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【連載】車椅子ライターから見た 弱い力でも使いやすい文具たち #25「気軽に万年筆気分が味わえるペン。」

波子

握力が落ちてきたとき、その良さに改めて気づかされたのが万年筆でした。
万年筆は、書くときに筆圧がほとんど必要ありません。紙の上にペン先を滑らせるだけでインクが紙に移り、文字を綴ることができます。
当時、1000円~3000円ほどで購入できる初心者向けの万年筆が世の中に多く発売されていたこともあり、私も色々な万年筆を手に入れました。好きな色の瓶インクを購入して楽しんだりもしました。

でも、しばらくすると、私には万年筆が使いにくく感じる日がやってきたのです。

万年筆は、ペン先の構造上、ちゃんと書ける向きと角度が決まっています。
その「向きと角度をキープ」しながら文字を書くことが、私には難しくなってしまったのです。

その代わりに、同じように筆圧のいらない「筆ペン」「サインペン」「ガラスペン」が私の強い味方となってくれています。
でも、そのいずれも、あたりまえですが「万年筆」とは書き味が異なりますよね。

でも実は、以前から発売されているペンの中に、万年筆気分を味わえるペンがあるんです。

ぺんてる「プラマンJM20」「トラディオ・プラマン」

ぺんてるの「プラマンJM20」は、1979年に「世界初のプラスチック万年筆」として発売された、ロングセラーのペン。
私が以前から愛用していたのは、1993年発売の「トラディオ・プラマン」です。キャップと軸のお尻の丸みから万年筆っぽい風格が感じられて好きなんです。
最初に購入したとき、まだ私は学生で、万年筆は自分には早いと思っていた時期でした。文具売り場でこのペンが目に留まり、この形が気になって購入した記憶があります。


20200325namiko1.jpgトラディオ・プラマン。キャップの窓からペン先が見え、インキ色が確認できる



20200325namiko2.jpgプラマンJM20。昨年、発売40周年記念として開発された新色6色



先のとがった「やじり型」の薄いプラスチック製ペン先は、その表と裏を細い棒状のプラスチック製ホルダーで挟むようにして固定されています。
表側と裏側のホルダーは長さを変えてあるので、短い方を上にして筆記するとペン先がよくしなり、長い方を上にして筆記するとしなりは控えめになります。つまり、書く線の太さを変えられるのです。

20200325namiko3.jpgプラマンのペン先は、ホルダーの表裏の長さが違う(上はトラディオ青、下はJM20ターコイズブルー)



このしなりが、万年筆のような書き味を生みます。
それでいて、万年筆ほどのシビアな筆記角度やペン先の向きは求められません。何ならペンを垂直に立てて筆記することも可能(とても細い線が書けます)。
ペンの向きや角度を一定には保てない今の私にとって、それが最大の魅力です。

20200325namiko4.jpg各インキ色とペン先。インキ色はこのほかに赤もある



昨年、プラマン発売40周年を記念して、プラマンJM20の限定インキ色6色(バーガンディ、ブルーブラック、オリーブグリーン、ダークグレイ、ターコイズブルー、セピア)が発売されました。私も(文具店で取り寄せてもらって)購入したのですが、この色がまたとても渋くてすてきなラインナップなのです。
こちらの6色、これまでの黒、赤、青に加えて定番化されました。嬉しい!
これで心おきなく書きまくれます。安心して買い換えられますものね。

20200325namiko5.jpg発売40周年記念の新色は、いずれも渋い色合い



20200325namiko10.jpg新色6色のキャップは上側から見るとカラフル



個人的な感覚ですが、トラディオ・プラマンの方が書き味が柔らかく感じて好きです。軸が太めで私にとっては持ちやすいのも嬉しいところ。こちらのインキ色は黒、赤、青でカートリッジ式です。
プラマンJM20も、何度も使っているうちにペン先のしなり具合が増して馴染んできます。

20200325namiko7.jpgトラディオ・プラマンで書く文字は、かなり万年筆に近い感覚で書ける



20200325namiko8.jpgトラディオ・プラマンは軸が太めなので持ちやすい



20200325namiko9.jpg

プラマンJM20は一般的なペンの軸と同様の太さで、立て気味にして書くのが使いやすい


初めてトラディオ・プラマンを購入したのち、社会人になってしばらくしてから、私は万年筆を手にします。入門用の、3000円ほどの海外製万年筆でしたが、すぐにその書き味のとりこになりました。薄い金属製のペン先がしなることによって得られるあの筆記感覚は、独特なものですよね。そうして万年筆が使えていた頃は、プラマンに対して「代用」としての感覚は抱いていなかったんです。だって、味わいたければそこに万年筆があったわけですから。

万年筆が使いにくくなったからこそ、改めてその魅力に気づかされました。
「私にはプラマンがある」と思わせてくれてありがとう、という気持ちです。ほんとうに。

プロフィール

波子
1974年生まれ。脊柱側弯症、先天性ミオパチーのため、2006年に杖歩行となり、2012年から車椅子、2014年12月から簡易型電動車椅子を使用。便利な道具や文具が好き。
奈良県奈良市で生まれ育ち、大阪・東京での暮らしを経て現在奈良市在住。
産経新聞奈良版および産経WESTにて連載「車いすでみるなら」2015年2月~2019年5月、全70回。
ブログ「車椅子、ときどき杖。」 http://nam-kid.hatenablog.com/

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