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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.45 ブング・ジャムの2020年ベストバイ文具(その1)

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回はブング・ジャムのみなさんの2020年ベストバイ文具を紹介してもらいます。

第1回目は他故さんのベストバイ文具PLOTTER ミニ5穴リングレザーバインダー」です

写真左から高畑編集長、他故さん、きだてさん) *2020年6月25日撮影
*今回の鼎談は11月24日にリモートで行いました。

肌身離さず持てるシステム手帳

集合_イメージ.jpgPLOTTER(プロッター) ミニ5穴リングレザーバインダー」(デザインフィル)

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――今回は、2020年のみなさんのベストバイ文具をご紹介いただければと思います。まずは他故さんからお願いします。

【他故】先日、ライフの「スイトリシオリ」を紹介したときにすでに見せているんですが(こちらを参照)、「プロッター」のM5システム手帳です。元々システム手帳が好きで、色々と買っていたんですが、ここのところは必ずしもシステム手帳に偏ってなかったんです。M5っていうサイズが流行っているのは知ってたんですが、今ひとつ乗り切れないところがあって。このぐらい小さいと、バインダーから一々紙を外さないで書きたいじゃないですか。多分そうじゃないかと思うんですけど。他のシステム手帳だと、僕は割と外して書く派なんですね。

【高畑】ああ、そうなんだ。

【きだて】リングもジャマだしね。

【他故】どちらかというと、バイブルぐらいの大きさでも外して書いちゃうんですよ。でも、M5ぐらいの大きさだと、付けたまま書きたいなと思っていたけど、割と売っている革バインダーが、表紙裏に段差のあるポケットとかいっぱい付いていて。

【高畑】そうそう、それなんだよ。

【他故】「何か、書きづらいんじゃない」ってずっと思ってたんですよ。解決策がないままだったので、M5も興味はあるけど、なかなかバインダーが買えないなと思っていたときに、「プロッター」からM5が出た。「プロッター」を知っている人なら分かると思うんですけど、1枚革なんですよ。まるまるの1枚革で、裏側に何もポケットが付いていない状態のやつで、これだと段差ができようがないので、ようやく試してみたいM5のカバーができたなということで、早速買ったんですけど。一番最初のシーズンで買おうと思って待ってたら、赤以外全部売り切れちゃったんですよね(笑)。それで赤いバインダーを買ったんですが、赤いシステム手帳は持ってなかったので、すごく目立つし、今はお気に入りです。いつも大体、黒を買うんですが、今回は赤でよかったなと。

――ほう。

【他故】何が良いって、常に持ち歩ける大きさなんですよ。完全に、ワイシャツの胸ポケットに入っちゃう。それまで一番小さかったのがミニ6穴だけど、ミニ6穴は小さいは小さいんだけど、胸ポケットには入らない。上着のポケットには入るけど、シャツのポケットに入らなかった。これだと、ワイシャツの胸ポケットにも入って、ようやく肌身離さず持てるバインダー手帳になったというのがすごく嬉しくて。それで、毎日持ち歩いて、必要があれば色々と書いたりして、かなり良いパートナーになってるんですわ。

【高畑】ふむ。

【他故】これ、紙が割高なのもあって(笑)、ちょっと躊躇する使い方をしているところもあるんだけども、「常に紙を持ち歩きたい」と言っていた人間なので、こういう風にバインダーのかたちで紙が常に持ち歩けるというのは、本当に嬉しいなと。買ったのは9月かな? それから肌身離さず持ち歩いていているので、これが今年の僕のベストバイです。

【きだて】他故さん的に、そのM5の紙の大きさはどうなの? 物足りなくないの?

【他故】結局は、小さいなら小さいなりに、どんどん書いていくのよ。1枚にたっぷり書きたいわけじゃなくて、メモ的なものをたくさん書くというのが、全然こだわりなくできるので。枚数が増える分には気にならないというか、むしろバイブルの大きさだと、メモで使うにはもったいなかったのね。

【高畑】1件1枚というカード的な使い方だと、もったいないよね。

【他故】ちょっともったいない。1件1枚で裏側は使わないみたいな、古いシステム手帳ユーザーの考えを持ったままなので(笑)、ちょっともったいなかった。でもM5だと、ただのメモでも普通に埋まるので。気軽に使えるのがいいなというのがすごくある。

【きだて】すごく分かる。B6サイズのリングメモなんかは、ペンの試し書き用とかに使うもの。サイズ的にそれぐらいで充分という。

【他故】うん、全くその通り。

【高畑】最近、M5がすごい流行ってきてて、リフィルも増えたよね。

【他故】増えた。

【高畑】いろんなメーカーが出すようになったし、小さいメーカーからも出ているから。

【他故】そう。

【高畑】他社品も使えるし。「プロッター」の紙って、2㎜方眼でめちゃ小さいじゃないですか。これはこれで書けるんだけど、「ダヴィンチ」のトモエリバーでできている普通の罫線のやつなんかを入れればいいなとか、色々と試しているんだけど、全然快適だし。他故さんが言った通りで、システム手帳ってカバーの裏側にポケットが要らないと思っていて。

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【他故】要らないよね。

【高畑】「文具王手帳」みたいに、「おサイフです」といって何でも入るというのだったらアリなんだけど。ノートとして使うんだったら、「プロッター」って案外いいぞという話なんだよね。

【他故】そうそう。

【きだて】俺は使ってないけど、M5サイズのバインダーを手に入れたら、名刺入れと兼用にしたくてたまらないと思うんだよ。

【他故】あ~そうね。大体同じくらいだ。

【きだて】名刺よりひとまわりでかいくらい。

【他故】大体同じようなサイズかな。

【きだて】やっぱりね、ポケット欲しくなっちゃうと思うんだけど、実際使ってみると、そういう追加要素のない軽快さの方が楽なものかね。

【高畑】リフィルと一緒にはさめる透明な袋はあるのね。そういうのを使ってあげると、それはそれでという感じではあるんだよ。

【他故】何枚か予備で名刺を入れるためのビニールポケットだったら構わないけど、僕は完全にこれをメモ専用として使っちゃってるので、メモリフィルばっかりだし。文具王がさっき言っていたけど、リフィルが増えてきていて、遊びっぽいものとか選べるやつがいっぱい出てきて面白い。僕もアシュフォードのちょっと厚めの黄色とピンクの紙を使ってるんですけど、これ切れ目が入っていて、リングを開かなくてもそのまま外せるんですよね。

――は~。

【他故】それがすごい楽ちんだというのと、あとこのシリーズは、上下に切り欠きが入ってるんですよ。切り欠きがあると、バイブルサイズに綴じられるんですよね。

【高畑】そうそう。

【きだて】あ~、はいはい。

【他故】切り欠きがないと、ほんのちょっと引っかかっちゃうんだけど、切り欠きがあるとバイブルに綴じられるので、バイブルが母艦にできるんですよ。

【高畑】穴の間隔は一緒なんだよね。だから、そういう使い方もできますよという。

【きだて】その辺りは面白いよね。

【他故】そういう使い方もできるし、私の大好きな「ヌルリフィル」もM5サイズで出ているので(笑)。

――ナガサワ文具センターで出しているやつですね。

【他故】そうです。だいぶリフィルも拡充してきて面白いというのもあるので。ただ、手に入れやすいというほど安くはなかったかな。

――それは税込8,250円ですね。

【他故】結構するな(苦笑)。

【高畑】まあ、バインダーで長く使えるというのを考えると、普段使いの手帳としてずっと使うんだったら、これはこれでアリかな。でも、きだてさんが言ったみたいに、名刺とか色々入れ始めると紙が入らなくなるんだよね。

【きだて】まあ、そうかな。

【高畑】そんなにリングも大きくないから、他の機能を入れると、その分だけ入らなくなるし。だから、これは本当にメモ帳なんだよね。

【他故】うん。

【高畑】書いた後で、要るものだけ安い保存用のバインダーに移して、それ以外のものは捨てるという感じの使い方に僕もしてる。使い勝手は、思ったよりもいい。

【他故】そうそう。

【高畑】今年は、予定を書く手帳も小さくしたんだよね。これは、ノートとしては使えないのね。1日に書くスペースがそんなにないから、ちゃんと書こうと思ったら、メモ用のこっちに書くので。だから、今は2冊持ちなのね。これがいいのかどうかはまだ分からないんだけど、両方とも同じ大きさだからポケットにも入るし、結構いいなと思って使ってる。何も付いてないからいいというのは、この大きさになるとそうだね。

【他故】そうね、本当にシンプルで。メモの紙を持ち歩く、そういうシステムだと思っているので。私のように、常に紙が手元にないと不安になるタイプの人は、ぜひこういうのを使ってもらうといいんじゃないかな。

【きだて】紙ジャンキー(笑)。

【他故】ペンは持っているけど紙がないというパターンが多いので(笑)。

【高畑】きだてさんは、名刺に5穴の穴をあけて、リングにはさんでおけばいいんじゃない?

【きだて】M5用の穴を開けた名刺って、人に渡せないだろ(笑)。

【高畑】これはレイメイのだけど、透明ポケットリフィルに名刺が入るかな?

【他故】多分入ると思うよ。

【きだて】バインダー自体が、名刺よりひと回り大きいサイズだから。

【高畑】ああ、入るね。そんなにたくさんじゃなくて、2枚ぐらいだったら持っていてもいいかもね。僕も何で、ここにポケットを取り付けているかというと、透明なポケットがあると、取っておかないといけないレシートなんかが、俺はすぐズボンのポケットにクシャクシャと入れちゃったりするから、そういう何か取っておかないといけない何かを入れるために、これを付けている。おサイフとしては、「文具王手帳」を使っているので、あくまでこれは臨時のモノ入れ。

――はい。

【高畑】いや僕もね、他故さんと同じブームなんですよ。

【きだて】しかしいつからだね、こんなにM5が流行りだしたのって?

【高畑】最近じゃない?

【きだて】最近だよね。

【高畑】出始めたのは、去年ぐらいじゃないかな。

【他故】多分、そんなもんじゃないかな。

【高畑】システム手帳がもう一回流行ってるじゃない。ちょっと前にシステム手帳が再生し始めたときに、文具女子博だ何だというところで、さしかえができる“映える手帳”としてのA5サイズというのがあってさ。A5サイズがブワーッといったんだけど、A5サイズはきれいに書けるけどでかいというのがあって。

【他故】そうだね、デカいね。

【きだて】手帳としては、A5はデカいな。

【他故】持ち歩くにはデカ過ぎるからね。

【高畑】それで小さいのが出てきたというのと、やはりインク沼で、1枚1枚が小さいから、書いたインクのコレクションで、インク帳として使う人が出てきたりとか。これとセーラー万年筆の「プロフェッショナルギアスリムミニ」と一緒に持ってると、割とちょうどいい大きさだったりするんだよね。

【他故】はいはい、そうだね。

【きだて】ミニチュア感あるよね。

【高畑】そういうかわいさはある気がするな。「プロッター」は最初、「M5は作らない」と言ってたんだよ。

【きだて】そうだっけ?

【高畑】「プロッター」は、カッコいいおじさん向けだったんだよ。

【きだて】コンセプトとしてはそうだよね。

【高畑】元々そういう人たち向けだから、全体的にハードな方向に向いていたじゃないですか。でも、世の中のブームに逆らえなくなった。と俺は思ってるんだけど。かわいいのを作っちゃって。

【きだて】でもさ、「プロッター」のこのつくりって、小さければ小さいほど生きるつくりじゃん。ポケットの厚みなんかも、小さい方が響くわけでさ。

【他故】まあ、そうだね。

【きだて】だから、「プロッター」のM5は割と必然なんじゃないかとすら思うんだけどね。出た後に思うと。

【他故】出た後はね。

【高畑】逆にいうと、それまで色んなメーカーが小さい手帳を作るにあたって、すごく丁寧に丁寧に小さくポケットを作ってたんだよ。名刺が入るところとか。でも、結局あんまり入んないじゃん。あとペンループとか付けても、入るペンが多くないしさ。

【他故】そうだね。

【高畑】そういうところを割り切った仕様だったのが、逆によかったのかな。

【きだて】だって、このサイズでペンループを付けたら、ペンループがでっかく見えるじゃん。

【他故】M5のペンループって発売してるんだけど、細いやつしか入らないんだよ。だから、普段使いのペンはどっちにしても入らないのね。

【きだて】まあ、そうなるよね。

【高畑】これにペンループとか色んなパーツを付けていくと、本来の小ささがどんどん分からなくなってくるんだよね。

【他故】これが出っ張ったり、ふくらんだりしたら、魅力が半減すると思うんだよね。

【きだて】そらそうだね。

【高畑】僕は、透明な袋を1枚入れているけど、それ以外はリフィルの普通の紙しか入ってないのよ。ゴムバンドすら付けてなくて、このまま入れてる。そうしたら、すぐ開けて書けるので、これでいいやと思っていて。今までのシステム手帳に感じたことのない、そのシンプルな感じがいいなと思って。

【きだて】他故さんは、何かオプショナルなことはしてないの? さっき、紙を色々と試してると言っていたけど。

【他故】今のところは、オフィシャルで出しているゴムバンドと、プラスチックのリフター。これは入れてる。かつてシステム手帳を使っていたときの記憶があって、リフターでど真ん中を開けるというのに慣れちゃってるので、これがないと僕はダメなんですよ。書いたところと、書いてないところを分けるのに、このリフターは必要なので。ただ、残念だなと思うのは、最近リフターって、タブがみんな上なんだよね。

2.jpg【高畑】あ~。

【他故】システム手帳ユーザーって、昔の人になればなるほど、下タブなんだよ。下で開けるんだよ。

【高畑】そう、分かる、分かる。

【他故】だけど、そういうデザインのやつがあんまりないんだよね(レイメイ藤井の「下敷き&スケール」は下タブです)。

【高畑】今、上下逆さまにはめてるの?

【他故】そう、逆さまにはめてる。デザイン的にはどっちでもいいけど、みんなもう便利とかじゃないんだなと、僕はどうしても古い人間なので、そう思ってしまうんですよ。

【高畑】逆に、そこまでシンプルにするんだったら、その分度器要らないと思うんだけど。

【他故】これが何であるのか、ちっとも意味が分からない。

【高畑】ゴムバンドのところにも、文字の見本みたいなのがいっぱい書いてあるけど。

【他故】これは、世界時計みたいなやつね。

【高畑】そこはiPhoneあるから要らない。真っ黒がよかったかなと思う。

【きだて】「プロッター」はバインダーのデザインはすごく好きなんだけど、オプションのそのセンスはオッサンくさくて苦手なんだよ(笑)。

【高畑】でも、「プロッター」オリジナルで悪くないかなと思うのは、リフィルがノートみたいに片面が綴じてあるのね。それを書いて、ちょっとずつペリってはがしていくのは嫌いじゃない。

【きだて】それは、出た当初から、みんな割と「いいね」って言ってたよね。

【高畑】同じデザインフィルの「パッとメモ」と一緒だよ。まだ書いてないところがかたまってて、はがしたところが書いたところいう。この手帳もそれができるんだよね。それが、僕としては割と気に入っていて。かたまってると、やっぱりかたまりで動くんだよ。リフターは使ってないんだけど、かたまりを持ち上げると、使うページが開くという感じがあって割といいなと思って。

【他故】ああ、なるほどね。

【高畑】といういことで、僕もM5はすごい好きですね。

【他故】なので、こういう小さい手帳を試したいなという人にはおすすめです。

*次回はきだてさんのベストバイ文具「ダンボールカッター」を紹介します。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。

たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


*このほか、ブング・ジャム名義による著書として『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)と、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。

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