
【連載】パイロット指輪物語/第4話「叩いてつぶして強くなる」
文・イラスト/ヨシムラマリ
※この記事は、横浜YAMATOのウェブサイトに掲載されたものを再掲載しました。
第4話「叩いてつぶして強くなる」
傷がつきにくくて変形しにくい、丈夫で長持ちする結婚指輪を作りたい。その強度へのこだわりは、これまで注目してきた素材だけではなく、製造方法にも込められている。
一般的に、指輪の製造方法には「鍛造(たんぞう)」と「鋳造(ちゅうぞう)」の大きくふたつがある。
「鋳造」は、溶けた金属を型に流し込んで固めて作る方法だ。この時、小さな気泡がそのまま閉じ込められて固まってしまうことがある。表面上はきれいに見えても、内部の気泡が強度を弱め、変形などを引き起こす原因のひとつになってしまう。
「鍛造」では、この問題を解決するため、素材に叩くなどして圧力を加える。すると、気泡がつぶれ、金属組織の密度が高まり、強度や硬度が増す。鋳造よりさらに手間と時間はかかるが、より丈夫な素材ができるのだ。
パイロットでは、こうして圧力を加えて延ばした材料を円形に打ち抜いたあと、さらに曲げ起こして成形する加工を行っている。この過程でも圧力が加わり、いっそう丈夫な指輪ができるのだ。
また、こうして作られた指輪にはつなぎ目が一切ないのもポイントだ。「切れ目がない」ことは、結婚指輪として縁起が良いと喜ばれている。この「シームレス加工」も、パイロットが業界で初めて取り組んだ技術だという。
プロフィール
ヨシムラマリ
神奈川県横浜市出身。子供の頃、身近な画材であった紙やペンをきっかけに文房具にハマる。現在は会社員として働くかたわら、イラスト制作や執筆を手がける。
著書『文房具の解剖図鑑』(エクスナレッジ)
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