものよりちょい薄いんだけど、320ページだったら、もう365とかと一緒な気がしなくもない。
【他故】一緒な気がしないでもないけどね(笑)。まあ、「EDiT」のB7ってすごく手にフィットする大きさなんですよ。持ち運びがよくて、中の紙も薄いって言ってるけど、別に普通に書いて破れちゃうような紙でもないし、とっても丈夫で良い紙で。ただ、僕が使うペンだと結構裏いっちゃうんで、贅沢に右ページだけ使って、左ページは白っていう使い方になっちゃう。ちょっと強めのインクを使ったりすると、どうしても透けちゃうんでね。だから、そこはちょっと贅沢に使ってるんだけども。今本当に、メインの手帳が「測量野帳」からこっちに切り替わってしまいました。
【高畑】あらら。
【他故】もうそのくらい日常使ってる。
【きだて】他故さんと言えば、ぐらいのレベルでずっと測量野帳を使ってたのに。
【他故】ただ測量野帳は、何かを貼る時に使ってる。「EDiT」は、膨らむのがあんまり好きじゃないなと思ってたので、測量野帳は何かを貼り込んだりして、そこに書くっていう作業のために使っている。
【きだて】ふむ。
【他故】例えば、映画の半券があるとか、そういう時にしか出番がない、大分野帳は出現率が減ってしまったなというのはあります。そのぐらい「EDiT」が書いて気持ちいいんすよ、紙が。
【高畑】僕は、ずっとこれをメインの手帳で使っていて、ここになんかメモを書いてて。最近は、予定とかを細々とこっちには書かないというか、今日のまあ大きな予定は書くとしても、すごく細々と予定を書いているわけじゃないんだよ。ここに、思いついたことも書いてるので、2冊持つ必要がない。そのノートは方眼だし、気にはなってるんだよ。だけど、もう1冊持つって言ったら、これ一冊でいいかってなっちゃって。方眼は方眼ですごい気になるんだけど、これはずっと使ってるから。というので手が出てないんだけど、このサイズ自体はすごく気に入ってるので、いいよね。
【他故】そう、小っちゃいけど、このぐらいで十分っていう感じもやっぱりあったり。ダイアリーについては、文具王の使い方とちょっと違うのが、僕は細々と書くわけじゃなくて、単純に起きた時間とか寝る時間、途中に何かあったらちょっと書く程度だけども。ダイアリーに書いてあるやつって割と走り書きっぽくて、それを清書するのにミニノートを使う。
【高畑】マメだ(笑)。
【きだて】ははは(笑)。
【他故】記録をちゃんとしたいと思ったら、ミニノートに清書するみたいな。
【きだて】そっちに書き直すのね。
【他故】例えば、「母親が退院しました」みたいな電話が病院からありました、みたいなのをダイアリーにはこうぐちゃぐちゃってメモで書いてあるんだけど、それをミニノートに書き直すとかね。
【高畑】俺もネタ調総集編はある。
【他故】そういうのをやってるので、かたちが揃って気持ちいいなあって。分厚い手帳を持ってるっていうよりは、このぐらいがちょうどいい大きさっていうかね、揃えて持ってるっていう状態です。
【きだて】マメだな~。
【他故】ミニノートに関しては、マークスのショップで名入れをしてもらったんですよ。「たこなお文具情報室」が今年1月から組織としてやっていこうよとなったので、その記念も含めて、ここに「Tako Nao」って入ってる。
――なるほど。
【他故】筆記具についてはかなりバラバラで、その時に気に入ったものだったり、手元にあるものを使ってるんだけど、今ちょっとこれに使って気持ちいいのが、オートの 「GS 02」。オートさんお得意のニードルチップのゲルインクボールペンで、今回は速乾性を高めてるっていうことで、「エナージェル」クラスの速乾力があって。
【高畑】それ染みない?
【他故】染料だから染みるよ。
【高畑】速乾で粘度を緩くすると、やっぱり裏抜けするよね。
【他故】裏写りまではないけども、それでもやっぱりかなり黒く透けるので、ノートとしてはこちら側は使いにくくなるんだけど。でも、その代わりに速感性が高いのと、恐ろしいことに染料だけど水に流れないんですよ。
【高畑】「Vコーン」的な。
【他故】そう、「Vコーン」クラスなのよ、本当に。手帳に書いたけど、濡らして読めなくなったっていう経験がすごくあって、できれば手帳には耐水性のあるペンで書きたいと思っていたところだったので。でも、汁だくのペンも使いたいってなった時に、ちょうどこれが汁だくで速乾性もあって、しかも耐水力があるので、ちょっと今お気に入りで、しばらく使ってるところです。かっこいいんだ、これが。この真っ黒なやつが。
【高畑】あーそう。ちょっと気になってはいるんだよね。
【他故】マットブラックめっちゃかっこいい。相変わらずな「グリップが六角形で上が丸い」っていう謎のこだわりがあって。
【高畑】前の逆でしょ。「GS01」の逆なんだよね。
【他故】そうそう。持つところが完全に六角形という。
【高畑】「そっちがいいよ」と思ってたんだけど、すっかり忘れてた。ノーチェックでしたね。
【きだて】展示会で聞いてたんだけどね。
【他故】ホームページ見たら、今バカ売れで、7月にならないと次入荷しないみたいな書き方してるんで、入手しにくいかもしれないですけど、ちょっとこれ面白いので。
――本当だ、「出荷一時停止」って書いてありますね。
【きだて】オートはそういうのが多いな。
【高畑】でもさ、ヒットしてるんだからいいじゃん。
【他故】まあそうだよね。去年の秋からいろんな製品出してる中では、これがなんかすごく特別良いような気がする。
【高畑】ああ分かる。なるほどね。ちょっとね、2月に出てたっていうのが、文具王としてそんなリサーチ力でいいのかという問題があって(苦笑)。
――これ1,500円もするんだ。結構いい値段なんですね。
【他故】いいですよ。フルメタルでかなり重たいし。真鍮とアルミニウム使ってるって書いてあるんだけど、継ぎ目が全く分からないんで、どこが真鍮で、どこがアルミニウムかが僕は分かんないんですよ。
【高畑】まあ、外軸と中軸かもしれないしね。
【他故】形の割には重心がど真ん中にあるので、前重りになってないよね。割とこのバランスが好き。
【高畑】結構重い?
【他故】思ったよりも重い。しっかり重いという感じかな。手帳と組み合わせて書くっていうので、今このペンが好きです。
――手帳用ペンとしてお気に入りということですね。
【他故】そう、手帳用ペンとして今お気に入りのやつです。
【高畑】オートは、筆記具の分類がリフィルで分類してあるのが面白いよね。国際共通リフィルしか作らないって辺りが、海外でも結構売れてるっていうか、海外にも出てるじゃん。
「GS 01」とかって、すごい海外に出てんだよね。
【他故】あ、そうなんだ。
【高畑】うん。ヨーロッパではね、高級デザインペンだよ。そこら辺が面白いところだなあと思って。
【きだて】実際、オートは油性もゲルもかなりクオリティが高いので、なんかもうちょっと国内で広まればいいのにとは思ってるんだけどね。
【他故】まあね。
【高畑】でも、最近はデザインがこなれてきたね。最近デザイナーが入ったりとかしたのかもしれないね。
【きだて】そうだね。
【高畑】なんかオートのオリジナリティがあるじゃん。他のメーカーとはまた違うじゃん。オートらしさっていうのがあっていいなと思う。なんかこのね。超大手とはまた別のやり方で、オリジナリティがあっていいかなって感じですね。
【きだて】振り子式多機能ペンの「bloom」だっけ? 何かあの辺からデザインが「おっ」ていうのが割合増えた気がするな。あれはオシャレだった。
【高畑】あれはめっちゃ細いし、かっこいいよね。だから、最近割とオートは当たりが続いてるから、本当に注目なんだけど、いつ発売されたのか分からない。忍者のように、「いつの間に」っていうとこだな(笑)。
【他故】チェックしとかないとね。
――最後はボールペンの話になっちゃいましたけど(笑)、「EDiT」は何色を買ったんですか?
【他故】これは、マークスのショップ限定のゴールドで、店頭で売ってないやつですね。マークスのショップとマークスのオンラインでしか売ってないやつです。
――「アンティークゴールド」というやつですかね?
【他故】そうですね。
――それに名入れをしてもらったわけですね。
【他故】そうです、表面に名入れをしてもらいました。1個から入れてくれるんで
――それは、注文すると普通に名入れしてくれるわけですか?
【他故】マークスのオンラインショップで注文すると、その料金込みで最初から決済されているので、出来上がったら送ってくれるんですよ。
【高畑】それは、プラスアルファでその刻印代をプラスで払うっていう感じ?
【他故】そうそう。これは手軽にサクッとできるので、僕は割と好き。
【高畑】これも、あんまり他にないんだよね。B 7サイズでこれだけページ数があるメモ帳ってあんまりないよね。
【他故】大昔には、“徳用メモ”みたいな、ビジネス手帳の一種としてこういう厚さのやつがあったんだけど、逆にそれが無くなっちゃったんだよね。ほぼ途絶えたというか。
【高畑】そんなのがなんかあったんだ。記憶すらもう全然ないや。
【他故】昔はね、パイロットでもダイゴーでも、黒革っぽい表紙のビジネス手帳の中に分厚いのがあったんだよ。
【高畑】B7って結構ちっちゃいじゃん。B6とかなら全然分かるんだけど、B7でこの厚みというのが、使っていてちょうどいいなと思っていて。
【他故】僕もこの大きさが好きなので、ぜひ皆さん使ってみていただければいいなあという感じですね。
*次回は「mute-on(ミュートン)」です
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プロフィール
高畑 正幸(たかばたけ まさゆき)
文具のとびら編集長。学生時代に「究極の文房具カタログ」を自費出版。「TVチャンピオン」(テレビ東京系列)の「文房具通選手権」では、3連覇を達成した。サンスター文具に入社し商品企画を担当。現在は同社とプロ契約を結び、個人活動も開始。弊社が運営する文房具のWebマガジン「文具のとびら」の編集長も務めている。著書は『究極の文房具カタログ―マストアイテム編―』(ロコモーションパブリッシング)、『究極の文房具ハック』(河出書房新社)、『そこまでやるか! 文具王高畑正幸の最強アイテム完全批評』(日経BP社)、『文具王 高畑正幸セレクション 一度は訪れたい文具店&イチ押し文具』(監修/玄光社)、『究極の文房具カタログ』(河出書房新社)、『文房具語辞典』(誠文堂新光社)と、翻訳を手がけた絵本『えんぴつとケシゴム』(KADOKAWA)。
https://bungu-o.com/
きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。ラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」が好評放送中。ラジオで共演しているふじいなおみさんとのユニット「たこなお文具堂」の著書『文房具屋さん大賞PRESENTS こども文房具 2022』が発売中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/
「ブング・ジャムの文具放談・完全収録版~2022年Bun2大賞を斬る!~」〈前編・後編〉をコンテンツプラットフォームnoteで公開中。
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