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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.86 超個性的なシャーペン最新アイテム その3

文具のとびら編集部

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、超個性的なシャープペン新アイテムについてブング・ジャムのみなさんに語っていただきました。

第3回目は、プラチナ万年筆の「プロユース 231」です。

(写真左から他故さん、きだてさん、高畑編集長)*2023年11月11日撮影
*鼎談は2024年4月22日にリモートで行われました。

シャープ芯を折れにくくする「オ・レーヌガード機構」を搭載

プロユース1.jpg「プロユース 231」(プラチナ万年筆) 外部の衝撃から芯を守る「オ・レーヌガード機構」を「プロユース」シリーズで初搭載。落下等の衝撃はもちろん、移動時のペンケース内での衝撃からも芯の中折れを防いでくれる。また、製図用シャープの特徴でもある先端芯パイプを収納可能にした「パイプスライド機構」を搭載し、パイプの破損や、移動時に外部へ与える傷等を防止する安全設計となっている。税込1,650円。*関連記事

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――最後は「プロユース231」です。

【高畑】この独特の感じ、すごくないこれ?

【きだて】ごめん、今回の中では一番苦手なシャープだわー(苦笑)。

【他故】ダメなんだ。

【高畑】ああ、きだてさんは前の方を持つものね。

【きだて】そう、後ろが重い。

【他故】ああそうそう、長いし重いんだよ。

【高畑】グリップから前が長くない?

【他故】長い。

【きだて】もっと前を持ちたいんだけど、前を持てば持つほど持ちづらいわ、上は重いわで、どうしても俺の握りにアジャストできない。

【高畑】これはだからさ、「お尻振って走るFRは好きか?」みたいな(笑)。

【きだて】で、なんとかならんかと色々いじってたら、見つけました。後端のこれを外したらバランスがちょうど良くなる。

【他故】ノックノブを外すんだ。

【きだて】これがないとすごく書きやすくなる。

【高畑】これ、ちょっとしたパワーウェイトだね。

【他故】本当だ。バランスが全然違うねこれ。

【高畑】想像以上にこの重りが効いてるね。

【他故】うん、効いてる。

【高畑】びっくり。

【きだて】キャップがない方が全然快適に書けるんだけど、何でこんな無駄に重いの?

【高畑】でも、これって「プロユース171」(写真)と同じじゃないの?

プロユース4.jpg【他故】これ同じ?

【高畑】「171」とかたちが一緒のはずなんだけど、でも重さがもしかして違う?

――見た目が一緒ですよね。

【高畑】見た目全く一緒。俺は、同じパーツを使ってると思ってた。「231」が4.09gで、「171」が3.2g。だからやっぱり重いんだ。

【他故】重いんだね。

【高畑】1gぐらい違うから、明らかに重いんですよ。

【他故】このシャープには、リアヘビーにする理由があるわけ?

【高畑】分わからんけど、でもそうかもね。何か「リアヘビーにしました」って感じだね。

【きだて】だよね、これ。なんらかの意図は間違いなくあるでしょ。

【他故】何かあれかね、前を重くし過ぎちゃったとか。

【きだて】そんなこともないでしょう。

【高畑】何か、そう言われると分かんなくなってくる。

【他故】「オレーヌガード」を入れたおかげで何か重くなっちゃったからとか、そういう理由ではなく?

【きだて】それにしても重くし過ぎだよ。

【高畑】きだてさんが言うように、無い方が自然だね。重さ的には、確かに。

【他故】めっちゃ書きやすい。

【高畑】これ、久々に見る、重心位置が50を超えてるやつじゃない? 長さ的にさ、重心が真ん中よりも後ろにあるタイプって最近あんまりないじゃん。

【他故】ないね。

【高畑】これ明らかにバランス取れてるところでさ、こっち70㎜なのに、こっちは80を超えて85㎜とかだからさ。要は、前の方が15㎜ぐらい長いんだよ。

【他故】そうだね。

【高畑】だってさ。重心ポイントまでが前から85㎜って結構後ろだよ。確かにきだてさんが言うようにノックノブを外すとすごいバランスが普通になる。重心までが65㎜だったら普通じゃん。65だと普通のシャーペンって感じがする。こうやると普通のシャーペンになるね。

【他故】なるね。ここだよ、絶対に。

【高畑】何のこだわりだろう?あとこのグリップが明らかに1回凹んで膨れてるから、この真ん中を握れってことじゃん。

【他故】持つ場所が決まってるよね。

【高畑】ここから前がすごい長いじゃん。だって、「171」でもさ、この辺持ったりとかしてもそんなに長くないのに、何か先がめっちゃ長いんだよね。

【他故】しかもさ、「プロユース231」のホームページで写真見ると、ラバーグリップ持ってないんだよね。

【高畑】どこ持ってるの?

【他故】ど真ん中。

――グリップの上を握ってますよね。

プロユース2.jpg【他故】そう。ラバーグリップを握ってないんだよ。これどういうこと?

――これはちょっと持ち方を変えて、何か作業をしてる風情ですね。

【他故】書いている状態じゃないってこと?

【高畑】本当だ。この写真はおかしいだろう。

【他故】どっちかというとミステイクだよね。

【高畑】いくらなんでも、万年筆でもこんな後ろ持たないでしょ。

【きだて】おおー、キャップを付けた状態で写真の握り方をするとバランス取れるな。

【高畑】そうだよ、むしろこの写真みたいに持ったらちょうどいいんだ。

【他故】ここが重心だ(笑)。

【高畑】あと気になるのがさ、ここの真ん中のリング回らない? 俺の回るんだけどさ。

【きだて・他故】回る。

【高畑】これは何?

【きだて】何だろうね(苦笑)。

【高畑】これね、前後のパーツを締めても止まらないんだよ。

【他故】関係ないね。

――どこですか?

【高畑】この銀色のパーツ。

――グリップと軸の間のパーツですか。

【高畑】ちょっと緩んでるのかなと思っても、別に締まらないんだよ。これで正解なんだよね。

――これは「171」にはないパーツだ。

【高畑】いやいや、「171」と全然別なんですよ。プラチナの「プロユースシリーズ」って、個体ごとに設計思想が違い過ぎて全く分からないんだよ。

【他故】「プロユース」っぽさがない。

【高畑】多分ね、作ってる人が天才肌だと思うんだよ。

【きだて】だいぶ紙一重の方では?

【高畑】いやだからさ、こうなった理由が分からな過ぎるっていう感じはちょっとあるね。分からないっていうか、これまでの流れからしたら、何でこうなったのかっていうのが、何か統一感がないというか。だって、「171」があって、そこに例えば「オレーヌのガードシステムを入れました」だったら、このデザインのままでちょっと軸を伸ばしました、みたいなやり方もできるじゃん。先金のデザインをちょっと変更して、例えばグリップをラバーにしてっていうのは全然できると思うし。後ろは、見た目一緒に揃えてあるぐらいだから、揃えてもいいんだけど、同じシリーズに見えないし、何でここにこんなに長いリングが入ってるのも分かんないしさ。

――他の人もみんな回るんですか?

【他故】回りますよ。

【高畑】回るよね。それで、「ラバーグリップで指滑らない」って書いてあるのに、ホームページの写真ではラバーグリップを持ってないという(笑)。

【きだて】サラサラのラバーなので、そんなにラバーグリップとしても効かないっていう問題もあるんだけどね。

【高畑】あとね、ラバーグリップがグリッパーの割に細いんだよ。めっちゃ細い軸径にしてある。だって「171」は結構太めのグリップ使ってるじゃん。「171」で10㎜だけど、こっちになると8.7だよ。細いよね。持ち方とかの発想が全然違うんだろうな。で、何故かウエイトバランスを後ろめに持ってきてる感じとかさ。これはオレーヌガードで芯が折れないようにするために後ろを重くしてるとかさ。

【他故】関係ないだろうな。

【高畑】机から落としたときに、後ろから落ちることによってペン先を保護するとかさ。

【他故】ええっ?

――今までの「オレーヌ」は、そういうことをしてたんでしたっけ?

【高畑】「オレーヌ」も、すごい変わったデザインのシャーペンが多いんだよ。「オレーヌシールド」がめっちゃ長いんだよ。

【他故】あれは長いよ。

【きだて】筆箱に入らないぐらい長いよ。

【高畑】DNAが分からんというか、突然変異がずっと続いてて、毎回全然違う発想なんだよね。でも、「171」と「231」は一応後ろを揃えてるのに、前が全然違うのが気になる。

【きだて】それこそ、コストを減らすために同じパーツ使ってますなら分かるんだけど、わざわざ違うわけでしょ。同じにしてあるけど違うパーツでしょ。

【高畑】しかも、今回は「171」と長さも違うし、あと中に消しゴム入ってるから、このパーツそのものが全然違うんだけど。これがめっちゃ重いんだけど、真鍮か何かの削り出しだったかな。

【きだて】うん、真鍮かな。

【高畑】あと、他のメーカーと関連性があんまりないところが独特だよね。よく似てるメーカーとかあるじゃないですか。何か影響されるじゃん。あれが出たからこれが出たんだなって分かるようなかたちで、ちょっと影響されてる感があるけど、プラチナの他のものに影響されない個性というか、己の道を行く感じがすごいなっと思って。こんなぬるっとした曲線のグリップとか作らないじゃん、他のメーカーは。

【他故】それはないよな。

【高畑】今回のこれもね、折れない以外のところが気になります(笑)。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】面白いよね。でも芯が全くフリーにならないようにシールド機構というのが中に入ってるっていうのは、他のメーカーが「折れない」って言ってるのと全然違うじゃん。出てきた芯が折れないっていってみんな頑張ってるところにさ、落としてもペンの中で折れないみたいなことになってるから。同じ折れないつながりだけど、全然違うもんね。

【他故】うん、それはそうだ。

【きだて】俺ね、折れない系シャープの中では「オレーヌ」の機構が一番好きなんだ。

【高畑】あーそうなんだ。

【きだて】ペン先の芯が折れる折れないに関しては、自分のさじ加減ってとこもあるじゃん。でもうっかりシャーペンを落として中で芯が折れるのは避けづらいし、じゃあ機構的に守ってくれたら嬉しいでしょ。

【他故】まあそうだね。

【きだて】なんだけど、効いているところは視覚的に捉えられないし、官能性とも関係ない部分だから、語られにくいというか、評価されづらい。

【他故】見えないからね。

【きだて】さらに言えば、機構が効いて芯が折れないほど、みんなそこを意識しなくなってくるでしょ。で、存在を忘れちゃうんだよね。優秀なだけにすごい不遇だなと。

【高畑】システムエンジニアが認められないみたいな話だよね。サーバーがダウンしないから、誰もすごい人だと思ってくれないみたいな。

【きだて】そうそう。

【高畑】絶対折れないっていうのは、結構すごいことなんだけどね。中で折れないというのがすごいことなんだけど、それが見えないからね。まあ、それをうたうにしても、それ以外のところが主張しすぎてねーかちょっと(笑)。

【他故】ははは(笑)。

【きだて】もうちょっとオレーヌガードの話もしてあげようよ。

【高畑】本当によくできてるんだよね。シャーペンの中って、チャックとペン先の間にすごい間があいているっていうのはあってさ。プラチナはかつて、先端にチャックを持ってくるやつもやってるじゃん。

【他故】やってるやってる。今でもあるよ。

――「ゼロシン」ですよね。

【高畑】「ゼロシン」とかで、残芯がなくなるというのもやってる。

【きだて】シャーペンをメインで使う中高生男子にとってはさ、「デルガード」とかよりも、「オレーヌ」の芯が折れない機能の方が絶対大事だと思うんだよ。

【他故】まあ、そうだね。しかもこれだと、ダブルノックで先っぽも引っ込められるからね。

【きだて】あいつら平気でカバンとか放り投げるじゃん。中高生男子って。

【高畑】あいつらって、昔の俺らな(笑)。

【きだて】そう。

【高畑】「プロユース」が毎回外見のデザインが違うのは、こだわりがみんな違うのかな。ゼロベースで毎回デザインしてる感じがするよね。

【きだて】さっきも言ったけど、「プロユース」らしさってないもんね。

【高畑】きだてさんが言うように、全く落としても折れないっていうのは、他のメーカーではあんまりやってないことだから、主張しても分かりにくいからなのかもしれないけど、それをちゃんとやってるのはすごいよね。ノックしたときのノックの動きに合わせて中が広がって、隙間が空くところを抑えに来るからね。

プロユース3.jpg【きだて】すごい機構を作ってるんだけどさ。

【他故】画期的なんだけどね。

【きだて】伝わらないよね。

【他故】見えないからね。

【きだて】すごいんだけど、アピール下手というか。

【高畑】あとデザインがちょっと独特過ぎるっていう感じはするな。「171」は割とまとまってたと思うんだけどな。あんな感じでもよかった気がする。そこへいくと「231」は個性がすごい強い。

――でもシュッとしてて、かっこいいはかっこいいですよね。

【高畑】ああ、あとパイプスライドでパイプが完全にしまえるんだよね。だから、持ち運びのときにパイプ折れもしなくて済むんだよね。いいよね。いわゆるリトラクタブルとも違うんだよね。パイプスライドを最後まで引っ込めるから。

プロユース5.jpg
【他故】でも、先端保護は絶対必要ですよ。

【高畑】そういうとこだよね。書いてるとき以外で折れるっていうのを、いろんな意味でガイドパイプも守るし、中芯も守ってるから。ここはちゃんとしてるな。

【きだて】パイプスライドだから、このパイプの長さ分は延々書けるんだよね。

【高畑】書けるんじゃない。これはパイプ下がるから、「オレンズ」みたいな書き方ができる。

【他故】うん、できる。

【高畑】で、折れない。だから、芯を出さずに書けば、どこをとっても折れないって感じだね。「オレンズ」と一緒だから、出てきてる芯も折れないじゃない。

【他故】そうだね、守られてるからね。

【高畑】外も折れないし、中も折れないしっていうことで、そういう意味では最強なのかな。芯がなくなるまで、ほぼほぼ0.何ミリまで芯が短くなっても多分いけるから、そう考えると非常に良いんだけど。

【きだて】本当にね、バランスさえ良ければなという。

【高畑】きだてさんに言われるまで、これが重いっていう発想がなかったので。

【きだて】俺も、何の気もなしで外してみてギョッとしたんだよ、本当に。

【高畑】わざわざカメの甲羅背負ってるみたいな。何の訓練だろう?って感じになる。確かに、きだてさんに言われてこれ外したら、すごい書きやすい。これでいい気がする(笑)。

【他故】不思議なペンだ。

【高畑】このリングが回る意味が…めっちゃ気になる(笑)。

【きだて】この部品がなければ、割と普通のシャーペンぐらいの長さにならないかな?

【高畑】だって、後ろ詰めたって平気でしょ。前のガードが入ってる部分は詰めようがないかもしれないけどさ、ここから後ろは好きな長さで切れるじゃん。やっぱりプラチナは長いのが好きなんだなあ。

【他故】そんな気がする。

【高畑】万年筆はあんなにオーソドックスなスタイルで作るのにね。

【きだて】それはそうだな。

【高畑】だって、「センチュリー」とかめっちゃオーソドックスなスタイルで作ってるのに、シャーペンは攻めるんだね。すごいね。

【他故】すごいね。

【高畑】この攻め方はちょっとすごい。

【他故】寝かせて書く分にはすごく気持ちよく書けるな。字を書くんじゃなくて、絵を描く人間にはいいと思う。

【高畑】デッサン鉛筆みたいな使い方ならいい。

【他故】この角度で、完全に手のひらに乗っけちゃう感じで書くんだったら、全然描けるから。

【きだて】そうか、そうなるとこの長さだけどな。

【高畑】確かに、写真と同じ持ち方でラフスケッチ描くんだったら全然いいよ。

【他故】ラバーに人差し指と中指掛けて、親指はリングに乗っけるぐらい。このぐらいの位置がちょうどいい。

【きだて】寝かすとそうだな。

【他故】これは製図用シャープの使い方なのか?っていう話なんだと思うけど。

【高畑】全然違う、別の話だね。デッサン的な鉛筆の持ち方。

【きだて】作った人に話を聞かないと分わかんないやつじゃない。

【高畑】そうかもしれない。これは作った人に聞いてみたいというのもあるし。毎回、前回のやつを否定しながら新しくしていくみたいな感じがちょっとあったりするけど、どうなんだろうと思う。

【きだて】プラチナってそんなんだっけ?

【高畑】「オレーヌ」もそうだったし、普通のシャープではあるけど、それこそ「プレスマン」もそうだし、プラチナのシャーペンってやっぱ個性強いよね。どれも個性がすごい強い感じがする。

【他故】昔から独特だったけど。

【きだて】久々に、「これは濃すぎないか」という印象だな。

【他故】この15分ぐらい書いてるうちに、どんどん好きになってくるんだけど(笑)。

【高畑】はまるんだよこれ。

【他故】これ、自腹で買います(笑)。

【高畑】3本指全部をグリップに乗せると前過ぎるから、もうちょい後ろだよね。

【他故】そう、後ろ。

【高畑】この回るリングの上に親指を乗せれば別にいいし、もっと後ろくらいでもいいし。

【他故】そう。本体はべったり手の上に乗っけちゃう感じで、先っぽだけで書くみたいな。

【高畑】それは分かる。何かそんな気がする。

――銀色の回るところは、ガイドっぽい感じになってるんですかね?

【高畑】何ですかね?親指の向きにかかわらず回転できるとか、何かそういうので。親指のポジションを変えやすいとか、そういうのがあるのかもしれない。

【他故】最初はここに硬度窓があったんだけど、やってみたら「指当たるじゃん」っていって急に移動したとか。

【高畑】だったら、もうちょっと渋いでしょう。回らないように、止められるように作るでしょ。こんなにクルクル回るのってちょっとすごくない。なんか意味があってもよさそうな気がするけど。

【他故】あと直接関係ないんだけどさ、この硬度窓が全くクリックしないでクルクル回るのもめっちゃ気になるんだけど。

【きだて】ああ、そうね。

【他故】書いてるうちにズレるぐらい、全然何の引っかかりもないんだけど。

【高畑】俺のはちょっと渋めだから、勝手に回ることはないかな。

【きだて】勝手には回らないけど、何かに当たった拍子にクルンと回ることはあるね。

【高畑】でも、こっちは本当にクルンクルン回るから、何か回るようにして作ってあるとしか思えないんだけど、その説明はホームページにないんだよね。

【他故】ないね。

【高畑】しかも、「プロユース231」って限定生産品なの?

【他故】そう、限定なの。

――そのうち色違いのものがで出てくるのかもしれないですけどもね。

【高畑】これは解釈が難しいな。

――メーカーに聞かないと分かんないですね。

【高畑】ユーザーに伝わらないからな。いや売れてほしいんだけどもさ、ただどういうことを想定して、どういう持ち方とか、どういう仕様を想定してこんなかたちにしたのかがなかなかちょっと分かりづらいところがあるので。今回一番ちょっと謎の多い、でもメカはすごい。

【きだて】オレーヌガードは好きだけど、このシャーペンは苦手過ぎる。

【高畑】でも俺的には、今回話して良かったのは、きだてさんに教えてもらった、後ろのパーツの重さと、あと他故さんが後ろの方を持ったら案外いい感じで使えるようになってきて、俺も後ろ持ってさっきからいじってるけど、悪くないなって感じがする。元々後ろの方を持ちがちな人なので、だから俺グリップが長いのは好きなんだよね。パイロットの Sシリーズもグリップが長いから後ろ持てて良いんだけど、そういう意味でいくとこれも悪くないね。それにしても、この先端の形状は独特過ぎるわ。

【他故】これはすごいわ。もうどんどん好きになってくわ。これは絶対人を選ぶって。

【高畑】選ぶ。いや、本当そう思うわ。その持ち方するんだったら、クリップは抱きクリップだから外せるじゃん。外したらすごい気持ちいいよ。

【きだて】最初からそのかたちで売ってくれよ(笑)。

【高畑】このリングだな。どう使うのがこのリングの使いどころなのかな。色々と天才肌な感じがするな。それで、他のメーカーと似ていない開発の感じがすごい魅力でもあるし、人を選ぶところでもあるんだろうな。

【他故】分かる。

【高畑】これはだから、1 回持ってみてから考える、ではあるけどね。

【きだて】店頭で書けるところあるかな?

【高畑】分かんないね。でも、書かせてもらった方がいいね。

――これは「プロユース」で初めてオレーヌ機構を入れたんですかね。

【きだて】そうそう。

【高畑】「プロユース」は3桁ナンバーで、「171」はシュノークシステム入れましたとか、そういう実験もしてるんじゃないですか。シュノークシステムは、パイプの繰り差し量を変えられるみたいになってたけど、パイプスライドと兼用になってたからちょっとややこしいんだよね。これもなかなか謎機構ではあるんだよね。未だにこの実験をやってる感じがすごいなっていう。今回 0.5 だけなので。「171」は一応芯径を揃えてあったじゃない。

【他故】0.3があったよね。

【高畑】0.7と0.9もある。

【他故】全部あるのか。

【高畑】「171」は、やっぱり製図シャープとして全部盛りで作ってるんだけど、さすがに今回の「231」は0.5だけなので、いわゆる製図シャープかっていうと、ちょっと違う。

【きだて】デザイン的には、大分製図用シャープ寄りにしてあるのにな。

【高畑】そうそう。

【きだて】バランスから何から全部製図用シャープの作法を外しているという。

【高畑】不思議。1 回聞いてみたほうがいいね。

【きだて】話を聞いて、すごいモヤモヤする。

【高畑】発想の飛び具合が全然違う。これまでのやつを無視してこれを作れるところが、何か自由だなという感じがすごいする。囚われてない感じはやっぱする。いい意味でも、微妙な意味でもどっちもあるけど、でもやっぱすごいことだなって思う。これはなかなかできないよなっていう気がするからね。

【きだて】そろそろまとめないと。

【高畑】これは、皆さんも一度お試しいただけるといいのだが。

【他故】触って、使ってみてね。

【きだて】店頭で触れるとこあるのかね?

【他故】それもそうだけど、これがなければ、俺は多分触らずに終わったタイプのペンだったので。

――他故さんはいい出会いをしたわけですもんね。

【他故】もうこれは、今Amazonでポチりましたんで。

――そういう幸せな出会いがいくつもあればいいですけどね。

【高畑】この回るリングの意味だけでも知りたい。

――これをご覧いただいているなら、メーカーさんにちょっとご回答いただければ。

【きだて】これをもちまして、ブング・ジャムからの公開質問状とさせていただきます。

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プロフィール

高畑 正幸(たかばたけ まさゆき)
文具のとびら編集長。学生時代に「究極の文房具カタログ」を自費出版。「TVチャンピオン」(テレビ東京系列)の「文房具通選手権」では、3連覇を達成した。サンスター文具に入社し商品企画を担当。現在は同社とプロ契約を結び、個人活動も開始。弊社が運営する文房具のWebマガジン「文具のとびら」の編集長も務めている。著書は『究極の文房具カタログ―マストアイテム編―』(ロコモーションパブリッシング)、『究極の文房具ハック』(河出書房新社)、『そこまでやるか! 文具王高畑正幸の最強アイテム完全批評』(日経BP社)、『文具王 高畑正幸セレクション 一度は訪れたい文具店&イチ押し文具』(監修/玄光社)、『究極の文房具カタログ』(河出書房新社)、『文房具語辞典』(誠文堂新光社)と、翻訳を手がけた絵本『えんぴつとケシゴム』(KADOKAWA)。新著は『人生が確実に幸せになる文房具100』(主婦と生活社)。
https://bungu-o.com/


きだて たく

小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
小学生のころから文房具が好きで、それが高じて文具メーカーに就職。ただし発言は勤務先とは無関係で、個人の見解・感想である。好きなジャンルは書くものと書かれるもの、立つ文房具と薄いペンケース。30分間文房具のことしか語らないトーク番組・775ライブリーFM「他故となおみのブンボーグ大作戦!」パーソナリティ。たこなお文具情報室所属。
「他故となおみのブンボーグ大作戦!」番組ホームページ https://daisakusen.net/

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