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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.30 この秋おすすめの新作文房具(その2)

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。Vol.30では、注目の最新文房具についてブング・ジャムが熱く語っています。

第2回目は、トンボ鉛筆のテープのり「ピットテープ」です。

写真左から他故さん、高畑編集長、きだてさん

その1はこちら

軽く引けて静か! テープのり界にニューフェイス!

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ピットエアー」(トンボ鉛筆) 驚くほど軽く引けるテープのり。テープ走行をコントロールする「エアータッチシステム」(特許取得済)をテープのりで初めて採用。ヘッドを紙面に押し当てたり離したりする力を利用してテープ走行をコントロールする機構で、使用時は「走行」、未使用時は「停止」に切り替わる。これにより、テープを引き出のりはノートにプリントを貼るなどの平面接着力と、分厚い内容物の封筒のベロ(フラップ)を貼って長時間保持する曲面接着力の双方にすぐれた新配合のり(特許出願中)を採用。さらに、新開発の網目状の「パワーネットテープ」も採用。強い粘着力と良好なのり切れを両立させた。税抜400円、つめ替えテープは同300円。

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――次は「ピットエアー」です。

【他故】軽く貼れる、例のテープのりですね。

【きだて】最初に修正テープの「MONOエアー」が出たときに、ああ、次は同じタイプのテープのり来るな、って予想はついてたわけじゃない。

【高畑】テープのりと修正テープは、基本的に構造がよく似てるので、技術的には転用されやすい。

【他故】「MONOエアー」を作っているときに、当然これもやりたいと思っていただろうしね。

【高畑】まあ、軽いわけですよ。

【他故】明らかに軽いよね。

【高畑】修正テープ以上に、テープのりの方が重さを感じない?

【きだて】テープに粘り気がある分、引くときに抵抗感を感じるんだよ。

【高畑】幅も広いしね。そういうのがあるからこそ、テープのりにやってほしい機構ではあるじゃん。そういう意味では、「やっときた」という感じはあるんだけど。

【きだて】あとね、個人的にすごくいいなと思ったのは、音がしないとこだな。

【他故】俺も、「カリカリカリ」っていう音がしないのが好きでさ。

【きだて】喫茶店とかで工作しているとさ…。

【高畑】いやいや(笑)。

【きだて】毎回言っているけど、本当に俺、ドトールとかルノアールでダンボール切ったりしてるからね。

【他故】あの音って響くよね。

【きだて】響くよ。だから、「ギリギリギリ」っていう音がすると、隣の人が「んっ」てこっちを見るもの。

【高畑】まあ、見るな(笑)。

【きだて】「何してるの?」っていう顔で見られるから。

【高畑】そういう顔で見られるよね(笑)。

【きだて】そういうところで、静音設計の「ピットエアー」はものすごくありがたかったのね。オフィスの中ですら、テープのり引いてると分かるじゃない。

【他故】ああ、分かるね。

【きだて】会社内でそこまで音を気にすることはないんだけど、それでもやっぱり静かで悪いことはないじゃない。

【他故】静かなフロアもあるしね。異音はどうかなという場所で、突然「カリカリカリ」っていうのもあれだし。

【きだて】お客さんが来るような場所、例えば銀行の窓口みたいなところで、もしテープのりを貼ることがあっても、カウンター業務でギリギリ音をさせるのも嫌じゃん。

【他故】まあ、そういう音はない方がいいよね。

【高畑】他故さんはどうなんですか? 「最後までテープのりが上手に使えない」という話をしていたけど。

【他故】これについては、まだ最後まで引き切ってないので、ラストがどれだけ重くなるのか楽しみではあるんだけど。もし、この軽さが変わらないんだとしたら、本当にすごいなと思う。僕の引き方が下手で、中でテープがヨレるのかどうか知らないけど、リールにダマができて重くなっちゃうパターンがすごく多かった。

【きだて】それあるね。

【他故】これをラストまで使ってみて、本当にダマとかできないんだったら、すげーなと思うね。残念なのは、立てられなかったことだけど(笑)。

【きだて】そこか(笑)。

【他故】握りやすさを考えると、このかたちになるのは分かっているんだけど。

【高畑】う~ん、そうか。

――のり自体も網目状になってますよね。

【高畑】パターンがちょっと違うんだよね。ドットパターンがわりかし主流なんだけど、そうではなく、面積を稼ぎつつ、のり切れもよくしたいという感じかな。

テープのり4.jpg

【きだて】もともと、トンボのテープのりって他社よりも接着力が強め傾向なのよ。それを活かしつつ、のり切れを良くする工夫がされてるのは、すごくいいと思う。

【他故】そうだよ。トンボは今までこういうのってなかったんだっけ?

――ドットパターンのも一部ありますよ。

【他故】でも、強力なやつというイメージがあるから。

【きだて】あと、トンボのテープは強力なんだけど、糸引きが多いという印象なんだよ。

【他故】切るときに、ムニョってなる。

【きだて】これは、糸引きもそんなになくて。

【他故】ほぼ気にならないよね。

【きだて】良好ですよ。

【高畑】一応ね、これも糸引くタイプののりなんだよ。だけど、引いた時にプチッと切れるんで。

【きだて】だから、このメッシュ構造ののりはなかなか優秀だなと思って。

――テープのりはこれまでにも、各社が引きやすいものを開発してきましたけど。

【他故】各社が色々と知恵を絞って出してきたジャンルですからね。

【高畑】トンボとしては、軽く引ける「エアー」が出たからには、それを推しにするよね。

【きだて】トンボの発明した財産ですから。徹底的にしゃぶり尽くしていただかないと。

――いやぁ(苦笑)。

【他故】テープのりは手元にいくつかあるけど、今はサッと手に取ると大体これだし。この間、家族に取られて行方不明になったので、もう1個買おうかと思っているぐらいなんで(笑)。

【高畑】学生のノート貼りの需要も大きいわけじゃないですか。それこそ、学校なんかでもカリカリいわない方がいいわけだし。

【きだて】そうね。図書館なんかでも使う子はいるからね。

【他故】授業でも使うしね。

【きだて】学生がプリントを貼るときに、プリントの縁を丸々貼るんじゃなくて、ピンポイント付けというのがあるみたい。テープの消費を気にして。

【高畑】もったいないから。

【きだて】そうなると、粘着力が強い方がいいんだ。

【他故】ちょっとで貼れればね。

【きだて】そういう意味でも、これは優秀ではあるね。

【高畑】これはちょっと持ち運びには大きいので、次に小さいのが出てくればね。

【きだて】小さいのが出てくれば、ドカッと売れるんじゃないのかな。

【他故】小さいのも欲しいな。出たら買うよ。

【きだて】面白いものでさ、「MONOエアー」のときも「修正テープが軽くなりました」と言われるまで、みんな貼る時の重さって言うほど気にして無かったと思うんだ。そういうもんだと思ってたから。

【他故】ああ、そうね。

【きだて】引き比べしてみたら、「ああ、今までのは重かったんだ」って気付くっていうパターンで。そしてついに、これで「テープのりも重かったのか」ということにみんなが気付くんだなと思うと、ちょっと面白い (笑)。

【他故】「あ~、やっぱ違うんだ」みたいなね。

――使っている途中で、テープがビーッと伸びちゃうことがあるじゃないですか。これは、そういうこともないんですよね。

【他故】そうですね。今のところは、使っていてそれはないですね。

【高畑】ヘッドが上がっている状態では、ロックがかかっているので。

【きだて】俺はそういう経験があんまりないけど、みんなそんなにテープがビロビロに伸びちゃうの?

【他故】テープを引いてから戻すときに、のりがくっついたままでビョーンって伸びちゃう。

【高畑】なることあるね。

【きだて】テープを上手いことひねって切れば、そんなことにならないじゃん。

――戻す前に、引いているときからビロビロって伸びちゃう。

【高畑】それもあるね。

――それで、シャーペンの先で巻いて戻すという。

【きだて】カセットテープよろしく。

【他故】そういう意味では、今はテープ巻くのってこれぐらいしかないよね。

【きだて】俺は、テープのりに愛されている男なので、そういうトラブルが極端に少ない。

【高畑】テープのりに愛されている男(笑)。

――きだてさんは工作をしょっちゅうしているから、テープのりを使い慣れているんですよ。

【高畑】でも、「ピットエアー」はテープのたるみ巻きが外に出ていないね。だから、たるまないということなんだろうね。

【他故】たるまないという自信があるんだろうね。

【高畑】普通は、外側に穴があって、シャーペンを突っ込んで回してくれってなってるんだけど。

【他故】「ゆるんだら、本体を開けて回して下さい」とか説明書に書いてあるのかな。

【高畑】どうかな。そういう風にはなってないね。

――一切そういうトラブルが起こらないということなんでしょうね。

【高畑】これ、ヘッドを紙面に当てているときは回っているけど、そうでなければ回らないようになっているんだよ。そういう意味ではよくできてるよね。のり切れも、本体を持ち上げたときにヘッドが回転しないから、テープがビローンて出ちゃうのは、かなりないんじゃないの。

テープのり2.jpg


【他故】そうか、粘着が強くてもテープが動かないから。

【きだて】回らないようになるからね。

【高畑】多分、テープが出てくるためには、ある程度以上押して、テープが回っているという前提なんだよ。ヘッドが紙面に接触して、ある程度押されているという状況が、ローラーが回る条件なので。それだと、貼れていないという状況が起こりにくいよ。ヘッドが紙に当たっていない状況では、ローラーが回らない。

【きだて】それだと、テープすべりみたいなのは起こりにくいよね。

【高畑】テープの頭がちゃんと紙面に当たっている状態だと、軽い力でスルッと引けるけど、ちょとでも浮いていたら、そこで止まっちゃうので。

【きだて】エアタッチシステムは優秀だなぁ。

【高畑】修正テープに比べると、こっちの方が大きい分だけ中に入っているバネがしっかりしているよね。

【きだて】開けると「バネ、ゴツいな!」て。

【他故】しかし、このバネすごいな。

【きだて】「MONOエアー」には、そこまで露骨なバネが入ってないんだよ。

【高畑】「MONOエアー」と違ってコイルバネになってるんだよね。バネを組み立てるのが、なかなか大変そうだよ。でも、仕組みがより分かりやすいよね。しかし、コクヨもトンボもそうだけど、この辺のテープ巻物関係のノウハウと詰め方はなかなかいいですね。私は好きですよ。こういうのは基礎的な部分じゃん。「まくらを付けました」というのじゃなくて、どストレートに性能勝負のところで、一番ど真ん中の部分に使ってくる技術じゃないですか。こういうのは、技術としての資産価値が高いよね。新しいエンジンを作ったよねみたいな話で。

【きだて】そうそう。

【高畑】それはいろんなところに応用できるから。それは大きいね。そして、確かに音がしないよね。

【きだて】工作ワークショップとかで子どもたちにテープを引かせると、上手く引けてないときは音がしないから「あ、ジャムってんな」というのが、見てなくても判断できるんだけどね。これは音がしないから判断つかないね。

【高畑】それは、静かすぎてハイブリッドカーが危ないのと同じだよね。

【きだて】そう、同じだね。

【他故】知らないうちにやたらに使われちゃっても気が付かないだろうし(笑)。

【高畑】「静かすぎる!」って怒るとかね。

【きだて】トンボもいい迷惑だな、それ(笑)。

【高畑】まあ、テープのりは安全性が高いから。

【他故】テープのりが近づいてきても事故にはならないから(笑)。

【きだて】でも、子どもが大事な書類にテープのりをベタベタ付けていても気が付けないじゃないか。

【他故】どっちにしても、テープのり以外ののりでは音がしないじゃないか。

【きだて】あっ、そうだね。

【高畑】でも今は、大半がテープのりの方が便利になってきているじゃない。スティックのりじゃないとダメなシーンもまだあるけど。僕らが普通に事務作業をするときにはテープのりが便利になってきたから、こういう製品は大歓迎だな。こういうベーシックなところでどんどん発明が出てくれればいいね。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。

たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


*このほか、ブング・ジャム名義による著書として『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)と、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。

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