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【連載】月刊ブング・ジャム 新春スペシャル その2

ブング・ジャムの2018年文具大予測!?

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左から他故さん、きだてさん、高畑編集長
本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は「新春スペシャル」として3日連続で、ブング・ジャムのみなさんに「2018年の文具はこうなる!」という予測を語ってもらいました。

プチ高級カスタム系ボールペンが登場!?(きだてさん)

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――では、きだてさんお願いします。

【きだて】この10年間の文具を振り返るトークイベントをやったときにも言ったと思うけど、ここ数年で、それこそ「サラサグランド」とか、「エナージェルフィログラフィ」とか、今まで使っていたペンの高級版がどんどん出たわけじゃない。

【他故】あ~、はいはい、そうね。

【きだて】それは、今まで使っていた人が社会人になって、それの囲い込み対策みたいなので出てきたけど、それなりに人気を取っているわけですよ。そうなってくると、次の順番は何かというと、「コレトとかその辺じゃん」って思ったのね。

【他故】うん、なるほど。

【きだて】高級軸で、カスタムができるというのが「シャーボX」以外に出ていないよね。

【高畑】そうだよね。

【きだて】そうなると、「シャーボX」は早すぎたなーという思いが強い。

【他故】「シャーボX」って替え芯どのぐらいあるの? 十何色もないよね。

【きだて】そんなにはない。だから、カラーカスタムという感じではない。それこそ文具王が言っていた、かわいいブームにプラスして高級に振る。「コレト」って何年発売だっけ?

【他故】2005年じゃないかな。

【きだて】そのぐらいか。その時に中高生だった人たちって、自分で選んで1本のボールペンを作るという、ボールペンリテラシーを鍛えられた人たちだけど、もう社会人になって、バリバリと中核で仕事している人たちじゃないですか。

【他故】はいはい、そうだよね。

【きだて】そうなると、高級カスタムペンが欲しくなるだろうなと思って。そこは多分、外れはないんだよ。おそらく、各メーカー準備に入ってるんじゃないかなとすら思っていて。

――なるほど。

【きだて】それこそ2018年、2019年には絶対に出るし、それは絶対に売れるぞと予測はしている。

――それは当然、カスタマイズできる什器を売り場に並べるわけですね?

【きだて】そう、「コレト」なり「プレフィール」なりの芯が入って、さらに言うと、金属軸に合わせたリフィルも多分出てくる。

――なるほど。

【きだて】「コレト」だと、ノックボタンがプラのままだと金属軸に合わないから、それこそ金属ノブのリフィルが出たりだとか。

――でも、「スタイルフィット」なんかだと、ノックボタンの色を変えられないじゃないですか。それで、軸を半分透明にしてリフィルで識別してたわけですけど、それを金属軸にしたら識別できますかね?

【きだて】そこら辺は、上がったリテラシーに頼るんじゃないかな。本当に小さくアクリルの窓が開いていて、それで識別するんじゃないかな。

――まあ、それはメーカーではない我々が真剣に考えても仕方ないですが(笑)。

【他故】そんな細かいところまで(笑)。

【きだて】先端の部分まで、丸々透明にしちゃったら、高級も何もないじゃないですか。そこら辺は何か考えてくるとは思うけど。

――スケルトンは、高級感に欠ける部分がなきにしもあらずですから。

【高畑】まあでも、「カクノ」なんかは、透明軸の方が高級感がある感じがするけどね。これは技術的な話なんだけど、難しいかもと思うのは、あれは樹脂だからできる複雑な成形が内側に必要なのね。だから、あれを全部メタルで作るのは難しくて、プラで作ったまわりにさらにメタルの側をはめてあげないと。

【きだて】あ~、そうか。

【高畑】メカ部分が、すごい超複雑なかたちのが中に入っているから。

【きだて】リフィルが曲がらなきゃいけないしね。

【高畑】それが比較的できるのが、ツイスト式なんだよね。先に「シャーボX」が出てきているのは、すでにできる方式があるから。「コレト」とか「スタイルフィット」みたいな感じで、入れ替えができるようにするには、今見えているかたちではない、新しいかたちなりやり方が必要なのかもしれない。多色が選べるという高級筆記では、一致するかもしれないけど、見た目が変わっちゃうかもしれないけど。

【他故】なるほどね。

【高畑】今のまま、ノックをカシャッと入れ替えて使うというのは、結構メタルで作るのは難しいかな。

【きだて】あ~、なるほどね。

――「コレト」は1,000円のボディ出してますよね。

【他故】ありますよ。中はプラスチックですけどね。

【きだて】あれは、メタリック塗装しているの?

【他故】そう。

【きだて】それだとまだダメだ。

【他故】高級筆記具じゃないからね。

【きだて】高級に見えるじゃなくて、高級筆記具として出るんだろうなという予想なので。

――でも、高級なペンって、ツイスト式が多いじゃないですか。ノック式だと、デザイン的な問題であまり高級感が出せないというか。ノック式の方が利便性は高いですけどね。

【高畑】あれだけ売れている、「フリクションボール」の高いモデルでも、グリップだけ木になっていて、ボディの後ろは金属っぽいメタル塗装なんだよね。というのがずっと続いているのを考えると…。

【きだて】そうか、現状では難しいのか。

【高畑】それを取り込みつつ、きだてさんが考える高級感を出すのが難しいから、今まで出てきていない可能性もあるんじゃないかな。

【きだて】そうか~。根本的にそれがあるわけねー。

【高畑】出したいけど、何か難しい問題がある可能性はあるよね。

――だから「シャーボX」止まりなんですかね。

【高畑】「シャーボX」はできるんだよね。ツイストスライドの機構があるから。だから、あの感じで、ツイスト式でリフィルが選べるというので、もうちょっと上手く作れば、何かできるかもしれないよ。

【他故】そうだね、可能性はあるんじゃない。

【高畑】今のノックにこだわると難しいかもしれないけど、何かやりようはあるかもしれないよね。

――まあ、出てほしいですけどね。

【きだて】「ジェットストリームプライム」のツイスト版みたいな感じで出ればいいのになぁと思ったんだけど。

【高畑】あれだったら、「芯これだけ選べます」というのができそうだよね。

【きだて】それで、多少コストがかかったとしても、多分今なら売れると思うんだよね。5,000円以上したとしても。

【他故】多色にした場合、想定しているのは「コレト」みたいなゲルインキボールペンなのかな?

【高畑】だって、ゲルじゃなかったら多色化できないじゃん。油性だとそんなに色鮮やかなのは出せないから。

【きだて】そうだろうね。色がないからね。

――「スタイルフィット」だと、「ジェットストリームインクが選べます」というのがあったりするじゃないですか。

【きだて】もちろん、オプションとして低粘度油性が選べますというのはあるよね。今までの資産があるから。

【高畑】メインはゲルだよね。

【きだて】やっぱり、カラフルな多色ペンで育った世代がターゲットになるので。そこで色が選べないとなったら、お話にならない。

――じゃあ、リフィルは金属で作るんですか。

【高畑】少なくとも、外から見えているところがメタルならばいいんでしょ。

【きだて】そう。

【他故】中は樹脂のリフィルが入っていたって構わないからね。

【きだて】触った感じが金属じゃないと。メタリック塗装じゃなくて。

【他故】確かに、全身メタルで作って、それでリフィルの色が分かるようにするには、ノブが出てなきゃいけないからね。

【高畑】「ジェットストリームプライム」の多色って、ノックのまわりどうなってたっけ?

【他故】まわりは金属じゃない?

――ありますよ、見ますか?

【高畑】ノックの手前までは金属じゃないですか。その後ろが金属かどうかはよく分からないな。多分、プラに塗装していると思うけど。

――上手くデザインしてますよね。

【高畑】だから、これが限界なんじゃないかな。金属でやろうとすると、ノックのところをくり抜いたりしなくてはいけないから。

――でも、いいじゃないですか。それ以外のパーツは金属なんだから。

【きだて】先っぽを真鍮にすれば、それで十分にずっしりするだろうし。

【高畑】こんな感じの多色で、選べて、色々できてという。

【他故】それで、上がパカッと開いて、リフィルを差し込める。

【高畑】何かそれならいけるのかもね。

【きだて】それぐらいのものなら、出るんじゃないかな。

【他故】そうか、それならノックの部分が樹脂でも、ちょっと高級感のあるデザインにしちゃえばいいんだし。

【高畑】そこの落とし方だね。高級感のね。でも、期待はするよね。俺もフリクションの4色ペンずっと使っているけど、軸はプラスチックのしかなかったからさ。そこは、出てくれたら買うよ。

【きだて】最近、筆記具メーカーがようやく高級なのを出し慣れてきたというか、久々に忘れていた高級軸がという感じで。

――ユーザーがそれに気がついたんですかね。「高くてかっこいい方がいい」って。

【高畑】それはどうなんですか?

【他故】どうなんだろう?

【きだて】う~ん。

――「ジェットストリーム」が出て、「フリクションボール」が出て、あるいは「オレンズネロ」みたいなシャープペンが出てという感じで、筆記具に対するユーザーの目が肥えてきたのではと思うんですけどね。

【他故】いつも思うんだけど、「こういうペンが出ている」というのを、みんなどうやって知るんだろうね。

【きだて】確かに、それ疑問だね。

【他故】ネットで知ったというのはあると思うんだけど、ゼロの状態からは知りようがないじゃん。だから、「3,000円、5,000円の新製品が出ました」ってどうやって知るの?

――あ~、確かに。

【きだて】文房具メーカーが今、パイロット以外はCMそんなにやらないじゃん。

【他故】高級なものなんかでCMできないしね。

【高畑】高級店に行くと、店頭にディスプレイが置いてあるから、いつも高級店に行っていて、「いいものがあったら買うよ」という人は、そこで知ることができるかもしれないけど。どうなんでしょうね。

【他故】やっぱり、百貨店とか、そういう大きな店頭があるところに行く人だけが知っているところが、まだまだあるんじゃないかな。

【きだて】ただ、明らかに、それじゃ説明ができないくらいの認知の広がり方をしていると思うんだよ。

――足繁く文具店に通っていて見つけるとか?

【きだて】そんな人いないじゃん(笑)。

【他故】そんな人がいたら、もっと幸せになってますよ(笑)。

――いや、だからやっぱりインターネットからの情報なんじゃないですか。

【きだて】SNSとかそういうのなんだろな、としか思い浮かばない。

【高畑】「サクラクラフトラボ」なんかに対して、「サラサグランド」は別物だと思うのね。「サラサグランド」は下から上がってきている感じだけど、上からきている「サクラクラフトラボ」は『趣味の文具箱』を読んでいるような人たちが買っているんだよ。これ方向性が違うじゃん。きだてさんが言っているカスタマイズペンはどっち側なの?

【きだて】下からだよ。

【高畑】そうなると、「サクラクラフトラボ」が売れているからといって、こっちのやり方は違うはずだよね。で、「誰が買うの」という話になるから。どちらかというと、割とまだ現役世代の実用派の人たちかな。「クラフトラボ」はどちらかというと、悠々自適な人たちかなという印象なんだけど。

【きだて】「サクラクラフトラボ」は、もうちょっと若い人に売れている印象なんだけどな。

【高畑】若い人買ってるかな。どうなんだろう? 俺は、あれを買っている人のペルソナがよく見えないんだけど。

【きだて】「買ったんですよ」という話を、何人かに聞いているんだけど、大体俺より若いよ。

【高畑】男女比は?

【きだて】半々ぐらいだと思う。

【他故】5,000円のやつを買うの?

【きだて】そう。もうすでに7、8人から聞いてるけど、全員俺より若い人たち。

――これを扱っている文具店に訊いたら、「30代の男性に売れている」と言ってましたよ。

【きだて】それこそ、「コレト」で他色ペンを覚えた人たちって、30代前半くらいで。

【高畑】俺は、それは違うと思うんだよ。

【きだて】違うか?

【高畑】30代で「サクラクラフトラボ」を買っている人と、「コレト」や「サラサグランド」を買っている人は別だよ。

【きだて】あ~、はいはい。

【他故】確かに、方向は違うな。

――「サラサグランド」は確かに違いますよ。あれは、「サラサクリップ」を使ってきた人たちがステップアップで買うものですから。

【きだて】可処分所得の話で言うとというだけなんだけどね。

【高畑】だから、別の人でしょ。人として別でしょ。

【他故】「人として別」って(笑)。

【きだて】世代としては同じだけど、人としては別。

【高畑】もちろん、両方買う人はいるだろうけど、一番中心にいる人たちは、また別だろうね。

【きだて】それは分かる。

――値段がかなり違いますよね。

【高畑】今、きだてさんが言っていたのは、ステップアップとしての高級筆記具なので。多分、狙っているところは違うんだろうし。

【きだて】価格も3,000円から5,000円の間とだと踏んでいるだけどね。1,000円や2,000円では多分ないと思うんだ。

【他故】1,000円だと、今でもあるからね。金属軸じゃないけど。

【高畑】高級筆記具って一言に言っているけど、ちょっとあれは違うね。何か、属性の違うものが混ざっている感じがするね。

【きだて】高級というよりは、プチ高級みたいな言い方が、一番しっくりくるかもね。

【高畑】メーカー的に、どこまでそこに踏み込むかというのは、結構あれだな。

【他故】「コレト」がいくんだったら、同じ流れで「フリクションボール」いくよね。

【きだて】あ~、それはありそうだね。

【他故】5,000円、7,000円、10,000円というガワのフリクションが出てくるかも。

【高畑】絶対そっちの方が先だと思う。

【他故】多色のかたちがどうなるかは別として。

――10,000円のフリクション使ってみたいですね(笑)。

【他故】「何が違うんだ。中身は一緒だ」って言われちゃうかも(笑)。

【高畑】そりゃ20,000円でも、フリクションはフリクションだからね。

【他故】まあ、確かに高級「コレト」は見たい気もするし、そうなるとすぐに高級「スタイルフィット」も出てくるだろうしね。

【高畑】高級化してほしい筆記具がいっぱい出てきたことで、まだ高級化してないものは出てきてほしいねっていう感じはすごく分かる。

【きだて】他にも、高級化されてないものってあるかな?

――それは、筆記具以外でということですか?

【高畑】あんまりないんじゃないの。

【きだて】でも、2万円の鉛筆削りが出てきてびっくりしたわけじゃない。そういう予想外な、高級なものが出てくるんじゃないかな。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。東京・京橋の文具店・モリイチの文具コラムサイト「森市文具概論」の編集長も務める。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
【森市文具概論】http://shop.moriichi.net/blog/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。「森市文具概論」で「ブンボーグ・メモリーズ’80s」を連載中。

たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/

*このほか、ブング・ジャム名義による著書に『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)があるほか、弊社よりKindle版電子書籍『ブング・ジャムの文具放談』シリーズを好評発売中。購入はこちらから。

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