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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.91 手帳と一緒に使いたい文房具 その3

文具のとびら編集部

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、手帳と一緒に使っている文房具を紹介してもらいました。

第3回目は、高畑編集長が紹介する「ポチッとPick!」です。

(写真左からきだてさん、高畑編集長、他故さん)*2024年8月17日撮影
*鼎談は2024年9月30日にリモートで行われました。

自分仕様にカスタマイズできる手帳スタンプ

ポチッとPick!.jpg「ポチッとPick!」(こどものかお)*関連記事

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【高畑】今日は2人とも自作の話になったな。それで繋がった。結局、手帳でやりたいことって、人によって結構違うって話じゃない。

【きだて】そらそうじゃない。

【他故】間違いなくそうだね。

【高畑】だからこんな話になるんだけど、今日俺が出すものも、割と近いんだよ。「ポチッとPick!」というのが出たんだけど。こどものかおから「ポチッと6」(関連記事)が前に出て、●▲■みたいなスタンプを手帳に記号として使ったりとかしてたんだけどね。これは革命的に面白いというか、これまでは縦型のロケットタイプがすごい多かった中で、接続じゃなくて全部見えていて、どれでも押せるっていうのがすごいいいなと思って。

【きだて】「ポチッと6」は、押す場所が決めづらくてちょっと使いづらかったんだよな。

【高畑】そうそう、それもある。それとね、いつも思うのが、こういうやつって必ず1個か2個使わない柄があるじゃん。

【きだて】あるある。

【高畑】ロケットタイプだったら外すっていうのもできるんだけど、例えばこの「休み」「有給」とかあるじゃないですか。他には、「出張」とか「会議」とか「締め切り」「済み」とかあって、「締め切り」とか「済み」はよく使うとしてもだよ、「有給」ってフリーランスの人間には存在しないんだよ。

【きだて】まあね。

【他故】休んだら無給だからね。

【高畑】だから、「有給」っていうのはそもそも押す機会がないわけじゃない。みたいなのがどれにもあって、6個あるけど、結局4個じゃんみたいなハンコを持ち歩くのが嫌なんですよ。ムダじゃない。

【他故】うん。

【高畑】今回、「ポチッと6」を入れ替え可能にしたっていうのはすごくてさ。「要らないのはそもそも外しちゃえ」みたいなのがあって、自分の好きなやつだけで組み合わせて使えるよって。あと、きだてさんの言う位置決めがよく分からないっていうのは、1個だけ外して押せるじゃない。

ポチッとPick!2.jpg【きだて】それができるようになったのは、だいぶ大きいと思う。

【他故】そうだね。

【高畑】ある意味では、機動力としたら繋がったままで押した方が早いんだけど、これが苦手な人は外して押せるじゃない。逆に入れ替えができるがためにちょっとでかくはなったんだけど、とは言ってもだね、十分これでもコンパクトだなって思うし。本当はね、ここでもう1回ケースに入れるのはちょっともったいないなと思っていて、なんかいい方法があればよかったなっていうか、フタだけでいいよねみたいな感じはちょっとするんだけど。

【他故】そうか。

【高畑】「ポチッと6」は、コンパクトさというところでいくとかなり優秀なんだけど、今回のは二回りぐらい大きいじゃん。そこはちょっと気になるけど、同時に好きに入れ替えができて、要らないハンコを使わなくて済むっていうのがちょっといいなっていうところで。出張だって、ない人はないからさ。それが上手いことできるのはいいな。

大きさ比較.jpg

【高畑】あともう一つ、サンスター文具の「スティッキールスタンプ」(関連記事)。これはオーソドックスなロケットタイプなんだけど、これは印面が全部●なんだよね。

【きだて】色違いの●なんだね。

【高畑】色違いだから、要は用途ではなくて色分けなんだよね。もちろん■とか▲とかもあるんだけど、■の場合は全部■なんだよ。で色違い。最近コモンプレースブックっていうのがちょっと流行ってて、手帳の書き方なんだけど、要はジャンル分けせずに先に書くだけ書いといて、後で「これは何とかのジャンルだね」っていうので色分けをするっていうのがあったりするのね。バレットジャーナルの次に流行るんじゃないのかっていう。まあ、そういうのにも使えるよねみたいな話だったりするんで。これは形が一緒だから、「赤は緊急」とか自分で作っても限定されないじゃないですか。自分の好きなように使えばいいということで、これも要らないハンコを作らなくて済むっちゃ済む。

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【きだて】そういえば、デザインフィルが同じようなの出してたね。

【高畑】「ジョインドッツ」(関連記事)でしょ? これも3連になっていて、色分けのスタンプなんだけど、ペンにもなるよって。「スティッキール」はスタンプ限定なんだけど、その代わり5色あるのかな。「ジョインドッツ」は 3色だけど、ペンになるよみたいな感じで、まあどっちをとるかだけど。要は、手帳になんか印をしておきたいときのスタンプっていうのが、「出張」って書かれていると要らないみたいな。結局、自分に必要なスタンプってなると、組み合わせが自分で選べるとかさ、あと色で分けて管理するとか。「スティッキールスタンプ」も丸が3つと四角が2つとか全然つなぎ合わせることはできるから、自分でそういうのを組み合わせて使うこと自体はできるよね。「俺が欲しいのは微妙にこれじゃない」みたいな人には合うよね。

ジョインドッツ.jpg【他故】なるほどね。

【きだて】そういうところも含めて、手帳って何か面倒くせーなーというか。

【高畑】面倒くさいよ。

【きだて】自分の使いたいものを真面目に掘っていかないと、勝ち筋がないというか、不満ばかりが溜まる。

【高畑】ちょっと分かるけど。

【きだて】なんかね、そういうところまで含めて、結構な人が「もうもう面倒くさいから答えちょうだいよ」ってなってると思うんだよね。

【高畑】という人はやっぱりいそうだね。誰かのメソッド、誰かの手帳みたいなものをその通りに使うやり方もあるし、それこそバレットジャーナルみたいにただのノートに書いていくっていう人もいるし。あとは自作でどんどんなんか深みにハマる人もいるし。それはいっぱいいるんじゃない。

【きだて】俺は答えが欲しい方なんだけどね。

【高畑】だから、誰かを盲信するというか、誰かのやり方にそのままハマればいいけど。でも、誰かが教えてくれたやり方が、ちょっとなんか「ここが気に入らない」って思うと、やっぱり変えたくなる。

【きだて】そうやってやっていくと、結局のところまた自作の道に入り込んじゃうっていうさ。

【高畑】でも、そういう意味でいくと、今はノートにしてもこういうツールにしても、カスタマイズっていうことをみんな言うようになったから。まあまあ選択肢は増えたんじゃないですか。

【きだて】違うよ、カスタマイズの選択肢が増えてもダメなんだよ。

【高畑】どういうこと?

【きだて】カスタマイズの選択肢が増えたら、それは悩みが増えるだけなんだよ。

【高畑】ああ、そうか。

【きだて】可能性なんて要らないんだよ。

【高畑】「全部できてますよ」ってポンって渡してくれたやつが、奇跡のようにぴったりジャストフィットするっていう。あるいはきだてさんを横から見ていて、「きだてくんだったらこういうノートがいいよ」って渡してくれたやつが使ってみたらもう最高みたいな。

【きだて】俺はそういうのが欲しいんだ。

【高畑】お前は何ライターだ!

【他故】ははは(笑)。

【高畑】そこで諦められる人は、大体やらなくていいんだよ。会社にもらった年玉手帳をずっと使っていて 、「別に不便も感じてないけどなぁ」みたいな人もいるわけじゃないですか。それがある意味では幸せ。

【他故】そうだね。

【きだて】30 年ぐらい昔はみんなそうだったわけじゃない。

【高畑】まあそうだけど。

【きだて】大半の人は、会社支給の手帳でいけてたわけじゃない。

【他故】でも30年前には、もうすでにシステム手帳っていうすごいのがあったからさ。

【きだて】そうか。

【高畑】システム手帳の人たちは、今のスマホのアプリと一緒で、「ああでもない、こうでもなお」って言ってたから。まあ、もうちょっと前だね。

【きだて】もうちょっと前だな。30年前は意外と最近だったな。

【他故】そう (笑)。

――それだけ歳をとったんですよ。

【高畑】だから「能率手帳ゴールドがいいんですよ」みたいな人。あと多分ね、ビジネスのやり方とか、生き方が昔と変わっちゃったからだよ。

【きだて】う~ん。

【高畑】会社に行って、打ち合わせがあって、何か書類を作って出してみたいなサラリーマンの仕事っていうのが、ある程度形式が分かっていた。あと、会議以外の仕事を自分で組み立てるっていうことがそんなになくても済んだ時代はそれで良かったかもしれないけど、今は仕事のやり方も内容も、アポの取り方とかも人に任せられてるから、みんな自分でやらなきゃいけないから、仕事の選択肢が広過ぎて、ぴったりな手帳が見つからないんじゃないかと思う。

【きだて】結局のところ、仕事よりも書くものとかの選択肢が増えすぎたのが原因なような気もするんだけどなぁ。

【高畑】でもそれだったら、システム手帳全盛期はその中にはさみとかまで入れてたわけだよ。

【きだて】そうだな。

【高畑】あれは今でもできるけど、今のシステム手帳は大人しい方だよ。80年代の終わりには、ちょっとおかしいぐらいに「システム手帳にそれ入れます?」みたいなものを入れるのがアリだった時代っていうのがあったからね。

【他故】あったね。

【高畑】「システム手帳通信」みたいな本あったじゃん。あれ、今見ると笑うよね。

【他故】ああ、当時のやつね。「リフィル通信」とかね。

【高畑】それもやっぱり自作してたんだよね。コピーしてはさみで切るみたいな。

【他故】そうそう。私はそれを投稿して載った方の人だからね。

【きだて】ははは(笑)。

【高畑】自作派はやっぱりいるんだよ。ただ、「別に自作しなくていいよ」っていう人は今以上に多かったと思うけど。手帳の選択肢だって、ビジネス手帳といえばホリゾンタルのレフトタイプなんかのいわゆる普通の手帳みたいなのがあまりに多かった時代っていうのがあるから、今だと確かに選択肢が増えてる。

【きだて】もう、世の中の手帳とかメモは「全てこれです」っていう国民手帳みたいなのになってくれりゃいいのになと思って。全部シックなやつで。

【高畑】社会主義か(笑)。

【きだて】それだと面倒くさいことしなくて済むんですよ。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】だから、きだてさんはもう1回「能率手帳ゴールド」とかに戻る。

【他故】基本中の基本に。

【きだて】知識がなければ、そちらに合わせにいくじゃない。

【高畑】それしかなかったらね。

【きだて】なんだけど、今はあるからもうしょうがないんだよ。やりたくないけど。

【高畑】ああ言えばこう言うっていう感じで(笑)。まあ分かるよ。

【きだて】俺の中にいるゴーストが囁くんだよ。「これじゃないじゃん」っていういらんことを囁くから面倒くさいことになるんであって。

【高畑】なまじできると分かっているからやってしまうという。

【他故】しょうがないよね。

【きだて】できることを思いついちゃったら、やらざるを得ないじゃん。

【他故】「手帳は広大だわ」ってやつだよ(笑)。

【高畑】できないと割り切れていた時代は、もしかしたら幸せだったのかもしれない。きだてさんは、生まれた時に「お前は農民だ」って言われて、「鍬を振れ」って言われてたら疑問を持たなかったのに、「自由の時代だ、好きな仕事を選択しろ」って言われると、「何をやったらいいんだろう」ってなって。

【きだて】そう、「お前はずっとコルホーズでトウモロコシを作れ」と言ってもらった方が楽なんだよ。

【高畑】本当か?

【きだて】いや、分からんけど(笑)。

【高畑】俺は、イロモノ文具ライターができているきだてさんは幸せだと思うぞ。

【きだて】ははは(笑)。

【高畑】きだてさんは、国民の中で言うと、めちゃくちゃレアな仕事の一つをやってるわけじゃないですか。ちょっと変わったライターっていう枠をやってるわけじゃない。だいぶ偏った仕事をやってる時点で、一般的に「これ」っていう答えがフィットしない可能性はあるよね。

【きだて】ねえ。

【高畑】きだてさんにフィットする手帳を探そう。

【きだて】書かなくていい手帳だね。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】それはラピタ人とか、なんかこう横に立ってる人みたいなのを連れて歩くわけだよ。

【他故】記録係だ。

【高畑】記録係がいて、あときだてさんが何か妄想に耽ってると、横からトントンって叩いて「大丈夫ですか?」って言ってくれる。

【きだて】それは秘書だな。

【高畑】だからそういうことだよ。きだてさんは秘書をつければいいわけだよ。

【きだて】秘書とはさすがに言わんので、脳から直でなんかアウトプットできるものを出してくれって言うだけだよ。

【高畑】これからなんじゃない。AIがだいぶいいとこまで来てるじゃん。もう近々さ、スマホとかスマートスピーカーとかもさ、ちょっと賢くなってくるかなって感じだから。そうしたらきだてさんが言ったことを覚えといてくれたりとか、きだてさんがちょっと面白いこと言ったら「すいません、よく分かりませんでした」って言ってくれる。

【きだて】うん、腹立つよね。

【高畑】AIはもしかしたら、きだてさんのメモにはなってくれるかもしれない。そうなってくると、手帳の記事を書くのに困るきだててさんっていうのが出てくるかもしれない。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】文房具を足場にしてしまったきだてさんは、やっぱり書いた方がいいと思うけどな。

【きだて】仕事に困ったら、そう言い出すよ。

――ちょっと話がだいぶそれましたけど(笑)。

【高畑】結局、選択肢の多さっていうのと、この選択肢の多さの中で、自分が納得いくものを作るのは、こんなに選択肢あるのに案外難しくて。この3人いるうちの2人は、どうにもしっくり来ないっていうのをあれこれやってるし。あと今日のこれにしたって、結局使わないハンコは使わないから入れ替えちゃうとか。何かそんな感じだから、ダイバーシティなんじゃないですか。多様性を認めていく社会になっていくんじゃないですか。

【他故】多様性(笑)。

【高畑】手帳やノートが1㎜刻みで好きなサイズが作れますよというサービスができるようになってくるとさ、ますますサイズが選べないきだてさんっていうのが出てくる。

【きだて】本当にね、他人に委ねたい。全能の他人に委ねたいんだよ、本当にもう。

【高畑】それはだから、きだてさんが文句を言いたくなっちゃうとあれだから、きだてさんが絶対的に信頼してるとか、絶対的には頭が上がらないっていうか、そういう人が「これを使え」って言ってくれるみたいなことだと、そうかもしれないな。

【きだて】ダメだろうな(苦笑)。

【他故】そういう人いるか?

【高畑】すごい自分が尊敬している偉い人がドーンって現れて、「これを使うのだ」と言われたら、それを使うみたいな。そうなってくると、ちょっとしたファングッズになるから。

【他故】そうか。

【高畑】選べる自由か、考えない楽さかというどっちかなんだよね。考えないっていうのだったら、ノート持たないっていうか、「もういいじゃん」っていう感じになっちゃうから。

【きだて】「考えてる方が偉い」っていうような風潮が嫌なんだよ、俺は。

【他故】ああ。

【きだて】結局のところ、威張ってるのはどっちかっていうと考えてる方じゃん。

【高畑】そうかな。でも、何かややこしいね。だからもうきだてさんは「能率手帳ゴールド」を使え。「俺は考えないんだ。とにかく能率的をゴールドなんだ」とか「ほぼ日手帳なんだ」っていう風にしてしまって、使いにくかろうと「ほぼ日」なんだって言って生きるっていうのが…。

【きだて】何か違うんだよなぁ。

【高畑】文句言うのか、お前は!

【きだて】この話はキリがないな。

【高畑】だから決めてやったんじゃないか。

――これは終わらないですよ。

【高畑】まあ、手帳の旅はいつまでも終わらないということかな。だからまあ、多分読者の人とかも、何かまとまってないけど、どれがいい分わかんないかもしれないけど、俺らだってそうだよって話だし。そこら辺は上手くいったりいかなかったりするけど、あれこれやっているのも楽しいねっていうぐらいがちょうどいいんじゃない。きだてさんはそれが嫌だ、面倒くさいって言うけど、今の手帳っていうのは、もはやそれを楽しむところを織り込むしかないんじゃないかな。

【他故】うん。

【高畑】きだてさんは、そう言いながらも、自分が使ってる手帳を「素敵ですね」って言われたいよこしまな気持ちもちょっとはあるだろう?

【きだて】それはもちろんあるさ。自己顕示欲なくてライターなんて仕事やんないわよ。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】言われたい、でも面倒くさい。

【きだて】手帳とかで頭を悩ましたくないんですよ、もう。

【高畑】それはある種正しいというか、みんながこんなに毎年悩まなきゃいけないというのはそうかもしれない。

【きだて】毎年手帳で悩んでる人を見ると、疲弊し過ぎだろうと思っちゃうからさ。

【高畑】きだてさんは「まだ手帳で消耗しているの?」というブログを書くんだよ。

【きだて】そう、キダハヤはそう思うわけだよ。誰だ、キダハヤ。

【高畑】「だから、僕はもうそんな忙しいところから離れて、のんびりとやってるよ」みたいな。それでオンラインサロンを始めるっていう。

【きだて】後で叩かれるんじゃねぇかよ。

【他故】ははは(笑)。

【きだて】今日のは全員が大分ふわっとしたな。

【高畑】話を元に戻すとさ、ここら辺はモノとしてちゃんとしてていいと思うよ。

――最近手帳もののスタンプ多いですよね。

【高畑】スタンプめっちゃ増えたよね。スタンプは押しても減らないからいいよね。

【きだて】コモンプレイスが流行ってるからスタンプっていうわけでもないじゃん。

【高畑】このスタンプが出た時期にコモンプレイスって言ってなかった思うんだよね。

【他故】ああ、そうか。

【きだて】結局のところ、みんな書くのが嫌なのかなという気もするし。

【高畑】そうかもしれないし。シールは既製品を貼りましただけど、スタンプはその中間にあるじゃない。シールを貼ったら、全部作られたものがそこに乗っかっているになるけど、スタンプって重なっちゃったりとかもするし、ちょっと手作り因子が強いじゃない。そこはやってる人たち的には、簡単というか、絵が下手な人でもやれるけど、シールを貼るのはちょっと出来合いなのが分かる。ほら、スーパーで買ってきたお惣菜をパックのまんま食べるみたいなんじゃなくて、そこは「クックドゥ」ぐらいの感じの、ちょっとお手軽感があって。

【きだて】お手軽なのに加えて、ハンコってさ情報圧縮じゃない。マンスリーのスケジュールの中に、病院に行く「通院日」って3文字で書かなくても、病院のマークをポンって押せばそれで分かるわけじゃない。それってもう情報圧縮して載せてるっていうことじゃない。そういうのが、紙面の限られた手帳と相性がいいのかなという気はするよね。

【高畑】こっちはそうだね。あと柄物のハンコができてるのは、前からきだてさんが言っている「ページの間を埋めたいけど、それっぽくしたい」ということだと思うんだよね。それが手書きは難しいけど、シールだとあからさまに「シールを貼りました」になっちゃう。スタンプだと作品の感じとしては、ちょっと手作り寄りになってる。他のものと重ね合わせたりとかしても、シールだとも上下でペタってなっちゃうけど、ハンコって上手いことかぶったりもできるし、そこで創作性みたいなものをイメージできるけど、まあまあ難しくないっていうか、ちょうどいいところなんじゃないのかな。だから、簡単にらしくなるっていうのがいいのかなと思う。

【他故】うん。

【高畑】柄もののスタンプめちゃくちゃ売れているからさ。

【きだて】「フリクションスタンプ」もまだまだ全然売れてるじゃない。

【他故】そうだね。

【高畑】各社が手帳用のスタンプ中心に、今年めちゃくちゃ出てるよ。あとハンコ作家が増えた。マスキングテープとかもオリジナルで作れるけど、スタンプも比較的小ロットでオリジナルが作れるじゃん。だから、「紙博」とかに行ったら、スタンプをメインにしてるコーナーが結構ドーンってできているんだよね。マスキングテープが1回落ち着いて、インクはまだまだあるけども、インクがあって紙があって、あと活版とかも流行ったけど、スタンプっていうのはそこら辺のちょうどいいところにあるんじゃないかな。風合いが出るし。ちょっとちょっとかすれたりとか、何か雰囲気があるのがいいところかな。

――伊東屋で「押し活」っていうイベントやってましたけど(関連記事)、相当人が来てましたからね。――こないだうちの奥さんが丸善の文具売り場へ買い物に行ったら、めっちゃ列できてるからなんだと思ったら、ハンコ作家が集まってるコーナーで。そんな感じみたいよ。ハンコは、基本ちょっと大きめの手帳がベースだと思うけど、こういう小っちゃいのも多分出てきてるから。柄はいくらでも作れるけどさ、こういうギミックを新しく作ってくれるのは嬉しいね。

【きだて】そうだね。

【高畑】僕ら的には、こういうギミックができてくれるとなんか楽しくていいなと思う。

――スタンプ使ってる人はこれ 1 個だけじゃなくて、いろんな種類のを使ってるんじゃないですかね?

【高畑】でしょうね。家に置いとくんだったらいっぱい置けるんだけど、やっぱこの「ポチッとPick!」とかは、ペンケースに入るぐらいの大きさでまとまってるのがいいなと思うし。これで6種類押せるっていうのは結構お得感があっていいなと思うのね。ただ、値段は倍ぐらいになっるけどね。今日これ買おうとして、値段見てびっくりした。

【きだて】そんなに高かったっけか?

【高畑】これ、1,760円(税込)なんだよ。

【きだて】そんなにするの!

【高畑】倍増してるんだよ。

――「ポチッと6」が税込990円ですよね。

【高畑】そう。だから倍ぐらいになってるんだよ。なので、ちょっと大きくもなったし、そういう意味では前のやつで我慢するのもありなんだけど、この入れ替えできるのとか、ちょうどいい場所に押しやすいのはなかなか良い。

――取り外しできるっていうところで、結構コスト的にもかかるのかな。

【高畑】枠の上に、全部別々のハンコを乗っけてるからさ。結構手間もかかるし大変だよね。これ、ネットとかで選べたらいいのにね。

【他故】ああ、組み合わせがね。

【高畑】「選んで買えます」だったら、俺的には嬉しい。これ選べるっていっても、入れ替えて要らないやつを使わないで置いとくことになっちゃうから、このコマを1個ずつバラ売りしてほしいとは、ちょっと思った。

――スタンプもいろいろとあって楽しいですよね。ぜひ楽しんで使ってください。

【他故】今日は何か不思議な感じで(笑)。

【高畑】きだてさんが納得するセットを見つけるのは、なかなか難しい。

【他故】「みんなできだて氏に提案しよう!」っていう呼びかけをしないとね。

【きだて】何だそりゃ(苦笑)。

【高畑】選べるのは嬉しいが、きだてさん的には「いっぱいあり過ぎて、選ぶのが大変なんだよ」ということだね。

【きだて】「俺が」という言い方をしたけど、「結構みんなそうでしょ」というのは言いたいよ。

【他故】そういう人もいると思うよ。

【高畑】選ぶのがこの上もなく楽しい人たちもいっぱいいるけど、どっちもいるよね。

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プロフィール

高畑 正幸(たかばたけ まさゆき)
文具のとびら編集長。学生時代に「究極の文房具カタログ」を自費出版。「TVチャンピオン」(テレビ東京系列)の「文房具通選手権」では、3連覇を達成した。サンスター文具に入社し商品企画を担当。現在は同社とプロ契約を結び、個人活動も開始。弊社が運営する文房具のWebマガジン「文具のとびら」の編集長も務めている。著書は『究極の文房具カタログ―マストアイテム編―』(ロコモーションパブリッシング)、『究極の文房具ハック』(河出書房新社)、『そこまでやるか! 文具王高畑正幸の最強アイテム完全批評』(日経BP社)、『文具王 高畑正幸セレクション 一度は訪れたい文具店&イチ押し文具』(監修/玄光社)、『究極の文房具カタログ』(河出書房新社)、『文房具語辞典』(誠文堂新光社)と、翻訳を手がけた絵本『えんぴつとケシゴム』(KADOKAWA)。新著は『人生が確実に幸せになる文房具100』(主婦と生活社)。
https://bungu-o.com/


きだて たく

小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
小学生のころから文房具が好きで、それが高じて文具メーカーに就職。ただし発言は勤務先とは無関係で、個人の見解・感想である。好きなジャンルは書くものと書かれるもの、立つ文房具と薄いペンケース。30分間文房具のことしか語らないトーク番組・775ライブリーFM「他故となおみのブンボーグ大作戦!」パーソナリティ。たこなお文具情報室所属。
「他故となおみのブンボーグ大作戦!」番組ホームページ https://daisakusen.net/

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