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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.49 まだまだあります! 気になる最新筆記具をチェック!(その2)
本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。
今回は、注目の最新筆記具をまたまたピックアップ。ブング・ジャムのみなさんのするどい視点から、それぞれのペンについて詳しく分析してもらいました。
第2回目は、トンボ鉛筆の「モノグラフライト」です。
(写真左から他故さん、きだてさん、高畑編集長)*2020年11月7日撮影
*鼎談は2021年3月29日にリモートで行われました。
ロングニードルチップで軽快な書き味(モノグラフライト)

――次は「モノグラフライト」です。
【高畑】「モノグラフライト」でボールペンなのかというのが、俺的にはちょっとショックなんだけど。
【きだて】さらに言うと、ボールペンなのにMONOカラー使っててどうなの?っていう(笑)。
【高畑】消しゴムで消せないしね(笑)。
【きだて】それはいいのか?というのは気になるけど、使ってみるとかなり良いんだよ。好きなんだよ、これ。
【高畑】そう、めちゃくちゃ良いんだよ。
【他故】思ったより良いよね。
【きだて】思った以上に、ロングニードルチップが効くなというのと、トンボの低粘度油性なのにボテが出ないという。
【高畑】このインクは別ものだよね。
【他故】改良してきているよ。
――インクは新しく作ったと言ってましたよ。
【きだて】とりあえず、ニードルチップの話なんだけどさ、見た瞬間、本当にギョッとする長さじゃない。
【高畑】はいはい。
【きだて】やっぱり、5.2㎜は長いよね。
【他故】すごいよね。
【高畑】その前にシャープペンの「モノグラフ」があるじゃないですか。あれの先端にそのままボールを付けたようなイメージにしたから、「モノグラフライト」なのかな。
【他故】そうだろうね。
【高畑】「モノグラフ」は一般筆記用のシャープペンなんだけど製図ペンっぽいという立ち位置なんだよ。製図ペンじゃないけど、製図ペンみたいに先端を細長くして、機能的な感じを演出している。もちろん、あの消しゴムも特徴なんだけど、先端が細くて真っ直ぐという製図ペンのイメージを持ってきたら、それがすごい当たったというのがあるじゃないですか。その「モノグラフ」のイメージがあるものを、そのままボールペンにもってくる。つまり、製図ペンが一般シャープペンになって、シャープペンがボールペンになったみたいな、2回転がってここにきたみたいな感じになってる。
【きだて】すごいねじれ方をしてるよな(笑)。
【他故】ははは(笑)。
【高畑】だって、ボールペンからだったら、ここにはこないでしょ。
【他故】そうだね。
【きだて】しかし、やっぱ効くわ。この長いニードルは。
【高畑】見やすいよね。
【他故】見やすいし、細くて長い割にはこれ丈夫じゃん。
【高畑】そう、硬い。
【他故】書いてて不安が全くないんだよね。
【高畑】先端が結構とんがってて、けがき用の針みたいなとんがり感に近いんですよ。引っかく道具の感じに近い。
【他故】ああ、はいはい。
【高畑】シャープペンよりかなりエッジな感じに見えるし、むしろこっちの方が、引っかいたり、突き刺したりする系の道具みたいな先端感がすごいんだよ。本当にニードルという感じがするよね。
【きだて】うん。
【高畑】あと、グリップも良くない? このグリップ好きなんだよ。
【きだて】そう!
【他故】このグリップ良いよ。
【高畑】「モノグラフだとこのグリップじゃねぇだろ!」と思うんだけど、このグリップがすごい良いんだよ。
【きだて】これだけ長いニードルだと、本能的に「あんまり筆圧かけたくないな」というのがあるじゃない。だから、常識的にはこんなにグッと強く握れるグリップにしないと思うんだけどさ。
【高畑】それで、しっかりと筆圧かけても大丈夫なグリップになってるんでしょ?
【きだて】結果として、グリップがすごく生きてくるというか。
【高畑】あとね、筆圧かけてもインクが出てくるんだよ。筆圧かけても書けるんだよ。三菱やパイロットなんかのは、筆圧を若干セーブするとベストなんだよ。
【きだて】うん、分かる。
【高畑】だけど、トンボは筆圧かけてもいけるんだよ。これは結構すごいと思う。
【きだて】これはあれかね、スプリングレスが多少効いてるのかね?
【高畑】もしかしたら、効いてるのかもね。
【他故】あるだろうね。内側からスプリングで押しているタイプは、押しちゃうと違っちゃうからね。
【きだて】そうだよね。
【高畑】そのスプリングを戻し切っちゃうと、詰まっちゃうというか塞いじゃうから。
【きだて】要は、ボールが転がらなくなるわけじゃん。
【他故】そうだね。
【高畑】だから、ちょい浮かし気味で書いた方が。三菱やパイロットのは、ちょっとだけ上手に力を抜いてあげると、すごいきれいに書けるというのがあるんだけど、「モノグラフライト」のガリガリに筆圧をかけてもインクが出てくるところがすごいなと思って。
【きだて】うん。
【高畑】このグリップと、剛性の高いニードルで、紙にけがき線を入れるみたいな。ガリガリいくじゃん、これ。
【他故】なんか、ボールペンっぽくないんだよな。
【高畑】昔のガリ版印刷(謄写版)で、ロウ引きの原稿に刻んでいるような感じに近い。
【きだて】それこそ、けがき針でやっているような感じで。
【高畑】そうやって刻むように書く人は、これいけるなと思って。
【きだて】まさに俺は筆圧が強めなので、これはものすごく使いやすい。
【高畑】細字の中ではかなりいけるよね。
【きだて】それは間違いないね。最近、油性ボールペンは、「ジェットストリームエッジ」と「アクロボール03」のおかげで激細が注目浴びてるわけじゃない。
【他故】まあそうだね。
【きだて】要は、0.3以下って細く書けるんだけども、「細い字が書ける」と「細い字が書きやすい」は違うんだな、というのを、これで気付かされた。
【高畑】これは0.38だから、0.3ではないんだよね。
【きだて】こっちの方が太いんだけど、細かく書きやすいのよ。
【高畑】分かるよ。
【きだて】それこそ、M5システム手帳ような狭い面積の中に、狙って精密に文字を書くというのがものすごくやりやすい。
【他故】うん、分かる。
【きだて】ボール径の小ささで細かい字が書ける性能と、ボール径は多少大きくても細かく書きやすい性能って、別なんだよね。それがすごく面白い。
【他故】俺は、0.38で字を書こうとすると、自動的に文字が小さくなるんだよ。これ、大きく書けないの。
【高畑】ふふふ、分かる(笑)。
【他故】何て言うのかな、もう完全に字が小さくなっちゃうのよ(苦笑)。
【きだて】ん!?
【高畑】それはね、あるんだよ。筆記具の先端の太さとか性能によって、書く文字の大きさとかたちが変わるのよ。
【きだて】文字のサイズは分かるけど、かたちも変わるの?
【高畑】変わる、変わる。このペンだとこういう字になるみたいな。
【きだて】文字の潰れとかを気にして、字を変えていく感じ?
【高畑】例えば、ミリペンみたいなペンだと、丸ゴシックみたいな感じの文字になるんだけど、「ジェットストリーム」みたいなペンになると、トメハネをしている割と筆文字に近い明朝体になるんだよ。それで、これは割とカクカク書けるんだよね。だからゴシック体に近いような、割とタテヨコがカチカチッと留まるような書き方になるかな。これで大きな文字が書けないというのも分かる。
【他故】うん。書けないのよ。
【きだて】そもそも、こんな針みたいなもので大きな字を書く気にならないじゃない。
【他故】それもそうだけどね。
【高畑】そうだね。白っぽくなるというか、空間だらけになるからそうなんだけど。
――これ、0.5でもかなり細く書けるように思いません?
【高畑】全体的に細く見える。あんまりにじまないし。「リポーター」なんかに入っていた前のインクと比べたらね。あのインクの名前なんだっけ?
【きだて】エアータッチインクだよ。
【他故】ああ、そんな名前だったね。
【高畑】そのエアータッチインクは、ゆるくてダマになりやすい、どちらかというとぺんてるのビクーニャインクに近い感じだったんだけど、それが今回はあんまりない。
【きだて】あ、やっぱりインクも変えてるんだ?
【高畑】違うって言ってたよ。
――ニードルチップの開発に合わせてインクも新しくしているみたいですね。
【他故】ホームページで見ると「超潤滑油性」って言ってますね。“低粘度”というよりは“潤滑”の方みたい。
【きだて】そういえば、ボールの受け座も真球に近いみたいなことが書いてあったね。
【高畑】その真球に近いというのがどのくらいなのかは、他社とほぼ比べようがないからなぁ。
【きだて】でも、スプリングレスにできるぐらいの精度にはなっているということでしょ。違うのかね?
【高畑】いや、そうなのかもしれないけど。インクがゆる過ぎると、バネとかでコントロールしないと出過ぎたりするから、それがなくてもいいということは、インクの粘度とボールのすき間とかが絶妙にいいのかな。
【きだて】ちゃんとバランスをとってるのかな。
【高畑】でも、メカ的に精度が高いんだろうな。多分どっちかにブレるとインクが漏れるとか詰まるとかになるんだよね。それがなくてこんなに書きやすいというのは、そのバランスがいいんだろうな。
【他故】そうだろうね。
【高畑】この安定感はなかなかないよね。この細さで心配事がないというか。
【きだて】この1年の油性ボールペンではベストかな、というぐらい気に入ってるね。
【高畑】すごく良いよね。その気持ちは分かる。
【他故】前のトンボのインクの色がちょっと分からないんだけど、「モノグラフライト」の青インクがものすごくきれいだなと思って。このMONOストライプの青色がそのまま出るのよ。
【きだて】あ~はいはい。
【他故】すごい良い色だなと思って。
【きだて】今までそれを感じたことがなかったから、やっぱりちょっと変えてきているのかな。
【他故】ちょっと変えてきているのかなというぐらい、すごい良い色で。
――ふむ。
【他故】本体の性能とは関係ないんだけど、0.38と0.5で何でこんなにインクの量が違うの?
【高畑】筆記距離を合わせてインクの量を調節したとか。そんな気がしない? 0.38と0.5だとこのぐらいのインク量の差が出るでしょう。
【他故】不思議でしょうがなかったけど、そういう可能性もあるのか。
【きだて】答えとしては、文具王が言ったことが正解な気がするね。(*メーカーに問い合わせたところそれで正解とのことです)
【高畑】でも、この細いボールペンの中では、かなり気に入ってますよ。でも、「モノグラフ」のユーザー層に訴えたかったんだと思うけど、そうだとしたらこのグリップのゴツさ加減はどうなの。だって、「モノグラフ」ってこの間から超かわいくなってるじゃん。
【きだて】透明カラーのも出たしね。
【高畑】もうちょとかわいくしてもよかったんじゃないのという気が俺はするんだけど。もちろん、きだてさんにはこのグリップが絶対にいいと思うよ。
【きだて】そうだよ。でも、今までのルートから急にこれで大丈夫かというのも分かる。
【高畑】トンボって、かわいい方に振るんじゃなかったのか? とふと思ったので。
――油性ボールペンだと女子は使わないと思ったからじゃないですか。
【高畑】あ~そうなのか。
【他故】どっちかというと、そうかもしれないですね。
【高畑】これ、189円だからというのもあるけど、クリップが華奢じゃん。
【他故】華奢だね。
【高畑】だったら、これ「ZOOM」で作ろうよって思うんだけど。
【きだて】あ~、はいはいはい。
【高畑】このリフィルを使える本体が「ZOOM」にないのかな?
【他故】このかたちはどうかな? 分からないな。
【きだて】これ「ZOOM」で出てくれると買っちゃうな。
【高畑】ここまでくると、ちょい高級軸欲しくなりません? 1,000円ぐらいの軸欲しいよね。
【他故】うん、分かるよ。
【きだて】1,000円で、これと同じグリップを使ってくれるかどうかが気になるけどね。
【他故】あ~このかたちということね。
【高畑】どうだろう? でも、このギザギザはいいよね。
【きだて】単なるローレットとかで代用されたら怒るぞっていう。
【他故】ははは(笑)。
【きだて】これって、割と指紋に噛み込む系のガッチリさじゃん。何かね、すごい気持ちいいのよ。
【他故】シルバーの軸が、そのまま高級になってくれればいいというイメージじゃないかな。
【きだて】あー、それだといいね。
【他故】これがそのままグレードアップしてほしい。
【高畑】そうね、軸を金属で作って、クリップとかもメタルにしてくれれば、結構いい感じになりそうな気がするんだけどね。だから、高級軸は欲しいね。
【きだて】欲しいね。
【高畑】それにしても、今回ここにMONOの3色ストライプを入れたのが、未だに「これでいいのか」という気がするんだけど(笑)。
【きだて】「モノグラフ」だからしょうがないといえばそうなんだけど。
――でも、MONO軸が一番売れてるんじゃないですか。
【他故】MONOストライプの黒は売れちゃってましたね。
【きだて】そりゃ、買うんだったらMONOストライプになるんだけど、納得はいかないんだよ(笑)。
【高畑】だって、普通に考えれば、商品名は「モノグラフボール」でしょ。
【他故】まあ、そうだね。
【高畑】「モノグラフライト」って何なの?ってなるじゃん。
――まあ、軽い書き味なので“ライト”なんでしょうけど。
【高畑】いや、そうだけどさ、それ以前にボールペンじゃないかっていう(苦笑)。
【他故】そうか、これボディのどこにも「ライト」って書いてないんですね。「モノグラフボールポイントペン」って書いてある。
【きだて】色々と錯綜のにおいを感じるな(笑)。
【高畑】ただ油性ボールペンを出すだけじゃなくて、何かブランドが欲しかったんだろうね。
【きだて】自信を持って出してよかったと思うな。
【高畑】そこは本当にそう思う。そのぐらい良いと思うよ。
【きだて】トンボさん大丈夫、これは良いペンだよ。
【他故】これはいいっすよ。
【高畑】このペンの良さについては全会一致で良いんじゃないですか。
【きだて】この鼎談を読んで、「知らなかった」という人には買ってみてほしい、というぐらい良いペンだよ。
【高畑】「1回触れ」って言いたいペンだよ。
【きだて】損はしないので、とりあえず1回触ってみてほしいね。
――これは「OKB48」に入りますか?
【高畑】これは入ってくるでしょう。
【きだて】どれだけ票が伸びてくるのか楽しみではあるね。
【高畑】今回分かったのは、細字にしてみると、案外個性が出るなということ。三菱鉛筆とパイロットとトンボ鉛筆の書き味がみんな全然違うじゃない。
【他故】そうそう。
【高畑】明らかに違いが出てきて、大体同じというわけにはいかないなというのがよく分かったので、ライバルが出てきてよかったね。プロフィール
きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/
*このほか、ブング・ジャム名義による著書として『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)と、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。
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