【連載】月刊ブング・ジャム Vol.11前編
左からきだてさん、高畑編集長、他故さん
本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。Vol.11前編では、ちょっとユニークなペンについて取り上げました。
書き心地も握り心地も「エラベルノ」
――今回は、気になる最新のペンについてです。高機能シャープペンとか、高級ボールペンのような流行のものではなくて、ちょっと変わりダネを集めてみました。まずは「エラベルノ」からです。
【他故】今ここに全種類あるんですか?
――と思いますけど、どうかな(笑)。インクはゲルとなめらか油性があって、太さも3種類から選べるんですよね。
【他故】そうですよね。3種類あるんですよ。
【きだて】軸色とインク色を1色に限定したら、とりあえず700円あれば、一通り揃えられるのよ。
【高畑】だから、軸が三つで、リフィルが黒に限ると四つか。
【きだて】ちょっと替えるだけで、書き味とかフィーリングが全然変わってくるからね。
【他故】そうだよね。
【きだて】これは、半日ぐらいかけて自分の好みを探すホビーとして、700円は相当コスパいいぞというのは前から言っているんだけどね。
【高畑】3×4だから、12通りの組み合わせになるのか。そんなに多いわけじゃないんだよね。
【きだて】これが、油性でも0.5mmと0.7mmがびっくりするくらい違ったりしてさ。
【他故】えー、そうなんだ。
【きだて】ゲルも、0.5mmと0.7mmじゃ全然性質が違うのね。しかも、それぞれグリップの太さを変えるとまたフィーリングが大きく違ってくるから、すごく面白い。
【他故】本当に、書いてみないと分かんないよね。
【きだて】だから、これは実用ペンとして売る前に、ホビーとして売るべきだったんではないだろうかと思って。
――きだてさん的なベストマッチは何ですか?
【きだて】とりあえず、ゲルの0.5が書いてみて気持ちよかったんですよ。「エアリーゲル」とは言いつつも、ふわふわしていないというか。割と手応えがある感じで。発色もくっきりしていいし。
【他故】はいはい。
【きだて】それを細軸で丁寧に書くと、字が上手くなった感じがしていいんだ。
【他故】そんなこと言ってたよね。
【高畑】これ、グリップの位置もカチカチッと変えられるんだよね。
【他故】そう。
【きだて】グリップも円筒の一面だけを削いだような特殊なグリップで、ここに指を乗せるとしっかり安定する。
――D型グリップなんですよね。昔、ぺんてるから、グリップの握り心地を変えられるペンが出てましたよね。
【きだて】あ~、ありましたよね。
【高畑】「エルゴノミックス」とかね。あと、「エルゴノミックス」じゃないのでもありましたよね。
【他故】「エルゴノミックス」じゃないやつで変えられるのありましたよね。
【高畑】ひねってカチカチッと変えられるやつだ。
――そうです。「フレックスフィット」だったかな。だから、このボールペンのノリとしては、「ジェットストリーム」以前のトレンドになるんですよ。握り心地を訴求しているから。
【高畑】コクヨはしばらく、筆記具を出していなかったじゃないですか。
――15年ぶりということみたいですよ。
【きだて】15年ぶりか。
【他故】「鉛筆シャープ」とかは出してましたけどね。
――だから、ボールペンでは15年ぶりということですね。
【きだて】長らく新製品を聞いていないし、前が何だったのかすら思い出せないね。
【高畑】今はどちらかというと、低粘度油性インクとかゲルもそうだけど、そういう書き味重視にわーっと寄っているから。そういうところに後から入っていくには、単発で普通のペンを出してもインパクトがないし、提案しても難しいから。
【きだて】時流には乗りつつ新しい切り口で、ってことだから、難しいよね。
【高畑】あと、インク作りもずっとやっていたわけではないから。そういうところで、コクヨらしさを出す方法として、他がやっていなかった組み合わせというのをやってきたというのは、戦略上の狙いもあってのことなんだろうな。
【きだて】そうだろうね。
【高畑】全部を1本で対応させるのは、高額になったりするし、ゴテゴテした感じになると、どちらかというと男子向けの趣味の方向になってしまうから。これの落としどころは、選ぶところの楽しさもあるけど、1本だけ持ったときには、使いやすい普通のボールペンになるところだよ。200円という安さも含めて。
【きだて】軸とリフィルを合わせた値段はね。
【高畑】そういう値段とか使い勝手は、普通に普及品としての提案というか。
【他故】そうだよね。
【高畑】ちょっと工夫のあるものって、どんどん高くなる傾向にあるじゃないですか。店での工夫というのは、什器ごと置かないといけないけど、買う人にとっては200円しか払わなくていいわけだから、そこはいいかなという気がする。
【きだて】15年振りとは思えないくらい真っ当なんだよね。
【高畑】こなれているよね。きれいだよね。
【きだて】油性とゲルの0.5と0.7の味付けも、現時点での最新のボールペントレンドを研究し尽くしたレベルでテイストを調整してあって、コクヨは熱心だなと思うよ。
【他故】そうだよね。突然出てきた感じじゃないものね。練られている製品に見える。
【高畑】僕はこの、2重成形のクリップがきれいで割と好きなんですよ。クリップって、そのメーカーの特徴が出たりするんだけど。ボディが大人しい分、ここがシャープなんだけど、ちょっと色気のあるかたちというのがカッコいいなと思っていて。
【他故】そうだね。特徴があっていいよね。何かにすごく似ているわけでもないし、突拍子もないというわけでもないし。
【高畑】そう、ラインがきれいだなと思って。
――中のリフィルが見えるようにしたんですよね。
【きだて】軸が共通な分、中が見えないと分からないからね。
【高畑】それで、リフィル側に印刷しているんだよね。で、ゲルが「G」で、油性が「Y」という(笑)。オイルの「O」だと、ゼロなのか何なのか分からなくなるから「Y」なんだろうなと思うけど。
【きだて】それは分かるんだけど、油性の「Y」かよって(笑)。ちょっと面白いっちゃあ面白いんだけど。
――まあ、日本人だから(笑)。
【高畑】領収書に「ウケ」という名前を付けちゃうコクヨの「っぽい」感じはするよね。まあ、リフィルに印刷が入っているので、すごいカッコいいんだよ。
【他故】すごいカッコいいよね、これね。
【高畑】「コクヨだな」と思うのは、リフィルのパッケージにカタカナで「エアリーゲル0.7」と大きく書いてくれているので、お店の人には嬉しい。このぐらい大きく書いてあると見やすい。
【他故】「この芯ください」というときに、見て分かるからね。
【高畑】混ざったときに「どれだっけ?」ってなるじゃん。すごい分かりやすいよね。
【他故】分かりやすいよね、これ。
【きだて】何か、全方位に気を遣ってるよな。
――発売前のユーザー調査で、ちゃんと選べる人が少なかったので、その辺をかなり分かりやすくしたそうですよ。
【高畑】これでもまだ混乱している部分はあると思う。分かっているお店の人には分かりやすいように、パッケージのデザインは白黒反転のネガ・ポジになっているんだよね。油性の方が白地に色文字で、ゲルの方が色地で白ヌキ文字なんだよね。そういうところは工夫しているんだけど、とはいえ知らないと若干混乱するかもしれない感じはある。
【きだて】お店には、必ず什器1セットを置かないといけないという圧迫感もあるから。
【他故】それは、什器で置かないと分からないからね。
【高畑】そこはチャレンジな商品なので。
【きだて】まあね。
【高畑】色々と本気なんだろうなと思うのは、ボディに窓が付いているでしょ。ノックすると、ボール径の太さがちょうどこの窓からきっちり見えるようになっているんだけど、本体が透明だから窓いらないじゃん。なのに窓をあけているのは、絶対に不透明のボディを作る気なんだよね。
【他故】まあ、そうだろうね。
【高畑】不透明軸とかカラーバリエーションを増やすときに、それがちゃんと作れるようにここに窓をあけているんだよ。しかも、窓の位置が、手に持ったときにちゃんと自分が見えるような位置に付けているんだよね。
【きだて】ちゃんと目に入るんだよな。
【他故】特にいじらなければ、このグリップの平らな部分と窓の位置が合っているはずなんだよ。
【高畑】そうなんだけど、このななめの位置に窓があるのは、明らかに持ったときの正位置で、自分にとって見やすい位置にあるんだよね。
【きだて】手に持ったときの状態でちゃんと正対するんだよね。
【高畑】逆に、名入れする場所がクリップになってしまうけど。
【他故】でも、名入れするとなると、リフィルの供給をどうするかになっちゃうからな~。
【きだて】だって、名入れでリフィルをお仕着せにすると“エラベナイノ”になっちゃうじゃん。
【高畑】まあ、とにかく、不透明なボディも作れるようになっているんだよ。
――いずれ、そういう需要があると見越して作っているわけですね。
【きだて】だから、コクヨとしてはかなり本気なんだよね。
【高畑】そつなくきれいな感じがするよね。使っていて嫌みな感じはないからいいよね。
【きだて】あとは、店頭でどれだけの人がサンプルを試して、自分に合ったものを見つけられるかだよ。
【高畑】店頭で、組み替えてまで試す人はなかなかいないよ。
【きだて】店頭のサンプルは12種類一通り揃っているんだよ。
【他故】そこまで手に取って見る人がいるかだよ。
【きだて】そうだよね。いっそのこと、本気で試すモードの什器を作ればいいんだよ。
――どういう感じなんですか(笑)。
【高畑】まあ、あれだよ、ちゃんと見せられる大型店だったら、お試し用のスペースを作ってさ。
【きだて】平台を作っちゃったらいいんだよ。
【他故】最初から12本立ってるんだよ。
――これは、「コレト」とか「スタイルフィット」みたいに、多色ではなく単色のカスタマイズペンじゃないですか。その辺はいかがなんですか?
【高畑】新春スペシャルで、きだてさんがカスタマイズペンのことについて言及してたけど、単色の組み替えとしてはどうなの?
【きだて】3月に出るブング・ジャムの新しい本でも「組み替え系のペンがユーザーの文房具リテラシーを高めた」という話をしてたじゃん。それだけ自主性を持ってペンを構成するという責任がユーザー側にあって、それをこなせるだけのリテラシーが備わってきたと。だからこれは、そのリテラシーを100%信用しての商品じゃない。
【他故】まあね。
【きだて】今までメーカーのお仕着せで「これ」というものを「はい」と受け取っていたんだけど、「いや、自分で選ぶから」という風に言わせているわけだよね。でも、そこまでハイレベルな商品だけに、発売タイミングが今で良かったのかどうかという気がする。
【高畑】まだ、人類には早すぎる?
【きだて】まだ人類には早すぎる叡智だったのかもしれないと思う。
【高畑】多色組み替えの「コレト」なんかとは、また違うよね。しかも、カラフルにノートをとっている学生を狙っているわけではなくて、ガチで事務用じゃん。
【きだて】メイン筆記具をこれで賄ってくれと言っているわけだもん。
【高畑】物としては、主力で使う量産機の立ち位置なので。それでこの組み合わせが出てきているというのがなかなか。
【きだて】面白いのは、リフィルを替えるだけじゃなくて、ボディを替えることでも書き味が変わるということが、さらに難しさに拍車をかけているんですよ。
――ベストマッチを探すのはなかなか…。
【きだて】それが、今の人類にできるかどうか。
【他故】選ぶのが「楽しい」というところまでいってくれればね。
【きだて】でも、今コクヨがこれを始めたということは、素晴らしいことだと思うし。
【高畑】そうだよね。勢いがないと始められないからね。
【きだて】始まらないとどうしようもないので。
【他故】それもそうだ。
【きだて】他メーカーがこれに追随することはないんだろうけど。
【他故】同じパターンではね。
【きだて】俺としては、今後も「エラベルノ」を応援したいと思っているわけですよ。
――きだてさんは、グリップにこだわってますからね。
【きだて】このD型グリップが、ツルツルして見えるけど、本当に滑らないので大好き。
【他故】すごくいいんだね。
【高畑】この平らなところが、若干でこぼこしているんだ。
【きだて】そうなんだよ、ギザギザ切ってるんだよ。この細かいのだけでもね、びっくるするくらい手汗に強いんだ。
【高畑】おおっ、キター。きだてさんとしては、グリップ的にはかなりいいんだ。
【きだて】これは超高評価ですよ。
【高畑】そうなんだ。
【他故】細いグリップがいいんだっけ?
【きだて】でもね、油性は太い方がコントローラブルだったよ。
【他故】お~、またそこが選べるからね。
【高畑】これ、余ってるリフィルとボディが入れられるケースか何かが欲しいよね。
【きだて】あ~、専用のケースね。
【高畑】今使っていないリフィルなんかが入れられるやつ。
【きだて】ストッカーみたいなやつ。
――それは、リフィルを持っている分だけボディも買うんじゃないですか。
【高畑】それはそうなんだろうけど、ノック式でペン先が出ているからさ、先端にフタをしておきたいので。
【きだて】それはあるんだよ。リフィルの状態で。
【他故】リフィルにはキャップが付いているんだよ。
【高畑】ああ、そっか。その状態で持っておけばいいんだ。
【きだて】ちゃんとキャップを付けてるんだよ。替えられるように。
【他故】多分、それを想定していると思うんだけど。
【きだて】キャップといっても、素通しのチューブだけどね。
【他故】でも、これがないと全然違うから。
【きだて】これを付けてペンケースに入れておけば、全然大丈夫なので。
【他故】これがないとシャレにならない(笑)。
――グリップがちょっと変わっているのって、最近だと懐かしい感じがしません?
【高畑】うん、ちょっとね。
――昔は、各社グリップでしのぎを削っていた時代がありましたから。
【きだて】しばらくなかったですよね。
【高畑】トレンドとしては、ここしばらくはそれじゃなかった感じはするよ。
――「ジェットストリーム」以前はそうだったですよね。
【他故】「ドクターグリップ」と「アルファゲル」に「エルゴノミクス」とか、その辺の話ですよね。
――パイロットの「スーパーグリップ」もリニューアルされたし、今年はグリップ系は注目ですか。
【きだて】そうかも。嬉しい時代が来たのかな。
【他故】もう一回来るかも。
――そうですよね、一周してもう一回ですかね。
【きだて】「エラベルノ」の話に戻ると、トータルでちゃんとやってるんだよ。グリップだけじゃない、リフィルだけじゃない。
【他故】まあ、各社のいいところをちゃんと考えた上でね。
【高畑】仕上げとして最小限で抑えているところがね。やり過ぎない感じが。
【他故】そうね。
【きだて】ぶっ込んでない。
【高畑】そこが「余裕見せやがって」という感じがするね(笑)。
【他故】筆記具メーカーとしては、ガワで100円という売り方は、恐くてできないかもしれないと思うよ(笑)。リフィルで100円は分からないでもないけど。
【きだて】だから、「じっくりコトコト煮込んだもの」をあっさり食わせるみたいな(笑)、そういうテイストなのよね。
【高畑】あれでしょ。料理マンガで言うところの「透き通ったスープ」が出てくる感じ?
【きだて】100時間かけたコンソメスープみたいなやつですよ(笑)。
【高畑】何の具も入ってないやつ(笑)。
【きだて】そう、「水かと思ったら」という、そんな感じだよ(笑)。
【他故】究極の白湯スープが出てくるんだ。
【きだて】清湯ですよ、清湯スープ。
【高畑】逆に、サラッとし過ぎているから、什器ちゃんと置かないとよく分からないんだよね。
【きだて】それだけは、もっと伝える工夫をしてほしい。
【高畑】だから、僕らも頑張って説明しなきゃいけない。組み合わせによって違いがあるんだよというのが、このペンの最大の売りなので、単に1本だけ持って、それで良い・悪いではないよというのだけは分かってほしいよね。
【きだて】とりあえず、全部試せ。1本で終わるな。
【高畑】全部じゃなくても、いくつか試せば、違いがあるということが分かって、自分にとってのいいものが探せるじゃない。合うものを見つけることで、効果を最大限発揮できるから。1本で、「誰が使ってもいいものですよ」というものもあるけど、そうではないものなので、合わせてくれないと、むしろ意味が伝わらないので。
【きだて】もういいから、700円払って一揃え揃えろって! 家でやろう、家で。半日つぶして700円は安いって。
【高畑】これ、文具店でパックで売ればいいね。
【他故】スターターキットだよ。
【きだて】スターターキットやるべきかね。
――「きだておすすめ」とかどうです。
【高畑】そうだよ、「きだておすすめスターターキット」だよ。
【他故】その後に「ブースターキット」だよ(笑)。
――これ、インクはどうなんです?
【高畑】何でしょうね、この優等生的な感じは(笑)。書き味なめらかなインクとしては、普通に優等生ですよね。
【きだて】油性の0.7㎜なんて、とんでもなく滑るし。
【高畑】0.5㎜も好きだよ。
【きだて】ゲルの0.5㎜は、俺の好きな「シグノRT1」に割と近いコントローラブルな感じで。
【他故】滑り過ぎずということだね。
【高畑】細書きが好きな人にはあれだけど、太くしっかり書きたい人向けだよね。0.5と0.7じゃん。しかも割と太めの筆跡なんだよ。
【きだて】そう、インクフローがいいんだよ。
【高畑】0.7㎜のゲルを使うと、インクがめっちゃ出るよ。
【他故】出る出る。
――ゲルは速乾性の高いインクでしたよね。
【きだて】とはいえ「サラサドライ」みたいな浸透性の高いタイプじゃないので、フィルムふせんに書けるとか、そんな感じではないよ。
【高畑】だから、ノートに細かく書くというよりは、宛名書きには全然OKだし。
【きだて】宛名書きには全然いいよ。
【高畑】サインペン寄りの使い方かな。走り書きでアイデアを書き出したりとか。
【他故】本当に軽く書ける、雑でもいいようなやつね。
【きだて】要望としては、俺は細書きが好きなので、0.3とか0.38が欲しい。
【高畑】そのくらい、もう一段細いゲルが出てくれるといいね。
【きだて】細いゲルと、1.0㎜の油性とか。
【他故】あ~。
【きだて】さらに太く、ドバッと出るように。「筆ボール」くらいの感じのやつ。
【高畑】そういうのが出てくると、かなり万能になってくるよね。
【きだて】そこにさらに軸を組み合わせることを考えると、ワクワクしてくるよね。
【高畑】これ以外のグリップも出てきたりとかね。
【他故】「さらに太」とか、「さらに細」とかね(笑)。
【高畑】細書きの方は欲しい感じはするね。
【きだて】個人の好みとしてもそうなんだけど。
【他故】やるんじゃないのかな。これが売れれば次は考えるけどね、細い方は特に。
――リフィルの要望は、色々と出てくるんじゃないですかね。インク色も増やしてほしいとか。
【きだて】とりあえず、「文とび」読んでいるような文房具好きの読者は、まず700円払って試した方がいい。ほんと、楽しいから。油性筆ぺんの正しい使い方?
――次は「くれ竹油性筆ぺん」です。
【きだて】これがね、まだ使い道を思いつかないんだよ。
――筆ぺんで油性ってないですよね?(*)
【他故】聞いたことないですよね。
【きだて】パッケージを見ると、「写真に書ける」となっていたので、それ用じゃないかなとは思うんだけど。
――ツルツルな面に書けるんですよね。ガラスとかプラスチックとかにも。
【他故】何でも筆ぺんで書きたい人がいるのかな。
【きだて】とはいうけど、「じゃあガラスに筆ぺんで書きたいヤツ、いるなら連れてこいよ」って話でしょ(笑)。
【高畑】いやいやいや。ど真ん中は何なんだろうね。何かしら、「この人がこういうところで使う」という用途的なものがあっての開発が多いじゃない。何ですかね、「できるから作っちゃいました」という感じなんですかね。そうじゃなければ、誰かの要望があったとか。
【きだて】パッケージに書いてある、「何でも書けますよ」というこの羅列がさ、特定の用途は考えてないんじゃないかなと思うんだけど(笑)。
【高畑】墓石に書ける筆ぺんがあったじゃない。あれは白で顔料系インクなんだよね。
【きだて】そう、「墓石に書いてもインクが流れません」みたいなね。
【高畑】「墓石の補修に」というのは、それだと分かるじゃん。でも、この油性筆ぺんは「油性でも筆ぺん作れるぞ」ってなっちゃったのかな。
【きだて】例えば、DIYで大理石をリューターで自分で彫って、自分で表札作りたいという人が、まずこれで下書きするとか。
【他故】でも、それだと別に筆書きじゃなくても。
【きだて】そうなんだよね。
【高畑】柔らかいペン先で書き心地がいいというのはあるけれど…。
【他故】これ、普通のハガキだとインクが抜けちゃうかな?
【きだて】抜けるよ。
【高畑】ハガキに油性で書く意味もないじゃん。
【他故】筆ぺんでも、速乾性の低いのがあるじゃない。墨汁がたっぷり出ちゃうから。それが嫌で、早く乾く筆ぺんが欲しいというニーズがあるんなら、こういうのもアリかもしれないと思ったんだけど。
――写真を使った年賀状だと、光沢紙でツルツルしているから、そこに書き込むのにいいかと思ったんですが。
【高畑】そこ筆文字か? う~ん、それも思い付きにくいな。
【きだて】俺としては、今までなかったものだけに、面白い用途が思い付かない現状がすごい歯がゆいのよ。
【高畑】そうだよね。「これ」って言ってあげたいけど。
【他故】「ついに出ましたね、あれにいいですよね」って言いたいけど(笑)。
【きだて】言いたいんだけどさ(笑)。
――筆なので、細くも太くも書けるという利点はあるんじゃないですか。
【高畑】それはあるよね。ぺんてるが出したホワイトボードマーカーがあるじゃない。
【他故】ペン先が筆っぽいやつだ。
【高畑】筆っぽいから、細い字も太い字も書けますよというのは、それは分かるんだけど。それにもまして、この油性筆ぺんはね。
【他故】油性ペンで、先端が筆なだけっていうこと?
【きだて】う~ん、その油性で筆っていう組み合わせが思い付かないんだよ。
――油性マーカーの先端が、筆みたいになっているという。
【他故】油性マーカーの筆タイプ。
――みたいな感じですよね。
【他故】どちらかというと、そうですよね。
【きだて】200円という、筆ぺんとしては安めの値段というのもあるかもしれない。
――これで、書き初めはしないとは思いますが(笑)。
【他故】呉竹が出してきたので、すごく意味がある気がしちゃって(笑)。
――単純にこれでお名前書きでもいいんですよね。
【他故】まあ、そうですね。
【高畑】お名前書きを筆でするというのは、お母さんの書道の腕前がよくないと。
【きだて】筆ぺんで書く必要はないよね。
【高畑】「これだからいい」というのが、まだちょと思い付かない。何かあるのかな~?
――結構お店に置いてますからね。
【きだて】でも、普通の筆ぺんの感覚で使っていたら、これだけ裏抜けするから、びっくりしちゃうと思うよ。
【高畑】何にだったら書くのかな?
――多分、写真あたりを考えている可能性はあるな。
【高畑】でも、黒でしょ。
【きだて】これで「うす墨」とか出してきたら笑うよな(笑)。
【他故】いよいよ使うところがわからん(笑)。
【きだて】しかも、最近流行の硬めではなくて、ちゃんとした軟筆なんだよな。だいぶコシがあるよ。
【他故】ちゃんと「軟筆」と書いてある。
――これ、カラーではやらないですかね。カラーペンでは色々と使えそうですが。
【他故】いわゆる、カラーペンの先が柔らかいやつですよね。
――そんな感じですね。
【他故】金属、ガラス、プラスチック、木。「木に書く」か…。
【きだて】木は普通に水性で書けるよ。
【高畑】顔料系だったら、インク流れないし。
【他故】完全にインクを弾いちゃうものを想定している?
【高畑】卒塔婆とか…。
【きだて】今、俺もそれを思いついた(笑)。
【高畑】何だったらいいんだろう。アクリルに筆ぺんで書く用途が思いつかないな。
【きだて】ペットのお墓だ。
【他故】ペットのお墓?
【きだて】アイスの棒みたいなやつ(笑)。
【他故】え~!
【高畑】植物の苗に立てて置く札とかね。でも、筆じゃなくていいからね。筆書きだからいいものは何だろう?
【きだて】いつも偉そうにしてるブング・ジャムの3人が寄り集まって、油性筆ぺんの使い方すら分からないのかという(笑)。
【高畑】俺たちもまだまだだな~。
【きだて】悔しー。
【高畑】これは悔しいね。
【他故】読者から突っ込まれたらどうしよう、と思うぐらい思いつかないんですけど(笑)。
【高畑】すっごい重大な何かを見逃していたりして、「えっ、これじゃん」と言われたりして(笑)。
【きだて】そういうのがありそうで嫌だ~。あるなら、答え教えてくれ(笑)。
【高畑】これを読んだ人で、用途を思いついた人はお便り下さい。「これ」というのがあったら、来月の「月刊ブング・ジャム」で発表しますので。
【きだて】もしくは、俺にこっそり教えて。俺が思いついたように言うから(笑)。
【高畑】いやいやいや、何でいつもそこら辺だけちょっとせこいんだよ(笑)。
【きだて】だって、悔しいんだもの~。
【高畑】本当に悔しいね。
【他故】ねえ。
【高畑】説明を読んでも、「いろんなものに書けますよ」とは書いてあるけど、何に使うかは書いてないから。
【きだて】俺たちがそれについて頭をひねってどうするんだという(笑)。
【高畑】こんな事態は、この連載が始まって初めてことだよね。
【きだて】まったく、「ブング・ジャム途方に暮れるの巻」だよ。
【他故】そう、すごい。そんなものもあるんだね。
【高畑】あっ、あれはいいかも!
【きだて】おっ、何か思いついたぞ。
【高畑】例えば、革製品とかの黒いもので、傷がついたり、はげたり欠けりしたものをごまかすときに、黒ペンで塗りつぶしたりするから、筆ぺんだったら塗りやすいと思う。補修系のところで黒はたまに使うかな。
【きだて】あ~、それは使いそうな気もするな。
【高畑】まあ、ニッチな需要ではあるけど。
【他故】プラモを塗ったりするときにいいかな。
【高畑】でも、黒だけじゃないから。
【きだて】プラモの墨入れはもうちょい硬いので塗る方がラクだなー。
――とにかく、紙じゃない硬いものにサインとかする人には。
【高畑】あ~、筆文字でねサインができる。
【きだて】アニメーターに、セル画にサインして下さいという。あ~、でもセル画がもうないよ。
【高畑】アイドルグッズだとクリアファイルとかね。
【他故】Kindle本の著者に、Kindle端末にサインしてもらうとか。
【きだて】あ~。
【他故】筆ぺんじゃなくてもいいけど、筆がいいという人がいるかもしれない。
【高畑】必ずしも筆でなくちゃいけないわけでもないけど、それはそれでいいかな。
【きだて】とりあえず、これは宿題ということにしておこうよ。
――用途が分かる人がいましたら、ぜひお便り下さい。
*鼎談終了後、他故さんから「呉竹のカラーブラッシュシリーズに油性のものがあります」とご指摘がありました。
ドットが押せるカラーマーカー
――次は「プレイカラードット」です。
【高畑】これはいいよ。
【きだて】これは素敵。
【高畑】ツインペンの太い方がスタンプになっているのって、一時期流行りましたよね。
【きだて】あった、あった。
【高畑】音符のかたちになっているやつとか、ハートとかさ。
【きだて】サカモトがやってたし、イケアでも海外の安いスタンプペン売ってたね。
【他故】あったね。
【高畑】色々あったけど、ただの丸はなかったなと思って。で、ただの丸は使い勝手いいじゃんっていう(笑)。
【きだて】ただの丸は、仕事で使えるんだよね。
【高畑】例えば、箇条書きするときに使えるし。
【きだて】箇条書きのヘッドマークね。
【高畑】俺は、仕事やり終えたリストのところに、丸で押したりしているよ。マス目を塗りつぶす感覚で使えるので。
【きだて】それが、太いペン先としてもちゃんと機能するから。
【他故】そうなんだよね。
【高畑】ななめにして書くと、ちょっと太めに書けるんだよね。
【他故】蛍光ペンと同じレベルの線が引けるしね。
【高畑】あと、これがよくできているのが、細い方はプラペンチップなんだけど、これが若干インクが濃いんだよ。色が違うの。ツインペンで中のインクが共通というのはよくあるんだけど、これは仕切られているっぽいよね。
【きだて】うん。
【高畑】だから、ドットを押した上に、さらに書くことができる。ドットに顔を描くみたいな、いわゆるスマイルマークが簡単に描けるんですよ。
【他故】そうだね。
【高畑】その色のちょっとした配慮だったりとか。
【きだて】細かいことしているんだよね、トンボさんは。
【高畑】これは売れてるんじゃないですか。お店でも売れててなくなっているのをよく見ますよ。
【他故】そうだよね、かなり減っているよね。店で動いているよ。
【高畑】楽しいので、いっぱい買っちゃいましたよ。
【きだて】「プレイカラー」自体が、本当によくできているのよね。書きやすいプラチップで。
【高畑】ドットじゃない、普通の「プレイカラー」も便利なので、前から使ってますけど。
【きだて】普通の「プレイカラー」は、ピンクが5色も6色もあるような、本当に女子向けのやつなんだけど、全部の色がびっくりするぐらい発色いいし、プラチップだと「キュキュッ」て音がしそうなんだけど、そういうのがなく、書き味もよくて。それこそ、大人が仕事としてカラーペンを使えるような仕上がりでもあるのよ。女子高生仕様なので、見た目がポップ過ぎてあれだけど。
【他故】まあ、そこまですごい色合いではないので。
【高畑】前にきだてさんが提案してたじゃん。大人がノート書くのにプラペンがいいって。
【きだて】ああ、他誌のWEB連載でボールペン代わりの日常ペンとして使えるよという話はしたね。この黒も、発色のいいパキッとした色なので。で、この細い方も、0.38㎜とまではいわないけど、0.5㎜よりは確実に細いんだよ。
【他故】かなり細いよね。
【きだて】手帳にも細かく書けるし、日常ペンとして充分に使えるのよ。
【高畑】このドットが直径5mmなので、5mm方眼のノートだと、ちょうどマス目に収まるんだよ。コツは、クリンと回しながら力を入れて上げるとしっかり押せるので。
【きだて】コツをつかまないと、ドットの中でインクが結構偏ったりするんだよね。わりとウェットにインクが出るから。
――ああ、確かに。イクラっぽくなりますよね(笑)。
【高畑】端っこが欠けたりするから、しっかり押してあげないと。まあでも、絵心なくても、ポンポン押しているだけでかわいくなるので、いいと思います。
【他故】これはいいですよ。
――まあ、楽しいですよね。
【きだて】それこそ、これからの時期だと色紙にポンポン押すだけでも華やかになるしね。
【他故】それはいいね。
――ドット絵とか。
【他故】ドット絵(笑)。
【高畑】カラーペンとして普通に使える上に、そういう遊び的要素があるので、これはいいですよ。
【きだて】見た目にダマされずに、おじさんもおばさんも買うといいよという。まあ、おすすめです。売り場が華やかすぎて近寄りがたいんだけどね(笑)。
【他故】まあ、確かにガーリーなコーナーにありがちだけど。
【高畑】でも、ボディもそんなに派手じゃないので、いいと思います。ビジュアル系で機能的な蛍光ペン
――次も蛍光ペンで「フィットライン」です。ペン先がくびれているペンです。
【きだて】つまようじの根元みたいなやつ。
【高畑】あ~、そんな感じ。
【きだて】ちょっと前にゼブラが、筆ぺんみたいにしなるやつを出したじゃない。
――「ジャストフィット」ですね。
【きだて】あれが割と使いやすかったんだけど、筆圧が安定しない俺のような不器用な人間は、あれで引くとラインが太い・細い・太い・細いになって一定しないのよ。
【他故】あ~、なるほど。
――ちょっと筆ぺん使っているような感じになるんですね。
【きだて】まさにそうだよね。で、こっちの方がチップが硬い分、線幅は安定する。でもちゃんとしなってクッションが効いて紙にフィットするし、俺的には使いやすいマーカーでした。
【高畑】これこそ、さっき話していたぺんてるのホワイトボードマーカーのペン先をしならせるのと同じ技術を使っているんだよね。
【きだて】そう、ペン先に溝を入れた「ノックル ボードにフィット」だよね。
【高畑】多分、これはデザインが好きな人は多いんじゃないかという気がするんですよ。
――あ~。
【高畑】こっちから見た時に、ロゴだけしかないし、カラーもソリッドな色で1色のみというのは、日本のメーカーが今まであまりしなかったデザインなんだよ。
【他故】そうだよね。
【高畑】じゃない? 色もさ、ヨーロッパのスタビロとかがやりそうじゃない。
【きだて】ドイツあたりのメーカーがやりそうな気がする。
【高畑】そういう感じがするじゃん。裏面は仕方なく小さく最小限に情報を載せているけど、これは作った人ができるだけ書きたくなかったんだよね。ごちゃごちゃしたのをやりたくなくって。日本の筆記具は、ついいろんな情報を載せてしまうけど、最近は割とシンプルなのがウケるじゃない。ミニマリスト的な感じがもてはやされたりするじゃないですか。
――同じぺんてるの「ハンディラインS」を持ってきましたけど、全然違いますね。
【きだて】同じメーカーが作ったとは思えんな。
【高畑】そのぐらい、これはおしゃれウリの方が強くって、本当はペン先がしなるんだから「しなるよ」って書きたくなるじゃん。
【きだて】多分ね、図案化したペン先のイラストがここに載ってたりするんだよ。
【他故】あ~、多分そうだろうね。
【高畑】だから、こっちの「ハンディラインS」は、“蛍光ペン”とか“ノック式”とか色々と書いてあるけど、こっちはないじゃん。だから、デザイン的にはそこを狙ってみた感じがすごく強いんだよね。
――これ、「文とび」に新製品ニュースを載せたら、デザインのことをコメントしているツイートが多かったですよ。
【きだて】そうだろうね。
【高畑】ちょっと細かい話なんだけど、これ丸軸でここにロゴがあるじゃない。その真裏に情報を印刷するかと思ったら、ちょっとロゴに近いところに印刷しているんですよ。これは何でかというと、ロゴを前にしてななめ上から見たときに、どこからも文字が見えないようにしてあるので。
【きだて】はいはい、分かる。
【高畑】きれいにロゴが見える角度から見たときに、どこにも文字を見せたくないんだよ。だから、真裏じゃなくて、ちょっと下にまわしているという。この位置も含めて、これをデザインした人は、本当に文字を入れたくないんだよ。
【きだて】これね、写真撮るときに気付くの。
――ああ、ブツ撮りするとね。
【きだて】「あっ」て思うもの。
【高畑】この位置なので、上手くやると全く文字が見えない写真を撮ることができる。
【他故】はいはい。
【高畑】これが真裏にあると、どちらからか見えちゃうので。
【きだて】写り込んじゃうね。
【高畑】プレーンなボディに見える角度があるというのも、これもちょっと何かあるんだよ。
【きだて】まあ近年、国産でこういうの見たことなかったよね。
【他故】見たことないね。
【高畑】言うとすれば、無印良品みたいな感じだよね。
【きだて】だから、デザイン的には相当意欲作だなという気がする。
【高畑】蛍光ペンだから、しなるとかが分からなくても、別に買って損なことはないじゃん。
【きだて】普通に損はしないし、蛍光ペン苦手は人は使ってみてほしい。
【高畑】しなってくれるから、普通にいいよ。
【きだて】本当に安定した線が引けるから。とてもいいです。
【高畑】唯一分からないのは、キャップの向きとロゴの向きなんだけど。ロゴが見える方向にクリップを向けたら、「TAIWAN」っていう刻印が見えちゃうから。だから、使うときの向きかな。キャップ後ろにさして手に持ったときが完成型なのかな。キャップしたままだと「TAIWAN」の刻印が見えちゃうから、そこだけが不思議なんだよな。
【きだて】他故さんはこれ使った?
【他故】いや、使ってないんだよね。
【高畑】ちょっと使ってみて下さい。あんまり、やり過ぎない感じのしなり方で悪くないよ。
【他故】(使ってみて)ああそうね、ピタッとくるね。
【きだて】グッと力入れてみるとしなるよ。
【他故】ピタッとくっつく感じがすごく分かるよ。
【きだて】辞書みたいなところにも、それなりに追従するよ。
【他故】そうだね。
【きだて】さすがに、紙面への追従性に関しては「ジャストフィット」の方がだいぶいいんだけど。
【他故】ああ、そうだろうね。
【高畑】「ジャストフィット」はインクがいっぱい出るからね。これは控えめで悪くない感じかな。全体的に樹脂の色も蛍光色で、「テープノフセン」と一緒に並べるとすごいいい感じになるよ。印刷なくてソリッドで蛍光カラーというのが流行りなのかな。
【きだて】そういうのがもっと増えてくると面白いけどね。
【他故】確かにかっこいいよね。
【高畑】そうでしょ。すぐに「日本の文房具はデザインがダメだ」という人は、これを買えばいいよ。今までいろんな人の要望で情報を本体にいっぱい書いていたけど、これでクレームが来なければ、「別に書かなくてもいいじゃん」ということになってくれれば、僕らとしてはシンプルでいい気がするな。
【きだて】多様性があっていいんだけど、俺は能書き好きなので、このペン先を図案化してデザインに入れて欲しかったというのもある(笑)。
――分かりやすいから。
【きだて】分かりやすいからというよりは、それを見ているだけで嬉しくなるから。「おお、機能だ」っていう(笑)。
【他故】わはは(笑)。
【高畑】でも、難しいんだよね。文房具って機能ウリしてしまうから。なんやかんやで、日本の文房具は機能で差別化するのがベースだから、それでやったのにも関わらず、これのデザインの仕方だと、これを見て先端がしなると思う人はなかなかいないので、そこはちょっとしんどいよね。
――でも、店頭で見たら、ディスプレイで機能をうたっているので。
【他故】ディスプレイでやっていたらいいですよね。
【きだて】いつまでディスプレイごと置いてもらえるのやら。
【高畑】最終的には、ペットボトル飲料みたいに、「はがしたい人ははがしてね」という感じで。
――シールという可能性はありますよね。
【高畑】「しなる」って書いてあるという。
――でも、これ見た目かっこいいですよね。スッキリしていて。
【他故】多分、私が中学生だったらこれを選びますよ。昔ながらのやつは、中学生から見たら、ダサく見えますよ。
――前時代的に見えるのかな。
【他故】書いてない方がかっこいいよ。
【高畑】このペンとは関係ない、何かの商品提案とか、リビングの写真とか撮るときに、銘柄が分からなく見えるペンってすごく助かるよ。
――NHK的な(笑)。
【他故】そう(笑)。
【高畑】ドラマとかで蛍光ペン使っているけど、名前が分からないという。
【きだて】撮影用蛍光マーカーはこれで決まりだね。
【他故】撮影用(笑)。消しゴムできれいに消せるカラー芯シャープペン
――最後は「ユニカラー」。消しゴムで消せるカラーシャープです。
【高畑】カラー芯は、三菱のがいいよね。色芯が結構書けるカラーシャープで。書けるというよりは、今回は「消せる」方がウリなのかな。
【きだて】そうそう。まず消せる色芯ありきで。
――消せる芯自体は前からあったようですが、これは最新バージョンで。
【きだて】ちょっと前に発売された色芯だよね(編集部注:2014年11月に第1弾発売)。
――消し具合もそうでしょうが、発色とか芯の強度なんかも違うんですよね。
【きだて】フリクションの対抗馬としてあってもいいぐらいの消えっぷりなのよ。
【高畑】こっちは、消した跡を冷やしても戻らないからね。
【きだて】その色芯を持ち歩く用として、このシャープが出たんだ。
【他故】全部の色のシャープがあるんだっけ?
――7色全部です。
【きだて】それで、カラーペン的に大量にペンケースに入れるために、これだけスリムになっているんだけど。
【他故】はい、そうね。
【きだて】色芯が、書いたときに結構粘り気があるじゃない。その粘り気にね、軸の軽さが負ける気がするのよ。
【他故】もっと重い方がいいんだ。
【きだて】もっと重い軸で書いたら書きやすいのになと思った。
【高畑】ただこれ、芯が入った状態で100円だからね。
――これ、7色全部買ってほしいというのもあって、この細さだと思いますよ。
【高畑】これ以上軸を太くしたくないんだよ。
【きだて】これ、チャックの部分も、柔らかい色芯をつかむために、ちゃんとしてあるみたいだね。芯を割らないように。
【高畑】チャックは樹脂になっていて、それだと芯を削らないからいいとは思うけど。
【きだて】金属チャックだと削っちゃうからね。
【他故】ちょっと懐かしい感じがするんだよね。安い100円シャープって、最近あんまり見ないから。昔流行ったレモンとかの50円シャープのイメージもちょっとあるから。
【きだて】あ~、分かる。
【他故】たくさん持ててかわいいというのもあるし。
【きだて】この色芯だと、専用のボディが欲しいという気持ちは分かるんだ。それこそ、カラーペンの代わりに持つものなので。
――カラー芯だけだと、お店で試し書きできないじゃないですか。専用のシャープがあった方が、イメージしやすいというか、手に取ってもらいやすいでしょうね。
【高畑】このシャープより「さらに」という人には、「クルトガ」の赤芯専用モデルとか出ているんだよね。あれだと、柔らかい芯も回しながら使えるからいいよ。
【きだて】「クルトガ」のあのモデルなら、重量的にも合うので、書きやすいと思う。
【高畑】使うのが1色か2色ぐらいだったら、決め打ちでそれを使ってもいいんだよね。
【きだて】だけど、これはザラッと何本も持ちたいんだよ。
【高畑】そう、だからこれでいいんだよ。しかも100円だから。
【きだて】こんなものだ、という感じはする。
――パイロットも消せるカラーシャープ出してますよね。
【他故】「カラーイーノ」の0.7㎜がありますね。あれも随分昔に作った商品ですからね。
――文具店では、結構目立つ感じでドンと置いてありますよ。
【他故】そう、黒い紙に書けるというので。0.7㎜の方が視認性がいいいですからね。
――なるほど。
【他故】「黒い紙に書けます」シリーズなんですよ。黒い紙に書くときに、カラー芯だと見栄えがいいので。今回、三菱が0.7mmのカラー芯の種類を増やしたのも、その辺があるんじゃないですかね。
――そうかもしれませんね。
【他故】これは、「コロリアージュ」にも使ってほしい感じ?
(一同)あ~。
――それもいいかもしれませんけど、コロリアージュをやるには、ちょっと色数が少ないですかね。
【きだて】7色だからね。
――100色使ったりしますからね。でも、細いところは塗りやすいかも。補助的に使うのもいいかもしれませんね。
【高畑】芯の減りが早いよね。
【きだて】本当に柔らかい芯だから。
【高畑】替え芯ケースで持ち歩きたくなるね。僕は本を読みながらマーキングしちゃう人なので、そういうのだとかで色々と試しているんだけど、これ悪くないよね。色芯でシャープで、これだけちゃんと細く書けて、はっきりと濃さがあるじゃない。はっきり濃く書けてちゃんと消せるというのができるようになったんだね。俺らが子どものころを考えると、昔は薄かったりしてまあ使えなかったものな。
【きだて】赤もちゃんと発色するんだよな。色鉛筆の赤と同じような色が出て。
【他故】前は、0.5mmの赤芯なんて使い物にならなかったからね。
【高畑】これね、辞書引きにはいいんだよ。
【きだて】あ~、はいはい。
【高畑】裏が抜けないし。
【他故】インクの乾きも気にしなくていいしね。
【高畑】これはシャープで持ちやすくていいよ。
――なるほど。
【きだて】あと、7色がアソートで入ってるミックス売りが嬉しいよね。
【高畑】あれ、いいんだけどさ、ボディがやっぱり要るじゃん。
【きだて】やっぱそうなるよな。
――ミックス用に、無色透明なボディを作ればいいんですかね。
【きだて】ああ~。
【高畑】でも、それだと次に出てくる芯がおみくじみたいになっちゃうじゃん。「次出てくるの何かな」みたいな。でも、今自分が使いたい色だけを選んで
自分の持っているシャープペンに出し入れしていると、折れちゃうこともあるし。
【他故】だったら、シャープユニット3つとかいうシャープペンを作らないと。「ファンクション357」みたいなやつ。
(一同)あ~。
【他故】「777」みたいな感じで。
【きだだて】それだと、結局「マルチ8」みたいになっちゃうんじゃないかな。
【高畑】「コレト」とか「スタイルフィット」のシャープユニットを3つ入れちゃえばいいんだよ。
――そのユニットは、カラー芯専用じゃないけど大丈夫ですか。
【高畑】普通の手持ちのシャープに入れて使えるのが、これのいいところなので。専用のは配慮していると思うけど、そうじゃなくても全然大丈夫。あとは、何の色芯を入れているのか、分かるようにすればいいよ。
――それは、テープ貼ったりして、自分で工夫すればいいと思いますよ。
【高畑】う~ん、何だろう。僕らが子どものときの常識で言うと、「色芯は消えない」という固定したイメージがあるじゃない。でも、こんなに消えるのね。
【きだて】おっさんほど使うと驚くよ(笑)。
【高畑】色鉛筆は消えないじゃん。昔は色芯だって消えなかったからね。
【きだて】消えないわ、発色悪いわでどうしようもなかったもの。
【他故】そうそう、赤芯はなぁ~。
【きだて】そう思うと、実用的な色芯で、とてもいいんだよ。
【高畑】これが学生のときにあったら、理科や社会のノートなんかには活用していた気がすごいする。
――いいと思いますよ。
【高畑】ボールペンで塗るのと全然違うじゃん。
【他故】違うね。特に「書く」っていう場合は余計そうだと思うよ。
【高畑】地図なんかに塗っていくのがあるじゃん。ああいうところにね。ボールペンだとカチッと書けるけど、ふんわり塗れるのが色鉛筆のいいところなので。
――これ、カラー芯シャープブームが来たら面白いですけれど。
【高畑】そうなったら面白いけどな。
【他故】カラー芯は、思ったより売れているみたいなので。
【きだて】ということは、結構需要があるのか。
【高畑】あるある。
【他故】我々が思っている以上に、軽く書けて消せる色ペンっていうのにニーズがあるんだよ。
【きだて】面塗りするのにも、カラーペンよりコスパいいのかな。
【高畑】それはよくないんじゃない。
【他故】逆に、こんなに細く塗れるペンはないよ。
【きだて】そうか。
【高畑】あと、筆圧で濃さを変えられるから。それはなかなかないんだよね。
――ボールペンやサインペンにはできないワザですね。
【他故】ニーズは小さいかもしれないけど、まだアナログでペンで描くという人は、下書きで消せる青なんて最高にいいと思うけど。
【高畑】この水色なんかはそういう色だよね。
【他故】これは完全に下書きに最適というやつだ。
プロフィール
きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。東京・京橋の文具店・モリイチの文具コラムサイト「森市文具概論」の編集長も務める。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
【森市文具概論】http://shop.moriichi.net/blog/
他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。「森市文具概論」で「ブンボーグ・メモリーズ’80s」を連載中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/
*このほか、ブング・ジャム名義による著書に『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)があるほか、弊社よりKindle版電子書籍『ブング・ジャムの文具放談』シリーズを好評発売中。購入はこちらから。
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