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【コノ店注目!】文具店と化したコンビニ「セブン-イレブン富士市中柏原店」

文具のとびら編集部

例えば、試験の日の早朝、家にペンケースを忘れてしまった時。あるいは、徹夜の制作作業でマスキングテープを切らしてしまった時。人生でそう多く訪れないであろうこんなシーンにも、文具を買えるお店があったら安心だろう。そんな夢のような店が、実際にある。

「#24時間マステが買えます」のハッシュタグで、InstagramやTwitter上でじわじわとファンと集める「セブン-イレブン富士市中柏原店」だ。
そう、あの大手コンビニ「セブン-イレブン」の、全国に約2万店あるうちのひとつ。オレンジ、緑、赤の配色でおなじみの店舗に、文具店かと錯覚するほど多くの文具アイテムが並んでいるというのだ。

そんな「セブン-イレブン富士市中柏原店」は、富士山を北の方角に望む、駿河湾にほど近い自然豊かな場所にある。2022年5月、編集部員Uは意を決して取材を申し込み、オーナー・”なかちゃん”さん(本名非公表)に話をうかがった。

オーナーの文具好きが高じて

オリジナルマステ.jpg
セブン-イレブン富士市中柏原店オリジナルマスキングテープ

「セブン-イレブン富士市中柏原店」がオープンしたのは、2014年6月。店舗の南側はすぐ海という厳しい立地条件ながらも、ごく一般的なセブンイレブン店舗と変わらない品ぞろえで営業してきた。

ところが、このお店のラインアップに異変があらわれたのは1年ほど前。コロナ禍で、なかちゃんさんに気持ちの変化があったそう。
なかちゃんさんは「当時、コロナ禍のステイホーム中にイラストレーターmizutamaさんのワークショップの様子をインスタライブで見ていたんです。そのうちにだんだん、自分が子どものときに文具好きだったことを思い出して、文具熱が再燃したんです」と振り返る。



そえぶみ箋.jpg静岡の文具店「文具館コバヤシ」のオリジナル商品も扱う

それとほぼ同時期に、同じ静岡県内のマスキングテープ専門店・ヨハク社の存在を知ったこともなかちゃんさんの文具熱をさらに高めたのだそう。
そして2021年3月、なかちゃんさんはセブン-イレブン本部に許可をとり、ヨハク社のPOP UPという形でマスキングテープとシールの売り場をコンビニの一角につくったのだった。

「当時はまだ棚2つ分くらいの小さなスペースでやっていました。ヨハク社は島田市にあるので、こっちは”富士市店”なんて呼ばれていましたね(笑)」となかちゃんさんは話す。

文具ファン、現場のおじちゃん、トラックの運転手さんも

ヨハク社のPOP UPを終えた後もじわじわと文具の取り扱いを増やしていったなかちゃんさん。いまではマスキングテープだけでなく、シール、ポチ袋、インク、ガラスペン、文具関連書籍まである。これまで通算で4~500種類を取り扱ってきたそう。
こんなにも文具を扱っている「セブン-イレブン」は日本国内に約2万店ある中で、唯一だという(同店調べ、2022年5月時点)。

セブン値札.jpgセブン-イレブンロゴの値札が貼ってある様子はなんだか新鮮

元気いっぱいに話すなかちゃんさん、品ぞろえにもとことんこだわっている様子。
「マスキングテープブランドmtでもたくさん種類がありますけど、地方にある店舗ではたくさんの種類を置くことは難しいと思います。でもここでは『mt CASA』や『mt ex』『mt deco』などそれぞれを実際に手に取って選べる、そんな楽しい棚にしています」。

そうした話を伺っていると、ついここがコンビニであることを忘れてしまう。でもここは老若男女、あらゆる人が24時間訪れることのできるコンビニだ。


mt.jpg

この部分だけみると、文具店のような印象。本来は化粧品などが売られる棚だそう

文具ファンが訪れることがある一方、コンビニならではのエピソードもある。
「夜中にマスキングテープを、しかもかわいい柄のを購入されたトラックドライバーの男性の方がいて。どうしても気になって、なぜ買ったのか聞いてみたんです。そしたら、娘さんがこういうマスキングテープが好きみたいでお土産に、って」。


「別の日のある時、工事現場のおじちゃんが来て、(工業用途の)マスキングテープありますかって聞かれて。デコレーションのならありますってご案内して、結局カラフルなのを買っていってくれました(笑)」。

コンビニだからだれでも入りやすくて、どんなアイテムも買いやすい。誰かがはっきりとそう言ったわけではないけれど、ここでかわいい文具を買っていった人の話を聞いているとそうした理由があるように思う。

コンビニで文具を売ること

最初は棚2つ分で販売していた文具も、なかちゃんさんが日々着々と売り場を広げていき今では3倍の広さとなった。
そんななかちゃんさんは今後「漢字のノートとか、自由帳とかも売りたいな」と、目論んでいる。

売り場.jpg窓側の棚はほとんど文具コーナーに

2人のお子さんがいるというなかちゃんさんは「子どもが『ノートがない』と言い出すのは大体夕飯の後なんです(笑)でもそんな時間には文具店やホームセンターは閉まってるじゃないですか。そんなときに、24時間文具が買える場所があったら安心ですよね」と微笑む。

急に何かが必要となったとき、コンビニに駆け込んだ経験のある人は少なくないだろう。
たとえば筆箱を忘れた日に筆記用具やメモなどをとっさに調達したい時、立ち寄ったコンビニにこんなに文具が充実していたら、きっとうれしいことと思う。
それも、シンプルな事務用品ではなく、オーナーが選んだ珍しい柄ものや限定品の数々。たとえどんな時間帯であっても。

24時間、365日。セブン-イレブン富士市中柏原店はあらゆる人がいつでも文具を買える、楽しさと安心感のあるそんな空間だ。

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