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【連載】車椅子ライターから見た 弱い力でも使いやすい文具たち #15「万年筆のインクが使えるサインペン」

波子

筆圧が弱くても書きやすいペンとして、万年筆、筆ペン、ガラスペン、サインペン(フェルトペン)などが挙げられます。
今の私は、数年前よりもペンを持つのが不安定になったため、ペン先の向きや持ち方に一定の縛りがある万年筆からは遠ざかっています。持て余していたインク瓶をどうするか悩んでいましたが、ガラスペンの魅力を再発見して一応の解決をした、という話を以前にご紹介しました。

#12「筆圧いらずのガラスペン」
https://www.buntobi.com/articles/entry/series/namiko/008974/

しかし、ガラスペンを普段から持ち歩くのはやや面倒です。ガラス製のペンは繊細ですし、インク瓶や洗浄用の水を入れた小瓶などが要ります。とはいえ私はそれらをひとまとめにポーチに入れて(ガラスペンは革製のロールペンケースで保護して)外出する気満々なのですが、大袈裟であることは確かです。それに、思いついてサッと筆記するのには向きません。

ところが、見つけたんです。
好きなインクが使えて、万年筆並に持ち運びやすくて、私にも書きやすいペンを。

プリコ「fluid writing」のFelt-Pen

「プリコ」のブランド「fluid writing」のFelt-Pen(フェルトペン)は、万年筆のインクが使用できるサインペン。ブラックのインクカートリッジ1個とヨーロッパ式コンバーター1本がセットになっていて、染料系インクに対応しています。


20190525namiko1.jpg20190525namiko2.jpg

fluid writingのFelt-Pen(フェルトペン)とPILOTのサインペンスペアタイプ


ヨーロッパ式コンバーターは、万年筆の首軸に挿してペン先からインク瓶のインクを吸入するだけでなく、コンバーター単体でインクの吸入が可能です。
ご存知の方には当たり前なことだと思いますが、私はこの単体での吸入をしたことがなかったため、実践してみてかなり感動しました。
インク瓶にコンバーターを挿し入れ、頭の突起をくるくる回転させて中のピストンを動かし、インクを吸い上げます。このとき、コンバーターを持つ指がインク瓶の縁に触れると汚れてしまうので、吸入前に瓶の口についたインクを拭き取っておくことをおすすめします。
コンバーターのみなので、万年筆に装着して吸入する場合よりも短いんです。

ちなみに私は最初、単体で吸入できることを知らなかったのと、パッケージのコンバーターがセットされた部分にペン先(首軸)とインク瓶のイラストが描かれていたので、うっかり万年筆のように主軸に挿してからペン先をインク瓶にドボンと入れました…。
回しても吸えないので「これはおかしいぞ」と気づき、インクまみれのペン先と首軸をティッシュで拭きつつコンバーターを外して単体で吸い上げてみたら吸入できた、というドタバタがあったのです。
なので、やり遂げた達成感が湧き上がり、感動もひとしおでした。
なーにやってんだ、と笑われるかも知れませんが、結果的には成功しましたので満足です!


20190525namiko3.jpgフェルトペンのパッケージ。コンバーターのところのイラストを見て、ペン先をインク瓶に入れるのだと勘違いした



20190525namiko4.jpgインクを吸入する前のコンバーターを首軸に装着した状態(このあとペン先をインク瓶に浸してしまう)


首軸にコンバーターをしっかりと挿し込み、軸を装着したら、自分好みのインクで書けるフェルトペンの完成です。

20190525namiko5.jpgコンバーター単体でインクを吸入したのち、首軸に装着した状態。かっちりと挿入する


0.8mmのペン先はやや固めで、その数字からイメージするよりも細い文字がすらすらと書けます。
「ペン先交換ユニット」も販売されているので、傷んできたり違うインクを使いたいときなどは交換すればいいですね。太さは他に、1.0mm、1.2mm、1.4mmがあります。
キャップをするときは、カチッと音が鳴るまで確認して押し入れます。
ただ、数日おいただけで書き始めがかすれたので、毎日少しでも使った方がいいかも知れません。この辺りは、万年筆を扱うのと似ていますね。

20190525namiko6.jpg0.8mmの筆記線は思ったより細め。入れたインクはKA-KUで調合体験したインク



筆記線にインクの濃淡が感じられて気に入ったので、きっとあと何本か買ってしまうと思います。本体のカラーはホワイトのほか、グレー、オーシャンブルーの3色。
好きなインクでいつでも気軽に筆記できる楽しさを再び味わえて、とても嬉しいです。

PILOT「サインペンスペアタイプ」

「PILOT」からは、自社製インキカートリッジが使える「サインペンスペアタイプ」が販売されています。こちらは「サインペン」と聞いて思い浮かべるペン先で、太めの文字をさらさらと書きなぐるのに向いています。ぐいぐい書くのが気持ちいいペンです。

20190525namiko7.jpg

PILOTのサインペンスペアタイプ。10ヶ月前に挿したインキカートリッジはブルーブラックだが、色が濃くなっていて自分でもブラックだと思い込んでしまった


私が購入した黒軸には黒インキが4本ついていましたが、手持ちのブルーブラックを装着しました。それが昨年7月のこと。その後も何度か使ってはいたのですが、今回久し振りに書いてみたところ、自分でも「これはブラックだった」と勘違いする程度には濃い色になっていました。でもしっかり書けます。キャップがネジ式なのも、ペン先が乾きにくい理由なのでしょうか。

参考までに、購入してすぐの頃に書いた文字をご紹介しておきます。きれいなブルーブラックです。

20190525namiko10.jpg

18年7月、購入してすぐに書いた文字。ブルーブラックの濃淡が出ている



PILOTのインキカートリッジには、グリーンやバイオレット、ピンクなどカラフルなものもあるので、他にもいろいろと試してみたいところ。
軸のカラーは黒の他に赤もあり、そちらの付属インキは赤です。

プロフィール

波子
1974年生まれ。脊柱側弯症、先天性ミオパチーのため、2006年に杖歩行となり、2012年から車椅子、2014年12月から簡易型電動車椅子を使用。便利な道具や文具が好き。
奈良県奈良市で生まれ育ち、大阪・東京での暮らしを経て現在奈良市在住。
産経新聞奈良版および産経WESTにて「車いすでみるなら」連載中。
ブログ「車椅子、ときどき杖。」 http://nam-kid.hatenablog.com/

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