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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.43 ブング・ジャムおすすめの最新手帳便利グッズ(その2)

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回はブング・ジャムのみなさんがおすすめする最新手帳便利グッズを紹介します。

第2回目はきだてさんおすすめのキングジム「おおきめシール」です。

写真左から高畑編集長、他故さん、きだてさん) *2020年6月25日撮影
*今回の鼎談は9月28日にリモートで行いました。

1日1ページ手帳ビギナーには大きめサイズがおすすめ!

おおきめ1.jpgおおきめシール」(キングジム)

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――次はきだてさんですね。

【きだて】えっとね、前々から思ってたことなんだけど……1日1ページタイプの手帳を書ける人って基本的には、特殊な訓練を受けた才能のあるアスリートじゃないですか。

【高畑】まあ…それはそうね。そう思う。

【きだて】それだけハードな行為を「山ガール流行ってるよね。高尾山いっしょに登る?」ぐらいのお手軽感覚でオススメしちゃう人たちってどうなん?という憤りがあって。

【他故】わはは(笑)。

【きだて】ぶっちゃけ、1日1ページ手帳は、冬の剱岳レベルだから。ちょっとでも油断すると死ぬやつだぞっていうのを、誰も言わないんだよ。あれは良くない。

――ふふふ(笑)。

【きだて】平然と「ほぼ日って素敵だよね」とか、「モレスキンおしゃれだよ」とか言うけどさ、世の中の大半の人はそれを使いこなすための才能がないし、訓練もしてない。

【高畑】というか、体力が要るよね。

【他故】ああ、体力は要るね。

【高畑】1年通して使うというのは、剱岳みたいな状況で、4合目ぐらいで諦めちゃう人はいっぱいいるわけじゃないですか。

【きだて】そうそう。なのに、オシャレだの素敵だのってワードで誘惑して、気軽に使わせるんじゃないよ、と。そもそも手帳って、フォーマットがガチガチに決まっているほど使いやすいわけじゃない。日記も然り。

【他故】まあ、そうだよね。

【きだて】極論を言えば、書くところを可能な限り削って、最終的には今日の天気欄で「晴れ・曇り・雨」にチョンってチェック入れればそれだけで済む、ってのが一番ベストで。

【高畑】は…はい。まあ…。

【きだて】そこを分からないままに騙されて、1日1ページ手帳を買っちゃう人たちが後を絶たないわけですよ。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】樹海に迷い込むみたいな言い方だな(笑)。

【きだて】本当に迷い込んで死んじゃうわけじゃない、そういう人たちは。

【高畑】なるほどね。

【きだて】だからせめて、そういうしんどい思いをしてる人たちへの救済策はないのか、というのを考えてて。で、それに対してキングジムが打ち出した答えが「おおきめシール」だなと思って。

【高畑】なるほど。

【きだて】ザックリ言えば、手帳の空いたスペースを埋める穴埋めシールなんだよね。例えば、1ページ手帳だけど2、3行書いたらもう書くことなくて、広大な白い空間が残ってるときでも、シールをペッペッと貼っちゃえば見た目的には「おっ、しっかり埋まった」って感じで場が保つんだよね。

【他故】おお。

【きだて】面白いのは、シールの形がページの角に貼りやすいとか、丸囲いっぽくなってるとか、タテの空間を程よく占めるとか、手帳の空間を埋めるのに最適なかたちのものがいっぱいあるんだよ。柄もボタニカルなのとか動物キャラとかいろいろあって。

【他故】結構種類があるんだよね。

【きだて】柄は10種類ぐらいあったかな。さらに、シールの絵柄の周りに透明のフチがあるんだけど、そのフチがかなり狭くギリギリになってるの。だから、貼った時に手書きした部分に干渉しにくいし、あからさまにシールを貼った感がなくて目立ちにくい。

【高畑】ほう。

【きだて】しかもイラストが手描き風なのね。ちょっと気の利いた人が、力を抜いてゆるいイラスト描きましたぐらいの雰囲気なので。

【他故】あ~なるほど。

【きだて】手書きの文字に、全然ケンカしないのよ。例えば、女の子の丸っこい文字でも合うし、ボタニカルのシャープ系のイラストだとちょっと大人びた文字でも合うしという感じで、自分の文字に合う絵柄を探しやすいのよ。

【他故】このシールって真四角なの?

【きだて】真四角じゃない。本当にこの絵柄のフチギリギリになってる。

おおきめ2.jpg【他故】ああ、そうなのね。

【きだて】だから、このシールを貼って、すぐそのそばから文字が書ける。

【他故】そうか。

【きだて】というので、これさえ貼っておけば、とりあえず1日1ページ手帳は書ける。

【他故】書けるんだ。

【きだて】1日1ページ手帳が剱岳だとしたら、このシールによって8合目まではクルマで通れるようにしましたぐらいの感じになるんですよ。

【他故】確かに、気楽になるね。

【きだて】ねえ。何てやさしい救済策だろうと思って。

【他故】うん。

【きだて】逆に、ほぼ日がこれを出さないといけなかったんじゃないの。

【高畑】ははは(笑)。大胆にでかいのがいいんでしょ?

【きだて】そう。「おおきめシール」と言っているぐらいだから、手帳のスペースをガバッと奪ってくれるのよ。

【他故】はいはい。

【きだて】フレークシールなんて、何枚貼ったって穴埋めにならないじゃん。

【高畑】むしろ、書けるところが少なくなる方がいいということだね。

【きだて】そうそう。こっちとしては、シール9割ぐらい貼りたいぐらいなんだから。

【他故】9割(笑)。

【きだて】書く事ないでしょうよ、そんなに。

(一同爆笑)

【きだて】お前は昔の文豪かっていう。

【他故】いやいや(苦笑)。

【高畑】きだてさんのその持論の極端なところがいいな(笑)。

――でも、この間文具店を取材したら、キャラクターのイラストがドーンと載っていて、あんまり余白がない手帳なんかがありましたよ。

【きだて】そうそう。本来それが正しいんですよ。

――それはきだてさんの言う通りですよ。

【きだて】だって、無理なんだもん。1日1ページなんて、できるわけがない。そんなのは、1万人に1人しか選ばれないスーパーエリートにしか書けないんです。だからね、救済策としてシールというのは本当にいいし、大きめというのがまたいいし、手書きに合うというのもまたいい。しかも、手帳で「ここが空くだろうな」という四隅とか、あとライン的に入れられるものとか、そういう気の利いたかたちになっているのは、キングジムよう研究したなという感じで、すごい面白いのよ。

【他故】へ~。

【きだて】これがもっと大量生産されて、ガンガン使えるぐらいの値段になってくれれば、多分1日1ページ手帳難民たちも救われると思うんだ。魂が。

【高畑】魂が救われる(笑)。

【他故】これさ、さっきからチラチラッと見てたけど、絵柄の下の方に黒いのなかった?

【きだて】あっそうそう、これシークレット。

おおきめ3.jpg【他故】シークレットって何?

【きだて】いや、だからシークレット。

【他故】ええっ!?

【きだて】シークレット図柄のシールが1つおまけで付いてるんですよ。

【高畑】それは、買ったモノによって違うの?

【きだて】1つの柄につきシークレットは3タイプあるの。だから、同じ柄のシールを買ってもシークレット部分は別になるかもしれない。

【高畑】シークレット以外は共通なのにということ?

【きだて】そう。

【高畑】へぇ~。

【きだて】ちょっと買いだめしても、このシークレットのところが違うから、また違った使い方ができるなとか。

【他故】ほぉ~面白いな。

【きだて】ちょっと射幸心をあおるというか。

【他故】その「シークレット」っていうシールは手帳に貼れるの?

【きだて】これは貼れないっていうか、何で貼りたいんだよ(笑)。

【他故】もう一枚お得なのかなと思って(笑)。

【きだて】いやいや(苦笑)。

【他故】例えば、シールを貼って、その上にその「シークレット」というやつを貼ってというのは無理なんだよね。

【きだて】うん、それはできない。

【他故】だから、自分シークレットみたいなページを作るのはできないんだね。

【きだて】そうそう。そこまで面白ではないね。

【高畑】それ何が出てくるのかなと思ったら、割と普通の絵柄が出てくるんだ(笑)。

【きだて】突飛なものではなくて、本当におまけ感覚だよね。何が当たるか分からないくらいのおまけという感じで。

【高畑】ふ~ん。

【きだて】だから、おまけのシールが使えなくて損したということはないんだよ。同じシリーズの絵柄だから。

【他故】はいはい。

【きだて】そういう意味では、輪を乱さない。

――「シークレット」というやつは、のり付けすれば貼れるなとふと思ったんですけど(笑)。

【きだて】それは貼れるけど。

【他故】シールじゃない。

【きだて】ていうか、君たちは何を隠したいの? 手帳の何を隠すの?

――いやいや(苦笑)

【きだて】そもそも、手帳は他人に見せないものだから。

【高畑】まあね。

【きだて】でもさ、手帳をインスタに載せたりとか、自己顕示的な部分はあるわけじゃない。あれは、アスリートとして自分の能力を見せつけて、承認欲求を得ているわけでしょ。

【高畑】まあ、どちらかというとそうだよ。そこに憧れた人たちが使おうとするけど、なかなかそれを全部できるという人は少ないというのは確かだね。

【きだて】そうなってくると、手帳が無駄になってくるわけじゃない。お安くないよ、ほぼ日もモレスキンも、1日1ページのおしゃれなやつは。

【高畑】なるほどね。

【きだて】それを10月か11月に買って、年明けから使い始めて、1月のまあ4日ぐらいで挫折するわけじゃん。

【他故】早いな(笑)。

【きだて】そんなもんだろ。3日もよくやったよ。

【高畑】そこに“きだて福造”が、「ホーッホッホッホ、あなたの手帳のスキマをお埋めしましょう」って現れるんでしょ。

【他故】あははは(笑)。

【きだて】それが言いたかっただけだよな。

【高畑】はい、言いたかっただけです。

【きだて】そこで手帳を買い替えるよりは、ちょっとおしゃれに使い切ったという自信を持つのと、買い替えるコストを抑えるという意味でも、このシールでつなぐというのもいいと思うんだよ。

【高畑】このシール、だいぶ消費するな。

【きだて】残りの360日、これを買い続けるのかと思うとゾッとはするんだけど。

【高畑】むしろ、気が付くと術中にはまってるな。なるほどね。そのでかいシールという発想が、ちょっと雑だけどいいっていう(笑)。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】でかいシール貼っちゃえというのが、考え方としてちょっと乱暴じゃん。

【きだて】そうそう。

【高畑】だけど、案外それで救われてしまうというお手軽な感じもあって。

【きだて】乱暴なんだけど、これ以外に救済の道がないんだもの。考えてみると。

――絵心もない人もいますしね。

【高畑】いろんなグレードとバリエーションがあって、例えばマスキングテープやフレークシールだったり、いろんなものが間にあるわけなんだけど、その中で一番手っ取り早く、ペタンって貼っちゃうという。

【きだて】マスキングテープだって、きれいにデコりつつ貼るは結構センスが要るよ。

【高畑】まあね。だから、そういうのを考えると、ということだよね。

【きだて】そう、だって図柄が揃っているんだから、ベタベタと適当に貼っていくだけで、統一された見た目になるんだもの。

【他故】それはそうだね。

【きだて】そういう意味で、手帳弱者を救うための救済アイテムとして、これはとても素晴らしい、優しさにあふれたものだなと思う。

【高畑】おお~(笑)。

【きだて】手帳をそんなに使うことのない俺でも、これはハッとさせられたもの。偉い。

【高畑】なるほど、偉いね(笑)。

【きだて】どういう人が何に困っているのかというのを、ちゃんと吸い上げられているわけじゃん。

【高畑】まあね、困ってまで使いたいんだろうな。手帳書かなきゃいいじゃん、というわけにはいかないんだよね(笑)。そこは、手帳を書いて、シールを貼ってそれっぽくしたいんだよね。

【きだて】だって、それまでの盛り上がりがあるじゃない。手帳を買うまでの。

【高畑】あ~確かにそれはある。

【きだて】インスタとか、いろんな雑誌の記事で素敵な手帳の作例を見て、「あたしもこれをやりたい」とか思って、盛り上がって買うわけじゃん。できなかったときに、そんな盛り上がりの気持ちを、どこにぶつければいいのさ。

【他故】どこに(笑)。

【高畑】4日目で挫折したあとの361日がつらいわけだ。

【きだて】そう。そうなって自分を傷付けて鬱々とするのはよくないじゃん。

【他故】まあ、それはね。

【きだて】「私はできない子だったんだ」って思うの嫌じゃん。そういう人をなんとかしたいという気持ちだと思うんだ。

【高畑】なるほど。

【きだて】おしゃれだからって、安易に1日1ページ手帳を薦めちゃうような人たちとか、「バレットジャーナル最高」とか言っちゃってる人たちとか、そういう人たちは責任をとらないわけですよ。誘導するだけしといて。

【高畑】はいはい。

【きだて】そんなの、ハーメルンの笛吹きと一緒ですよ。

【高畑】ハーメルン?

【きだて】かわいそうなネズミたちは、もう断崖から飛び降りるしかないわけでさ。

【他故】ははは(笑)。

【きだて】それが、このシールがあれば、とりあえず残りの361日つらい思いをしなくてすむので。

――むむ(笑)。

【きだて】もう今年もぼちぼち出てくるよね。1日1ページ手帳をダマされて買っちゃう人。

【他故】来年のはもう売ってるからね。

【高畑】期待に胸を膨らませるだけ膨らましている人はいるよね。

【他故】たくさんいるよ。

【高畑】こういうのは、今日から書ける手帳は少なくて、来年の1月からだからね。あっても11月からとかだし。

【きだて】そう思うとさ、1日1ページ手帳を買った人は、とりあえずダマされたと思って、何枚かこのシールを買っとけと。

【高畑】なるほど。

【きだて】使わないで済むなら、あなたはエリートだったという証拠なので、それは祝うべきことだけれども、そうじゃないことの方が多いから、とりあえずシール買っとけという。

【他故】ははは(笑)。

【きだて】本当に、それは思うね。今年、何人が事故にあって、つらい目に遭うのか分からないけど。冬の剱岳登山で、何人が命を落とすかという話じゃない。よくないからね。

【高畑】きだてさんが話すと、続かないことへの説得力がすごいな(笑)。

【他故】わはは(笑)。

【きだて】みんな続かないんだって。

【高畑】まあ、それは分かるな。

【きだて】それで、「続かないのは私だけで、みんな続いているんだ」と思うの嫌じゃん。

【他故】それはまあね。

【きだて】9割9分の人が続きません。大丈夫!

――これ、発売日が今年の1月末になってますね。だから、ちょうど続かなくなる頃にこれが出たということですか?

【他故】そこを狙って(笑)。

【きだて】キングジムはタイミング上手いな(笑)。

【高畑】続かなくなる頃に発売するというのが、なるほどね。

【他故】「1カ月経ったけど、みんな書けてる?」って(笑)。

【きだて】もうね、弱った人の心につけ込むこの商売(笑)。

【他故】「そんな時にこれ」っていう(笑)。

【きだて】俺は基本的に「いろんなことができない人」なので、同じ立ち位置でしんどい思いをしている人たちのためにも、こういうものはガンガン紹介していきたい。

【他故】結構気に入った点があって、これ弱粘着なのね。

【きだて】そうそう。

【他故】何回も貼ってはがせるのね。

【きだて】手帳をきれいに仕上げられるセンスを持ってない人は、シールだっていきなりベストな場所に貼れない。迷う。

【他故】ねえ。

【きだて】そういうときに、貼ってはがせるのは大事だよね。

【他故】貼り直しできるのはすごいな。それいいよ。

【きだて】もしくは、5月くらいになったら、1月に使ってたシールをはがして再利用したっていいわけじゃん。

【他故】どういうことだ(笑)。

【きだて】もう、そこまでは振り返らないだろうから、再利用という手もあるよ。

【高畑】なるほど、今日のページを開いて写真撮っちゃえばいいものね。

【きだて】そうそう、それでインスタに載せちゃえばいいじゃん。バレる人にはバレるけど、分からなきゃ「おしゃれな手帳になってますね」になるんだから。大事だよ、ということでした。

【高畑】冷静に聞くと、結構乱暴なことを言ってるなと思うんだけど(笑)、まあでも手帳グッズの在り方ってさ、一方ではエクストリームな感じで、真っ白なノートを買ってページを全部自分で作るようなハードな人たちがいるわけじゃん。バレットジャーナルも、本来そういうものかというとそうでもなかったと思うんだけど、今や手作り手帳でフルカスタムみたいな感じになっちゃってるじゃないですか。そういうのが片方でありながら、デザインフィルのあのでかいスタンプもそうだと思うんだよ。「ペインタブルスタンプ」か。

【他故】間違いなくそうだよね。

【高畑】小っちゃいのは一発で終わらないから多分そういうことなのかなというのは、きだてさんの話を聞くと「そうかもな」と思うよね。1個シールを貼ることで、何割か面積をズバンと押さえてくれるというのは。

【他故】MAP兵器だよ(笑)。

【きだて】これの作例を作るために、しばらく1日1ページ手帳をつけてたんだけど、使えば使うほど心が安らぐというのが分かった。

【他故】安らぐんだ(笑)。

【きだて】貼った瞬間に「ああ、もうこの面積分は書かなくていいんだ」と。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】きだてさんにとっては、手帳の大平原みたいなのが、ある種の重荷というか、「やらなきゃいけない」という義務感が広がっているんだよね。

【きだて】っつか、俺は、手帳を買うことってある種の義務感も一緒に背負うことだと思ってるのね。

【高畑】それはそうだと思う。

【きだて】トータルで見れば自分に対する義務だけど、他にも周囲への義務もあったりで、いろいろとややこしい話になるんだけど。

【高畑】それはさ、「ジムに入会しました」というのと同じで。

【きだて】そうそう。

【高畑】これからしんどいことをいつもやらないといけないし、行かなかったら行かなかったで罪悪感があるみたいなのを、わざわざ金を出してやっているところがあるじゃん(笑)。

【他故】あ~そうか。

【高畑】手帳1冊埋めるのって、相当時間がかかるわけだよ。累積で毎日コツコツ時間がかかって。だから、相当大変なことだと思うよ。

【きだて】ダマされて手帳買っちゃった人って、原野商法で広々とした何もない土地を買わされたのと同じなので。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】そこから開拓していくしかないから。あ~なるほどね。

【きだて】そういう意味では、このシールは開墾用重機ぐらいの効果があるし、必要なんだよ。さらに言えば、手帳を薦める人も「書けない人にはコレ」とかさ、できない人の立場にも立った薦め方をしてほしいなと思ってて。そりゃ、オシャレな方が写真映えするし、誌面も保つから、がっつりテクニカルな作例を作っちゃおう!というのは分かるんだ。でも、その一方で「私にもこんな素敵なのができるかな……できなかった」とつらい思いをする人が結構いっぱい出てるんじゃないかなと。なので、手帳関係の人には、もうちょっと寄り添う気持ちが欲しい。

【高畑】書ける場所が少なければ少ないほどいいという。

【きだて】それこそ、テキストを書かずにチェック欄入れるだけで済む手帳があるなら俺も使えるよ。

【高畑】「今年の分、全部書いといてよ」みたいな。

【きだて】そう、紙面に予言がバーッと書いてあって、それが成就したかどうかを○×だけ書き込んで判定するような(笑)。

【高畑】すでに、今年のことが書かれているんだ。

【きだて】いいな、その手帳俺作ろうかな。「予言手帳」として。

【高畑】1月1日には書き終わってる手帳いいね。

【他故】面白いよ。

【高畑】「今日は素敵なことが起こった」と書いてあるけど、具体的なことは何も示していなくて、ありそうなことがずっと書いてあるみたいな。

【きだて】そう記載されてたら、それに対して「いやいや、そうは言うけどめっちゃつらいことあったよ?」みたいなことが反論として書きやすかったり。

【高畑】あるときは書くけど、その通りだったら何も書かなくていいし。

【きだて】そうそう。当たってても、その素敵なことの詳細が書けるかもしれないし。「ガチャでSSRのキャラ出たよ」とか、それぐらいで。

【他故】うん。

【高畑】「記録済み予言手帳」だ。

【きだて】面倒くさければ、成就したかどうかの○×だけ書けばいいし。いいなこれ、誰か一緒に作らないかな。

【高畑】「今日はお昼ご飯がおいしかった」とか書いておけばいいんだよね。

【他故】当たり障りのない(笑)。

【高畑】あんまり外れないことが書いてあって、「特筆すべきことはないが」みたいなことがずっと書いてある。いいな、毎日頑張らなくていい手帳。

【きだて】頑張らずに書きやすくていいと思うな。

【高畑】年末に手帳を買って、頑張らなくてもいいことを背負い込んでいるわけだね。それに、年が明けてから挫折するのであれば、救済手段として、免罪符を売るみたいな。なるほどね。

【きだて】ともかく手帳にはもっとラクさを追求して欲しいってことで。「おおきめシール」も、手帳失敗したなーって買い直しを検討する前に「その前にこれ使ってみて、いけるかどうか最終判断しよう」ぐらいの感じで使ってもらえればいいんじゃないのかね。

【高畑】キングジムといえば、「暮らしのキロク」だっけ。あの辺りでもすでに埋めやすくして、ちょっと面積を使ってくれる感があったけど、それとはまた別のアプローチということで、ああいうのと組み合わせると最強というのはあるよね。

【きだて】そうだね、あれも手帳に貼ればドーンと面積を使ってくれるよね。

【高畑】半分くらいあれで埋まっちゃうからね。

【きだて】キングジムのこの辺の開発の人で、相当手帳書くのが嫌いな人がいるなと思って。俺たちの気持ちが分かる、優しい人がいるに違いないよ。

【他故】わはは(笑)。

【高畑】きだてさん的には、シンパシーを感じるということなんだね。

*次回は高畑編集長おすすめのゼブラ「ウェットニー」です

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。

たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


*このほか、ブング・ジャム名義による著書として『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)と、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。

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