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【連載】車椅子ライターから見た 弱い力でも使いやすい文具たち #32 「テープのり使い比べ」

波子

以前、この連載で修正テープをご紹介したことがあります。
私は手の力が弱い以前に不器用で、昔からうまくテープが引けず何度も重ねる羽目になることが多かったんですが、手に持ちやすくて引きやすいものを4点ご紹介しました。

#8「うまく引ける修正テープ」
https://www.buntobi.com/articles/entry/series/namiko/008333/

同じような構造をしていて、テープから紙へ剥離させて使う文具に、「テープのり」があります。
修正テープほどは失敗にシビアではないのと、スティックのりも使うので、これまで自宅用としてはさほど意識して購入していませんでした。それこそ、何年も前に手に入れた、いくつかまとめてパックになったものを今も使い続けている程度には。

いよいよその在庫が尽きたため、ものすごく久し振りに文具店へ買いに行ったのです。
せっかくなので、店頭にある様々なテープのりを購入してみました。
今回は、それらを比較して、私なりにそれぞれの特長と感じた点をご紹介いたします。

コクヨ「DOT LINER」

テープのりの種類は本当に多様になっていて、その大きさも様々です。
今回は、あまり力を入れずに持ちやすいという点から、詰め替えタイプの大きなサイズ(基本の大きさと言えるかもしれません)のものを比較してみました。
テープのりとしての性能は、どの商品も私には充分であると感じたので、主に扱いやすさや感触の違いに言及しています。

コクヨの「DOT LINER」は、2005年6月に発売されたテープのり。もはや知らぬ人はいないのではと思えるほどに定番化していますよね。
自宅用には購入していませんでしたが、事務員時代に職場で使っていた記憶があります。のりが細かなドット状であるために貼り終わりの切れがいい、というのは当時画期的なことで、不器用な私でも「のりの糸引き」や「いつのまにか汚れを吸着したのりがくっつく」問題から解放されたものでした。
しっかり貼る強粘着タイプ(ブルー・透明)と、貼ってはがせる弱粘着タイプ(イエロー)の2タイプがあります。


202010namiko2.jpgコクヨ「ドットライナー」。パッケージには「2018年度 テープのり市場 売上金額 No.1」のシールが




202010namiko3.jpgドットライナーのフタはかため。カチッという音は小気味いい


タテ幅が長く、お尻部分が大きな曲線を描いているため、軽く握るだけで持ちやすいと感じます。
テープを引くときに指を当てる箇所にはドット状の膨らみがあり、滑りにくいと同時に「ここに当てる」と判りやすいのも良いですね。私は横引き派なので親指を当てますが、ドットに合わせて持つと引くのがスムーズでした。

ただ、指先(特に爪の先)に力の要る動作が苦手になってしまった私にとって大きなネックと感じたのが、フタのかたさ。
今回購入して最初に手にしたときは「こんなに力を入れるので合ってる? 折れない?」と心配になる程度にググッと力を込め、フタのしなりを感じて不安になった次の瞬間に「パキッ」と音がしたので、本気で焦りました。何度も開閉しているうちに少しゆるんできましたし、慣れた今なら「カチッ」に聞こえますが、初めて聞いたときは怖かったんです…。
一方で、外したフタを本体に密着させるときにもカチッと音がするのは、のりを使用中にしっかりと固定されるのだという安心感に繋がります。
指先のコントロールに問題なければ、むしろ気持ちのいい音だと言えるかも。


202010namiko4.jpg指で押さえる部分にはドットの膨らみが



202010namiko5.jpg大きめの本体が持ちやすい


DOT LINERは多くのシリーズが発売されているので、また別の機会にご紹介したいと思っています。

トンボ鉛筆「PiT AIR」

トンボ鉛筆の「PiT AIR」は、2019年6月に発売されました。今回ご紹介する中で最も厚みのある本体です。
タテの長さは短いのですが、厚みのお陰で手の中に包み込むようなフィット感があります。


202010namiko6.jpg

トンボ鉛筆「ピットエアー」。パッケージには「文房具屋さん大賞2020 のり賞 第1位」のシールが



202010namiko7.jpgピットエアーのフタ開閉はさほど力は要らない


このテープのりの最大の特長は、軽く引ける「エアータッチシステム」。
テープを引いたときの静けさ&軽さたるや、スタートからもう全く違う。ビックリします。
私はこの驚きを、修正テープで体験しています。そう、MONO AIRですね(前述の修正テープの回でご紹介しています)。
MONO AIR(使いきりタイプ)は小型の修正テープで「小さいけれどめちゃくちゃ軽く引けるので扱いやすい」という感触でした。
しかし、今回のPiT AIRは「手に握り込みやすい大きさでありながら更に軽く引ける」のです。すばらしい。
もう少し私の筋力が落ちてきたら、もうこのテープのり頼りになるんじゃないかしら。
音がほとんど気にならないので、図書館や静かなカフェなどでも使いやすいですね。

202010namiko8.jpg指で押さえる部分には5連の山のような膨らみが



202010namiko9.jpg
厚みのある本体が手に収まって持ちやすい


のりは大きめのドットが網目状につながる「パワーネットテープ」。説明書きには「曲面にもガッチリつく」と記載されています。
フタはさほど力を入れなくても開閉できます。開けて本体にフタを密着させるときと閉めるときに緩やかに軽い抵抗があって、ゆっくりと確実にフタをすることができます。

プラス「norino pro」

プラスの「norino pro」は、2017年1月に発売されたドット糊。当時のプレスリリースには「どなたでも"プロ並み"に使いこなせるテープのり」と記載されています。
ラインアップは本体カラーがレッドの「強力に貼れる」、ブルーの「しっかり貼れる」、グリーンの「きれいにはがせる」の3タイプ(私が購入したのはたまたま店頭にあったトイストーリーとのコラボ商品で「しっかり貼れる」タイプ)。

202010namiko10.jpgプラス「ノリノプロ」。私が購入したのはアニメ「トイストーリー」とのコラボ商品



202010namiko11.jpg「PUSH」ボタンを押すと自動でフタが開く(手でも開けられる)。閉めるときは手動


こちらの一番の特長が、フタの開け方です。本体の「PUSH」と書いてあるボタンを押すと、パシュッという小気味よい音と共に素早くフタが開き、本体にピタリとくっつきます。
使いたいと思ったときに片手でサッと準備できるのが魅力なのです。
閉めるときは手で戻しますが、テープ口に近づくと吸い着くように閉まるため、力はほぼ要りません。
本体の形が、お尻の方もスリムなので、縦引きで使う場合は手の中にすっぽりと納まりが良いです。私は横引きですが、そのすぼまったお尻部分が人差し指で支えるのにちょうどハマって持ちやすいと感じました。

202010namiko12.jpgボタンを押すと、フタは小気味よい音と共に一瞬で開く



202010namiko13.jpg本体のすぼまったお尻部分が人差し指をあてがうのにちょうどよく、持ちやすい




もうひとつの特長として、封筒の糊付けなどに便利な「はしピタガイド」機能があります。裏側の切り替えスイッチをONにするとガイドが飛び出し、その先を紙の端に当てがって引くと端ギリギリをまっすぐに糊付けできるという機能。ですが、私は最初のうちうまくガイドを紙に引っ掛けられず、ある程度の手先の器用さを求められる気がしました。慣れるととても便利です。

202010namiko14.jpg本体裏面にある「はしピタ」をONにするとガイドが飛び出す。紙の端を引っ掛けて添わせると端ギリギリにのりが塗れる



202010namiko15.jpgフタにはガイドを通す穴があるため、開ける前にガイドを出しても問題ない


のりのドットは大きめ。引くときにカラカラと音がして、手に伝わる感触も軽快で私は好きです。ちゃんと引けているのを音でも感じられる、とも言えますね。


今回は3つのスタンダードなテープのりをご紹介しました。
弱い力で扱いやすいかどうか、という点をピックアップしていますが、あくまでも現時点での私の印象です。
また別の機会に、大きさや形の異なるテープのりについてもご紹介できればと思います。


202010namiko1.jpg

左から、コクヨ「ドットライナー」、トンボ鉛筆「ピットエアー」、プラス「ノリノプロ」

プロフィール

波子
1974年生まれ。脊柱側弯症、先天性ミオパチーのため、2006年に杖歩行となり、2012年から車椅子、2014年12月から簡易型電動車椅子を使用。便利な道具や文具が好き。
奈良県奈良市で生まれ育ち、大阪・東京での暮らしを経て現在奈良市在住。
産経新聞奈良版および産経WESTにて連載「車いすでみるなら」2015年2月~2019年5月、全70回。
ブログ「車椅子、ときどき杖。」http://nam-kid.hatenablog.com/

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