【連載】月刊ブング・ジャム Vol.06前編
左からきだてさん、他故さん、高畑編集長
本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。Vo.06前編では、新製品の登場で注目が集まる、お手頃価格の入門編万年筆について熱いトークを繰り広げました。
人気の入門万年筆に新たな魅力が!
――本日のテーマは万年筆です。今回はお手頃な入門編の万年筆を取り上げようと思います。まずは透明軸が出て話題の「カクノ」からです。
【高畑】「カクノ」透明軸どうですか? 俺も何だかんだで買っちゃったよ(笑)。
――きだてさんもEF持ってますよね。
【きだて】EF買いましたよ。
【高畑】俺はEF2本とM1本を買った。
――他故さんはどうなんです?
【他故】僕はEFとFとMを1本ずつです。
――で、みんなコンバーターでインクを入れて使っているんですね。
【高畑】そうね~。コンバーターは大きな「CON-70」を入れちゃうよね。
【他故】入るのが分かっちゃったからね。
【高畑】普通に使うと、やっぱりインクは減るじゃん。「CON-40」だと、日常で結構書いているとすぐなくなるよね。
【他故】インクなくなるの早いよ。思った以上に早いよ。
【きだて】気がつくと「わーっ、もう?」てなるよ。思ってる以上にインク入らないから。だから70の方が。
【高畑】あれだよね、今「CON-40」を入れて空いた場所に、何か入れるのが流行っているじゃん。
【他故】女子の間で大流行ってやつだね。
【きだて】ひき肉とか詰めるの、どうかね。
【他故】ひき肉(笑)。非常食かよ。
【きだて】非常食にならないかな(笑)。
【高畑】昔のにおい玉入れたくなるよね。後ろにちょっと穴があいているし。
【きだて】いいかも。ちゃんと匂いしそうだね。
【高畑】何を入れるのがいいのかな?
【他故】何だろう。思いつかないから入れてないんだけど。
【高畑】みんな、かわいいミニチュアの何かを入れているんだけど。
【きだて】Nゲージ用のジオラマフィギュアとか入るんじゃないのかな。
【他故】高さがどうかな?
【高畑】手が広がっていると入らないから。
――フィギュア入れたら、人間標本みたいになっちゃう。
【きだて】確かに人間標本だね。カプセルに閉じ込められた人みたいに(笑)。
【他故】作ったら売れるかもしれない。
【きだて】「カクノ」専用フィギュア、あったら欲しくない?
【高畑】「カクノ」用に、何か入れるものを作って売ればいいんだよ。
【他故】新しい商売だ。
【きだて】それ、ちょっとやってみようかな。
――「CON-40」って、回すところが透明でしたっけ?
【他故】「CON-50」っていう金属のが廃番になっちゃって、今は全部40になっちゃったんですけど、40は最初から透明です。
――じゃあ、透明ボディにお誂え向きなんだ。
【他故】めちゃかっこいいですよ。
【高畑】いや、今回EFが出て、普通にノートに書きやすくなった。
【きだて】で、このEFはフローがすごくいいからさ。本当に、ボールペンと同じような感覚で使えるので万年筆初心者にとてもいい。
【他故】万年筆として、気を遣う必要が全然ないよね。
【高畑】「色彩雫」なんかの染料系インクだと、非常にきれいに色が出るので。これは、カラーのカートリッジインクも売っているけど、せっかくだからコンバーターでカラーインクを入れて楽しみたくなるよね。
【他故】ちょっと、この透けている感じがね。
【きだて】ツイッターとか見てると、やっぱりこの季節、みんな涼しげな青系を入れてるよね。
【高畑】入れるね。
【きだて】夏に最適な万年筆。対して冬用にフロッキー塗装の「カクノ」出すの、どう?
【高畑】え、え~?
【きだて】「モフノ」っていう(笑)。
【高畑】それじゃあ、シヤチハタの「モフラ」だよ。万年筆は、誤って汚しちゃう可能性があるから、インクしみちゃうと取れないよ。
【きだて】構造的欠陥だ。
【他故】もうちょっと違う方向で攻めないと。
【きだて】う~ん。
――それにしても、これ透明度が高くないですか。
【他故】すごいですよ。
【高畑】そうなんだよ。これ、前と同じ金型だと思うけど、こうなることを見越していたかどうだかはあれだけどさ、こんなにきれいに成形できるんだと思って。これが1,000円ってなかなかいいよね。
【他故】いいと思う。本当に。
【高畑】各社1,000円万年筆があるけど、これは強力なのが出たなと思うよ。
――これ、売れてますでしょ。
【きだて】売れてる。
【高畑】お店に行ったら、EFとか売り切れてるもん。
――ペン先の顔がいつもと違うじゃないですか。
【他故】今回はテヘペロになって。
【きだて】それはね、軽くイラッとする。
――そこはイラッとするんだ(笑)。
【きだて】そこまで子供っぽい遊び、入れなくていいんだよなー。「普通の顔だけで充分じゃ!」って思う。
――キビシイですな(笑)
【高畑】いや~、キレイだね本当に。透明にすると、金型が内側まですごくきれいにできていないと、アラが目立ったりするんですけどね。
【きだて】このキャップの絞っているところが透明だと、すごいかっこいいよね。飴っぽい透明感で。
【他故】ネットを見ていると、「インナーキャップが透明じゃないのが」という人がたまにいるんだけど、そこは気にならないと思うけど。
【高畑】あんまり気にならないよね。
【きだて】現状でも充分に透明感は感じられるし。
【高畑】インナーキャップが透明にできないのは、密閉性が必要なので、ポリプロピレンで作るから、完全な透明が使えないので。あと、どうしてもインクがちょっと出ちゃうから、全部透明にしちゃうとそこにインクが溜まっているのが見えちゃうから、それはしょうがないなと思うよ。
【他故】従来の「カクノ」に入っているのと同じものを使っていると思うので。
【きだて】これで全然いいよ。
【他故】これがこの色であっても、バランスが悪くないのよ。
【きだて】気になる人は気になるのかなー。
――使っていると、そんなに気にならないんじゃないですか。
【他故】今流行のインスタ映えでいえば、先まで透明だった方がキレイに見えるかもしれないですが、日常で使っている分では何の問題もないですよ。
【高畑】この、パチンと留められる嵌合式がいいから。スクリュー式のキャップだったら、透明もできなくはないんだけど。こっちの方が楽で密閉性があるから、いいんじゃないかな。
【きだて】そこはトレードオフなんだろうけどね。俺はスクリュー式よりパッチンの方が楽だしありがたいけど。
――それはそうですよね。
【高畑】もうちょっと透明にできるのかな。「プレピー」なんかを見ていると。
【他故】ちょっと方法が違うんだろうけどね。
――パイロットはこれまでも、その辺はあまり透明にしてないですよね。
【高畑】でも、それまでしていなかったのに、ここまでできるんだったら、いろんな可能性が出てくるよね。
【他故】「カクノ」は、他の高い万年筆を使っていると「しばらくお休みね」ということが正直多くて、日常使ってはいるけどメインじゃないというところがあったんですけど、透明を買ってみたら、俄然出番が増えましたもんね。
【高畑】そうそう、増える(笑)。
【他故】申し訳ないけど、モデルチェンジみたいな感じで、こっちばっかり使っているという(笑)。
【高畑】本当にそう。色が変わっただけなのに、モデルチェンジぐらい価値が変わったよね。
【きだて】見た目にインパクトがあったのと、「CON-70」が入るというのがね。
【他故】それが明らかになったからね。まあ、前のも入るといえば入るんだけど。
【きだて】入るけど公には言ってないんだよね。
【高畑】前のにも「CON-70」入れてたけど、見た目的に別ラインナップだよ。これ、ちょっと高くて1,500円ぐらいになっていても、うっかり買っちゃうよね。
【他故】そうね。
【きだて】値段が上でも、売れ行き的にそう大差はないような気がする。1,500円でも普通に買うね。
――これ、従来品と同じで1,000円なんですよね。
【他故】同じですよ。
――太っ腹。
【高畑】これまでも、キャップの色でインク揃えようかなというのがあって、青系のインク入れるために青のキャップにしようかなとか悩んでたけど、これ買うときに悩まなくていいじゃん。
【きだて】そうだね。ほっときゃ色が揃うという。
【他故】あとは何本買うかだから(笑)。
【きだて】そう、その話だよ。
【高畑】買うときに、ペン先をどれにするかでは悩むけど、それ以外のところで悩む要素がなくなっているので、買うときに思い切りがよくなるよね。
【きだて】そうだね。インク入れたら自動的に軸色が揃うという。
【高畑】それで家に帰って、ボトルインクを見ながら「どれにしようかな」みたいなね。
【他故】そう、そう。
【きだて】ナガサワのオリジナルインクの種類分だけ本数買っていった人がいるっていうのは、これだっけ?
【他故】ラミーの「サファリ」じゃなかったっけ?
【高畑】「サファリ」のデモンストレーターじゃいかな。
【きだて】そうか、じゃあ間違いだ。
【高畑】でもさ、これ「CON-40」っていくらだっけ?
【他故】400円。
【高畑】1本1,400円で、10本買っても14,000円ということを考えると、やろうと思えば他のに比べたらやりやすいよね。
【他故】そんな気がするね。
【高畑】これに「CON-70」を入れると?
【他故】1,700円になるから、そうなると2,000円近くなるから、「ウッ」となる人は多いかもしれない。
【高畑】でもな~。
【他故】長く書きたい人は70を入れるけど、元々何回もインクを交換するタイプの人は、中が小さくてもいいと思って40を入れる人もいるでしょ。
【高畑】そうね。40が透明になったのは、これを見越しているとしか思えないよね。
――まあ「プレラ」も透明ですからね。
【きだて】それも狙ってた気がするねー。
【他故】まあ、「プレラ」の時には、「CON-50」を入れてましたけどね。
――「CON-70」の方が、ビジュアル的にはいいかも。
【高畑】インクがいっぱい入っているから、ビジュアル的には全然いいですよ。
【他故】ここの銀のところがかっこいいと思う人は70でいいと思うし、ライトな感じがよければ40でいいし。しかも、ここが空いていて物を入れるなんて、オッサンには全然想像がつかないものが流行っているわけで(笑)。
――じゃあ、フィギュアとか入れておきましょうかという話ですしね。
【他故】とだ勝之さんのはさみ(漫画「ホームセンターてんこ」作者。ミニチュアの実際に切れるはさみを販売している)を入れている人がいるみたい。
【高畑】とださんのはさみぐらいだったら入るだろうね。もうちょっと流行ってくれたら、ガチャでここに入れるやつが出てくるだろうけど。
【他故】ガチャ(笑)。
【きだて】キタンクラブかどこかに提案しようかな。「カクノ」用フィギュア。
【他故】何を入れたら、面白いと思ってもらえるんだろう?
【きだて】透明レジンの中に脳だけが浮いていて、ケーブルいっぱいつながってるのとか、どう?
【高畑】「私はマモー」っていうやつ?
【きだて】そう、そういうやつ。
【高畑】そして、最後に「ゴーッ」って飛んでくんだ。
【きだて】そう(爆笑)。
【他故】電飾できないかな?
【高畑】リチウム電池の小さいやつだったら入るから。
【きだて】入るね。
【高畑】「非常時には懐中電灯になります」ぐらいの勢いではいけるよ。
【他故】あと、ものすごい小さなサイリウムとか。
――ペンライトみたいに振るんですね。
【きだて】ホワイトライトのサイリウムを入れると、インクが照らされていいかもしれない。
【他故】それはかっこいいかもしれないね。なんか、そういうのも面白いと思うよね。せっかく透明なんだから。
【高畑】これは本当に別物ですよ。
【他故】触った感じが違うんですよね。表面のところとか。合ってないかもしれないけど、何か高級感があるような感じちゃうんですよね。
【きだて】ビジュアルイメージでそう感じるのは当然だよね。
【他故】最初の「カクノ」は、子ども向けに作られていて、たまたま若い女性にも流行ったけど、はっきりと「子ども向け」というのが分かったんですよ。でも、これって同じかたちをしていながら、もうそういう顔はしていないじゃないですか。ついに万人向けというか、あらゆる人が喜ぶものになっちゃった。男女もないし、年齢もないし。
――インクで変えられますからね。
【他故】インクで変えられるから、色の好みはよりどりみどりですよ。
――他故さんのは「色彩雫」ですか?
【他故】全部「色彩雫」を入れてます。
――「色彩雫」は全部で何色ありますか?
【他故】24色ですね。
――じゃあ、ナガサワのインクよりはコンプリートしやすいですね。
【他故】インクをたくさん持っているのもそうだし、これをきっかけにそこまでじゃなかった人もインクを買いはじめることも当然ありますよね。
【きだて】そうね。いろんなインク色でずらっと並べてみたくなるよね。
【他故】見えるものが出ちゃったわけだから。書かなければ分からなかったものが、はっきり見えるやつが出てきちゃったからね。
――まあ、いい時代になりましたよね。
【高畑】いい時代だよね。この値段でこんないいものが買えちゃうというのがね。なかなかよろしいかと思います。
――では、「カクノ」に関してはこんな感じで。
【きだて】「カクノ」に関しては、書き味とか機能的な面は今までさんざん語り尽くしてきたからね。先端まで透明にこだわり
【高畑】で、次は「ハイエースネオ クリア万年筆」。
――これは、1,000円で透明軸では先がけの商品ですね。
【他故】そうですね。
【高畑】「ハイエースネオ」も、同じようにカラーインクが流行りはじめてからの商品なので狙いは一緒なんだけど、「ハイエースネオ」の面白いところは、ペン芯が透明なんだよね。色が流れていく様が見られるからね。だから、「ハイエースネオ」の方が軽い感じはするよね。
――細字しか発売していないんですよね。
【高畑】これも、コンバーターを付けて、インクを吸わせてあげたいよね。
――「ストーリア」ですかね。タイミング的に、これを出す直前に出ているんでしたっけ?
【きだて】そう、「ストーリア」の方がちょい先だったと思う。
【他故】元々の「ハイエースネオ」は、「ストーリア」を念頭に作ったものではないけどね。
――「ストーリア」を出したので、透明軸も出そうということですね。この万年筆自体は、「カクノ」より後になるのかな?
【他故】後ですかね。
――セーラーでも、1,000円タイプの万年筆をということですよね。
【高畑】こちらの方が、いわゆるクラシックなビジネス万年筆っぽいデザインで、雰囲気としては、「雑誌を1年購読するともらえる」という感じがするよね。
――「中1コース」とかに付いてるやつですね。
【きだて】「蛍雪時代」とかですよ。
【高畑】そういうようなイメージが若干あるよね。ちょっと懐かしいような。
【他故】みんなが思っている万年筆のかたちをしているよね。
【きだて】そうね。スリムだし、ビジュアル的には大人っぽい感じということで。
【高畑】「カクノ」は、ちょと太くて、ちょっと短くて、それは「子ども向けに作りました」ということなんだけど、これは元々大人向けのデザインなので、そこが全体的にシュッとしている感じはあるよね。
【他故】そうだね。
――書き味的にどうなんですか?
【高畑】全然悪くないですよ。これが出たときは、透明軸で1,000円というのが他にちょうどいいのがなかったので。だから、これが出たときはハマりましたね。
【他故】買ったね~。
【高畑】今でも、インクが入っているので家で使ってます。
【きだて】久々に書いてみたけど、この感じ割と俺好きだな。
【高畑】いや、いいよ。
【他故】全然悪くないよ。
【高畑】それこそ、カラーインク入れて何本も並べたりするには、この細さだといっぱい持てるので。その点はいいですよね。
【きだて】そうだよね。
【高畑】面白いよね。どのメーカーも同じ価格で、1,000円という価格は分かりやすいからみんな作るんだけど。
【他故】でも、全部方向がバラバラだよね。
――そうですよね。でも、一番オーソドックスなデザインですよね。
【他故】まあ、そうですね。
【高畑】「ハイエースネオ」は万年筆で、「カクノ」はどちらかというとペリカーノジュニアに近い新しい何かで、「プレピー」はどう見てもカラーペンやサインペンじゃん。やっぱり方向は違うよね。
【きだて】棲み分けはちゃんとなされているというか。
【他故】そうだね。
――先端まで透明なのは、これだけですからね。
【高畑】そうなんだよ。インクを最初に入れたときに、透明なところにインクが「ツー」っと入っていくのがキレイなんだよ。
【きだて】そうそう。あれは、ボーッと見ちゃうよね。魅せる力があります。
――その辺りは、徹底してやったということですね。
【高畑】そう。軽いしね。
【他故】手帳にはさんだりするのには、そのくらいの細さじゃないとダメだしね。
【高畑】それはあるかもね。
【きだて】ペンホルダーに入れるには、これくらいの細さじゃないとダメだよね。
――これはいいかもしれませんね。世界で最もコスパのよい万年筆
【高畑】そして「プレピー」。
【きだて】300円に値上がりしました。
――あっ、そうか。先日のリニューアルでそうなったんですね。
【きだて】200円が300円になりましたよ。
【高畑】で、極細が300円から400円。
【他故】100円ずつ高くなった。
――売り場では、「1,000万本突破」というシールが貼ってありましたよ。
【高畑】1,000万本突破を機に100円値上げという(笑)。でもね~、これ前の200円のときも「おいっ」て思うくらい安いじゃない。
【きだて】そうだよ。これが200円で買えていたのかと思うと、「頭がおかしいんじゃないか」と思うくらいだよ(笑)。
【高畑】値上げしたといってもさ、こっちの1,000円に対して300円でしょ。
【他故】同じ構造の万年筆だからね。
【高畑】もちろん、作りの部分からいったら、それなりに「カクノ」なんかには1,000円の良さがあるけどさ。でも、これに勝てるコスパのいい万年筆は見たことがない。
【他故】ないって(笑)。
【きだて】しかも、その値段で新たにキャップにスリップシール入ったわけじゃん。もうね、おかしいとしか言いようがない。
【高畑】最初に何の万年筆をすすめるという話があるじゃないですか。「カクノ」もいいんだけど、たまにしか書かない人は、これからでもいいんじゃない、という話をしているんだよ。
【きだて】乾かないしね。
【高畑】やっぱりね、最初万年筆に慣れないと、半年間ほったらかしということもあるんですよ。そこが、1年間ほっとける安心感付きで300円というのはね。
【きだて】またね、この0.2㎜がいいんだ。
【他故】いいね~。
【きだて】これも「カクノ」のEFと同じでさ、硬くてカリッとしたいい感じのフローがあって。だから、万年筆慣れしていない人は、ここから始めるべきだとは本当に思うしね。
――パイロットの「ペチット1」は、万年筆ではないんですよね。
【他故】あれは万年筆タイプのペンですね。
【高畑】中にサインペンと同じ繊維質の芯が入っているんだよね。
【他故】あくまでも万年筆風なんですよね。櫛溝上を気液交換でインクを上げていくわけではないので。
――で、「プレピー」は万年筆なんですよね。
【きだて】万年筆です。
【高畑】「ペチット1」になると、本体のかたちも万年筆とは異質じゃないですか。
【他故】万年筆風といわれていた前のモデルが、よりキャラクタライズされてかわいくなったものだから。万年筆じゃないから。
【きだて】そうだね。ああいうものとして捉えるしかなくて。
【他故】一番最初まで戻ると、「Vペン」の時代にまでさかのぼるんだろうけど、「Vペン」が200円だったから、それに引きずられた価格だったのかもしれないんだよね。
(一同)あー。
【他故】「Vペン」よりはちゃんとした万年筆なんだから、値段が高くてもよかったんじゃないと、今では言えるけどね(笑)。
――でも、「プレピー」の発売当初は、ここまで市民権を得られてなかったわけですからね。
【高畑】そうだし、今だってまだまだマイノリティだと思いますよ。世界一数が出ている万年筆だとメーカーは言っていて、1,000万本売れているのにもかかわらず、あんまり知られてない感はあるよね。
【きだて】店頭だと、その隣で「フリクション10億本」と書いてるのが並んでたりするじゃん(笑)。
【高畑】フリクションと万年筆を比べたらあれだけどさ。でも、この0.2とかめちゃくちゃいいじゃん。
【きだて】うん。本当に「プレピー」の0.2は好き。
【他故】最初出た時びっくりしたもんな。書いてみて「うわっ」て思ったよ。
【高畑】ちゃんとコンバーター使えば、いろんなインクで使えるし。
【きだて】むしろ、ここまでちゃんと書ける万年筆を200円、300円で売るなよという話かもね。安すぎて、人にすすめたときに「でも、ちゃんとした万年筆じゃないんでしょ」と言われるんだよ。
【高畑】でもさ、3,000円以下の万年筆で話をするんだったら、十分に候補なんだよ。
【他故】なるよ。
【きだて】候補に入るんだよ、全然。
【高畑】5,000円以上のクラスの話はまた別として、3,000円以下の話だとさ。「カクノ」だって、3,000円の「コクーン」と同じペン先を使っているわけだし。
――これは、人に贈るのにはちょっとあれですけどね。
【きだて】贈るというよりかは、「万年筆初めて使うんですけど」という人におすすめできる。
――自分で買う分にはこれで十分ですね。
【きだて】そうなんだけど、安すぎて信用してくれないという。
――そうなると、「カクノ」ぐらいが手頃になりますかね。
【きだて】1,000円なら「安い」って買うのに、それ以上安いと怪しまれるという。
【他故】贈り物といったら1,000円以上になるけど、例えばクラス会で子どもたちがプレゼントを交換し合うとなったら、すごくいいかもしれないですよ。
【きだて】ああ、それぐらいなら多分いいだろうね。
【高畑】「プレピー」の面白いのは、万年筆だけじゃなくて、蛍光ペンとマーキングペンがあるんだよね。
【きだて】そうだね。
【高畑】これがまた200円とかで売っているんだけど、蛍光ペンもマーキングペンも首が外れて付け替えできるという親切設計なんだよ。
【他故】うん。
【高畑】俺が好きなのは、万年筆のインクカートリッジが、サイズが一緒なのでそのまま使えるんだよ。どっちかがどっちはやっちゃダメって言われたんだけど、自己責任の話で、万年筆に蛍光ペンのインクを入れたり、あとその逆でマーキングペンにブルーブラックが入れられるんだよ。(*こちらの動画も参照)
【きだて】蛍光万年筆はやったけど、マーキングペンにブルーブラックはやったことないな。いいな~、それ。
【他故】直液式マーキングペンだね。
【高畑】ブルーブラックだから、あの独特のグラデ感が出るマーキングペンになるんだよね。
【きだて】今度やろう。
【高畑】蛍光ペンのあのななめのペン先が好きなんだよ。あのペン先に、万年筆のインクを入れることができて、実はコンバーターを使えば、どんなインクも入れられるんだよ。
【きだて】まあ、そうだよな。
【高畑】コンバーターにインクを吸わせておいて、蛍光ペンに入れるというのが全然できるから。彼らの互換性の高さがすごいんだよ。
――まあ、その辺りは自己責任ですね。
【高畑】もちろん。それで、納得いかないのは、プラチナのコンバーターって金と銀の二つあるって知ってる?
【他故】あるね。
【きだて】えっ、そうなんだ。
【高畑】容量は一緒なんだけど、何故か銀の方だけ高いんだよ。
【きだて】俺、何も意識せずに銀の方を買って使ってるわ。
【他故】金が500円で、銀が700円だね。
【きだて】えっ、200円違うんだ。
【高畑】僕的に、金は派手だから銀がいいと思ったんだけど、200円高いんだよね。
【きだて】金があるなんて知らなかったよ。
【高畑】最初、お店の人から「金と銀がありますが、どちらがいいですか」と言われたときは、「泉の女神かっ!」て思ったけど(笑)。
【他故】「僕の鉄のコンバーターでお願いします」(笑)。
【きだて】「正直者だから二つ」っていう(笑)。
【高畑】で、「何が違うんです」って訊いたら、「同じです」って言われて。一番最初に買ったときはびっくりしたよ。
――恐らく、従来は金しかなかったけど、要望があったので銀も後から出したからじゃないですかね。
【高畑】需要ができたのかな。
【他故】それで、高級品に入れているんですかね。
【高畑】とにかく、コンバーターをサインペンや蛍光ペンで使う場合は、ペン先からインクを吸わせるのが難しいので、基本的にはコンバーターでチューッと吸っといてから使うという。
――「プレピー」はデザインリニューアルしたんですよね。軸の色とインクの色を合わせるという。
【高畑】前は、ペン先に色が付いてましたね。それをやめて、全部同じにしてるんですね。
――色付いてましたね。
【高畑】これ、03だけ色がいっぱいあるのかな?
――そうそう、02と05は3色しかなかったですよ。
【高畑】せっかくだから胴体が透明なやつ作ってほしいよね。
【他故】あー、はいはい。
【高畑】透明がとうしても欲しい人は、蛍光ペンのボディが使えるじゃん。ネジが一緒だから(笑)。
【きだて】そうか~(爆笑)。
【高畑】これは、世界で最もコスパの良い万年筆と言っても過言じゃないね。
【きだて】嘘偽りなく、世界最高コスパ。
――コンバーターが着けられるんだったら、透明モデルがあってもいいですよね。
【高畑】ね、そうだよね。透明でカートリッジなしでいいから、300円とかで売ってくれたらね。
――1,000円の「プレジール」は最近、「カクノ」みたいに箱入りで売ってますよね。
【きだて】ああそうだ、ハンズで見たよ。
【高畑】「プレジール」もいいよね。こっちと一緒で密閉性が高いので、安心感があるから。
【きだて】まあね。
【高畑】メタルボディが好きな人は、「プレジール」でいいかなと思うけど。
【他故】そうそう。
――どれも、各社の特徴が出ていいんじゃないですかね。
【高畑】自分のスタンスで選べるからね。
【きだて】それぞれ、選ぶ理由が設定できているところが偉いよ。
【高畑】いいね。あのロングセラー万年筆の限定カラー
――国内ものはここまでで、あとは海外ものですが、海外ものといえば、まずはこれでしょう。
【高畑】あー、ラミー「サファリ」ね。
【きだて】やっぱり、こうなるでしょう。
――今年の限定品です。
【他故】「ペトロール」だ。
【高畑】いや~、「このデザインかぶれが」とは言いつつも、やっぱり名品だよね。
【他故】本当にそう思うよ。ずっとかっこいいと思って、あこがれてきたものだから。
【高畑】万年筆のモダンデザインのある種の極みみたいなものなので。
【他故】もう何年経つのかな。40年ぐらいになるのかな?
【高畑】なるんじゃない。
――もう、そんなになりますか。
【他故】1980年発売だね。
【きだて】37年前だから、ほぼほぼ40年だね。
【高畑】ちょっとした豆知識を言うと、頭部のネジのところがプラスになっているのが万年筆で、マイナスがローラーボールなんだよね。それで、コインでバラせるんだよね。
――バラせるんですね。
【高畑】ラミーのかっこいいところはさ、これのコンバーターがめちゃかっこいいんだ。コンバーターのつまみの部分が赤くなってて、そこに「LAMY」って刻印が入っているんだよ。
【きだて】ラミーのコンバーターって、そういえばちゃんと見た記憶がないな。
【高畑】コンバーターで世界一かっこいいのはラミーだと俺は思っているんだけど。
【他故】ラミーのコンバーターは確かにかっこいい。
【高畑】元々、見るつもりで作っていないのに、めちゃくちゃかっこいいんだよ。
――「サファリ」用のコンバーターなんですね。
【高畑】「サファリ」にも透明軸があるから、それに入れたらいいよ。
――赤いつまみが見えるから。
【高畑】こんなかっこいいものが、俺らが「ウルトラマン80」観ていたときにはあるというね。
――そういうところに結び付けちゃうから(笑)。
【高畑】いや~、80年にはもうこれだったんだから。それから何も変わっていないのに、未だにモダン万年筆の顔でしょ。
【きだて】まあ、万年筆としてはね。
【高畑】中の下くらいの万年筆では、未だにこれがトップセールスでしょ。
――これ、4,000円くらいですよね。日本のと比べるとちょっと高めですけと。
【高畑】ラミーのロゴの入り具合とか、円筒のフラットに削った感じとか、上2面だけ指かけが付いているところとかさ。造形がきれいすぎて、いじりようがない感じがすごいするよね。
――書き味もいいですよね。
【高畑】これもコスパがめちゃくちゃ高いよね。
【きだて】そうだよね。
【高畑】ロングセラーなので、メーカー的にもコスパが高いよね。
【きだて】形はそのままで、毎年限定色出すだけでコレクターがどんどん買っていくという。
【他故】「いつかはラミー」という人と、「最初はラミー」という人がいるわけじゃない。だから、他の製品が出ても「最初はラミーに決めていましたから」と言って、使ってもいないのに「好き」という人が多い。
――あこがれのラミー。「けいおん!」でしたっけ?
【高畑】あれはボールペンでしたけど、黄色いやつね。
【他故】久々にラミーの名前が浸透したなと思いましたね。僕らのときに、ちょうどブツが出て「かっこいい」と言っていたので。
【きだて】デザイン万年筆というと、まずラミー「サファリ」が挙げられた時代ですよ。
【高畑】見た目は同じだけど、物によって素材や加工がちょっとずつ違うじゃない。クリップも、限定色だけ色が違うんだよね。
【他故】レギュラーは、ほとんどシルバーになっちゃったからね。今回、久しぶりにブラックが出たんだよ。今でも、ブラックのクリップが出たら、みんなでハイエナのように買い漁るという(笑)。
【高畑】このクリップのデザインした人、本当に天才だよね。あの当時の、他のメーカーのクラシカルな万年筆からしてみたらさ、飛び抜けてかっこいいよね。
【きだて】そうだよね、すごい省略化のデザインで。よくできているんだよな。
【高畑】う~ん。
【きだて】よく考えたら、俺のマイファースト万年筆はラミーだわ。「サファリ」じゃなくて「abc」だけど。
【高畑】「abc」ね。あれもいいけどね。
【きだて】あれで万年筆の書き味を最初に覚えたから、ラミーに対して思い入れはあるんだよ。その割に「サファリ」1本も持ってないけど(笑)。
【他故】それはいいと思うよ。
【高畑】これは、未だに古さを感じさせないのがすごいよね。何十年も経って、これより新しい万年筆と肩並べても全然負けてないというのがさ。
――今回の限定色はどうなんです?
【高畑】ペトロールですか? これ久々に文具ファンが食いついた気がしない?
【他故】大好きですよ、この色。一番最初のオリーブグリーンのに似ているので。
【高畑】ラミーの限定色って、ちょっと派手めが多いじゃん。蛍光グリーンとかさ。
【きだて】でも、俺はあのライムグリーンの一瞬買おうか迷った。あれぐらいのパンチの効いたやつ結構好きなんだ。
【高畑】それはさ、そういうポップなやつを使う人にはよかったけど、これは久々に「地味めがいい」っていう人が持ってもいい色なんだよね。
【きだて】そうだな。
【高畑】あんまり派手なの持ちたくない人には、これはいいなと思うよ。
――これなら買っていいかなと思いましたもの。
【高畑】でも、赤とか黄色とかのオリジナルの成形色がめちゃめちゃキレイなんだよ。不思議なくらいキレイ。
――やはり定番は黄色なのかな?
【高畑】俺は赤かな。あの艶のある赤が、すげーキレイだなと思って。モンブランみたいにツルンとした、いわゆる“万年筆”というかたちって、僕らの子どもの頃だとおじさんのイメージがあったので、大学生のときにその万年筆を持つのは気恥ずかしい感じがあったんだよ。
【きだて】おっさんくさいなー、って。
【他故】「文豪か」って言われちゃうからね(笑)。
【高畑】そうそう、文豪っぽいじゃん。そういうところで、「キャップレス」とかこのラミーみたいに違うものを持ちたかったのよ。
【きだて】そういう万年筆って、親とか親戚からもらった感が強くて、自分のものじゃない感じがするんだよね。
【他故】むしろ、形見に近いイメージだよね。
【高畑】おじいちゃんの形見みたいなね。
【きだて】入学祝いか形見のどちらかという。
【高畑】そこから考えると、カジュアルな感じの持ちやすさはいいよね。
【他故】自分が欲しかったと思って買うペンだよね。確実に。
【きだて】ちょっと従来から突っぱった感じというか、こういうのがよかったんだよ。
【他故】あの頃の若者の感覚みたいのがぴったり合ってたんだろうな。
【きだて】それが今も解離していないって、すげーな。
【高畑】40年経っている感じが全然しない(笑)。
【他故】それでいて、おっさんが持っていても全然恥ずかしくないしな。
――そうなんですよね。
【他故】若さ爆発じゃないんですよ、このデザインは。
【きだて】カラーの問題はあるけど。
【高畑】定番としてこれだけ長いことやっていて、しかもいいイメージがずっと持続していて、未だにデザインで力負けしないというのはね。万年筆の歴史の中で、絶対に外せないものの一つではあるよね。
【きだて】それは間違いないね。
――ラミーといえば、この「サファリ」ですからね。
【高畑】そうですね。間違いなく代表作だよね。
【他故】そうだよね。
【きだて】このワイヤークリップみたいなものを見ると「ラミーっぽい」と思うくらい完全にイメージが定着しているよね。
【高畑】逆にいうと、ラミーは5、6年に1回しか新商品を出してくれないじゃん。そこは期待しちゃったりするんだけど、でもそのくらい大事にするんだね。ヨーロッパのメーカーってすごいなと思う一つではあるよね。さすがです。あの入門万年筆に上位モデル登場
――では、最後はこれです。
【他故】ペリカンの新しいやつですね。
【高畑】ジュニアの新型「ペリカーノアップ」か。
――ジュニアというよりは、ちょっと大人向けになるんですかね。初心者向けではなく、ステップアップ用みたいです。
【高畑】ジュニアはジュニアで残るの?
――もちろん。だって、値段が違いますもの。こっちが3,000円で、「ペリカーノジュニア」は1,600円。
【他故】イメージでいうと「アルスター」っぽいよね。
【高畑】そうだね。ジュニアに対する「アルスター」みたいなものなんだよね。
【他故】樹脂とメタルという。
――でも、これグリップはジュニアと一緒ですよ。
【他故】持つところは同じなんですよね。
【高畑】あっ、本当だ。
【他故】ジュニアを卒業しても、同じ感覚で使えるんだよ。
――これを子どもに持たせても大丈夫という。あと、ペン先も同じっぽいですよ。
【他故】同じですよね、これ。
【高畑】これ初めて持ったけど、いいね。かっこいい。何、この四角軸。ラウンドの四角。いや~、このデザインのまた別のところに来ているガジェット感がいいね。
【きだて】あれっ、いいね。かっこいいじゃん。
【他故】いいでしょ。
【きだて】書き味もこれ好みだわ。へぇ~。
【他故】キャップがまた不思議な感じなんだよ。
【きだて】でも、グリップが滑るな。
(一同爆笑)
――手汗が(笑)。
【きだて】ジュニアだと滑らないんですよ。ゴムだから。
【高畑】ネットリ感があるんだね。
【きだて】こっちは樹脂なんだよ。
【他故】エラストマーじゃないかな。
【高畑】スチレン系かな。ちょっと硬くなってる。
――ツルツル感があるんですね。
【きだて】ジュニアで滑ると感じたことはないんだよ。
【高畑】きだてさんはジュニアかな~。
【他故】これ、首をすげ替えちゃえばいいんじゃない?
【きだて】替えられるのかな?
――やってみたらどうでしょう。
【高畑】あ、やっぱりダメだ。
【きだて】入んないね。
【他故】そんな単純じゃなかったね(笑)。
【きだて】何してんだ俺ら(笑)。
――そこ、「プニュグリップ」にすればいいんだ。
【きだて】キャップ閉まらないよ(笑)。
【他故】でも、ヨーロッパの万年筆はこういうのよくありますよ。シュナイダーにもこういうやつがありましたからね。
――ああ、そうですね。
【高畑】このキャップだけ見ると、シュナイダーっぽい気がしないでもないけどね。このボディーの、ヒュッって細くなって四角くなる感じがめちゃくちゃ品がいいね。
――軸色は、キャップがシルバーでボディーが黒い「アンセラサイト」と、すべてシャンパンゴールドの「シャンパン」の2種類ですね。
【他故】あんまり取扱店がないですよね。
――かもしれませんね。
【きだて】初めて見たよ。
【高畑】いや~、これカッコいいよ。
【他故】ペリカンの安いやつはいいよ。
――書き味はジュニアと同じだと思うんですけどね。きだてさんどうです?
【きだて】いや、ジュニアとは違うね。こっちの方がいいよ。
【高畑】そのあたりは個体差もあるからね。
【他故】こればっかりはね。
【きだて】この個体だけなのかもしれないけど、このグイグイ書いていける感じが好き。
――お店で試筆したら、筆記感はそんな感じでしたよ。
【きだて】じゃあ、ペン先はちょっと違うかもしれない。
【高畑】きだてさんはグイグイ書く感じ?
【きだて】万年筆に関しては、これは気持ちいい。ボールペンでこれだとちょっとつらい。
――これ、筆記幅が太いですからね。
【高畑】そこなんだよね~、ヨーロッパのペンは。書いていて気持ちいいんだけど、使うシーンが限定されるね。はがき書いたりにはいいけど、普段ノートに書くのには太いよね。
【他故】もう太いですよ。
【高畑】日本だと、プラチナなんかにEFよりもさらに細い万年筆があったりするの。
【他故】あったね。
【高畑】昔の留学していた人のノートを博物館に展示していたりするけど、もうこんな細かい字で書いてあるからさ。日本人の普段使いには細さが…。
【他故】「カクノ」のEFだと、5㎜方眼のマスの中に完全に字が書けるので、ものすごく楽しくて。
――さすがですね(笑)。
【きだて】相変わらずの他故さんの病気が(笑)。
【他故】日本のEFはすごいよね。
【高畑】そこだよね。
【他故】大きく、気持ちよく書くんだったら、ヨーロッパの万年筆はどれもいいんだけどね。
【きだて】学校の板書じゃないんだから、大人は普通にグイグイ書いたっていいじゃない。これはちょっと気持ちいいね。
【他故】これはいいっすよ。
【高畑】これはちょっと使いたくなりましたね。3,000円だから全然アリだよね。
【きだて】これ買おうかな。
【高畑】ジュニアからきているから、ボディが短めであんまり長くないしね。
【きだて】あとは、グリップをどう滑らなくするか。
――その辺りは、「森市文具概論」の文具改造のコーナーでお願いしますよ。
【きだて】う~ん。
【高畑】しかしいいね。もちろん、高い万年筆も好きだし、この間の他故さんの「カスタムURUSHI」もびっくりするぐらいいいんだけどさ。
――まあ、世界が違いますよね。
【高畑】そう、高いのもいいんだけど、3,000円以下のこのクオリティの高さって、やっぱいいよね。
【きだて】そうね。3,000円で軒並み幸せになれるよね。
――こんなに選択肢があるなんて、幸せな状況じゃないですか。
【高畑】本当ですね。3,000円と言わず300円から始められるんだからさ。
【他故】300円から始められる万年筆ライフ。
――これ以外にもいっぱいありますからね。
【高畑】あるある。
【他故】こんだけじゃないですからね。各社3,000円クラスはものすごくありますからね。
【高畑】3,000円クラスだったら、ちょっとしたギフトに十分なるからね。いいよね。
*Vol.6後編のブング・ジャムの逸品編は近日公開
プロフィール
きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/
*このほか、ブング・ジャム名義による著書に『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)があるほか、弊社よりKindle版電子書籍『ブング・ジャムの文具放談』シリーズを好評発売中。購入はこちらから。
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