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【連載】車椅子ライターから見た 弱い力でも使いやすい文具たち #55 「しっかり書ける油性ボールペン」

波子

筆圧の弱い私にとって、ボールペンはやや苦手な筆記具です。
でも、手に取って書いてみると、意外に書きやすく感じるペンに出会えたりします。

ジェットストリームは、私にとってもかなり書きやすいペンのひとつです。初めて出会った頃はまだ今ほど筋力低下を感じていませんでしたが、あまりに軽くスラスラ書けてビックリしました。今でも一番よく使っているボールペンです。
普段使う分には、最適なのです。
でも、筆圧をかけてしっかりと書くのは、ちょっと難しいんですね。
ペンがスラスラ進みすぎて、私の力では筆圧をかけにくいのです。

筆圧が必要なシーンといえば、複写式の書類を書くとき。
私にとって、ピンポイントで使いやすいと感じる油性ボールペンがあるので、ご紹介します。

セーラー万年筆「G-FREE07 ボールペン」

202210namiko1.jpgセーラー万年筆の「G-FREE07 ボールペン」。本体カラーはイエローのほか、ホワイト、クリアブラック、レッド、ネイビー。0.5mmの「G-FREE05 ボールペン」もある



セーラー万年筆の「G-FREE07 ボールペン」は、筆圧を吸収するスプリングが内蔵された油性ボールペン。
内部のスプリングが伸縮することで、紙に押しつけたペン先がスライドし、余分な力を吸収します。



202210namiko3.jpgノックを回して、弾力を調整できます。グリップを手前に向けると、左側が一番ソフト(購入時にはこの位置になっていました)、右側がハード。9段階で、好みのかたさに合わせられます。

「余分な力を吸収」と聞くと、筆圧が強い人向けに思われるかも知れません。
でも、私の印象は違いました。
スプリングを一番ソフトにしたとき、筆圧が弱い私でも、ゆっくりしっかり書けると感じたんです。



202210namiko4.jpg

紙にペンを押しつけると、最もソフトだと私の力でもペン先がかなり引っ込む(中央)。最もハードだと少し引っ込むだけ(右)



仕組みについてどうなっているか説明できないので(ごめんなさい)、あくまでも私の印象で申し上げるのですが、紙に押しつけたときにペン先が引っ込んだあと、運筆に伴ってスプリングの力で押し出される感覚があるんですね。
私のささやかな筆圧で引っ込むけれど、スプリングの反発がペン先を押し出している、つまり、私の力とスプリングの力が合わさっているように感じるんです。
…いや、本当に、私の感覚でしかないのですが。

202210namiko7.jpg最もソフトで書くと、特に斜め上へ向けて運筆したときペン先がしっかりと紙をとらえて書けるのを感じる




そして、スプリングによるしなやかな弾力が、まるでペン先にスナップを利かせたような感覚を生むのです。
結果的に、複写式の書類に文字を書くとき、ゆっくりしっかりと運筆できるというわけなのです。
…この私の感覚が伝わるかどうか不安ですが。

サラサラと速く書きたいときには、確かにジェットストリームが便利です。
でも、ゆっくりしっかり運筆したいときには、私はG-FREEを選びます。

G-FREEとの出会いは、2014年の「OKB(お気に入りボールペン)48総選挙」。
確か、シークレットで登場したのがG-FREEでした。
発売されたのは2014年11月。気になって購入して、とても驚いたのを憶えています。それ以来、ずっと推しボールペンです。

202210namiko8.jpg旧タイプ(右)はグリップがやや太い。いずれもペン先を収納するにはクリップの上部を押さえて開く




202210namiko10.jpg旧タイプ(右)のグリップは断面が三角形になっていた




ただ、2017年にリニューアルされたんですね。
グリップが細くなったという話を聞いて、私はあの太めかつ断面が三角形のグリップが好みだったので、長らく買うのを躊躇していました。
でも、いざ購入してみると、使いやすくなった面に気づきました!

旧タイプでネックだったのが、弾力調整のためにノックを回すときのかたさ。
かなりかたかったため、指先でつまむのが苦手な私にとっては、だいぶ苦労したんです。
でも、リニューアル後はとても軽く回せます!
回しやすいので、気分によって弾力を変える…なんてことも簡単にできますよ。

グリップのスリムさも、想像していたほどは気になりませんでした。
これからは、新旧どちらも愛用したいと思います。
そして、胸を張って「G-FREE使いやすいよ!」と伝えていきたいです。

本日10月25日、この連載を書籍化していただいた『弱い力でも使いやすい 頼もしい文具たち』(小学館クリエイティブ発行)が、小学館から発売されました!

202210namiko11.jpg

50回目までの連載の中から、多くの文具が掲載されています。
「握る力が弱い」「つまむ力が弱い」「引っぱる力が弱い」「指先がコントロールしにくい」など、「ちょっとした使いにくさ」によって分類した章立てになっているのが大きな特徴です。
また、本の作りにもこだわりが。
手で押さえなくても机の上でパタッと開く仕様になっています!
これがかなり便利。片手でページをめくるだけで読めますよ。

「文具のとびら」編集長の文具王、放送作家で「OKB48総選挙」総合プロデューサーの古川耕さんとの鼎談や、私の連載時の「撮影裏話」書き下ろしも。
ぜひお読みいただけたら幸いです。
多くの方の「これ便利!」という感動につながりますように。

『弱い力でも使いやすい 頼もしい文具たち』をAmazonでチェック

プロフィール

波子
1974年生まれ。脊柱側弯症、先天性ミオパチーのため、2006年に杖歩行となり、2012年から車椅子、2014年12月から簡易型電動車椅子を使用。便利な道具や文具が好き。
奈良県奈良市で生まれ育ち、大阪・東京での暮らしを経て現在奈良市在住。
産経新聞奈良版および産経WESTにて連載「車いすでみるなら」2015年2月~2019年5月、全70回。
ブログ「車椅子、ときどき杖。」http://nam-kid.hatenablog.com/

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