
【連載】月刊ブング・ジャム Vol.33 ブング・ジャムの2019年ベストバイ文具を発表!(その3)
本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。Vol.33では、ブング・ジャムの3人が2019年に購入した文具の中からベストバイを選んで発表してもらいます。
第2回目は、高畑編集長が選んだ「フリクションポイントノック04」です。
(写真右から他故さん、高畑編集長、きだてさん)
*その1はこちら
*その2はこちら
消せるボールペンの書き味が一新!

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――2019年最後の「月刊ブング・ジャム」を締めくくっていただくのは、高畑編集長です。
【高畑】今年後半に、普通に使ってて「あ~、やっぱよくなったな」というのを、すごい何度も実感したのが、この「フリクションポイントノック04」です。これの赤は、校正とかに使うのでね。ボールペン単体でいったら、これが一番使っていると思いますね。「フリクションボール3」の方が3色入っているから便利なんだけど、あえてこれを3本持ってるんだよね。
【他故】分かるな。
【高畑】3本別々に持つ不便さよりも、書いていて楽な方がいいという。
【きだて】俺も、自分が普段使ってるフリクションは全てこの「ポイントノック04」に取り替えました。
――まあ、そうなりますよね。
【きだて】やっぱりね、フリクションを使い慣れた人ほど、フリクションの書き味に対する不満ってたまりがちでしょ。書き味は気に入らないけど、でも、消したいから仕方ないなー、っていう妥協をせざるを得なくて。
【他故】「他にないしな」と思って使ってたわけだよ。
【きだて】それが、こいつなら妥協せずに気持ち良く書けるということで、もう100点ですよ。
【高畑】校正なんかは、この赤1本でいけるわけですよ。知らない人もいると思うので説明すると、今までのフリクションとは違い、「ジュースアップ」に使われている“シナジーチップ”というのが使われているので、これまでのより細いけどインクがいっぱい出てくる。インクがちゃんと出てくると、フリクションって濃く見えるし、割と書き心地がいいのはこれで実感したね。
【他故】僕もずっと「フリクションボール4」に0.38㎜のリフィルを入れて使っていたんだけど、「まあ、細く書ければいいか」という書き味だったわけだよ。これが出てきてからは、手帳に書き込む以外は日常でこれをずらりと持っていて、仕事だろうが何だろうが、全部これを使うようになっている。
【高畑】これ、今までの0.38㎜よりも圧倒的に見やすいんだよ。自分の書いた文字が、自分に対して見やすいというか、それがいいなと思う。
【きだて】今までの「フリクションボールスリム 038」だと、サラサラッと書き飛ばしてると、たまにインクがかすれてスカッと空振りするんだよ。
【他故】スキップしちゃうってこと?
【きだて】そうそう。俺の筆記スピードだと、これが結構な頻度で出てたんだけども。でも今のところ「ポイントノック04」ではそういうインクスキップは起きてない。そういうところで、シナジーチップの効力は体感してるよ。
【他故】0.38と0.4は同じ色と言っているけど、全然キレイさが違うやつがあるんだよ。ライトブルーなんて、全然違う色と言っていいくらいすごくいい色で。
【きだて】インクが出ている分、濃さで違うのかもね。
【高畑】ライトブルー、ピンク、オレンジとかここらへんの色がいい色なんだよ。これ、俺が学生だったら、赤シートで隠して暗記するペンとして狂喜しているよ。これはもうね、いい時代になってきたな。
【他故】わはは(笑)。
【高畑】あと、20円高くなっただけなんだけど、今までのより質感が圧倒的にいいじゃん。
【他故】そうね。
【きだて】ペン先が金属になって。
【他故】クリップも金属になって。
【高畑】重量感もすごくいいし、何より見た目もこなれてカッコよくなった。
【他故】ちょっと細くなったけど気にならないというか、細くても持ちやすくなったような気がするんだよね。
【きだて】グリップは相変わらずゴムなんだけど、若干滑るんだよね。割とツルッとした感じ。
【高畑】きだてさんとしては、ペン先に段差があるけど、もっとなめらかにいきたかったんだよね。
【他故】グリップのラバーがもうちょっとあった方がいいんだよね。
【きだて】もうちょいね。この金属のところを持って、ちょっと冷っとするなという感じがあって。
――まあ、でも唯一無二のものだから。
【きだて】まぁ、でもそれだけかな。あとさ、字消し用のラバーも従来より細くしました、という気遣いがシビれるよね。
【他故】硬くて細くなったからね。
【きだて】ほんのちょっと細くなっただけで、すごい細かい字が消しやすくなったんだよ。いや楽だわと思って。
【他故】「フリクションボールノック4」に付いているラバーなんて使えなくなったよ。こんな太いのじゃ(苦笑)。
【高畑】特に、他故さんは小さい字を書くしね。
【きだて】こんなの、ひと文字丸々消す用じゃん。漢字の部分消しとか不可能でしょ。
【他故】僕に言わせると、ひと文字どころか、2行一気にみたいな太さだよ。
――インクがよく出るので、今までより若干描線が太い気がしますよね。
【高畑】どうしても細く書きたいのであればあれだけど、パソコンとかで打った書類を校正するのにはこれでいいなと思っているので。ちょうどいい太さかな。
【きだて】細くても、かすれたら意味ないので。
【他故】もちろん。
【きだて】読みやすい細い字が書けるというのはいいやね。
【高畑】フリクションがそれこそ、ようやく完成というかさ。完成に近くなってきたなという感じはすごくする。
【きだて】10年以上のブラッシュを経て。
【他故】ねえ。
【高畑】またこれを、パイロットが小出しにしてくるところがね。
【他故】小出しって(笑)。
【高畑】まあ、開発がそうだから仕方ないんだろうけど。
【きだて】まあ、徐々に徐々に進歩してるんだよ。
【他故】まあ、それはそうだけど。
――いろんなところで、フリクションの大移動が始まってるんじゃないですか。
【きだて】多分ね、いろんな人がじわじわと「ポイントノック04」に切り替えていると思うんだ。
【他故】多色じゃないと困るという人以外は、段々こっち側に来るんじゃないですか。
【高畑】そうなんだよ、多色を置いておいてもこっちを使いたくなったので。今年の変化はそれなんだよ。今までは多色を1本持っていれば済んだんだけど、多色を置いておいてこの3本を持ち歩いているという状況だから。まあ、多色と比べるとインクの量が多いからね。
【他故】そりゃそうだ。1本のインクの量が全然違うから。
――多色化はできるんですか?
【他故】シナジーチップをこの多色ペンに載せられるかどうかは分からないです。太さの問題があるから。
【高畑】それがまだ分からないから。
――でも、いずれは出てくるでしょうね。
【他故】「ハイテックCコレト」でシナジーチップができたので、できなくはないかなという気はしますよ。
【高畑】コレトができたということは、可能性はあるよね。
【他故】ここから先ニーズがあれば、0.3㎜のチップがあるわけだし、多色の方向に行けるかもしれないし。
――03㎜は出してほしいですね。もっと細く書きたいという人もいるでしょうし。
【他故】その時はまた、これだけインクがきれいに出るかが課題になるんでしょうけれどね。
――フリクションで手帳に書いている人も多いでしょうから、もっと細く書きたいという要望はあるんじゃないですか。
【高畑】そんなことはパイロットの人に言うまでもなく、当たり前のようにこれの多色が欲しいという人はいるし、これの高級版も。まあ、リフィルのサイズが一緒だから今までのにも入るんだけど、これ用に開発してもいいよね。
【きだて】「フリクションポイントノックビズ」ね。でもさ、これによって0.5のフリクションを使ってた人が0.4に移行してくる可能性が高いじゃない。
【他故】そうね。ノックで単体だから。
【きだて】三菱鉛筆も「ジェットストリーム」の0.28㎜を出したわけだし、来年は細字が面白いんじゃないかなというのが、今のところの予想なんだけど。
【他故】言い方は変だけど、チップ戦争になってくるかもしれないね。
【きだて】さらに言うと、2020年版から「ジブン手帳」の紙が変わったでしょ。トモエリバーからシンペーパーに。
【他故】なったね。
【きだて】あのシンペーパーって、細字のペンとすごい相性がいいのよ。今までの「ジブン手帳」のトモエリバーは、細字のペンで書くとすごい引っかかったんだけど、シンペーパーは結構スルスルと気持ちよく書けるようになっていて。その辺も細字の追い風になるんじゃないかという気がしてます。
――「フリクションポイントノック04」で書きやすいということですね。
【他故】フリクションで消してもくしゃくしゃにならないで、フリクションで書いてもきれいに見える。
【きだて】そう、細字フリクションで書いてもきれい。紙が波打たない。「フリクションポイントノック04」と「ジブン手帳」は相性がいいような気がする。
【他故】本当は多色で使いたい、という悩みも出てくるんだろうけど。
――だから、今までのフリクションの進化の歩みをもう一度、ということですね。
【他故】そうね、ここからもう10年かけてすべて切り替わっていく。
【きだて】10年もかかるのかよ! 待ち遠しいから、来年1年でやってくれよ~。
――多色は来年出してほしいですね。
【高畑】そうだね。多色のシナジーチップは早く出してほしいなというのはあるね。
【きだて】ねえ。
【高畑】とにかく、「フリクションポイントノック04」は、今年リアルに使った時間が長いというか、リアルに便利さを実感した。ちょうど本を書いていたからさ、校正めっちゃするんだよ。プリント出して直してを延々やっているから、これは使うんだよね。
【きだて】辞書ものみたいに、1ページの情報量が多いものは、校正もやっぱり細字で書きたいしな。
【高畑】校正の赤入れが普段よりも多いというのももちろんあるんだけど、そこへこれが入ってきたのは、なかなかのタイミングだったので。まあ、買ってみて便利を実感してるなと。あと、予備を買ったという。とりあえず、1本ずつ買ってみて、「これはいい!」となって、2本ずつ予備を買うという(笑)。
【他故】俺も、これになって初めて、ライトブルーの替え芯を箱で買った。毎日会社で使ってるから。
他故さんがお気に入りのライトブルーで描いたイラスト
――インクの減りも早いですよね。インク自体も改良しているのかしら?
【他故】しているんじゃないですか。シナジーチップに通すために。
【高畑】相性とかはあるだろうね。
――発色自体も良くなっている可能性はありますよね。
【他故】ありますよ。0.38と比べると色が全く違うのがあるので。で、0.5ともまた色合いが違うから。
【きだて】やっぱ違うのかね。
【高畑】替え芯っていくらだっけ?
――えっと、1本税抜120円ですね。
【他故】じゃあ、今までと一緒だ。シナジーチップが入っていようがいまいが、価格は全然変わらない。
【高畑】じゃあ、いいね。
――とにかく、来年以降にも期待ということで。スピードだけは早くしてほしいですね。
【高畑】ホント、ホント。
【きだて】もう、10年も待たすなよ!
【高畑】お願いします!
プロフィール
きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/
*このほか、ブング・ジャム名義による著書として『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)と、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。
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