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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.64 ブング・ジャムの2022年上半期ベストバイ文具(その1)

文具のとびら編集部

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、ブング・ジャムのみなさんが選んだ2022年上半期のベストバイ文具を紹介してもらいました。

第1回目はきださんおすすめのバッグインバッグ「ハサンド」です。

(写真右からきだてさん、他故さん、高畑編集長)*2021年11月9日撮影
*鼎談は2022年6月28日にリモートで行われました。

リュックにはさんで使う「ハサンド」

5.jpg「HASAND(ハサンド)」(クツワ)*一般販売は9月からの予定

――今回は、今年上半期のベストバイ文具を、みなさんにご紹介してもらいます。

【きだて】俺の上半期ベストバイは、クツワの「ハサンド」です。去年の12月からクラウドファンディングが始まって、ついこの6月にリターンが届きました。というわけで、上半期もかなりキワキワな感じなんですけど。

――じゃあ、一般販売はまだですかね。

【きだて】まだですね。言ってる間には一般販売始まると思うんだけど。

【高畑】クツワでクラウドファンディングなの?

【きだて】うん。だから、「タブラ」とかあの辺の枠でやってたやつ。

【他故】そうだね。

【きだて】リュックサックで、前後に荷室が仕切られているタイプのあるでしょ。その仕切り部分をフラップで挟み込んで固定できるから、リュックの底に沈まないバッグインバッグなの。

3.jpg【他故】あ~、なるほどね。はいはい。

【きだて】だから、リュックの中で常時浮いてる状態というか。

【他故】空中収納だ。

【きだて】そうそう。

【高畑】ノートパソコンなんかが入るあのポケットのところだね。

【きだて】そう、その仕切りのところに。

【高畑】あ~なるほど。

【きだて】バッグインバッグというか、どちらかというとポケット増設板みたいな感じなんだけどね。

【他故】そうだね。

【きだて】俺は基本的に移動時はリュック以外使いたくないんですよ。すごいなで肩だからショルダーバッグなんてすぐストンと落ちちゃうし、あとは、歩きながらスマホで写真を撮ることも多いので、両手を開けておきたいってのもあって。だからリュックしか選択肢が無い。

【他故】うん。

【きだて】なんだけど、実は自分はリュックに向いてないの。カバンの中を整理できない人は、リュック使わないほうがいいんですよね。

【高畑】えっ!?

【きだて】リュックって縦長なので、大抵のものは沈んじゃうじゃない。

【他故】まあ、底の方に入っちゃうとね。

【高畑】それはめっちゃ分かる。

【きだて】つまり整理整頓できてないと、内部に地層ができちゃう。そうなると下の方のものが取り出せないでしょ。

【高畑】あとは、中でからまっちゃうんだよね。下のものを出そうとすると、上のものがからまって、すごい嫌な感じに傷むんだよ。

【きだて】例えばメガネケースを取り出そうとすると、まず一旦リュックに入ってるものを全部取り出して……みたいなことをやってて。そうなると当然ながらバッグインバッグ自体も沈むんですよ。

【他故】はは~、そうか。

【高畑】バッグインバッグって、バッグの高さがないとダメなんだよね。

【きだて】いや、それでもダメなのよ。高さがあっても、上にあるポケットは使えるんだけど、下にあるポケットは結局デッドになるんだよ。

――あ~、下にポケットがあっても取り出しにくいわけですね。

【きだて】そう、それだと一緒じゃん。

【高畑】バッグインバッグはズルッと上にあげて、中身を出すというイメージなんだよ。ポケットがいっぱいあるやつだとね。

【きだて】結局、ポケットがいっぱいあっても、上の方のしか使ってなかったんだよ。

【他故】なるほどね。

【きだて】それだったら、これの方が正しいじゃんっていう。

【他故】下のポケットなくていいじゃんっていうことだね。

【高畑】下は下で物が入ってるんだよね。そこに落っこちるのが嫌だから、別にしたいというのはあるよね。

【きだて】空間収納としてこれは非常に正しいなと、クラファンを見たときに思ったのよ。この部分はクツワが正しいぞと。

【高畑】分かる。

【きだて】ということで、届くのを半年ジリジリと待ってたんだけど。

【他故】半年って、結構かかったね。

――これはMakuakeでやってたんですね。

【他故】そうです、Makuakeですね。

【高畑】どうせ事前受注だからすぐに出るだろうと思ってたけど、そうでもないんだね。

【きだて】まあ、リターンが成立してからはすぐだと思うけど、一般受注とあんまり変わらないかもね。

――Makuakeには、「6月末までにお届け予定」って書いてありますね。

【きだて】俺はクラウドファンディングがスタートしてすぐに入札したので、割と早めのターンで来たんだけど。

――それが半年前というわけですね。

【他故】そうですね。「12月から」となってたので。

【高畑】俺は、それがあるのを知らなかったよ。

【きだて】「タブラ」にも入札したので、クツワからいちいち連絡が来るようになっちゃった(笑)。

【高畑】ああ、なるほど。

【他故】そうそう。次のクラファンあるよって、連絡が来るんだよね。

――常連さんですね(笑)。

【高畑】「タブラ」も買ったんだっけ?

【きだて】買ったよ。「タブラ」は、俺の中ではそこまではハマらなかったんだけど。

【高畑】でも、これはいい感じなんだ。

【きだて】これはとてもいい。取材用に名刺入れとかボイスレコーダーを出し入れする頻度が高いんだけど、そういう小物がスパッと取り出せるのは本当に快適。

4.jpg【高畑】なるほど。

【きだて】名刺入れも、そのままリュックに放り込んでたわけじゃなくて、ポーチに入れてたんだけどね。そのポーチが沈んでたら一緒だろという。

【高畑】そのポーチを取り出して。

【きだて】そう、そのポーチから出すという。いちいち名刺出すのに、何度手間かかってんだよって話で。

【高畑】その気持ちは分かる。

【きだて】名刺なんて、相手の人から「ちょっとお名刺でも」と言われたら、慌てて出すじゃん。我々は。

【高畑】まあそうね。分かる。

【きだて】そうなると、相手をずーっと待たせて、こっちがリュックの中身を放り出してわちゃわちゃするという、すごい嫌な時間が発生してたんだけど。

【他故】まあ、かっこ悪いよね。

【きだて】それが、一発で取り出せるようになったのは、めちゃめちゃでかい。

【他故】いいね。そのグレーの部分は、柔らかくて伸びそうな感じだけど。かなり伸びるの?

6.jpg【高畑】ネオプレン的なやつだよね。

【きだて】すごい伸びます。ポケット自体にはマチがないんだけど、ネオプレンの弾力だけで持たせてる感じ。

――結構厚みのあるものでも入りますね。

【きだて】多分ね、入れっぱなしにしてると、ネオプレンが伸び伸びになっちゃうと思うけど(苦笑)。

【高畑】割と保つものもあると思うしね。あと、ガチャガチャいわないのも良さそうだなと思って。

【きだて】そう、揺れないし、ポケットが浅いんだけど、これの弾力のお陰で中の物がはみ出さない。

【他故】ああ、そうか。

【きだて】リュックの上の方なんで、揺れると振動が直くるので、中の物が飛び出すのをちょっと心配してたんだけど、それは全くないですね。

【他故】ふーん。

【きだて】裏のタブでリュック内の仕切りを挟んで、磁石でピタッと固定するのね。だから取り外すのも簡単だし。で、このタブがナナメに折り筋が入ってるのね。

【他故】そこだけ曲がるね。

【きだて】タブの横に製品タグがついてるんだけど、これが磁石にくっつくと自立フォームになる仕組みなの。

2.jpg【他故】あっ、本当だ! 立つのは良いね。

【きだて】これを机の上に立たせて使うこともできます。

【他故】これは、一般販売したら買うな。

【きだて】正直、立たせる用途は、俺の使い方はあんまりやらないんだけど。

【高畑】カバンからダイレクトだよね。

【きだて】そうなんだけど、文房具類をこれに入れて持ち運ぶ人だと、自立型の大きめの筆箱みたいな感じで使えると思うし。

【他故】そうだね。

【きだて】やりようはだいぶあると思うんだ。今までバッグインバッグに対して、あんまり俺には合わないなという思いを抱いていたんだけど、これだけは俺にマッチしましたということで。

【他故】いいじゃないですか。

【高畑】きだてさんが「立つんだよね」と言った瞬間に、他故さんが「立つのは良いね」と言ったのが面白いね(笑)。

(一同爆笑)

【きだて】そこかよ(笑)。

【他故】いいじゃない(苦笑)。

――他故さんは立つ文房具が好きですからね(笑)。

【高畑】「やっぱりそこか」っていう(笑)。

【他故】いやいや、見直しましたよ。

【きだて】これをきっかけに、リュックの中をもうちょっと見やすくできないかと色々と考えていて。まだ注文したばかりで現物がないんだけど、カバンの中用のライトも導入しようかと思っていて。

【高畑】カバンの中用として売ってるの?

【きだて】カバンの中用というか、そういう用途もあるという。今中国から取り寄せ中なんですけど、「明かりを感じて点く」という言い方をしてたんだけど。カバンを閉じてると、完全に真っ暗じゃん。カバンを開けて、ほんの少し明かりが見えると、光を感じてライトが点く。

【高畑】へぇ、面白い。

【きだて】そういうのアリかと思って。やっぱ、リュックの中ってつらいじゃん。ビジネスリュックって、大体中が黒いので、とにかく見づらいわけですよ。

【他故】まあ、そうね。

【きだて】なので、それを照らして下にあるものも見つけやすくしようとか、色々と考え中なんですよ。

【高畑】明るさを感知して光るというのが、なるほどいい感じだね。面白い。

【きだて】面白いよね。明るかったら明かりはいらないじゃんと言われるかなと思うんだけどさ。カバンの中をさらに明るくするって良いよね。

【他故】明るいなりにね。

【高畑】分かる、いいよね。

【きだて】そういうトリガーがあるんだなと感心して買っちゃったんだけど。他にもリュックの中を仕分けやすくする方法ってないのかね。整理収納アドバイザーの人としては?

【高畑】いや、俺はそれが嫌いだから、前に「モバイラーズバッグ」って作ったじゃん。あれは上にガジェットケースがあって、上に細かいものを入れて、下に大きいものしか入れないという考え方で作ったんだけど、あんな感じだよね。気持ちはすごいよく分かる。俺も、カバンの底をさらうのが嫌いなので。カバン自体が上下に分かれてるとかだといいんだけど、そうじゃなければ色々と工夫が必要だよね。

【きだて】そうなんだけど、荷室が上下に分かれているというのもまた違うんだよ。ズドンと大きいものも入れたいんだよ。

【他故】まあ、そうだろうね。

【きだて】カバンなんて、運用する人の好み次第じゃない。正解がないわけじゃん。

【高畑】何回買っても新しいカバンが欲しくなるよね(笑)。

【きだて】実際、俺が今までクラファンで最も買ってるのがリュックですよ。多分、もう7、8個買ってるという。

――そんなに買ってるんですか!

【他故】まあ、機能を求めてだからね。

【きだて】背中にファンが付いてて、汗がたまらないリュックとか、そういうのを色々と試すのが楽しいんだけど。荷室とかベルトとか好みを突き詰めていくと、「ガワがいいのに、上にポケットがないな」とか、色々とイライラさせられるわけですよ。何かいいところで100点が出なくて。それだったら、「ハサンド」みたいなので、80点のリュックを自分の手で5点ずつぐらい継ぎ足していく方が正解かなと、最近ようやく行き着きました。やっぱりね、100点のカバンはないね。

【他故】ないと思う。

【きだて】クラファンで見て「これは100点だろう」と思って買うんだけどね。

【他故】作ってる方も、100点がないからみんな考えて作っていて、自分のものが100点だと思うから、あんなにいっぱいあるんじゃん。

【高畑】「今日は遠出するから100点じゃない」とか。

【他故】ああ、使うときにね。

【高畑】用途が変わるだけでもそうだし。パソコン買い替えたからダメになったカバンとかいっぱいあるもの。

【きだて】あるある。

【高畑】この間までジャストフィットだったのに、パソコン買い替えた途端にゴミになるときがあるよね。

【他故】あ~あるある。

――きだてさんはリュック派なんですね。

【きだて】俺は完全に、リュック以外は移動のときに使えない派です。

【他故】僕もそうですよ。

【きだて】リュックじゃないとダメだし、リュックでもチェストベルトが付いてないと絶対ダメ派。

――パチッと胸の前で留めないとダメですか。

【きだて】留めないとしんどい。本当に好みがあるんですけど、文具王もよく自分でリュックを作るなあと思って。

【高畑】自分が欲しいかたちを売ってないから作るっていう話で。

【きだて】いやいや、だってさ、自分にとっては100点かもしれないけど、自分以外の人には100点とは限らないわけじゃん。恐くない?

【高畑】それはそう。それを言うんだったら、手帳を作ってる人に言いたいよ。

【きだて】ああ、そうな(笑)。

【高畑】手帳のこだわりなんて大体そうじゃん。

【きだて】考えてみたら、よくそんなものを作って「ジブン手帳」なんて名前を付けたなアイツ(共通の知人にしてジブン手帳の作者、佐久間氏)。恐いわー(笑)。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】手帳も一緒だよ。ライフスタイルが変わったりすると。在宅ワークが増えただけでも、手帳が使いづらくなったりするわけだよ。それも恐いんだよね。自分で手帳とかカバンを作るというのは、合わないから作るというのもあるけど、それが売れるかというのはまた別の話だし。

【きだて】俺は、自分の100点が他人に否定されるのが恐いので、そういうのは作りません。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】ああ、なるほどね。

【きだて】売れないという事実を突きつけられたときにつらいので。自分のリュックは、自分のためだけにカスタムしていくよ。

【他故】じゃあ、1点ものならいいんでしょ?

【きだて】そうそう。

【高畑】作ってくれるところがあったりするじゃん。

【他故】オーダーメイド的な。

【きだて】多分、最終的にはそこに行き着くと思う。

【高畑】ちょっと高いけどね。

【きだて】しかも、オーダーリュックって革が多いから。革リュックは重いよ。

【高畑】それはある。

【きだて】うーん、本当に難しいんですけど。悩ましいね。

【他故】カバンは悩ましいね。

――きだてさんは、それいつ届いたんですか?

【きだて】6月の割と早めぐらい。

――じゃあ、もう結構運用してるんですね。

【きだて】もうひと月近くだね。

――快適に使ってる感じですかね。

【きだて】もうこれは、手放す気がしない。

【高畑】ああそうなの。それはすごいな。

【きだて】ポケットがこれだけできるだけでも、相当楽になったよ。沈まないポケットがあるという。

――リュックの底の方まで手を突っ込まなくていいわけですからね。

【きだて】かつてロシアが凍らない港を求めたように、俺は沈まないポケットが欲しかったんだよ。

【他故】ははは(笑)。

――話が壮大になってきましたね(笑)。

【きだて】いや本当ね、物が沈まないのはいいわ。人前で恥ずかしくない。要る物がそっと取り出せるだけでだいぶ違う。

――確かに、ガサゴソ探すのはみっともないですからね。

【高畑】クシャクシャになったレシートが出てきたりすることがあるじゃん。あんな感じで、カバンの底に入れたものが、入れたまま忘れてて、それも他のものに押されてグシャグシャになってるというのが案外あって。それはちゃんとしたいと思うね。

【他故】そうね。

【きだて】リュック使ってて、カバンの中がぐちゃぐちゃな人は、「ハサンド」を買おうという話ですわ。

【他故】買おうというか、発売の予定はまだ出てないんだよね。出たら欲しいと思いつつ、いつ買えるんだろうというオチになっちゃうよね(編集部注:一般販売は9月からの予定)。

【きだて】そうだね。クツワさん、早くしてください。

*次回は「ツメカケ」を紹介します。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。ラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」が好評放送中。ラジオで共演しているふじいなおみさんとのユニット「たこなお文具堂」の著書『文房具屋さん大賞PRESENTS こども文房具 2022』が発売中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


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