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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.45 ブング・ジャムの2020年ベストバイ文具(その2)
本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回はブング・ジャムのみなさんの2020年ベストバイ文具を紹介してもらいます。
第2回目はきだてさんのベストバイ文具「ダンボールカッター」です。
(写真左から高畑編集長、他故さん、きだてさん) *2020年6月25日撮影
*今回の鼎談は11月24日にリモートで行いました。
さらに使いやすくなった「ダンボールカッター」
「ダンボールカッター」(デザインフィル)
――次はきだてさんですね。
【きだて】今年になってからというか、コロナの時代になってから、我が家も通販の利用量が今まで以上に増えたわけですよ。
【他故】増えましたね。
【きだて】ほんと、猛烈に増えたわけよ。今まで週5個ペースだったのが、確実に毎週10個以上の荷物が届く状況で。すると当然オープナー系が大活躍するんですが、いま我が家はオープナーを2種類使い分けてて。ダンボールはこのミドリの「ダンボールカッター」、それ以外のレターパックとかフィルムシュリンクパックなんかは「カイコーン」で開けているのね。
【他故】はいはい。
【きだて】「ダンボールカッター」は開梱性能が高いんだけど、ただ、使う前にフタを開けるのが硬いというのが嫌だったんだ。
【高畑】ああ、分かる。
【きだて】本当はZippoライターを開けるぐらいの簡単さで開けたいんだよ。こう、片手で。
【他故】うん。
【きだて】梱包を開けるときは、一刻も早く開けたい気持ちでワクワクしてるんだから。
【他故】ははは(笑)。
【高畑】子どもか!
【きだて】そんなタイミングでイライラさせるなという。分かるだろ、キミも!
【高畑】いや分かりますよ(笑)。
【きだて】それが10月にリニューアルされて、新モデルはついに念願の片手開けができるようになりました。
【他故】やった~、素晴らしい。
【きだて】スプリングになってて、最初は抵抗あるんだけど、ある程度いくとパコンと開いちゃうっていう。まさにZippoライターみたいな感じ。
【高畑】これ、気持ちよくなったよね。
【きだて】非常に気持ちよくて、軽快。なので、ちょっとコツをつかむと片手で開けられます。
【高畑】そうだね。カチンと開く。
【他故】へぇ~本当だ。
【きだて】これのお陰で、梱包を開けるのが本当にスピーディーになったというか、これだけでオープナーを使う精神的なハードルが格段に下がった。前モデルの「よいしょ」ってフタを開けるのがほんとに面倒でさー。いや、もちろんフタさえ開ければそれからは快適なんだけど、でも、フタを開けるスタートの時点からずっと快適な方がいいに決まってるじゃんね。
【他故】ほお~。
【きだて】前から「よく使う道具は作業する場所の数だけ買え」って話をしてるでしょ。我が家は基本的に、玄関、リビング、自室の3カ所で開梱作業をするので、うちは優秀なオープナーは3つ買う。ということで早速これも3つ買って、旧モデルと全て入れ替えました。
【他故】ははは(笑)。
【きだて】もう一つ楽なのが、磁石が両面効くようになったということね。
【高畑】それ重要だね、本当に。
【きだて】旧モデルって、片面しか磁石が効かない上に、裏表がとっさには見分けられないデザインだったのよ。だから、うっかり磁石が効かない面の方を冷蔵庫にパンと当てて手を離すと、「カコーン、カラカラ」って落ちるのが本当によくあった。いちおう磁石の入ってるところに丸い印は付いてるんだけど、毎回これを確認してから貼り付けなきゃいけない。だけど、新モデルは裏表がないので、どっちだろうと当てちゃえばくっつくという。これはストレスないよね。
【他故】いいね。
【きだて】ということで、旧モデルの2大問題点がこのリニューアルで全て解消されたので、もう俺は「ダンボールカッター」に100点以外は付けません。
【他故】お~!
【きだて】だから、これは100点のオープナーです。覚えてください。いいですかみなさん、100点です。
――ははは(笑)。
【高畑】さらにあれでしょ。刃も交換できるようになったりして、長く使おうと思うと、それもできますよと。ただ、その分だけちょっと遊びがあるけどね。
【きだて】そう、ちょっと刃がガタつく感じ。
【高畑】1枚切りだとどうかと思うけど、普通に使う分だったら、そんなに気になるほどではないなと思うし、刃が替えられると思うと、使い捨てよりは安心感があるよ。
【他故】まあそうだね。
【高畑】元々セラミックの刃だから、前のを使ってるけど、まだダメになったことないんだけどね。
【きだて】だって、こんな硬い刃をそんなに欠かすヤツいないだろうと思うんだけどね。
【他故】もしあるとしたら、落として割れるとか、そのぐらい?
【高畑】硬いコンクリなんかの床に落としたらとか、硬いものにひっかけてこじるようなことをすれば、というのはあるけど、他はテープとか切っても全然平気なんだけどね。
【きだて】ダンボールを刃でこじっても、刃が傷みそうな雰囲気すらないし。
【高畑】ほとんどそれもないから、替えなくてもいいっちゃいいんだけど。そこは、「使い捨てはどうなの?」というユーザーからのご意見もあったんじゃないの。
【他故】ああ、そうだね。
【高畑】「改良版として何を直したらいいですか?」ということに関しては、全部直しましたよと。あとは、持ったときに滑らないように、こっち側にギザギザとか付けてるし。
【きだて】そうそう。旧モデルって、面を持って「よいしょ」ってフタを開けないといけなかったから、表面を滑り止めの梨地加工にしてあったのね。でも、そんなことせずに簡単に開くようになったでしょ。逆に、側面に指をかけて開けたほうがラクなので、周囲にギザギザが付きました、と。
【他故】ああ、なるほど。
【きだて】ただね、梨地の方が高級感があるんだよね。
【他故】ここが高級感かというと、割と実用本位で付けてるよね。
【きだて】同じくデザインフィルの「ミニハサミ」みたいな感じでさ、デザインフィルが考えるヘビーデューティーって、こんな雰囲気なのかなって。このダンゴムシ調のギザギザの感じとか。
【他故】ダンゴムシ調(笑)。
【高畑】前のからすごくブラッシュアップされた感があるので。「どっちが欲しいですか」と言われたら、今なら間違いなく新しいのが欲しいと思うので。そのぐらいは良くなったかな。「強いて言うなら」みたいなズレ感はなくて、明らかに良くなったよね。
【きだて】うん。値段も100円ぐらい上がっちゃったのかな。
【他故】ああ、上がったのか。
【きだて】税込で1,000円超えちゃってるんだわ。
――税込で1,078円ですね。
【他故】前のは税込946円か。
【きだて】まあ、でもそれはしょうがないし、むしろこの値段でしか作れないんだったら、これが完成型なので、正しいです。
【高畑】値段分は良くなってると思う。
【きだて】店頭では次々入れ替わってるはずなんだけど、万が一古いのと新しいのがあったら、とりあえず新しい方を買って間違いなしということだよ。それぐらいは良くなってます。やっぱり、メーカーはユーザーの要望を一つずつ容れてるんだね。
【高畑】そうじゃないかな。
【きだて】それだけのバックが、ユーザーから来ているということだものね。
【高畑】多分、初代がすごい売れた上に、色々と要望が来てたんだよ。「金型作り直そうか」と思うぐらい売れてるんだと思うよ。
【きだて】そういうことだよね。
【高畑】多分、すごい売れてるんじゃない。
【きだて】そのうちの0.1%ぐらいは俺が売ったんじゃないかなぁ(笑)
――あははは(笑)。
【きだて】俺、「ダンボールカッター」にはかなり貢献してる自信あるよ。
【高畑】まあ、あっちこっちで宣伝してるからね。
【きだて】いろんなところでほめたからな。
【高畑】きだてさんがこれまでほめて、「買え、買え」って言ってた人たち全員に、「もう一回買い替えろ」って言いたいんでしょ?
【きだて】この間書いた記事の中でも、「ごめん、買い替えて」って。
【他故】ははは(笑)。そうだね。
【きだて】今までの俺のおすすめが間違ってたわけじゃなくて、メーカーがもっといいものを出したから買い替えるという。
【他故】より良いものが出たわけだからね。
【きだて】他故さんは使ってないんだっけ?
【他故】これは、未だに一度も使ったことないんですよ。リニューアルしたのは買おうかなと思ってるけど。
【きだて】買え!
【他故】これは買おうかな(笑)。
【きだて】三つ買おう。
【他故】三つは要らない、1個でいいよ(笑)。
【きだて】何でよ? いろんな場所でダンボール開けたいでしょ。
【他故】玄関の1カ所だけだよ!
【きだて】他故さんにだって、家族に見らずにこっそりと開けたい荷物の一つや二つはあるだろうよ。
【他故】家には、そんなスペースはないよ。来たらバレバレだよ(笑)。
【きだて】しょうがないな…。とりあえず、1個買おうよ。
【他故】1個は買います。
【高畑】これは買って損はないよね。
【きだて】文具王は三つ買ったんだっけ?
【高畑】僕はえっと、二つかな…。
――三つ買わないといけないのか(笑)。
【きだて】ダンボール開ける場所の数だけ要るんだって。本当に。
【高畑】僕は、家と職場の2個ですけど、家の中に三つというのは、だって前のもあるからね。
【きだて】前のは使いにくいからいいじゃないの。
【高畑】これだって切れるんだもの(笑)。まあ、せっかく良くなったんだからというのは、分からなくもないけど。ダンボールを開ける場所は1カ所なので、1個あればいいと思ったんだけど。きだてさんは、部屋でじっくり開けたいだけじゃなくて、玄関ですぐ開けたいのもあるしということで、玄関にも置いているんでしょ。
【きだて】そうね、玄関のすぐ開け用に1つ、リビングでゆっくり開け用に1つと…
【高畑】それで、こっそり開けたいものもあるから三つなんだね。
【きだて】そう、こっそり自室で開梱する用に1つと。海外通販で買ったうさんくさいガジェットとか、奥さんに見つかると「また要らないもの買ったな!」って怒られるでしょ。
【他故】ははは(笑)。
【きだて】ただ、これにも苦手はあるのよ。PPバンドとかは、そもそも切れるようになってないし。
【他故】ああー。
【きだて】あとはね、ビニールテープでグルングルン巻きになったいわゆるミイラ梱包は、開けるのに意外と根気が要る。
【他故】そこまでは切れないか。
【きだて】「カイコーン」の方が、そういうのには強い。だけど、ダンボールの合わせ目のテープ部分を切るというのには、これに勝るツールは今のところないかなというぐらいに楽。
【高畑】本当にね、名前の通りダンボールカッターなんだよね。これは本当に開梱専用だよね。合わせ目だけだよね。
【きだて】うん。だから、正確には「ダンボールの合わせ目に貼ったテープカッター」なんだよ。
【他故】ははは(笑)。そうだね。
【きだて】ダンボールは切らないから。
【高畑】そうなんだよ。ダンボール自体は切らないんだよ。そういう用途ではないものね。
【きだて】ダンボールまでスパスパ切れちゃうような切れ味だと、逆に開梱しづらいからね。
【高畑】そう、ダンボールの合わせ目にちょうどはまるのがいいんだよね。すき間にはまる感じがちょうどよくて。
【他故】そうね。
――刃に触っても大丈夫なんですか?
【きだて】鋭い刃がついてるわけじゃないので、そこまで危なくはないかな。
【高畑】ガッってやったら切れるけどね。触っていいよとは言えないですけど。あと、この刃が最小限の大きさで小さく付いているしね。カッターみたいに長く出しちゃうこともないし。ダンボールの中身を切ることも、これだけだからあんまりないしね。
【きだて】ダンボールの厚みとほとんど一緒なので、テープは切るけど、ダンボールの厚みよりは下に行かないという、絶妙なこのサイズ感。
【他故】うん。
【きだて】本当に、よく研究して作ってあるな。初代から感心はしてたんだけど。面白いな、これ。
【他故】これ、替え刃が結構高いのね。税込616円って、本体の半分以上なんだね。
【きだて】そう。ほぼほぼ刃の値段かよという。
【他故】刃の値段だね。すごいね。
【きだて】もし刃が欠けたとしても、ケースを外して、刃をひっくり返して付け直せばまだ使えるんだけどね。
【他故】そうかそうか、ひっくり返せるんだ。
【きだて】1つの刃が2回使える。でも、さっきも言ったけど、普通に使っている限りはほぼほぼ刃が傷むということはないと思うな。
【高畑】そんな気はするね。
【きだて】かなりヘビーに旧モデルを使ってきたけど、今まで傷む気配もなかったね。
【高畑】俺も、ダンボール用には大体これを使ってるけど、全然平気だね。
【きだて】なので、替え刃の心配はとりあえずいいので、ダンボールが毎日届くような人はこれを買えばいいし。1,000円もするものを買って、使用頻度が高くなかったからムダだったと言われるのも嫌だからさ。ある程度、ダンボールの到着する頻度が高い人におすすめしたい。
【他故】そうね。毎日届くとかそういう人ね。
【きだて】毎日じゃなくていいけど、2日か3日に1回は届くぐらいの頻度だったら、全然買った方がQOLが上がると思うよ。
*次回は文具王のベストバイ文具「プッシュカット」です。
プロフィール
きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/
*このほか、ブング・ジャム名義による著書として『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)と、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。
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