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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.42 書く・消す注目最新文具(その3)
本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は筆記具系と修正用品の最新注目文具について熱く語ってもらいました。
第3回目はプラスの「ホワイパープチ〈クリームテープ〉」です。
(写真左から高畑編集長、他故さん、きだてさん *2020年6月25日撮影)
*今回の鼎談は8月28日にリモートで行いました。
クリーム色の紙に使える異色の修正テープ
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――最後は「ホワイパープチ〈クリームテープ〉」。“ホワイパー”だけどクリーム色の修正テープですね(笑)。
【高畑】これは、考え方としては、前から「封筒用」とかあったわけですよ。
【他故】あったね。
【きだて】シードの茶封筒用修正テープとか、ぺんてるのはがき色の修正液とか。
【高畑】白過ぎないはがき用の修正液と、再生はがきのやつと、茶封筒につかえるやつというのはかつてあったけど、もう使われなくなっていたじゃないですか。あれは実用でもあるし、どっちかというと「もったいないから何とかしよう」という方向性だったじゃないですか。今回も、考え方は全く同じなんだけど、この相手がちょっと高めのノートというのが面白いんですよ。
【きだて】はいはい、相手をいいところに置いたね。
【高畑】映えるノート作りたいけど間違えちゃった。いいとこまでできてるんだけど、スペルミスで「Stationery」のeをaにしちゃったとかあるじゃん(笑)。
【きだて】そんなの一から書き直せ! 勉強しなおせ!
【他故】わはは(笑)。
【高畑】でもさ、1日1ページ手帳だと、今日のところしか書けないじゃん。
【きだて】まあね。
【高畑】そういうので、間違えて書いちゃったやつを、ギリギリ見えないようにしたいわけですよ。映えてほしいじゃないですか、と考えたらそれは直したいよね。
――ふふふ (笑)。
【高畑】色つきの修正テープは、これまでは商売にならないからやめたじゃない。これが商品になるくらい、高級ノートが普及したってことじゃないのかな。
【他故】ああ~そっか。
【高畑】その前に出た、「ロルバーン」用の修正テープがそこそこウケたんじゃない。
――あ~なるほど。
【高畑】さすがにプラスのは色は違うね。「ロルバーン」はちょっと色が濃いからさ。
【他故】「ロルバーン」はだいぶ黄色いものね。
【きだて】クリーム系の紙って、大体はツヤを抑えめにしてるじゃない。
【高畑】はいはい。
【きだて】でも修正テープって、これも含めて光沢があるよね。どうしてもツヤる。
【他故】うん。
【きだて】だから色がうまく合ってても、そのツヤの分だけ目立つんだよね。もちろん白テープよりははるかにマシなんだけど。どうせやるなら、修正テープのツヤも紙に近付けたいよね。
【他故】ああ。
【きだて】付き具合を不均等にして、わざとザラザラになるテープとかないのかね(笑)。
【高畑】でも、ペンののりを良くするように表面をザラザラさせるとかは、かなりやってるっぽいけどね。それでも難しいんだろうけどね。
【きだて】それこそ、さっきみたいにインスタで映える写真を撮ろうとすると、結構修正テープが光を反射してみえるんだよね。
――撮る角度を気にしないといけないのかな。
【きだて】使ってはみたけど、「う~ん、違う」となる人が多いのかなという気もしてる。
【他故】修正テープだからなぁ。
【高畑】完全に隠したい場合はそうなんだけどね。
――これって、いろんなクリーム色の紙に合うように色味を調整したんですよね。
(上)同社従来品、(下)ホワイパープチ〈クリームテープ〉
【他故】ああ、そうなんですか。
【高畑】いい感じに、中途半端な色になっているというか。
【他故】プラスの紙に合わせたわけじゃないの?
【高畑】プラスの紙っていうか、高級ノートって市販されてるのはクリームが多いよね。手帳なんかもそうだよね。
【他故】この色って、ズバリ「カ.クリエ プレミアムクロス」の色なんじゃないかなってずっと思ってたんだけど。
【高畑】あ~なるほどね。
【他故】ちょうど、こんな感じのクリーム色なんだよ。
【高畑】そうかもしんない。
【きだて】それは、自社商品に合わせている可能性は高いよね。
――でも、MD用紙なんかにもなじんでますよ。
【きだて】MD用紙には合うなと思った。
【高畑】これ、僕的に何が嬉しいって、「アクセスノートブック」にピッタリなんですよ。
【他故】なるほどね。
【高畑】僕的に、こんな嬉しい話はないんですけど、「アクセスノートブック」の色にピッタリですよ。ドンピシャ。
【きだて】そういう意味では、汎用性は高いね。
【高畑】そこはいい感じだと思いますよ。
【他故】本当だ、いい感じの色じゃん。
【高畑】「アクセスノートブック」だと、テカるのはともかくとして、角度によったら修正したのが見えなくなるよ。これはありがたい。
【きだて】やっぱり、テカりだけが気になるな。色がそこまでになってくると。そういうのは何とかする技術はないのかね。
【他故】なくはないと思うけどね。
【きだて】本当に、こういうの気になり出すと止まらないので、ダメね。
【高畑】きだてさんは、そういう違和感を感じる能力が高いというか、手がノートのリングに触れるのが嫌だというのもそうだし。そこら辺は、僕らの中で一番繊細だから。きだてさんが感じていることは、他に感じている人はいると思うよ。俺らが結構鈍感で、「まあ、いいんじゃない」って言っちゃうけどさ(笑)。
【他故】わはは(笑)。
【高畑】はがきとか封筒用の修正テープって、使ったことないんだよ。それはさ、相手の住所を書き間違えたら書き直しでしょ。僕は古いので、そういう感じなんだけど。
【他故】それはそうだね。
【高畑】それは完ぺきに消せていたらまた違うと思うけど、わりかし分かるじゃん。
【他故】分かるね(笑)。
【高畑】それが、いかにも「直しました」という感じで出てたから。
【きだて】以前にはがき用修正液の記事を書いたときは、「とりあえず、身内とかなら書き直しもまあまあいいじゃん」ぐらいに説明したけど。でも実際個人としては100%書き直すからね。そうは言ってみたものの。
【他故】まあ、そうだよね(笑)。
【高畑】特に、自分がお願いごとをしている手紙だったり、お礼状だったりしたらさ。
【きだて】そのレベルだったら誰だって100%書き直すだろ。
【高畑】それが自分のノートだったらとは思うけど、それでも気にはなるんだな。
【他故】きれいに書きたいということでしょ?
【きだて】その、“きれいに書きたい”というのに対して、こういう直せるツールは需要があるんだよ。ただ、その気持ちを100%満足させるかというと、まだ足りてないなというのが俺の見解。
【高畑】なるほどね。
【きだて】俺の、この卓越したケチつけ力によると。
【他故】ははは(笑)。
【高畑】ケチつけ力っていうと人聞きが悪いけど、そのセンスに対して応え続けてきたのが、これまでの日本の文具メーカーだったわけだよ。だって、修正テープだって、昔に比べたら上から書いても破れなくなったし。
【他故】なったね。
【高畑】あとね、上からサインペンで書いても、色が変わりにくくなったんだよ。
【きだて】ああ、それはそうだ。
【高畑】やっぱりね、ちょっとずつ改良されてきているとは思うんだ。
【きだて】メーカーは俺を雇って、徹底的にケチをつけさせるというのはどうかね(笑)。
【高畑】いい仕事だね。違和感についてダメ出しをし続ける仕事。でも、日本ぐらいだよ。こんなところで地味に開発を続けているのは。
【他故】そうだね。
【きだて】メーカーが、クレームに対して怯え過ぎてるんじゃないか(笑)。
【高畑】それもあるかもしれないけど、ほんの些細なことで売れ行きが変わると思っているんだよ。
【きだて】まあね。
【高畑】その違いが影響ないと思っている海外のメーカーはやらないけどさ、日本はその違いで他社に勝てると思ってるからそうやってるんじゃない。
【きだて】だからこそ、俺らみたいなのがメシを食っていけるわけですよ。
【他故】わはは(笑)。
【高畑】些細な違いを熱く語る人たちがいて、些細な違いで買い直す人たちがいるからやれているといえばやれているよね。
【きだて】そういうことよ。日本でなければ、俺は干上がってるよ。
――ははは(笑)。
【高畑】万年筆じゃなくて、一般的な文具の評論が成立しているのが珍しいんじゃないの。
【他故】多分そうだと思う。
――修正テープの基本的な部分になりますけど、これ引きやすいですよね。
【他故】よくできてますよね。
【高畑】この「ホワイパープチ」って名品だと思うんだよね。随分前からあって、僕が昔『究極の文房具カタログ』を書いたときからあったからね。
【きだて】プラスの修正テープって、もともとすごく高性能じゃん。押しても消せるヘッドとか。これも同じヘッドだよね。
【他故】これもそう。
【高畑】超小型修正テープとして出てから、未だにこのサイズってほぼ決定版じゃん。
【他故】そうかもね。
【きだて】今のところ他にないよ。よくできるなぁ。
【高畑】最近だと、「プチデコラッシュ」のボディにもなってるし。
【きだて】修正テープがクリーム色ってだけだと話がふくらみ切らないから、そんなところまで話が広がっちゃったじゃないか(笑)。
【他故】いやいやいや(苦笑)。
【高畑】でも、もの自体は単純だものね。色変えましたというだけなんだけど、きれいにノートを書きたいという人がこれぐらい増えたということなんだよ。昔は、気にしないおじさんたちがノートを使ってたけど、今のバレットジャーナルとかをやっている人たちはこういうのを欲しいんだよ。そこが今っぽい感じかなと思うけど。
【他故】うん。
【きだて】昔の修正テープに比べたら、ペンで書いても削れなくなったし、インクののりもよくなったし。
【他故】ボールペンで書いたら、破れて先っちょが詰まったんだけどな。
【高畑】そうそう、あったあった。そうなってたよね。
【他故】だから「ハイテックC」とか使えなかったんだけど、今は全然平気だものね。
【高畑】「ハイテックC」をよく使ってた頃に修正テープが出てきたんだよね。
【他故】そうそう。
【高畑】「ハイテックC」の極細0.3㎜で書いたら、それで引っ掻いてはがしていたところがあったよね。
【他故】削れてモロモロになっちゃうんだよね。
【高畑】テープをはがしてた感じがあったけど、今はそれがないものね。
【他故】今は書けるものな。
【きだて】「ジェットストリームエッジ」で書いても削れない。
【高畑】それは素晴らしい。そこはすごくよくなったんだろうな。
【きだて】モノは進化してるのに、修正テープのシェア自体は下がっていってるだろうしなぁ。
寂しいっちゃ寂しいね。
【他故】でも、今は学生が基本的に使うんだよね。
【きだて】どうなのかね?
【他故】ペンケースに入る小っちゃいやつは、学生さんが必ず持ってて、みんな色々と使っているという。
【きだて】いま俺がベネッセでやってる文房具連載も、アンケートを見る限り修正テープの反応は悪くないっぽいの。でも、そんなに使ってるのかなーってあたりがまだピンときてない。
【他故】結構ね、高校生あたりは使ってるんですよ。
【きだて】高校生のボールペン率が高まってきているのは分かるので、そういうことなのかな。
【高畑】あ~そうか。確かに。
【きだて】俺らの時代からしたら考えられないくらいボールペン率高いよ。
【他故】高いね。
【きだて】下手すると、40%、50%ぐらいボールペンの可能性があるよ。50%は言い過ぎか。
【他故】小さい消しゴム持っているのと同じ感覚で、小さい修正テープを必ずペンケースに入れてる。
【きだて】そこはフリクション使った方が良くないか?と思うんだけど。
【他故】フリクションが割高だと思っている子もいるんじゃないの?
【きだて】逆に修正テープの消耗品としてのコストはかかるでしょ。
【他故】いやいや、バリバリ修正するかはまた別でさ。
――それは勉強垢でボールペンを使うんですか?
【高畑】日常でしょ。
【きだて】勉強垢とか見せる用じゃなくて、純粋に筆記具としてボールペン。
【高畑】もう映えとかじゃないものね。普通に使ってるものね。
【きだて】普通の筆記文字で、色々とカラーが使えるというのがメリットなので、確かに勉強垢向きではあるんだろうけど。
――じゃあ、「サラサクリップ」とか使われているんですね。
【きだて】やっぱり、サラサはめちゃ使われてるよね。でも、前見たアンケートだと、サラサとフリクションもそれなりにいたよ。
――じゃあ、サラサ使ってる子は修正テープなんですね。
【高畑】俺が高校生のときに、ボールペンそんな風に使ってなかったもの。
【きだて】まぁそうだよな。学校では禁止されてた記憶も無いんだけど、でもシャーペンが当然ぐらいの感じではあったよね。
【高畑】消せないし、あんまり使わなかったな。少なくとも、日常の普通の文字は書いてなかったな。ライン引くのには使ってたけど、普通に文字書くのには使ってなかったんだけど、今は平気なんだろうね。
【他故】そうだろうね。
――筆箱にボールペンは入れてなかったですね。
【高畑】入れてなかった。
――そういう子たちがこの修正テープを使ってるわけですね。
【きだて】いや、そういう子たちは、さすがにクリーム色の高級ノートは使ってないのでは。使ってんのかな?
【他故】そろそろデビューしててもおかしくないんじゃない。
【高畑】多分、これは手帳デビュー派の人たちがメインなんだと思うんだよ。
――確かに。
【高畑】大人で、手帳をきれいに書くことを楽しみ始めた人たちが、多分使っていると思うんだよね。
【きだて】そう考えると、これが売れるのって、年度はじめぐらいじゃない。年度も後半になれば、間違えてグシャグシャやっても気にしなくなるだろ。
【高畑】いやいや、そうじゃなくて。バレットジャーナルだといつ始めても平気じゃない。ああいうノートだよ。
【きだて】ああ!
【高畑】今は、何でもノート派の人が増えてるじゃない。ちょっと高級なノートに日常のあれこれを書いて埋めていく人たちが。
【きだて】そっち側の用途か。
――これは、先日の「文具女子博」のオンライン版で先行販売したみたいですから、やはり女子がメインなんでしょうね。
【高畑】そうじゃないですか。
【他故】きれいにノートを書くのは女子の方が多いですよ。
【きだて】デザインもこれ基本女子だよね。「CREAM TAPE」というこのロゴも含め。
――金文字で。
【高畑】男性でも社会人になってある程度までくると、ボールペンで書いて間違えても、そんなにきれいに直さなくてもいいじゃんという感じでゆるくなっちゃうけど、女性はきれいにノートとっている人が増えたものね。
【きだて】そういう用途ならば、どんな紙にも割と色が合うので試してみて、という感じなのかね。
【他故】そうだね。
【高畑】真っ白なテープだとすごく目立つけど、これだと目立たないというノートはかなり多いと思うよ。
【きだて】そこで「光沢が」とか言い出す面倒な人もたまにいるかもだけど、でも使ってみたら面白いとは思うんだ。
【他故】ははは(笑)。
【高畑】それでも気になる人はいるだろうから、課題としてきだてさんが言っていることはそのままあるんだろうけど、今の時点でできる範囲ではということなんじゃない。
【きだて】まあ、そういうことだろうよ。特に、クリーム系の紙は、そいうマットな印象が強いからさ、気になったのよ。
【高畑】そういうことも含めて、見分けがつかないぐらいにできたらいいよね。プロフィール
きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/
*このほか、ブング・ジャム名義による著書として『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)と、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。
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