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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.68 「2022年度グッドデザイン賞」から注目文具をピックアップ!(その1)

文具のとびら編集部

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、「2022年度グッドデザイン賞」からブング・ジャムのみなさんが注目する文具を紹介してもらいました。

第1回目は高畑編集長が注目する「ミドリ スローコンベックスメジャー」です。

(写真右からきだてさん、他故さん、高畑編集長)*2021年11月9日撮影
*鼎談は2022年10月25日にリモートで行われました。

安心安全なメジャー

ミドリ スローコンベックスメジャー.jpg「ミドリ スローコンベックスメジャー」(デザインフィル)


――先日、2022年度の「グッドデザイン賞」が発表になりましたので、受賞文具の中から、みなさんに1点選んでもらい、それについてお話しいただければと思います。まずは、高畑編集長からお願いします。
【高畑】「ミドリ スローコンベックスメジャー」です。
【きだて】これ、完全にノーマークだったんですけど。
――まだ発売前ですよね。
【他故】まだ出てないんだっけ?
【高畑】多分、これからでしょ。「キッズデザイン賞」(関連記事はこちらの表彰式に行けば触れたけど、その日に行けなかったので。
――10月から「TOUCH & FLOW 日本橋髙島屋 S.C. 店」で先行販売しているようですけど、一般販売は12月からみたいです。
【高畑】先行販売してるの? それは入手しておけばよかったな。今の時点では、まだ見てないし、触ってもいないんだけど、今回の中では僕的に一番気になるぞというアイテムでして。つまり、シュルシュルって伸びる金属製のメジャーなんだけど、あれがゆっくり戻るっていうものなんですよ。
【他故】はいはい。
【高畑】「シュルシュルシュパン」って戻ると危ないじゃん。「指が痛いじゃん」ってなるじゃん。
【きだて】まあ、ありがちな話だよね。
【高畑】あれがゆっくり戻ってくるというのと、あと側面を抑えるとテープが留まるはずなんだよ。
【他故】ほぉ~!
【高畑】手でコンベックスを持つじゃん。持ったときに手で左右をおさえるじゃん。
【他故】うん、おさえるね。
【高畑】おさえると留まる。
【他故】留まるんだ、へぇ。
【高畑】メジャーがゆっくり戻ってきてくれて、かつメジャーの長さを、今留めたいというときに側面を押すと留まるはずなんだよね。
【きだて】これどうなんだろうな? 俺がコンベックスメジャーを持つときは、もうロックをかける前提で掴んでるから。
――ああ、親指を前に持ってくるんですね。ロック用のスライドスイッチがあるから。
【きだて】これで普通にカチッと留めちゃうのに慣れてるから。面を握ると留まるというのが、ピンとこないんだよ。
【高畑】それは、慣れてる人だと思うんですよ。慣れてるから全然困らないと思うし、側面を押すと留まるというのも、ゆっくり戻るというのも、なくてもいいと思うんだけど。
【きだて】いや、ゆっくり戻るは欲しい。
【他故】うん、ゆっくり戻るは良いね。
【きだて】現場作業用のガチめなコンベックスって、慣れれば指は挟まないとしても、戻るときの強い衝撃はどうしたってあるよねという話で。
【他故】ああ、バシーンってくるよね。
【きだて】メタルテープが折れないように頑丈で重いから、戻るときに結構ガチンとくる。ゆっくり戻るんなら、そういう衝撃は減るんじゃないかな。その辺はやっぱり気になるよ。
【高畑】「本体の側面がテープに連動しています」と書いてあるので、指でおさえるか、ギュッと握ると留まる。
【きだて】この側面の部分なり何なりをおさえると留まるんだ。
【高畑】いわゆる、スイッチを前の方に付けるというのではなくて、横をギュッと握ると留まる、ゆっくり戻るというだけのものなんだけど、これはインターフェイスとしてはすごく良いなと思ったので。これは逆に、きだてさんが言ってたみたいに、ロックをかけるんじゃないんだよ。多分。
【きだて】あっ、おさえてる間だけ留まるの?
【高畑】そう。多分、「カチッ」ていうやつじゃないんだよ。だから、「おさえている間だけ留まります」というものなので、きだてさんがやりたいこととは違うと思うんだよね。
【きだて】そうだね。
――きだてさんは、ストッパーをかけるために、親指をメジャーの前面に置く持ち方をしているわけですよね。
【きだて】そう。手を離した状態でロックがかかっててくれないと、例えばその数値を書き留めるということができないじゃないですか。「ここ何㎝」というのを測って書き留めるのに、手をフリーにしたいので、ロックがかかってくれないと困るんだ。
【他故】ああ、そうか。
【きだて】だから、おさえてる間だけ留まるじゃダメなのよ。
【高畑】それは留まらないけど、どうだろう。この向きで留まるのは、割と自然だと思うので。これに別途ロックを付けるか付けないかというのはあるかもしれないな。
――確かに、利き腕でおさえてると書けないですからね。
【高畑】ていうか、俺は留めてない。ここで留まっててくれないと読めない、ということは俺はないな。物を手に持って測るから、どっちにしても手を離したら動くじゃん。その長さをきっちり表示したまま留まってるわけではないので。
【きだて】それはどこでも読めるじゃん。
【高畑】それは物を置いたときでしょ。手で持ってるとメモとれないじゃん。だから、俺はそこで困ってなかった。ただ、きだてさんは留まってた方が読みやすいんだよね。留まってる機能がもう一個欲しいというのは分かったので、それはそうなんだけど。子ども用と言っているので、引っ張りながらおさえるのは慣れてくればそれはそれでいいと思うけど、ギュッと握っていて留まるというのは割と自然だと思うので。それにプラスしてロックがあった方がいいというのは分かったけど、横面をおさえるというのは悪くないと思う。
【きだて】これは子ども用なのね。
【高畑】どこまでが子ども用が分からない。キッズデザイン賞を取ったりしてるので子ども用としてというのと、初心者向けだと思います。プロ用として、長い距離を測るときに、ゆるゆると戻ってくるのはイラッとすると思うんだよ。
【きだて】まあね。
【他故】それはそうか。
【高畑】どれくらいゆっくりか分からないので、何とも言えないんだけど。留まる機構がなくても、ゆっくり戻るという発想だけで俺は100点満点だと思っている。メジャーとして、これまでになかった価値なので、大絶賛してもいいんじゃないかと思ったので。
【他故】なるほどね。
【高畑】多分、カッターナイフの刃を折るのと同じ、メジャーが金属のコンベックスが恐いという人は結構いるみたい。
【きだて】うん、それはいると思う。
【高畑】だから、ゆっくり戻るというだけですごいと思う。
【きだて】どういう機構でゆっくり戻るんだろうね。
【高畑】それは色々とやり方があると思う。
【きだて】グリスをたっぷり使って回すみたいなことをしてるんかね。
【高畑】どうなんだろうね。グリスタイプだと長いこと使ってると、減ったり、ズレたりするので、段々速くなるんだよ。そこはグリスじゃない方がいいなと俺は思うけど。
【他故】ああ、そうか。
【高畑】いろんなやり方があるんだけど、中に回転振り子みたいなのを入れておいて、高速で回ろうとすると抵抗が起きる。あとは単純に、摩擦係数の大きい材料を間にはさみ込んでクラッチにする方法とかあるんだけど、どの方法にしているかは触ってないから分からないんだよね。
【他故】ははは(笑)。
【高畑】これは、「ゆっくり戻るコンベックス」というコンセプトを見つけた時点で勝ちだと思ったので。だから、使ってもいないのに評価をするという、俺としては超珍しいケースだと思う。
――このコンセプトが気に入ったということですね。
【高畑】今回はタイミングの問題で、本当は触ってないといけなかったんだけど、グッドデザイン賞って発売前の商品でも選ばれちゃったりするので。この記事がアップされる頃にはもう出てたりするかもしれないけど。ただ、「今回のグッドデザイン賞で、文具王的に気になったのは何ですか?」と訊かれたときに、これを見逃してたら嫌だなと思ったので、今回はあえて触ってないものを選んだという。これで触ってみたら、「うわ残念」っていう可能性がなくはないけど(笑)。
【きだて】そこはちょっとギャンブルだな(笑)。
【高畑】これはもしかしたら、万が一だけど、触ってみて「マジかよこれ、ちょっとマズいわ」という可能性がないとは言えない。ただ、この段階でこの発想はすごいと思ったので。グッドデザイン賞に選ばれてる中で、僕にとっての驚きが大きかったのは、「そうか、その手があったか」とすごく思ったので。
【きだて】今後、文具王の動画に、このコンベックスメジャーが出て来なかったら、文具王はガッカリしたんだなと思えばいいんだね。
【高畑】ああ、そういうことだね。
【きだて】そういうことだそうですよ、デザインフィルのみなさん(笑)。
【高畑】買ったらすぐ動画をあげないといけないな。
――もしかしたら、この鼎談が公開になる前に、動画が公開されているかもしれませんね。
【高畑】これが手に入ればだけどね。先行発売してるのも知らなかったし。
――一般発売は12月からみたいなので、この鼎談が公開された頃はまだ店頭にないかもしれませんね。
【他故】そうですね。
【高畑】あとは、細かいところですけど、10㎝ごとに白黒になってて、何となくこの辺というのが分かりやすいので、色々と工夫されているみたいです。
――本当だ、10㎝ごとに白黒が交互にくるんですね。
【高畑】測量のおじさんが持っている棒みたいなやつ。大体の長さがぱっと見で分かりやすいよねというのが合わさってということなんですけど。いや~どうでしょうね。実際に触ってみてガッカリだったら超心配ではあるけど。
――グッドデザイン賞とキッズデザイン賞の2つを獲ってるので、それでダメということはないんじゃないですか。
【高畑】これで僕が動画で紹介しなかったら、審査員の目が節穴だったということだね。大丈夫かな、こんなことを言って。
【他故】ははは(笑)。大きく出たな。
――その辺りは、後日のお楽しみということで。
【高畑】そうですね。触ってないものを激推ししたというのは、文とびで初めてだと思います。今回は、そういう特殊な事情ということで。
――こういうメジャーは、他故さんはどうなんです?
【他故】とりあえず触ってみたいですよね。写真を見ても大きさがよく分からないんですよ。
【高畑】4、5㎝ぐらいあるじゃない。そんなにデカくないか。
――詳細な情報がまだ出てないみたいですね。でも、子どもが使えるんだから、そんなに大きくないと思いますよ。
【他故】言ってもそんなに大きくないか。マスキングテープぐらい?
【きだて】それだと小っちゃいな。
【他故】もうちょっと大きいか。
【高畑】4、5㎝ぐらいだから、全然大きくない。そういう意味でも、横おさえだけでロック付いてないというのは、アリなのかもね。
【他故】うん。でも、かわいらしいデザインでもあるし、逆に小さいのなら持ってみたいと思ってるんだよ。デカいコンベックスを持ち歩きはしないんだけど、小さいのは持ってたいこともあるので。
――家族で使いたいという場合にもいいでしょうね。
【他故】ただ、いくらなのかも分からないし(笑)。
【高畑】「これは良い」と言っておきながら、高かったら嫌だな(笑)。
【きだて】これはTOUCH & FLOWに行ってみないと分からないな。
【他故】欲しいとは思ってるけど、現物を見てみないと何とも言えないな。
【高畑】というわけで、まだ現物を見てはいないんだけど、今回のアイテム群でいくと俺的にはこれなんだよなぁ。
――このメジャーは金属なんですよね?
【高畑】そうです。金属メジャーの中では「危ない」という感じがないわけですよ。
――金属のメジャーがシュルシュルと戻るときに、小さな子どもだと怖がることもあるかもしれないので、これはいいでしょうね。
【高畑】そこはね。これだけ語っておいて、後で言いづらくなったら困るけど(苦笑)。
【他故】ははは(笑)。大丈夫でしょ。
【高畑】思ったより全然違うというのはないと思うので、今よりもゆっくりと戻ってくれさえすれば、俺的にはその発想はいいなと思ったので。
――これを読んだ方は、文具王動画にもご注目下さい(笑)。
【高畑】柄にもなく、触ってもいないものを推してしまいました。
――きだてさんも気になりますか?
【きだて】もちろん、そりゃ気になりますよ。最初、子ども用とは把握してなかったので、子ども用だとフロントロックはやりづらいんですよ。子どもの手には、絶対余るので。
――ああ、親指が届かないですものね。
【きだて】だから、横をギュッと押さえるという直感的な留め方が正しいのは分かる。子ども用ならば、なるほどなと思う。
――一応、子どもから大人まで使えるとなっているので、完全に子ども用ではないんですね。だけど、キッズデザイン賞をとるぐらいなので、子どもの使いやすさにより比重を置いているんでしょうね。
【他故】そうでしょうね。
【きだて】まあ、大人なら、普通のコンベックスぐらいまともに使えよ、って話なので。
【高畑】きだてさんは、工具の話になると割と厳しめになるんだよ。ペンのときは「優しくしろよ」とか言ってるのに(笑)。
【他故】ははは(笑)。
【きだて】そりゃ、得意、不得意で変わるでしょうよ(笑)。3mコンベックスになるとガンと戻ってくるので、ゆっくり戻るのはありがたい。
【高畑】まあ、現物を見て、どのくらいゆっくり戻るか確かめてみたいね。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。ラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」が好評放送中。ラジオで共演しているふじいなおみさんとのユニット「たこなお文具堂」の著書『文房具屋さん大賞PRESENTS こども文房具 2022』が発売中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


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