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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.70 新春スペシャル ブング・ジャムの2023年文具大予測!?(その2)

文具のとびら編集部

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は「新春スペシャル」として3日連続で、ブング・ジャムのみなさんに「2023年の文具はこうなる!」という予測を語ってもらいました。

第2回目は他故さんの2023年予測です。

写真左から他故さん、高畑編集長、きだてさん*2022年11月9日撮影
*鼎談は2022年12月5日にリモートで行われました。

あなたの話がききたい。

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――次は他故さんお願いします。

【他故】毎年、自分が今年どうしたいかを、文房具に引っかけて話しているわけですけど、去年は自分のラジオ番組(他故となおみのブンボーグ大作戦!)で公開録音をして、みんなに集まってもらって、俺の話を聞いてもらって、気持ちよくなりたいという話をしたんですよね(こちらの記事を参照)。

――そうでしたね。

【他故】それで、「みんなに集まってもらう」はできなかったんですよ。残念ながら、コロナ関係がそこまで弱まってなかったということもあって。こっちがしゃべるというのは、ラジオがあるのでそれはできているし、きだて氏と文具王にも来てもらって生でラジオをやるというのを年に2回もできて、今年も続けてやるんですけど。


【他故】でも、実は考え方がガラッと変わってきて、「僕の話を聞いてくれ」じゃなくて、人と会って話がしたい。みんなの話も聞きたい。どちらかというと、「あなたの話を聞きたい」というのに気持ちがシフトしてきているんですよ。

――ふむ。

【他故】文房具のことを話したがっていて、聞いてくれる人があんまりいないみたいな感じになっていて。やっぱり生でしゃべりたい。生でそういうことを人としゃべりたいという人がたくさんいるんだなということにちょっと気が付いてきているんですね。特に、ラジオで、毎月一回インタビューをゲストに来てもらってやってるんですけど、みなさんしゃべりたくて来ていて、それをこっちも聞いていて勉強になるんですよ。いろんな人のいろんな話が聞けるので。

【高畑】うん。

【他故】だから、今年僕がやりたいことは、「あなたの話が聞きたい」。みんなの文房具話を聞かせてほしい。それプラス、一緒に楽しみたい。

【きだて】例えばさ、何年か前だと、我々は夏にブング・ジャムのイベントをやって、その二次会でいろんな人と文房具の話を飲みながらしてたわけじゃない。

【他故】ああ、そうそう。

【きだて】あの感じなの?

【他故】あの感じに近い。それをいろんな人とやりたい。いろんな機会をもってやりたい。生で会ってやりたい。

【高畑】サロンをやればいいんじゃない。オンラインサロンとか。

【他故】オンラインサロンか。

【きだて】それぞれしゃべるにしても、空間の温度ってあるじゃない。キリッと冷やしめにやるのか、暖かいところでグダグダにやるのか。他故さん的には、どういう感じにしたいの?

【他故】いや、でもね、それは人によると思うよ。僕がコントロールするんじゃなくて、むしろ相手がどうしゃべりたいかでこちらが用意してあげる感じ。

【高畑】それだと、いっぱいいてというよりは、他故さんと誰かみたいな。大人数じゃなくて、要するに“他故の部屋”だよね。

【他故】どちらかというと、そんな雰囲気。

【高畑】“他故の部屋”はちょっと問題があるんだけど(笑)。

【きだて】タコ部屋は嫌だな(笑)。

【高畑】それはともかくとして、他故さんが徹子さんの位置だったりするのかな。

【他故】別に、偉そうにする気はないし、何かをコントロールしたいという気持ちが大きいわけではないんだけど、聞いてあげたいっていうのかな。話したいことがあれば、聞いてあげたい。「話せよ」と近寄るわけじゃなくて、文房具が好きな人はたくさんいるんだけど、そういうこと表現する楽しみをまだまだ知らない人がたくさんいるんじゃないかなと思っているので。特にそれを感じるのが、今ツイッターでグループ作ってやるやつがあるじゃない。あれで文房具の部屋があって、僕は主催でも何でもないんだけど、そこでいろんな話をしている人を見ていると、ちょっと懐かしい感じがするわけですよ。そういう部屋に集まって、みんな好き好き勝手に、好きな文房具の話をしてというのが。そういうのを見ていて、懐かしのニフィティサーブの頃の話もそうだし、いろんな人と話がしたいんだろうなって、すごく思うんですよ。できれば、会って話すのがベストだけど、そうじゃなかったとしても、何らかのかたちで「文房具の話をしたい」という人の話を聞いてあげたい。

【高畑】それは、他故さんと、しゃべりたい誰かがいて、例えば今のラジオのゲストみたいに、それをみんなで聞ける状態で、その人がしゃべってるのをみんなに聞かせてあげたいのか。それとも、クローズドの話なのか。今だったら、LINEとかフェイスブックがあるし、いろんなところで文房具で集まっている人がいるんだけど、他故さんが理想とするかたちって何なの?

【他故】理想ねぇ。

【高畑】今だと、ラジオが週一というか、ゲストが月イチみたいな感じだけど、そうじゃなくてということなのかな?

【他故】それも含めてになるのかな。自分のやっていることを周りに聞かせたい人もいるだろうし、そうじゃなくて、単に文房具が好きだということを言いたい人もいるだろうし、相手によって全然違ってくると思うんだよね。

【きだて】それも人それぞれなのか。

【他故】そう。なので、何か主催をして「こうしましょう」じゃないんだよ。「僕が」という個人の話なんだよ。

【きだて】その人のところに他故さんが行って、何か話をするみたいなのか。

【他故】それでも全然いい。「君の話が聞きたい」という。

【高畑】何か、レンタル「文具の話を聞く人」だね。

【きだて】そういう感じだな(笑)。

【他故】あんまり高尚な意味で言っているわけじゃないんだけどね。

【高畑】いろんなパターンがあるとしても、何かしらメニューを用意してあげた方がいいんじゃない?

【他故】まあ、もしやるならね。まあ、大きく考えたら、トークライブ的な考え方もあるんですよ。何かショー的なものをやって、前に出てきてもらって一緒にしゃべるみたいなことでも全然いいだろうし。規模と場所と人が、僕の考えていることが今は全部バラバラなのね。相手がどう思ってるかというところから始めたいと思っているので。「こういうサービスをするから、俺のところへ来い」と言ってるんじゃないんだよ。どっちかというと、俺がその人に気が付いて、「話を聞いてあげるよ」っていう感じ。

【きだて】成果点が見えないので、まだピンと来ないんだけども。

【高畑】あとは、クラブハウスだったり、ツイッターのルームだったりとか、ああいうので外に向けて話を聞くことができるし、今は割と道具が増えたと思うんだよ。場所の作り方が増えてきた。

【他故】そうだね。

【高畑】その思いをどうやって発信するかだよね。他故さんが「そういう用意があるよ」というのをどう発信するかだよ。発信しないと、そう思っている人が他故さんに気が付かないわけでしょ。

【他故】もちろん、そりゃそうだ(笑)。それは「気付いてください」は無理なので、発信をする方法は考えないといけなくて。僕の場合、プラットフォームがツイッターとラジオという二つの方法があるので、そういうかたちでちょっとずつでも、「何か話がしたいんだよね」というのをアプローチしていきたい。ラジオも、「メーカーの人に来て下さい」じゃなくて、「文房具好きな人が来て下さい」と最初から言ってるわけですよ。「俺はこういう話がしたいんだ」というのをオープンにしていいという人は来ていいというのをずっと言ってるし、僕も声をかけていきたいと思っているので。まずは、オープンにしていい人に来てもらって、クローズにしたい人にはやり方を考えないといけないなと思っている。

【きだて】それはもしかして、形として固めると「文具関係のカウンセリングをやります」ということになるんではないか。

【他故】カウンセリングだと、効果がないと怒られてしまいそうなので(笑)。

【高畑】何だろうね。

――ラジオで文房具の話をしたい人も募集するんですよね。

【他故】どっちにしても、まずはそこなんですよ。前からそういう枠はオープンにしていて、「そういう話がしたい人はいつでもどうぞ」と言ってるんだけど、まあさすがに突然本当にやってきて、「俺はこれが話したい」という人はそうそういないので、もうちょっとハードルを下げる方法は考えないといけないですね。

【きだて】そこまで自分の中に芯がある人でなくて、もうちょい弱々しく「あの、そこそこ文房具が好きなんですけど」という人の話も聞きたいんだよね、他故さんは。

【他故】そうそう。聞きたい。そういう人は、ラジオに引っ張り出してはいけない。

【きだて】うーん、ただそれを聞いた上で、やっぱり他故さんがどこを目指してるのかがまだピンと来ないな。「聞きたい」というだけで、そこからどうしたいのかが見えづらい。

【他故】どうしたいかというと、共感したいというところで僕は終わってるんだよね。その人の気持ちに共感したいというところで終わってる。いろんな人の話が聞きたいという欲があるのがまず一つで、その人の気持ちに共感したいという気持ちがある。

【高畑】それを、端的にすごく簡単にいくと、LINEのグループとか、フェイスブックとかの文具好きグループのところに入って、「いいね!」を押しまくって「共感したよ」というのだったら、それで自己完結できちゃうじゃない。

【他故】まあね。

【高畑】それすらできていない人には、アプローチすら難しいし。多分、他故さんに話す人たちも、最終的にどんなかたちになるのか見えていた方が来やすいんじゃない。

【他故】なるほどね。

【高畑】他故さんに話すとどうなるかが分からないと、「どうしたらいいのかな」となるので。「ラジオに出てほしいんです」と言ったら、「はい、出たいです」という人だけが来るし、そうじゃなくて他故さんが「こうしたい」というのがあれば、それをちゃんと分かるかたちにしないと、それに乗っていいんだかどうだかが分からない。

【きだて】えーとね、ふと思ったんだけど、他故さんがとにかくいろんな人に話を聞きに行って、それを対談集として形にするのはどうだろうか、と。なんとなく文具版『メタルカラーの時代』みたいなのを思い付いたんだけど。

【高畑】ああ、そうね。

【きだて】いろんなジャンルの文房具が好きな人の話を他故さんが聞きに行って、それこそ同人誌でも何でもいいんで、対談集を出すみたいな成果物だと、ちょっと他とは違って面白いかなと思ったんだけどね。

【他故】なるほどね。

【高畑】他故さんがテキスト化するのか。

【きだて】その辺は意外とテキスト化されてないじゃん。

【他故】まあ、そうだね。何かを残すという意味では、私の頭から出してしまった方がいいね。そらそうだ。

【高畑】それをnoteにブログ的な感じでテキスト化して流していって、総集編として本にするとかはあってもいいのかな。

【他故】そうね。そこは終着点として足りなかったところなので、ぜひ検討したいね。

【高畑】他故さんは文章を書くからな。そういう意味では、いろんな人の文具話を書くのはいいかも。パイロットがやってるじゃん。書くのが好きな人にインタビューに行って、ブログに書いているじゃん。あれのもうちょっとローカル版というかさ。

【他故】そうね。普通に文房具が好きな人にね。

【きだて】「在野の文具好きたち」みたいな。

――かっこいい(笑)。

【高畑】そこで、多少他故さんの腕が必要になるのは、在野の人の、自分からガツガツ表現していけるほどではないけど、「好きなんです」という想いをいかに面白く文章化して、「読んでみてもいいかな」と思える状況にしてあげないと。例えば、他故さんのラジオだったら、メーカーの人が来てるし、他故さんのラジオだし、ということで聞いてくれているけど、誰だか分からないような人が話した、ごくごく普通に近いようなことを、他故さんが上手く拾ってあげるというか、聞き出してあげる。

【他故】そうだね。

【高畑】上手く拾ってあげないと、「そらそうね」ということになるから。「詳しくないけど、文具好きなんです」と言って終わってしまうと、その話をわざわざ見てくれるかということもあるし、話をしてくれた人も、他故さんを通してそれが作品になってネット上で公開されたとして、そこに何かしらの相乗効果が生まれてほしい。

【他故】うん。

【高畑】他故さんは地蔵ではないので、「聞くよ」と言って、「しゃべりました」「終わり」ではなくて、他故さんというエフェクトを通して、本人に返すでもいいし、例えば世の中に広めるでもいいんだけど、何かしら他故さんというエフェクトを通さないと意味がないかな。それがないと、本当に“うなずきんちゃん”みたいになっちゃうし、「他故さんじゃなくてもいいじゃん」になっちゃうから。他故さんだから聞き出せるとか、他故さんだから聞いていて何かになるというのが、ちょっとほしい。

【他故】なるほどね。

【高畑】多分、面白い人はめっちゃ埋もれていると思うんだけど。

【他故】じゃあ、その辺を目標点として、まずは始めようかなという感じでね。

【高畑】書き初めには何て書くの?「話を聞きたい」かな。

【他故】「あなたの話を聞きたい」になるのかな。

――企画が具体化したら、文とびでも考えますよ。

【高畑】そうか、そうか。それもアリだよね。

【きだて】ここでやればいいんだね。なるほどね。

【高畑】「あの人のペンケース」があるじゃん。あんな感じで、他故さんが聞いてきた話を載せるとか。

――「文具好きさんいらっしゃい」みたいな感じで。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】「いらっしゃ~い!」という感じで。

――イスからずり落ちるみたいな(笑)。

【他故】それを目指しましょうか(笑)。

――では、乞うご期待ということで。

お知らせ
ブング・ジャムのみなさんが「2022年Bun2大賞」ベスト文具に選ばれた文具たちについて激論を繰り広げた「ブング・ジャムの文具放談・完全収録版~2022年Bun2大賞を斬る!~」〈前編後編〉をコンテンツプラットフォームnoteで有料公開しています(1記事200円)。ぜひ、ご覧いただき、面白くてためになる「文具エンターテインメントショー」を楽しんでください。
https://note.com/bun2_stationer01/

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。ラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」が好評放送中。ラジオで共演しているふじいなおみさんとのユニット「たこなお文具堂」の著書『文房具屋さん大賞PRESENTS こども文房具 2022』が発売中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


「ブング・ジャムの文具放談・完全収録版~2022年Bun2大賞を斬る!~」〈前編・後編〉をコンテンツプラットフォームnoteで公開中。

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