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【特別企画】「第9回OKB48 選抜総選挙」大感想戦 その3

本サイト編集長の高畑正幸文具王がスポンサーとなって開催している、お気に入りのボールペンを選ぶ「第9回OKB48 選抜総選挙」は、メーカーの枠を超えて選抜された48 本のボールペンの中から、“ お気に入りのボールペン” を選んで投票する画期的選挙型エンタティンメント。実際にボールペンの試し書きをして投票する「握手会」を各地で開催したほか、公式サイトでのweb投票も受け付けた。投票期間は2019年10月1日~12月31日。その集計結果は、2020年1月29日放送のTBSラジオ「アフター6ジャンクション」の番組内で発表され、既報の通り「ジェットストリーム スタンダード」の9連覇という結果となった。

そして、その結果発表イベント「第9回 OKB48選抜総選挙 大感想戦! @ GOOD DESIGN MARUNOUCHI」が2020年2月1日(土)18:00〜20:00に、東京・丸の内のGOOD DESIGN MARUNOUCHIで開催され、OKB48総合プロデューサー・古川耕氏とブング・ジャム(高畑正幸、きだてたく、他故壁氏)の3氏が、今回の結果を存分に語り尽くす「感想戦」を行っている(関連記事)。

本サイトでは、その「感想戦」の模様をノーカットで3回にわたりお伝えします。
最終回となる第3回目では質疑応答編と第1回OKB48への展望について掲載します。

第1回目は
こちら
第2回目はこちら

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(左から)他故さん、高畑文具王、古川さん、きだてさん

質疑応答編①「ジェットストリームのエントリーナンバーが一番というのが、順位結果に影響を及ぼしているのでは?」

【古川】ここで、質疑応答というか、今回の結果に関して、何かみなさんが言いたいこととか、意見・質問などがあれば。そういったところも話し合っていければと思うので。

【きだて】我々がこれだけ延々と言いたいことだけ言ってるんですけど、みなさんの中にも言いたいことがあると思うんですよ。その辺を聞かせていただければ。

Q:「ブレン」と「ジュースアップ」は、握手会の投票がほぼ一緒なんですよね。そうなると、後はWeb投票の差なのかなというのがあって。Web投票だと「ブレン」と「ジュースアップ」ってかなり違うんですよね。個人的に気になるので、来年以降どうなるのかその辺も聞いてみたいなと思うのですが。

【古川】握手会だと、「ブレン」より「ジュースアップ」の方が高いんですよね。641票に対して643票ですから。

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【文具王】だから、「ジュースアップ」が2位なんですよね。

【古川】まさに、「ブレン」の2位をどう見るか問題なんですが、本当にここが来年どうなるかなんですよね。さすがでございます。

【文具王】「ブレン」が躍進しているのか、それともゲル時代に飲み込まれようとしている油性の票が割れたのか、そのどっちなのかということですね。

【きだて】現状まだ判断はつきづらいんだけど、「ブレン」のWeb票は来年はちょっと下がるんじゃないかなという予想なので、まだ分からないですけど。そうなると、「ジュースアップ」もまだまだ上に来る余地があるという話で。「ジュースアップ」は、「サラサ」よりも握手会の票が高いんだよね。

【古川】そうなんですよ。

【古川】インク別でカウントしているデータがあるんですが、便宜上「ブレン」のエマルジョンインクは油性としてカウントしているんですよ。そうなると、油性では「ジェットストリーム」が圧倒的に人気で、2位が「ブレン」で、3位が「ジェットストリームプライム」で、その次が「アクロボール」ですね。

【他故】そうですね。

【古川】ゲルに関していうと、「サラサクリップ」があって、その下に「ジュースアップ」が近い位置にあって、3位の「エナージェルインフリー」まで、トップ3は比較的同じグループと言っていいかなと思います。そのちょっと下に「サラサドライ」。サラサはここで分かれちゃってるという見方もできるんですけど。もっと細かく見ていけば分かることがあると思いますけど。

【文具王】上位は4位まで混戦なので、「ジェットストリーム」「ブレン」「サラサクリップ」「ジュースアップ」は、いつ何があってもおかしくないぐらいのデータにはなっていますね。

【きだて】最初の予想だと、「ジェットストリーム」と「ブレン」が票を分け合って、ゲル勢にも目があるんじゃないかという話をしていたんですけどね。

【文具王】実際問題として得票数をみると、相変わらず「ジェットストリーム」は強いんですけど、以前はダブルスコア以上あいていたんですね。倍以上の差が開いていたのが、そこが大分詰まってきてはいるんですね。そこに関しては、あまりに差が開きすぎていて、「ジェットストリーム」を殿堂入りにしたらどうかという話もあったのが、じわじわと差が詰まってきているというのがあるので、まだまだ何かが起こりそうな気がします。

【きだて】だって、ゲル時代が来るわけですからね。

【他故】大ゲル時代だね。

【文具王】本当にその可能性はあると思うよ。

【古川】という感じでよろしいでしょうか。

【きだて】他には?

Q:ナンバリングをシャッフルすることは考えてないんですかね?

【文具王】エントリーナンバーのことですね。

Q:「ジェットストリーム」がずっとエントリーナンバー1番だから強いというのもあるんじゃないかと思っていて、試し書きだとみなさん最初から書く人が多いので、それが基準になってしまうということと、あと握手会だと時間がなくて途中でやめるとなると、試した範囲で投票となるとやっぱり強いのでは。

【きだて】至極ごもっともな意見ですね。

【古川】我々は便宜上、ゼッケンとかエントリーナンバーとか呼んだりしていますけど、この番号順に握手会の会場では並んでいるし、Web投票でもこの順番通りに上から並んでいます(こちらの記事を参照)。これは内訳はどういうことかというと、三菱鉛筆のゾーンがまずあって、「ジェットストリーム」「ジェットストリームプライム」から順番にナンバーがふられていて、その下にパイロットが「フリクション」から通し番号でナンバーがふられています。そういうメーカーごとのブロックに分かれていて、通しナンバーがふられていると。で、おっしゃられたように大体1番から書くので、「ジェットストリーム」に偏るのは、そういう影響もあるんじゃないかというご指摘だと思うんですが、これはもう随分前から議論はしていたんですよ。

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エントリーナンバー1番の「ジェットストリーム スタンダード」

【きだて】内部ではしていたんですね。

【古川】それは、基本僕の意見で変えていないんですね。

【きだて】その理由は?

【古川】公平を期すためには、完全にランダムにして、好きなところから書いてもらって、最善の1本を選んでもらうというのがいいんですけど、僕はこういうものをやるときに、エンタテインメント性と分かりやすさと公平性のバランスで常に最適解を探っていくものだと思っていて、メーカーのバラバラなものが置いてあって、「この中から1本選んでくださいよ」というのは、それはそれで投票のハードルが一つ高くなるんじゃないかなと思ってるんですね。
現状、「ジェットストリーム」が圧倒的な知名度を持っているのは間違いなくて、「そうそう、ジェットストリームって良いペンだよね」という人たちがまず食いついてくれるというメリットは、これは確実にあると思っています。特に、ボールペンの専門じゃないような場所ですね。たとえば店頭での投票とか。そういうときに、「ジェットストリーム」という知っているペンが最初にあることは、これはこれでメリットがあると思うんです。
毎回この議論はギリギリまでせめぎ合うんですが、今のところはこのルールで、そして定点観測としては、ルールはなるべく変えたくないという思いもあります。区切りのところまでは、これで行った方がいいんじゃないかと思っているのが、現状僕の考え方です。だから10回目も、問題は含みつつ、この通し番号でいこうかなというのは今のところの考えですね。
あと、背景でいうと、「ジェットストリーム」がなかったら、ここまでボールペンの芳醇さが発生しなかったので、そこに対するリスペクトもちょっとはあります。やはり、「ジェットストリーム」ありきで全てが始まっているものですから、それがポールポジションに置かれるのは筋として間違ってないだろう、という気持ちもあって。そういう意味では公平さを欠くのかもしれませんが、OKBというのはある種パロディのかたちを持っていて、「半分はエンタテインメントだよ」「半分は演出も入ってるんだよ」「でも投票自体はガチでやってます」というバランスを常に探っているところはあるんですね。だから今は、こういうかたちに落ち着いています。

【文具王】それで行ったときに、上位からの順番が、エントリーナンバーが若い順番に並んでいる結果が最終的に出てくると、公平性のバランスが低いかなという可能性もあるんですが、今のところでいくと、上位からみたときに、1位が1番というのは仕方ないんですが、次の2位は34番、3位が29番、4位が20番と考えると、エントリーナンバーが若い方が上位に上がりやすいのかというと、そこまでではないのかなと思います。ただし思うのは、40番以降のナンバーを持っているものに関しては、その他大勢感がどうしても出てしまうのは否めないかなというのはあって、そこは難しいところかなと思います。

【きだて】もし、今後「ジェットストリーム」が王座から陥落することがあれば、勝ったペンが所属するチームがエントリーナンバー1番を手に入れるとか。

【古川】ああ、チーム戦というかたちでね。

【きだて】そういう対戦でもいいかもしれない。

【文具王】例えばですけど、もし「ブレン」が勝てば、ゼブラが1番になる。

【きだて】ゼブラの「ブレン」がまず1番で、それ以降にゼブラのペンがずらっと並ぶとか、駅伝のゼッケンみたいに。自転車レースもそうですよね。

【文具王】難しいのは難しいですね。そこら辺の善し悪しというのがあるので。

【古川】そこをもっと言うと、48本選定している時点で、運営側の恣意的な視点というのは入っているんですね。そこに関して、僕が「総合プロデューサー」といっているのは、半分は伊達や酔狂ですが、半分は責任の所在を明確にした方がいいと思っているからなんです。これは、ひとりの人間が選んで、ひとりの人間が考えているエンタテインメントであり、ボールペンに対する一種の批評的な行いであるということもあって、責任の所在を明確にしているのは、そういう理由も実はあります。議論はあってしかるべきだし、こういう意見は本当に貴重なんですけど、現状僕が最終ジャッジを行っている以上は、少なくとも10回目までこのルールかなという感じですね。ということで、毎回7月ぐらいになると、グループチャットでわあわあ言っているんですけども。という感じで、お答えになっているでしょうか?

【きだて】やや株主総会感が。

(会場爆笑)

【きだて】もっと軽い質問でもいいんですけど。

【他故】軽いって(笑)。

(※古川追記:OKBを主催していて常に意識しているのは、「どのボールペンが優れているのか」という人気投票は本質的には不毛である、ということ。それは個人の好みだろう、そんなことよりそのペンがいったい何を生み出したかのほうが重要ではないか……という、これはこれで真っ当な正論は常に忘れないようにしています。そもそも、メーカーが精魂込めてつくり出した製品に対してギャアギャア優劣をつけるのはすこぶる不遜で不躾な振る舞いです。しかし、だからといってこうした人気投票にまったく価値はないとも思いません。ボールペンの中にも確実に「違い」が存在し、そこにはつくり手たちの思いや意図が明確に存在する。そして自分にはキャッチできないそれを感知する人々がいる。こうした我々のまわりに偏在する「豊かさ」を形にするため、OKBは行われています。ともあれ、あまりシリアスになりすぎないよう、常にパロディ精神とユーモアは忘れずに、しかし順位付けの部分に関してはできるだけ誠実かつクリアーに、そして責任の所在が明らかになるよう心がけています)

質疑応答編②「三菱のRT1が好きなのに、順位がいちまいち奮わないのは、きだてさんの推しが弱いからでは?」

Q:僕は「シグノRT1」推しなんですけど、きだてさんの推しが弱いような気がするんですけど。

(会場爆笑)

【きだて】あれっ、まさかのオレが責められる展開?

Q:もっと宣伝してほしいんですけどね。

【きだて】今も変わらず俺のオンリー魂のペンではあるんですけども。

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きだてさんのオンリー魂のペン「ユニボール シグノ RT1」


【他故】オンリー魂(笑)。

【きだて】ほら、でも仕事上、いろんなペンを使わないといけないじゃないですか。やっぱり新製品の話をしないと、雑誌とかWEBの媒体からコレ(と言いながら指を丸める)がいただけねぇでやんすから(笑)。

【文具王】おお〜。

【きだて】だからね、「RT1」のことだけ書いてお金をくれるメディアがあれば、ずっとそこに書きますよ!

【他故】わはは(爆笑)

【きだて】それぐらい好きです。

Q:タトゥーを入れたら?

【文具王】そうだよ。「RT1命」のタトゥーを入れないと。

【きだて】ちょっと家族と相談してきます。

Q:さっきのコメントを読んで、「RT1」推しがいた!と思って。

【きだて】「RT1」最高ですよね。

【古川】ここにいる4人は、もちろん全員「RT1」好きです。「きだてさんが好きならいいか」と思って引いていました。きだてさんのせいですね(笑)。

【きだて】まあ頑張ろう!

(会場爆笑)

【きだて】次回もっと上がるように頑張りましょう。

【文具王】僕は主催側なんである程度フラットにいきますけど、きだてさんみたいな人たちが「今年はRT1だぜ」と運動するのは構わないです。

【きだて】何なら、秘密結社を組織してもいいわけですよね。

【古川】秘密組織票が入っているという。

【文具王】でも、票を金で買うとかはやめてくださいね(笑)。

【きだて】どうやるんだろうね、それは。

【他故】「RT1」を配るのか。

【きだて】俺は最初に「フリクション」が出たとき、自腹でいろんな人に配ったしな。

【文具王】そこの公平性を担保するために、僕はOKBを自腹でやっているので。後はみなさんそれぞれ、「うちの推しを舞台に上げてやってくれ」というのをグループを作って、色々とやっていただければいいなとは思います。

【他故】そういうのは全然問題ないの?

【古川】「何で48本に入ってないの?」という推しがありますから。

【文具王】それはありますよね。それに対しては、古川さんが完全に悪者なので(笑)。

【きだて】そういう人は、各地でファンミーティングやって運動すればいいんですよ。

【古川】ロビー活動していただきたいですね。ということで、お答えになったでしょうか。こういう感じだと、我々も株主総会感がなくていいですね(笑)。

【きだて】気楽でいいですね(笑)。

【古川】まだ時間ありますので、ご意見や感想があれば。

Q:すごい「ブレン」が推されていて、私も全色揃えたんですけど、未だに懐疑派なんですね。

【他故】揃えたんだ(笑)。

Q:色がずるいんですよ、きれいで。

【きだて】ずるい(笑)。まぁ分かる。

Q:それで、コンビニで100円で売っているんですよ(編集部注:現在は終了しました)。

【他故】ああ、今値引きしてますね。

Q:このタイミングでやっているのは、ゼブラ本気かなと思います。

【古川】それは買収工作ですよ。

【きだて】それは明らかなゼブラの工作ですよ。

【古川】カネで人の心を買うというゼブラの戦略ですね(笑)。もう一度全色買って下さい。

【きだて】今、100円で売ってるの?

【他故】「ブレン」100円で買えるんだぜ。

【文具王】だから、あまりにコスパがねというところなんだけど。

【古川】1年、2年は出血覚悟でやるぞということなのかな。

【きだて】まあ、そういうゼブラの決意なんでしょうね。

【他故】特にコンビニなんて、知らないペンを買うなんてありえないじゃないですか。知らないペンは手が伸びないですよね。そこで、隣にジェットが150円で、ブレンが100円だったら、とりあえず買ってみるかという人が出てくるはずなので。

【文具王】そうですね。今「色がずるい」という話があったけど、それも含めてペンの魅力なので。

【他故】それはもちろん。

【文具王】たまに原理主義の方がいて、「書き心地だけを純粋に比較できていない」みたいなことを言われるんですよ。

【古川】原理主義者なんですね。

【文具王】そういう書き心地原理主義者みたいな人がいて。まあ、逆もあるんですけど。「これはリフィルが同じだから、これとこれを二つエントリーするのはおかしい」というのもあるんですけど、やっぱりボディによって書き心地違うじゃんとか、あと持つ喜びというのもあるし。

【他故】そうね。

【文具王】だから、歌が上手いだけがアイドルじゃないんですよ。

【きだて】リフィルだけだったら、さっきの6歳の子の「とうめいできれい」みたいなのもないわけですよ。

【文具王】それはアリとして見ていますので、そこは楽しんでいただければと思います。

【古川】色も含めて性能だと思ってますし、「ブレン」に関していえば、機能とかで文句をつけても、限定色のセンスの良さだけは否定できないですから。

【きだて】そうなのよ~。全部良い色なのよ~。ずるい!

【古川】あの紺のやつ。なんちゅう色だと思って。

Q:そのブルーブラック10本ぐらい買いました。

(会場爆笑)

【他故】懐疑派なんでしょ?

【古川】客観的にみたら、めちゃブレンおたくですよ(笑)。

2019年8月30日から数量限定で販売された「ブレン」限定色。右から2本目が質問者を虜にしたネイビー。

質疑応答編③「48本のボールペンはどうやって決めているの?」

【きだて】まだ質問ありますか?

Q:48本を古川さんが選ばれているということなんですが、毎年新しいペンも出てくれば、それを入れようとしたら、古いペンを落とすわけですよね。選ぶのは楽しいだろうなと思いますが、どういう基準で「これはエントリーさせよう」とか、「これは今年は落とそう」とか決めているんですか?

【きだて】えー、要約しますと、「キミ、神様気取りか」と。

(会場爆笑)

【古川】僕が決めていると言っていますが、厳密に言うと最終的な責任を僕が負っているということで、50何本か選んだ段階で、文具王とか手伝って頂いているスタッフに諮って、「どれにしましょうか」という相談をしているんです。

【文具王】劇場支配人もいるしね。

【古川】今日は来られなかったんですが、岩崎多(まさる)という劇場支配人がいて、彼らと相談しながら決めているんですが、まず新商品が毎年必ず出ますよね。基本、大手メーカーだったり、小さいメーカーでも「これはいいな」と思ったものは基本的にエントリーさせようとするんです。そうすると、あぶれてしまうメンバーが出てきくるので、足切りをしないといけないんですが、まず廃番になるものも同時にあるんですよ。このペンは好きだし、人気も安定しているけど、メーカーが廃番にすると分かったら、それは自動的に落とす。あとは、廃番でもない現役商品だし、でもこれも入れたいしとなると、平均順位がずっと下位に低迷しているものとか、ある程度特徴がかぶっているだろうと判断したものは、泣く泣くそれを落としていったりしています。それは、1本、1本決まったルールは実はなくて、ある程度はあるんだけど、是々非々で決めていますね。新商品も全て入れられるかというと、そういうこともないのですけど。

【文具王】あと、新商品の中で入れないのは、限定商品みたいなものとか、一応全国で手に入るものとしているので、どこか小さなお店が独自に作ったもので、そこのお店に行かないと買えないみたいなものもあるんですね。そういうものとか、期間限定とか数量限定が最初から決まっているものとかは、この中に入れないというかたちをとっています。

【古川】48本選んで発注かけたら、「実はこれ全国商品じゃないんです」と言われて、泣く泣く外して次点のものを繰り上げてというようなことを、大体1ヶ月半弱かけてやっていて。

【文具王】選んだボールペンを買うために、お店に行くんですね。足りないものは問屋に発注かけてくれるんですが、「どうやら、あの商品は今あるやつで終わりらしい」と。要は廃番とは言っていないけど、自然消滅パターンもあるわけですね。「追加生産しません」みたいな情報が入ってくるわけです。そうなると、「しょうがない、それは外そう」となるわけです。全国で握手会をやっている最中に供給できなくなる恐れがあるので。

【古川】そういうのもあったりしますね。

【文具王】中には、根強いファンのいる「証券用細字」とかね。ああいうのを外すのは、心苦しいじゃないですか。

08証券細字用.jpg

No.460 証券細字用(三菱鉛筆)


【古川】めちゃくちゃショックですよ。

【文具王】なんですけど、48本しか選べないので。じゃあだからといって、「そういうのも入れればいいじゃないか」とOKB85とかになってもね。48本がギリだと思うんですよ。試してもらうのには。

【古川】2年目か3年目に、「多色ボールペンもやった方がいいんじゃないか」ということで、48本プラス多色ボールペン10本というのをやったんです。そうしたらもう、悪手外で全員、顔が土気色になりまして(笑)、試し書きに3時間ぐらいかかるんですね。なので、48本に戻したという経緯があります。

【きだて】それが正解だよね。

【文具王】ボールペン48本でやったのが良い企画だったと思うのは、黒の単色に決めているんですが、比較的やりやすいんですよ。これをシャーペンでやったらどうかとよく言われるんですけど、それだと今度は「シャー芯をどうするか」という問題が出てくるじゃないですか。しかも、HBか2Bかとかで全然書き味が違うじゃないですか。

【古川】変数がべき乗のように増えて行く。

【文具王】あまりに変数が多すぎるので。もちろん、同じメーカーの芯を入れてあげればいいんですが、そうじゃないメーカーのシャーペンもあるんですね。だから、そこに何の芯を入れるかという問題になっちゃうんですね。そう考えると、ボールペンだから48本で済んでいるですね。

【古川】さっきの続きで言うと、これとこれが同じ条件で、どうしても選びきれないなと思ったら、店頭に行ってどっちの方が比較的勢いがあるかというのを、都内ぐるっと回って決めてみたりしてます。先ほども言ったように、最終的な責任は僕が負っていますが、一応できる限り市場調査をした上で、今日本を代表するようなペンは大体こんな感じで、あるいは、人気は低迷しているかもしれないけど、この機能は唯一これしかないから、エントリーから外さないでおこうよというペンもあったりするので、その辺は全体的なバランスを見ながらやっているんですね。統一的な基準があって選んでいるわけではないです。ということで、お答えになっているでしょうか?

Q:めちゃめちゃ納得感はあります。

【古川】ありがとうございます。

【文具王】握手会に来てくれた人に、ペンの新しい楽しみ方を知ってもらいたいというのも、大きな意義の一つなんですね。そういう意味では、バリエーションをある程度確保しておくことも重要です。

【古川】そうですね。唯一あるとしたら、最初に説明したように比較的手に入れやすいものですね。「モンブランの〇〇を入れて欲しい」とか、昔は入れてたんですが「カランダッシュのあれを入れて欲しい」とか、高級なもの、特に5,000円オーバーのものは基本的にレギュレーションから外しています。

【文具王】こちらのスポンサーとしてもつらいし(苦笑)。

(会場爆笑)

【古川】借金を抱えることになるし(笑)。

【きだて】文具王の懐具合も考えて推薦して下さいね。

最後に。「筆記具が進化し続けているのは世界的に見ても日本ぐらい。まだ追い続ける面白さはある!」

【古川】では、最後に登壇者お一人ずつ、今年の感想と今後の展望をちょっと聞かせていただいて締めようかと思います。

【他故】私から行きましょうか。私はゲル派、水性ボールペン派なんですね。油性ボールペンは比較的に苦手なんです。「ジェットストリーム」が良く書けてすごいというのは分かるんですが、実際に自分の手元では一切使ってない人間なんですね。来年のことというよりは、ゲルが好きなのでゲルに頑張ってほしいというのもあるんですが、僕が今注目しているのは、「サラサクリップ」と「ジュースアップ」の逆転があるかないか。ぶっちゃけて言うと、もし「ブレン」があの位置にいなんだったら、2位が「ジュースアップ」で、3位が「サラサクリップ」も見られるかもしれないと思ってるんですよ。そのぐらいゲルが出てくるんじゃないかと、個人的には思っています。期待はしているんですけどね。

【古川】楽しみですね。じゃあ、きだてさん。

【きだて】第10回の話ということなんですけど、僕としてはもうちょっと先まで含めて、大ゲル時代の到来を待っているという状態です。僕は、他故さんよりも油性嫌い派というか。

【他故】油性が嫌いとまでは言ってないんだから(苦笑)。

【きだて】もっというと低粘度油性の書き味が苦手なので、現状の順位には大いに不満を持っているわけです。だから、早いとこ「ジェットストリーム」を倒す強ゲルが出てこないかなと。

【他故】強ゲル(笑)!

【古川】初めてききました、その言葉。

【きだて】俺も初めて口から出た(笑)。ともあれ、そう願っているので、次に来たる第10回から第20回までの10年間に何かすごいことが起きてくれないかなと。もちろん、それまでは文具王も頑張ってスポンサードしてね(笑)。

【他故】ネクストディケイドね(笑)。

【きだて】ネクストディケイドは、本当にゲルの時代が来るかもしれない。

【他故】何となくその想像をしちゃって。

【文具王】第10回目がこれからですからね。

【きだて】そういう楽しい要素はまだまだあるわけじゃないですか。なので、皆さんもこのままOKBを追い続けていただいてね。さっきの50歳になって色々とつらい思いをされている方の境地に至るまでは(笑)。

【文具王】文具王としては、自腹スポンサーとして見続けているというのは、これは社会的な責務だと思って。まあ、王ですからね(笑)。

(会場爆笑)

【文具王】ノブレス・オブリージュみたいな感じで。

【他故】大きく出たなぁ(笑)。

【古川】貴族の嗜みですから。

【文具王】でも、これはメーカー各々ができないんですよ。

【きだて】そうね。公平性という点では第三者機関が。

【文具王】その中で、こうやってフラットにできてきた。しかも3,000名ぐらいの方々が毎回何かしらのかたちで関わってくれているのは、本当にありがたいと思うし。最初の方は「ジェットストリームが何回も勝っているじゃないか」ということを言われていたんですけど、これは続けるべきだと思っています。「ジェットストリーム」を殿堂入りさせなかったことで、時代の変わり目みたいなものが、もしかしたら見えてくるかもしれない。

【きだて】そうそう。

【文具王】ゲルがじわじわと順位を上げてきている時代というのも、これだけ続けてきて見えてきた変化なのかなと思うので、非常に大きいなと思っています。「ジェットストリーム」が出てから10年ちょっと経ったわけですけど、じゃあもう変化がないのかというと、文房具はほぼほぼ成熟ジャンルなわけですよ。ほとんど変化がないっちゃないんですけど、ここにきて変化がないのかと思ったら、それこそ三菱鉛筆もパイロットもゼブラも、今年用の新しいペンを用意しているわけですよ。それこそ新しい「ジェットストリーム エッジ」だとか、「ユニボール ワン」だとかが出てきたりして、まだまだ新しいテクノロジーを文房具に投入しているんですよ。世界的にみて日本だけです。これはガラパゴスなんですけど、日本だけが世界で唯一、新しいジャンルの筆記具をまだ作ってるんですね。鉛筆が進化しているのなんて日本ぐらいですよ。まだ進化する余地を残していて、まだ変化しているというのが、これはまだ追い続ける面白さはあると思っているので、完全に枯れるまではこれはまだやっていけるんじゃないかと思っています。

【きだて】しゃぶり続けたいと(笑)。

【文具王】そういうことです。あと、世代交代みたいな部分が見え始めたのって、やっぱり10年やらないと世代がかわらないんですよ。

【他故】そうね。

【文具王】これは、続けた甲斐がある話かなと思います。次回は記念すべき10回目ですけど、また頑張ってやりたいなと思うし、さっき言っていたみたいに、みなさんの支援も含めて、何か考えたいなと思っているので、それをやることで会場を増やすみたいなことができればいいと思うんですよ。それこそ、(ZOZO TOWNの)前澤さんが100万円くれれば。

(会場爆笑)

【古川】安いもんですよ!

【文具王】お金くれれば、もう何カ所か握手会会場を増やすことができるので。9年やってきて、ようやく日本のデザインの殿堂のグッドデザイン賞の会場を借りられたわけですよ。ようやく認められつつあるということですよ。これは、日本の高いデザインの評価だと思っているんですよ。もちろん、有名な先生が決めるのもいいんですけど、みんなが決めたデザイン賞で、デザイン的にも意義のあることだとも思っているので、ぜひ応援していただいて、来年もここでやれたらいいなと思っています。

(会場拍手)

【きだて】握手会をここでやらしてもらえれば、すごくいいね。1日200人ぐらい来てくれるんだったらね。

【他故】全然票数が違ってくるよ。

【文具王】僕の野望としては、イベント部門でグッドデザイン賞にエントリーしたいと思っていますので。

【他故】お~っ!

【文具王】このイベント自体がグッドデザインでしょと言いたいわけです。というわけで、頑張りたいなと思います。

【きだて】じゃあ、最後に古川さん。

【古川】ほぼほぼ文具王に言っていただいたのですが。これ始めたときに、何となく「10回はやろうかな」と思っていて。思った以上に、この10年は重い意味を持っているなというのが、この第9回で露わになったのではと思います。というのは、OKBを始めるきっかけとなった「ジェットストリーム」の牙城が初めて揺るぐかもしれないという存在、「ブレン」が出てきた。なおかつ、「ジェットストリーム」の遺伝子を受け継いでいるんだけど、デザイン的には確実に「ジェットストリーム」から切断されている「ジェットストリーム エッジ」が出てきた。これから三菱鉛筆はそういうものを出していきますし、パイロットはパイロットで、「フリクション」という「ジェットストリーム」と供に今のボールペンシーンを作ってきたペンに、「シナジーチップ」という新しいテクノロジーを取り入れたものが出てきたりという、つまり言わば、これからはいわゆる「フェイズ2」ですね。フェイズ2がこの10回にさしかかるタイミングで見えてきたというのは、文具王も先ほどおっしゃっていましたけど、10年やると、望むと望まざるとに関わらず、歴史を拾っていくんだなと。これはやっていて良かったなと思いました。ということで、10回目はやります。

(会場拍手)

【古川】あとは、文具王の財力次第(笑)。

【文具王】みなさんの盛り上げがあってのことだと思うので。

【古川】実は、こんなことをやっておきながら、僕自身はそこまでボールペンに詳しくないので、みなさんの投票で勉強しているところもあります。参加してくださっている方あってのOKBなので、そこはもしよかったら、ご支援いただければと思います。ありがとうございました。

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