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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.85 あの定番文具がさらに進化! その1
本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、さらなる進化を遂げた定番文具についてブング・ジャムのみなさんに語っていただきました。
第1回目は、ぺんてるの「WHITESPEED(ホワイトスピード)」です。
(写真左から他故さん、きだてさん、高畑編集長)*2023年11月11日撮影
*鼎談は2024年4月5日にリモートで行われました。
修正液で17年ぶりの新製品
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――今回は、最新の進化系文具3点をとりあげます。まずは「ホワイトスピード」から取り上げましょうか。修正液で久々の新製品ですね。
【高畑】17年ぶりだから。
【他故】17年ぶりか。
【きだて】リリース情報によると、ぺんてるから修正液の新製品が出たのは17年ぶりということで。じゃあ、17年前に出た新製品ってなんだったのかね? ボールペンタイプとかその辺か?
【高畑】その辺じゃない。
【他故】だと思うね。
【きだて】それでも 、2000年になってからも新製品は出てたんだなってことだよね。
【高畑】まあ、そりゃあそうかもしれないけど。
【きだて】とは言えだよ。修正液で誤字を訂正したのって「何年ぶり」って話じゃない?
【高畑】だから、修正テープにだいぶ移行しちゃって。そもそも、ずっとフリクションとか使っていれば修正自体がないし。プリントし直すとかっていうのもあるし。修正液っていうのは、言われてみればしばらく使ってなかったなっていう気がする。
【他故】すごい久しぶり。
【きだて】俺は10年以上、確実に修正液を使ってなかったのよ。本当に。
【他故】俺も、アナログで絵を描く時だけだったかな。最後に使ったのは何年前だ? 5、6年前かな。
【高畑】なんか「おー、ここにきますか」みたいな感じの驚きはちょっとあって。そこに至ったのは「何でだろう?」的な感じはちょっとする。普通にニーズが盛り上がってということでもなさそうだし。むしろ技術先行なのか、「これができるよ」っていうのが先にあったのか、一体何が原因なんだろうっていう気がする。
【きだて】体感的には技術先行なんじゃないかなっていう気はするんだけどね。
【高畑】できるって事が分かったから「やってみました」みたいな感じなのかな?
【きだて】「面白いものができちゃいました」的な。
【他故】このペン先の技術とかそういうこと?
【きだて】だいぶ面白いじゃない。キレイにね、表面張力やら何やらで、凸凹も拾わずにフラットに仕上がるんだよ。
【高畑】そこの話なんだけどさ、先端部分は割と初期型に近いというか、棒を押したらそこから修正液が出てきますみたいな感じだけど、これは両端を押さえてその間の表面張力を使ってインクを平坦に出すという、左官に近い技術じゃん。
【きだて】そうそう。
【高畑】どっちかというと、ペンキ塗りよりもむしろ左官に近い技術かな。
【きだて】漆喰とかゆるいのを塗る技術に近いんだよ。
【高畑】建物の角のところをコーキング剤塗っていくみたいなテクなんだよ。どっちかっていうとさ。
【他故】これは漆喰なのか。
【高畑】だから、2本の柱を立てておいて、その間をずーっと引っ張りながらいくと、上手い具合に表面張力で間を埋めてくれるっていう感じ。だから端々を押さえておく。これまでのものっていうのは、真ん中にインクを出して外に広がっていくから、インクが山積みというか、ボールペンタイプだと2つ山ができる。真ん中が薄くて山ができて、両方下がるんだよ。
【きだて】勝手にわだちができちゃうんだよね。
【他故】そうだね。
【高畑】そういう盛り上がりだったのを、端々を抑えてこういう感じじゃん。どっちかというとこういうインクの盛り方なので、それで真ん中が平らになるっていう。この発想はすごいなと思う。
【他故】そうか、それでか。
【きだて】ひょっとしたら、道路舗装とかの発想に近いのかもね。
【高畑】かもしれない。というか、道路に白線引いてるやつの感じなのかもしれないけど。
【きだて】そうそう、白線を引く機械ってこういう方式だよね。
【高畑】そういう何かじゃん。修正液の出方が。最初に心配なったのが、「こんなに出る!」っていうぐらい出てこない?
【きだて】だから、溢れそうなぐらいたっぷりの液量をせき止めることでフラットな線を引いてるんだから、しょうがないんだけど。
【高畑】何かツヤッツヤでさ、本当に道路に白線を引いている気分になるね。
【他故】なるね。
【高畑】修正液に厚みがあって、それをビーって伸ばしてる感じがあるから。
【他故】修正っていうか、これは塗装だよね。
【高畑】何かね。さっききだてさんが言っていたのがごもっともな話で、多分そうなんじゃない。白線なんだよ。そんな感じはするね。道路の白線のやつって幅が決まってて、その幅に出てくるようになってるじゃん。
【きだて】案外、発想元はその辺かもね。
【高畑】結局塗り方がさ、道路の白線なのかコーキング剤なの分かんないけど、そういう感じにしてあって。で端々を押さえて引いた方が、わだちができない分、表面がすごくキレイにフラットになる。水面が平らだから、すごいキレイになってるよね。
【きだて】だから、粘性はだいぶ低いんだけど、その割に乾くのは早いな。
【他故】すげえ速い。
【きだて】さらに言うと、筆圧を強めにボールペンで書いて紙が凹んだところへ流し込んでも、キレイにフラットになるので。
【高畑】逆に言うと厚みがあるんだよ。白いやつの厚みがあって、修正テープのテープみたいな層がちゃんとできているから、それでフラットで引っかからないじゃん。それで、修正テープは、ちょっとペン先がとんがってたら、引っかかってはがれるみたいなことがあるけど、これは比較的そうならないよね。
【きだて】ならないし、曲げることもできるから、上位互換に近いんじゃないかなぐらいの。
【高畑】上手に使えば、テープよりキレイに使えたりするから。
【他故】曲線もいけるし、スポットもいけるから、かなり面白いよね。
【高畑】ただ、この幅で液が出ちゃうから、細かいところは苦手よね。
【他故】まあでも、6㎜罫線の文字一つって考えたら、その幅があったっていいじゃない。
【高畑】だから、文字を一線消すのはできるけど、それこそ漫画家の人がハイライトの細い線を入れたりとかするじゃん。
【他故】そういうのはね。
【高畑】ホワイトってそういう使い方もするし、例えば図形のはみ出した端っこだけをちょいって消すみたいな使い方にはあんまり向いてないよね。完全に行専用だから。
【他故】行というか。
【きだて】漫画家の人が使うんだったら、髪の毛のツヤホワイト専用とかそんなのかね。
【高畑】そんな(笑)。
【きだて】髪の毛のこの辺りを直すのに。
【高畑】確かに、文字にはいけるけどっていう。だから、修正テープでホワイトを入れる人いないじゃない。
【他故】いないよね。
【高畑】だから、これ修正テープなんだよね。液状修正テープなんだよ、イメージとしては。
【他故】これはもう絶対に、藤田和日郎先生に使っていただかないと。
【きだて】いや、どうよ(笑)。
【他故】だって、修正液を塗った上から削って下の線を出す人だからね。
――スクラッチみたいな。
【きだて】でもこれね、乾いた跡に弾性があるから、削りにくいんだよ。
【他故】よくできてるから。
【高畑】引っかかり感がない修正テープみたいになるよね。
【他故】そう、なるなる。俺は、修正テープを使うときはいつも不安で、引いた後必ず1回上から押すのね。
【きだて】ああ、分かる。
【他故】引っ付かないじゃん。あれをしなくていいというだけで、これをメインにしてもいいぐらいな気持ちにはなってる。
【高畑】あと、表面がキレイね。マットでね。今までの修正液って、表面がキレイじゃないんだよね。いわゆるノズルタイプもそうだし、ボールタイプもそうなんだけど、やっぱり面がキレイじゃないっていうのはやっぱり気になるポイントなので。面のキレイさは、何なら修正テープよりキレイじゃん。すごいなとは思う。
【きだて】あと、ひび割れないのも大きいと思うよ。乾いたらあとに紙を折り曲げてもパキッとならないものね。だから、「ぺんてるすごいの出したな」という気はするんだよね。17年の雌伏を経て。
【高畑】これ、10年前に欲しかった気がするな。
【他故】ははは(笑)。
【高畑】10年前だったら、液状VSテープの戦いで、ほぼ「テープでいいじゃん」みたいな話になっちゃったじゃん。
【他故】まあね。
【高畑】そうなる前にこれが登場してたら、もうちょっと戦局が荒れて面白かった気がするんだよね。
【きだて】その辺りに歴史のIFは感じるよね。しかし改めて17年前って何があったかなと思い返したら、アレだ。フリクションが発売された年じゃん。
――フリクションが出てから、もうそんなになりますかね?
【きだて】2007年だと17年前になる。
【他故】ああ、そうか。
――そういうものが要らなくなってきつつある時代なわけですね。
【きだて】なにか不思議な巡り合わせというか、この17年のうちにフリクションが修正液の寿命を削り切ってしまったわけでさ。だから「え、今なの?」というのは拭えないんだけど。
【高畑】それはちょっとあるよ。正直、遅かった感はあるので。それこそ、俺が学生の頃にあったら、もう絶対さ修正用具として本気で使った可能性は十分あるので。今は、やっぱり修正すること自体がちょっと減ってるので。すごく良いけど、惜しい感じもありつつで。
――もしタイムマシンがあったら、これを持って20年ぐらい前にタイムスリップしたら、すごいことになるんじゃないですか(笑)。
【他故】大人気ですよ(笑)。
【高畑】「ボールペンタイプ出ましたよ」みたいな時代に、「いやいやボールじゃなくてこういうやり方あるよ」って言って出てきてたら、もう俺なんか多分大絶賛で何か書いてたと思うな。
【きだて】20年前なら覇権取れたよっていう(笑)。
――その後の文具の歴史が変わってたかもしれない。
【きだて】そうそう。
【高畑】修正テープも出たばっかりで、まだ全然使いやすくなかった頃だから。今みたいに、すごいテープ切れも良くって、引っかかりもしなくてみたいなのは、その後ぐらいだから。 20数年前に修正テープ出てきて、修正用品が戦国時代だった乱世の時代があるじゃないですか。あそこに投入されてたら、恐ろしい兵器だったとは思う。
【きだて】そういうのも含めて、「今、とりあえずやったらできちゃったから出した」っていう匂いはプンプンするよ。
【高畑】そうなのかも。でもこれはさ、何か不思議な気持ち良さがあるじゃない。
【他故】うん、あるある。
【高畑】むしろ「新しい筆記具じゃん」っていう気持ちがある。
【他故】ははは(笑)。
【きだて】まあ分かるよ。
――実際に、消すっていうよりは、違う使い方を考えてもいいんじゃないですか。
【他故】ペンとして考えてもいいんじゃないですかね。
【高畑】道路に白線引くみたいに線を引ける、幅広の隠ぺい力の高いペン。しかも、これ修正液だからさ、多分真っ黒の紙とかに書いても思いっきり白いと思う。
【他故】全然いける。
【高畑】そう考えると、極太の線を引く筆記具っていうのもアリだなっていう気はちょっとしなくはない。黒板アートみたいなのに近いかな。
【きだて】だから本当ね、ぺんてるは「太字マットホップ白」としてこれを出せばよかったんではないか。
【他故】「スーパーマットホップ」だよ(笑)。
【高畑】これでカラーをいっぱい出す。14色これを並べる。
【きだて】めちゃめちゃいいじゃん。
【高畑】そうすると、何か別の画材になれる気もするね。
【他故】昨年末の「文具女子博」で、これが何の説明もなく並んでたのね。担当者の人がいて、僕が「えっもう出てるんですか?」って言って買ったらすげえ喜んで、「誰も話を聞いてくれないんですよ」って、「そりゃそうだろう(笑)」みたいな話をしたんだけど。これはちゃんと「白く隠蔽できるペン」だっていう風にはっきり言えば、女子博でも売れた気がするんだよね。
【きだて】需要はあるよね。
【高畑】需要はあるけどさ、文具女子博で何の説明もなくこれを出してきてもなかなかつらいよ。
【きだて】それはね、そもそもぺんてるは出す気があったのかなとは思うんだけど。
【高畑】いやーでも、すごいじゃん。ノズルの使い方が全く違うっていうのが、今後の可能性を感じるじゃん。
【他故】感じる。
【高畑】修正じゃなくても、このノズルの使い方でいろんなことできそうだなと思うので。だって、これ幅が広げてあったら、もっと広い幅の平行線も多分引けると思うから。
【他故】引けるんじゃないかな。
【きだて】これ次第だもんね。
【高畑】もしかしたら、中間に出口を一箇所じゃなくてというのはあるかもしれないけど、上手くやれば平行線を引く新しいペン先として、「こんなやり方あるんだ」っていうのが技術的にはすごい新鮮だったので。もうほんと、出てくるタイミングがもっと早かったら、めっちゃくちゃ強かったのにって。
――それはしょうがないんじゃないですか。このタイミングじゃないとできなかったことかもしれないし。
【高畑】思いついたからなんだけどね。でも、これはすごいの出たなっていう気はするので、何か使い道を考えていかないと、このまましぼんじゃうのはもったいない。
【きだて】そうなんだよ。「すごいの出たんですけど、修正液なんです 」って言うと、ほとんどの人が興味を失うじゃん。そういう思いをさせるにはもったいない、出来の良さなんだよ。
【高畑】だから、そこだよね。本当に面白い。
――これ、1文字だけ消すのには使いにくいですよね。
【他故】上からポンと押してあげて、少し塗り広げるみたいにすれば、できなくはないですよ。
【高畑】1文字消しは全然できるのでそれは構わないんですけど、1文字よりも小さな部分消しにはもちろん向いてない。
【他故】ああ、それは向いてない。
【高畑】だから、使い方は本当に修正テープだね。
【きだて】そうだね。ワンプッシュで液が出過ぎるんだよね。
――結構出るから1文字ぐらいだと結構こんもりしちゃう。
【きだて】塗り広げるのが前提だから、それはしょうがないよね。
【他故】慣れはあるかもしれないですけどね。
――まあでも、自在に曲線が引けるし、こんなすごい修正液初めて見ましたよ。
【高畑】だから、ここへきてのこの技術すごいって思うのはあるんだよ。
――長生きはするものですよ。
【高畑】モールス信号とかすごいきれいに書けそう。
【きだて】今じゃない文房具で、今じゃない技術を使うなぁ。誰が求めてんだ、それ(笑)。
【高畑】何か、いろんな意味で、気持ちが「うわー」ってなる。
【きだて】そう。何かね、もどかしい(苦笑)。「良い商品だよ」って言いたいんだけどさ。
【高畑】また、見た目の思いっきりクラシックな感じがさ(笑)。
【きだて】何か、メンソレータムっぽいよね(笑)。
【高畑】見た目がオールドタイプの修正ペン。ボールペンタイプが出る以前の修正ペンだから。行消しとかで修正液をいっぱい使ってる人って、今はいるのかな?
【きだて】ねぇ。
【高畑】上手く使ってほしい感じはすごいするけどね。
【きだて】修正しても許されるものは大体フリクションを使う人が増えて、それ以外は修正液もテープも使っちゃダメみたいな状況じゃない。
【高畑】あとは、政治パーティーを開いたときの領収書とか、それに関わる名簿とか。「黒く塗るのは良くない」って言われて、みんな白く塗って出すとかね。
【きだて】「そういうことじゃねえんだよな」っていう(笑)。
【高畑】「味のりじゃねえか」みたいに言われら、「いやいや、今度は白いですよ」って。
【他故】ははは(笑)。
【高畑】いや本当にね、これを上手に使うアーティストとか出てきてほしい。
【きだて】そういうのが出てこないと、ちょっと厳しいんだよなぁ。
【高畑】一般的な用途の需要だけでいくと、ちょっと今のタイミングだと厳しいのかな。でも、修正テープを日常的に使っているジャンルの人にとっては、全然試す価値はあると思う。
【他故】あると思うね。
【高畑】だから、「修正してません」はもうしょうがないとして、修正テープを今普通に使ってますみたいな人にとってだったら、十分修正テープと戦う力のある修正液っていう感じはあるよね。
【きだて】むしろ、上位互換ぐらいの勢いだもの。
【他故】そうそう。この超速乾は本当にみんなに臆さずと試してほしいからさ。
【きだて】なんだけど、速乾過ぎて、使ってるうちによく詰まるんだわ。
【高畑】そこはね注意が書いてあるんだけどさ。「ちゃんとペン先拭いてからしまってください」って。そこはちょっと面倒な気はする。あと、使う前に1回ペン先を見て、こびりついてるのがあったら、一旦ティッシュかなんかで拭いとかないと、固まったやつがジャリって出てきちゃうので。
【他故】メンテナンスが必要なんだよな。
【きだて】ボールペンタイプとかだったらさ、詰まってても書き始めると何かゴロッとしたかたまりがまず出て、そこからドバっと出るとかがあるじゃん。「ホワイトスピード」で詰まると、本当に全く出なくなるんだ。
【高畑】幅が維持できなくなるから。だから、修正に失敗したくなかったら、要らない紙の端でチョンチョンってやってインク出るの確認してから使うみたいになっちゃうから、ここはちょっとね。そこは修正テープの方が便利にはなっちゃうのかもしれないけど、そのペン先固まる問題は確かに気になる。
【きだて】なんかね、みんなにすごく使ってほしい最新技術なのに。「良いよ、使ってみて!」と万全に言いづらいこの感じ。本当にもどかしい(苦笑)。
――「特に修正するものがなくても、1回使ってみてください」ということでいいんじゃないですかね。
【他故】「白いので太い線を描くと面白いよ」って(笑)。
【きだて】文房具が好きな人にならそうやって薦められるんだけど。
【高畑】趣味の人には「全然これ面白いから色々使ってみようぜ」って言える感じはすごいする。
――「マットホップ」(*関連記事)と一緒に使ってみてもいいんじゃないですか。
【高畑】そうだよ。だって、表面は思いっきりマットだしさ。ツヤなしの白でこんなにはっきり書けるっていうのは、これは新しい筆記具としての面白さは抜群にあるので。そこは面白い。面白いがゆえに悩ましい。
【きだて】これに関しては、開発した人と話をしたいよ。
【高畑】話したいよね。「何でこんなの思いついちゃったのか?」っていうかさ、どこから思いついたんだろうとか聞いてみたいよね。
――ちょっと話を聞いてみたいなと思いますよね。どのぐらい売れてるのかも聞きたいし。
【高畑】これが一発屋で終わってほしくない感じもするので。
【きだて】ただ、修正液ってここから後続があるか?
【高畑】だから、これが定番で残ってくれれば全然いいんだけど、作り続けてくれないといけないので。修正液も修正テープもそうだけど、どんなにいいやつを買ったって、しばらく置いといて、2年とか経ったら大体固まっちゃってるわけだから、使う都度買わないといけないものじゃん。
【他故】そうだね。
【高畑】鉛筆とかだったらさ、10年前の鉛筆でも削ったら普通に使えるけどさ。これは売り続けてくれないと困るんだよね。
【きだて】とはいえ、それこそ2年後、3年後にまだ修正液が必要とされてるのかという予測も立たんしな。
【高畑】そこはね。リアルに考えると、これは良いものだからいいかって言うと、用途的にちょっと微妙な感じがするよね。
【きだて】場合によっては、これが修正液ジャンルにおける最後の新製品になる可能性だって決してゼロじゃないじゃん。「これを最後に修正液は滅びました」ってなってもなんの不思議もなくて。
【高畑】でも、この速乾性の修正液はめちゃくちゃ隠ぺい力が高くて、みるみる乾いていくから面白いから。このぬらーっと出てきてという感じはめっちゃ面白いので、これはもう新しい筆記具として、アート素材としてちょっと今後の発展をしてほしいぐらいの勢いかなと思います。
【他故】いいと思います。
【高畑】本当に性能は良いよ。平滑だし、はがれないし。修正液としたら集大成的な良さはある。なので、修正テープに勝てる修正液がいるとしたらこれだけだ、みたいな感じではある。
【きだて】上からも書きやすいしで、本当に言うことはないですよ。メンテナンスがちょっとかかるという以外は。
【高畑】「すごい」っていうのは言いたい。
【きだて】文とびを見ている人たちなら、絶対にこの良さは分かるはずなので。
【他故】「これはまず使ってみよう」って。
【きだて】「面白いから」っていう。使い道はないだろうけど、400円ぐらいいいじゃんっていう。
【他故】「使い道ない」って言うなよ(苦笑)。
【きだて】だって修正しないじゃん(笑)。でも機能的に面白いし、新しい白のペンが400円なら、買ってもいいだろう。
――いいと思います。みなさんぜひ使ってください。
【高畑】使い心地もすごく良いです。
*次回は「キャンパス フラットが気持ちいいノート(ドット入り罫線)」です
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プロフィール
高畑 正幸(たかばたけ まさゆき)
文具のとびら編集長。学生時代に「究極の文房具カタログ」を自費出版。「TVチャンピオン」(テレビ東京系列)の「文房具通選手権」では、3連覇を達成した。サンスター文具に入社し商品企画を担当。現在は同社とプロ契約を結び、個人活動も開始。弊社が運営する文房具のWebマガジン「文具のとびら」の編集長も務めている。著書は『究極の文房具カタログ―マストアイテム編―』(ロコモーションパブリッシング)、『究極の文房具ハック』(河出書房新社)、『そこまでやるか! 文具王高畑正幸の最強アイテム完全批評』(日経BP社)、『文具王 高畑正幸セレクション 一度は訪れたい文具店&イチ押し文具』(監修/玄光社)、『究極の文房具カタログ』(河出書房新社)、『文房具語辞典』(誠文堂新光社)と、翻訳を手がけた絵本『えんぴつとケシゴム』(KADOKAWA)。新著は『人生が確実に幸せになる文房具100』(主婦と生活社)。
https://bungu-o.com/
きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
他故 壁氏(たこ かべうじ)
小学生のころから文房具が好きで、それが高じて文具メーカーに就職。ただし発言は勤務先とは無関係で、個人の見解・感想である。好きなジャンルは書くものと書かれるもの、立つ文房具と薄いペンケース。30分間文房具のことしか語らないトーク番組・775ライブリーFM「他故となおみのブンボーグ大作戦!」パーソナリティ。たこなお文具情報室所属。
「他故となおみのブンボーグ大作戦!」番組ホームページ https://daisakusen.net/
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