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【連載】他故となおみのブンボーグ大作戦!Bootleg  #33 化粧品が絵の具になる魔法の水!?

ふじいなおみ

30分間、文房具の話題だけをお送りするラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」のパーソナリティ「なおちゃん」こと、ふじいなおみです。

番組では毎週たくさんの文房具が登場します。その中から、他故さんとなおちゃん2人で選んだ商品をピックアップ。より掘り下げてご紹介していきます。

photo1.jpg「magic water」は実験室をイメージさせるような容器で届きました



今回は、2023年12月24日の「なおちゃんの使ってみた」でご紹介したモーンガータの「magic water」をピックアップします。

化粧品のライフサイクル

photo2.jpgカラフルなアイシャドウ


なおちゃんは自宅作業が多いため、出かける時にだけ化粧をしています。化粧品は肌に直接に塗るものなのでできることならば新鮮なうちに使い切りたいと思っています。が、1回に使う量は少量、価格はそれなりにするため、毎日化粧をしない私は特に、すべてを使い切れません。実際は数年間使っているものもあります。
また、世の中にあるアイシャドウやチークなどには流行色があり、流行を過ぎたコスメの多くは使われなくなるそうです。今回ご紹介する「magic water」のモーンガータが調べたところ、化粧品を使いきれずに捨てている方が86.3%にものぼるのだとか。

もう少し源流に近づきましょう。化粧品メーカーでは商品化を目指していくつものサンプルが作成されています。その時にサンプルを20個作ったとしても採用されるのが1つだけだったとすれば、残りの19個は廃棄対象となってしまいます。

今回ご紹介する「magic water」は使われなかった化粧品を活かしたい、新たに笑顔で使えるものに生まれ変わらせたいという考えのもと、元化粧品研究員の方が生み出した手品のような商品です。

廃棄される化粧品を再び使えるものにしたい

化粧品を再利用する時に立ちはだかった大きな壁は二つありました。
一つ目の壁は、化粧品会社から大量に出るサンプルの廃棄物を入手することです。化粧品メーカーはわざわざ「廃棄物を出している」ということを発信する必要を感じていなかったですし、化粧品の開発にはかなり高度な技術が使われているため、例え廃棄するものだとしても、社外に出すことは難しかったのです。

もう一つは化粧品自体の性質です。

photo3.jpg

水をアイシャドウの上に置いたところ。綺麗に水玉になります


「ウォータープルーフ」や「化粧崩れをしない」という言葉をテレビCMなどで聞いたことがあると思います。化粧品は汗などですぐに落ちてしまわないように作られています。その方法とは油分でコーティングすることです。例えばパウダー状の化粧品は粉自体が油でコーティングされています。

問題解決に取り組む

まずは、化粧品会社からの廃棄サンプルを仕入れる問題。これは信頼関係を築くことで解決をしました。現在は10社以上の化粧品会社と繋がりがあるそうです。加えて、化粧品メーカーにとっては廃棄物といえどもモーンガータにとっては原料の仕入れになります。そのため有償で化粧品会社から材料として買い取って使用をしています。

そして、もう一つの壁を解決したのは粉末状の化粧品を水に溶けやすくするための魔法のアイテム「magic water」の開発でした。
その時に大切にしたのは「安全性」でした。
油と水を結びつけるものの1つとして界面活性剤があります。お皿を洗う食器用洗剤にも入っているものです。洗剤を使うと油汚れが水で落ちるのは界面活性剤が油とも水とも仲良しな性質を持っていて、食器についた油と繋がったまま、水と仲良しな部分が水と繋がって一緒に流れていくからです。今回はそんな界面活性剤は使わずに開発を進めました。
もう一つ、法律で決まっている「化粧品に使える成分だけで」生み出すことにしました。日本の化粧品は「薬機法」という法律のもとに厳重に管理されています。例えば、工業用の化学薬品を使えば水に溶けるようなものが簡単にできるかもしれませんが、それが触ったら危険な薬品では意味がありません。「化粧品と同等の安全性を担保したい」。「化粧品に使える成分だけで」作られた「magic water」は法律により安全性を担保されているのです。

photo4.jpg右側がmagic water。液体がアイシャドウを溶かして染み込んだことがわかります

化粧品のアート「SminkArt」の誕生

モーンガータは「magic water」を生み出し、コスメを色材としたオリジナル創作活動を「SminkArt(スミンクアート/Sminkはスウェーデン語で「化粧」)と名づけました。

SminkArtの商品ラインナップには大きく2つあります。
1.「magic water」で化粧品をあらかじめ加工し、再び粉末に戻した「ときめくペイント」。こちらは化粧品メーカーの廃棄物を有効活用してできた色材です。

photo5.jpgときめくペイントは粉末状。ケースに入れられて販売されています


photo6.jpg実際に画用紙に色を塗ってみました


「ときめくペイント」は粉末になっていて、パレットなどにとって水(magic waterでもOK)で溶いて絵の具のように使えます。他にもレジンなどの色付けなどにも使えるそうですよ。


2.「magic water」そのもの。

photo7.jpgアイシャドウを一度粉にして使う方法

「ときめくペイント」に対して、こちらはご家庭に眠らせている使いきれないコスメを絵の具のように変化させる液体です。ご自宅にあるアイシャドウなどのパウダー化粧品を少量の「magic water」で溶いてまずは、ペースト状にします。ペースト状になった化粧品は水に溶ける性質に変わっているため、あとは普通の水(magic waterでもOK)で濃淡の調整ができます。

なおちゃんのおすすめは「magic water」

私は迷わずmagic waterを購入しました。自宅に眠っている化粧品を画材として使えるからです。

photo8.jpgアイシャドウを直接溶かして塗る方法


「magic water」を入れた筆ペンを使い、液体を少しずつ出しながらケースにはいったアイシャドウを固形絵の具のように溶いていくことでもお絵描きや塗り絵が楽しめます。幼稚園や保育園では固形絵の具を使うことが多いのでお子さんが使い方を理解しやすいのもお勧めしたい点です。

我が家の娘は小学校に入る前から化粧品にとても興味を持っていました。人気アニメのキャラクターイラストと、化粧品を模した画材が付いた「お化粧セット」が市販されていて、娘にねだられて購入したこともあります。この当時に「母親が使っている本物の化粧品が絵の具になって、塗り絵に化粧を施せる」と知っていたらとても嬉んだでしょう。
また、塗った後は化粧品特有のキラキラした美しい仕上がりになります。それも子供たちを夢中にさせるのではないでしょうか?

今後のSminkArt

私は、「SminkArt」や「magic water」のことを「SminkArtペン」のプレスリリースで知りました。

photo9.jpgSminkArtペン


たくさん廃棄される化粧品に対して今までの方法では全てを処理しきれないことから、サクラクレパスをパートナーに化粧品から作られた水性ボールペンを開発しました。それが「SminkArtペン」です。
まずは、コーセーと花王とキッザニアにおけるノベルティとして、2024年2月以降に活用される予定です。
また、一般販売については、2025年3月頃 には発売できるのではないかと伺っています(放送でご紹介した時期とズレがありますが、こちらが最新の情報です)。

1回の販売は3色入りのものが3種類で全9色。1色あたり3,000本作るので合計27,000本が作られる予定と伺いました。化粧品はその時期の流行を強く受けるため、同じタイミングで作られたそれぞれの色に差異はありません。しかし、1回目に発売されたものと2回目に発売されたものでは、材料となる化粧品の色が異なるので、出来上がるペンの色味も異なるそうです。
コレクター魂がうずうず…。

これからも「SminkArt」に注目していきたいです。

商品情報

SminkArt
https://man-gata.com
(商品購入もこのページから)

ブンボーグ大作戦!こぼれ話

photosashikae.jpg1月7日の放送で「新年の抱負」をお話ししたので、改めて色紙に書いてみました。
番組内では文房具を「愛でたい」と話しましたが、それだけではなく「もったいないと思わずに使う」。
そして「使ったことで楽しさを感じる」ところまでがワンセットでは?という思いに至りました。

変にコレクター気質なので、もったいなくて使えない。
でも、そのもったいないと考えていることこそ、文房具の本来の能力を発揮できなくしていることに気付かされました。

今年は積極的に使います!楽しみます!

初めて色紙に筆ペンで書きましたが(小ぶりの筆ペンだったので字も小ぶりに)、真剣に文字に向き合う時間って気持ちがいいですね。おすすめなので、あなたもぜひ試してみてください!

プロフィール

【ふじいなおみ】
1979年北海道札幌市生まれ。ラジオパーソナリティ/文房具プレゼンター
ナナコライブリーエフエムで放送中のラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」のパーソナリティ及び制作・技術を担当。万年筆インク(中でもご当地インク)コレクター。
他故壁氏さんとユニット「たこなお文具情報室」として、文房具の楽しさを伝える活動を行っている。
2015年生まれの娘とともに知育・学童文具を使用しているため、リアルな声を届けられる数少ない存在である。
そして、きだてたくさんと色物文具をひたすら紹介する動画コンテンツ「イロブンの引き出し開けていこう」もYouTubeにて配信中。

【他故となおみのブンボーグ大作戦!】
埼玉県朝霞市のコミュニティFM「ナナコライブリーエフエム」にて放送中の30分間文房具の話題だけをお送りするラジオ番組。
パーソナリティーは他故壁氏&ふじいなおみ。
放送時間は毎週日曜日19:30~20:00/毎週水曜日 11:30~12:00(再放送)
FMラジオ77.5MHz(埼玉県朝霞市・志木市・新座市・和光市とその周辺地域)の他、パソコンやスマートフォンではListenRadioのサービスを利用すると気軽に聴くことができます。

詳しい聴き方は番組Webページへ
https://daisakusen.net/howto/

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