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【令和でも注目!】バレットジャーナル発案者 ライダー・キャロル氏にインタビュー

世界中で大ブームとなっているノート術「バレットジャーナル」の発案者であるライダー・キャロル氏が初めて書き下ろした公式ガイド『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』(ダイヤモンド社)が2019年4月18日(木)に発売されたのを記念して、4月20日(土)14時から銀座 伊東屋G.Itoya10Fハンドシェイクラウンジで、ライダー氏の来日トークイベント(主催:ダイヤモンド社/平和堂)が行われた(記事はこちら)。

バレットジャーナルとは、箇条書きを使ってメモし、記号や移動を活用しながら、思考・情報・タスク・時間・習慣・目標など、「自分」のすべてを主体的に整理・管理することができるもので、アメリカのデジタルプロダクト・デザイナーであるライダー・キャロル氏が編み出した独自のノート術。幼少期に注意欠陥障害(ADD)という発達障害の診断を下され、日常生活を送るのに苦労したことから、頭の中を整理するために試行錯誤して編み出したという。

トークショーに先がけて、同会場でプレスイベントを開催。ライダーさんがメディア各社との共同インタビューに応じ、バレットジャーナルのメソッドについてや、愛用するノートやペン、今回発売された公式ガイドについて語ってくれた。

その主な内容をご紹介する。

バレットジャーナルを始めた理由とは

子どもの頃にノートに色々と書き始めたのが始まりです。

ノートに書き込むのは、子どもの頃、ADDと診断されたときから取り組み始めました。当時は、学習障害について理解されていなかったので、どうやって勉強を理解していくかについて、自分自身で向き合わないといけませんでした。それで、ノートに書きながら思考を整理することを色々と試すようになりました。

最初は教科ごとにノートを持っていって、どうやってノートをとるかを工夫しました。

私は、興味がないことや面白くないこと、難しいことに対して集中し続けることが難しかったのですが、今思えば、それは誰にでもある問題だと思います。ただ、私の場合は、学習障害があったので、言われていることが耳に入ってこなかったのです。

例えば数学の授業では、クラスメイトが先生の話をノートに書いてている間に、私は完璧な図形を描くとかそういうことをしていました。図形を完璧に描くことで、先生の話していることを逆に聞き取ることができるようになったのです。それで、他の授業でも絵を描くようにして、絵を描きながら理解したポイントをノートに記入する方法を編み出しました。

ただ、それに対して先生たちの理解がないので、「先生が話をしているときに何故絵を描いているのか」とよく叱られました。だから、先生に見られたときはノートをとっているフリをしました(笑)。あるときついに一人の先生が自分の状況に気付いてくれて、「あなた自身できちんと編み出したのは、非常にいいことです」とほめてくれたのです。

子どもは自分の問題を自分で解決するという発想になかなかなれないので、両親や先生など大人に解決を委ねることが多いですね。私は、自分の体験から、子どもながらに問題を解決することが可能であることが分かっただけでなく、自分自身で問題解決をしなくてはいけないことを理解しました。

そこで学んだことは、先生の話した内容を一言一句書き留めることは無理だということ。そのときから、一番大切なことだけ書き留めるようにしました。

非常に興味深かったのは、このようにノートをとるようになってから、耳に入ってくることを全く違うように捉えることができるようになったことです。聞き方が変わっただけでなく、話している人に対する理解も深まるようになりました。

3.jpgライダーさんが見せてくれたバレットジャーナルの書き方のサンプル

社会人になる頃には、昔に比べると思考の整理が上手くできるようになっていました。ただ、学校は体系化されているので、いつ何を持ってくるのかが分かりやすいですが、実際に仕事をはじめたら、それがままなりませんでした。

社会人になって気付いたことは、やりたくないことをやらない自由があるんだということ。ただ、それに気付くまでに時間がかかりました。自分にとって何が大切で、何が大切じゃないのかをきちんと見分ける必要があって、その見分けに時間がかかったのです。

今に至るまで、大事だと思うことにより時間を使えるように、色々整理することを心がけています。

デジタルとアナログの関係

テクノロジーは大好きで、仕事としてそれをデザインしている立場ですが、それでジャーナルを使う機会が減っていったら、整理整頓が悪くなりました。

なので、デジタルな仕事をしてますが、そこにアナログなジャーナルを持ち込んで、そこで整理をして、それから元のデジタルな仕事に戻るというような使い方をするようになったのです。そういう意味では、私はハイブリッドなユーザーです。

テクノロジーは、私たちの外にある世界をつないでくれるのに非常に有用で、素晴らしいツールだと思いますが、私たちの中にある世界につながるのには相応しくないツールだと思います。

自分の手で書くことが重要。書くことで、流れてくる思考に対して、きちんとそれを捉えて、深く掘り下げることを強制されるので、手書きは大事だと思います。

思考は、最初はフワフワしたものなので、それを言語化するためには、タイピングだとペースが早過ぎてしまいます。手書きにすることで、それがじっくりとできる。スローにすることが大事です。

手書きにすると、言われたこと全てを書き留めることはできないので、ポイントだけを書くようにすると、きちんと意味を捉えて、自分の言葉で書くようになります。大事なことを抽出するというそのプロセスが重要なのです。

愛用するノートやペンのタイプは?

気に入って使っているのは、ドット罫のノートです(書き方サンプルの写真を参照)。白紙のようにも使えるし、方眼罫のようにも使えるところが気に入っています。バレットジャーナルは、絵を描いたり、あるいは記録を書き留めたりなど、人によって使い方が大きく違うので、罫線にも柔軟性がないといけません。

普段使っているペンは、細書きの水性ファインライナー(日本では“ミリペン”と呼ばれているもの)。ほとんどブラックで、あまり他の色は使わないです。ジャーナルはどこにでも持っていくので、いろんなペンをたくさん持ち歩くようなことはしたくない、というのがその理由です。

2.jpg愛用のペンは、ノートのゴムバントをペンホルダー代わりにして持ち歩いているという。

世界中のいろんな人たちが、独自のバレットジャーナルをはじめていたので、その人たちが独自に開発したスキルもあるだろうし、みなさんが何をしているのかを一カ所で見たかったので、バレットジャーナルのコミュニティをつくるためにクラウドファンディングを利用しました。そこで支援してくれた人たちにバレットジャーナルのノートを作ってお返しできたらいいんじゃないかと考え、商品化することを思いついたのです。

私が愛用している「ロイヒトトゥルム1917(LEUCHTTRUM1917)」の公式ノートを作ることになりました。「ロイヒトトゥルム191」をベースに、バレットジャーナルに必要なことを追加しています。もちろん、本文は全てドット罫になっていますし、従来通りページ番号もふってあります。

公式ノートでは、しおりひもを3本にしましが、3本もしおりがあるノートは他にはないでしょう。日ごとに使うページもあれば、月ごとに使うページもある。それぞれユーザーのみなさんが使うページもある。それぞれをすぐに切り替えて見られるように3つのしおりが付いているのです。そして、どのしおりなのかが分かるように色違いにしています。

4.jpg「ロイヒトトゥルム1917」のバレットジャーナル公式ノートの大きな特徴の一つである3本のしおり。同公式ノートはA5サイズで、ブラック、エメラルド、ノルディックブルーの3色。税抜3,500円。(輸入販売元:平和堂)

公式ガイドについて

バレットジャーナルのメソッドは、最初に紹介したときは、システムの部分を強調したので、生産性を高めるためのツールのように見えますが、そこに価値が置かれ過ぎているように感じています。

何故なら、間違った目的に向かって生産性高く進んでいくこともあるからです。バレットジャーナルは、本当に自分が関心があることにたどり着くためのものだと思っています。

実は、人は自分自身のことはよく分かっていません。何故なら、他のことに気を取られてしまうからです。そのように理解するようになりました。そこで、この本が役に立つと思っています。

まず、バレットジャーナルのシステムを使って、自分の行動を明確にすること。そして、メソッドを使って自分の信条が明らかになる。バレットジャーナルは、自分の行動と信条が一つの線でつながることができるのを手助けしてくれるメソッドです。それによって思考性や意志力を持った生き方に通じることができます。

つまり、バレットジャーナルによって、生産性もあるし、意味のある人生を送ることもできるようになるのです。それを伝えるために、この本を書きました。

2.jpgバレットジャーナル 人生を変えるノート術』(ライダー・キャロル著/栗木さつき訳、ダイヤモンド社、税抜1,600円)

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