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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.53 ブング・ジャムが選んだ2021年上半期ベスト文具(その3)

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。

今回は、ブング・ジャムのみなさんが選んだ2021年上半期のベスト文具を紹介してもらいました。

第3回目は、きだてさんおすすめの「パタスタ」です。

写真左からきだてさん、他故さん、高畑編集長*2021年6月30日撮影
*鼎談は2021年7月20日にリモートで行われました。

腰痛持ちの人におすすめしたいスタンディングワーク用PCスタンド

パタスタ 1.jpgパタスタ」(カウネット)

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――最後はきだてさんです。

【きだて】僕の中では、上半期のベストは「カイコーンPRO」で、この間話したばっかりだけど、もう1回取り上げちゃえ!と思ってたんですよ。ところが今日の夕方ぐらいにですね、腰をビキッとやってしまいまして。

【高畑】さっき、うめき声が聞こえてきたよ(笑)。

【きだて】座るも地獄だし、立つのもコルセットがないと立てないぐらいの状態ですよ。

【他故】うわぁ!

【高畑】いわゆるギックリ腰的なやつ?

【きだて】それに近い感じ。なので養生したいんだけど、今度ワクチンの2回目を打つので、仕事のスケジュールをそれに合わせてギツギツに詰めてるんですわ。

【他故】あらら。

【高畑】その後空けとかないといけないからね。

【きだて】そう。1日は休みを取れるようにしておきたいから。だからガーッと前倒しで仕事を進めたいんだけど、長時間座るともう二度と動けなくなるし。どうしたものかなと思っていたときに、「あっ、そういえば、この間にサンプル送ってもらったアレがあったじゃん」ということで取り出してきたのが、立ちデスクとして使えるカウネットの「パタスタ」。

【他故】はいはい、「パタスタ」ね。

【きだて】立ちデスクってさ、基本的にオフィスで使うものというイメージじゃないですか。

【他故】まあ、どっちかというとね。

【きだて】ご家庭で導入している人って、そんなにいないと思うんですよ。

【高畑】家だと昇降デスクはなかなか使わないし、スタンディング専用にしちゃうと、座れなかったらどうするの。

【きだて】立ちっぱなしもよくないので。立ったり座ったりしたいから、理想は電動昇降なんだけど、そんなの気軽に導入できるわけもないじゃない。そもそもでかいし、場所とるし。

【他故】うん。

【きだて】今の僕みたいに、腰痛で身動きもとれないという状態は、立ち仕事しかないんですよ。であれば、これしかないよね。

パタスタ 2.jpg【他故】なるほど。

【きだて】これを見たときに、類似品はないのかと探してみたけど、ないんだよね。

【他故】ないよね。これはね。

【高畑】プラスチックとか木でできている、机の上に置くやつがあるよね。

【きだて】そういうのは、ちょっと大げさなんだよ。

【高畑】ジャマっぽいよね。

【きだて】机の上に置くと、明らかにジャマだなという印象になるし。

【高畑】使わないときジャマだよね。

【きだて】使わないときはさておいても、スタンドとして机に乗せたときにまでジャマになる感じ。

【高畑】なるほどね。

【きだて】スタンドの専有面積がでかいのよ。こんなにゴツくなくてもいいんだよというのもあって。

【他故】うん。

【きだて】「パタスタ」って、立てると専有面積がA4のちょい横長ぐらい。

【他故】そんぐらいだよね。

【きだて】ああ、これぐらいでいいんだと。それこそ、13インチのノートパソコンとマウスを置いたらいっぱいぐらいなんだけど、立ち仕事でそれ以上は求めないなというのもあり。他にゴチャゴチャと物が載ってる机にも、ちょいちょいと脇に避ければ、何とか「パタスタ」を置くことができるし。そういう意味でも使いやすい。非常によろしいんですわ。ということで、今日の夕方からさっきまで「パタスタ」にずっと頼りっ切りで仕事してました。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】切実なところがね。

【きだて】これが無いと今日はもう詰んでたなという。

【他故】手元にあってよかったね(笑)。

【高畑】高さの加減とかはどうなんですか? 一定じゃないですか。

【きだて】正直言うと、俺にはちょい低い。

【高畑】あっ、そういうことか。

【きだて】これ、高さ何ミリだっけかな? ああ、高さ260㎜だ。机はオフィス用のスチールデスクを使っているから、それが高さ700㎜として、合わせて1mいかない感じ。

【他故】そんぐらいだね。

【きだて】多分、女性にはそれぐらいでいいんだけど、身長175㎝あるおっさんにとっては低い。あと10㎜上げたい。

【高畑】この間記事に「下に何か入れる」と書いてなかったっけ?

【きだて】そうそう。高さ調節のために、下に土台になるものを入れて、それで対応してます。構造的に難しいとは思うけど、高さ調節なんとかしてくれないかな、というのはカウネットさんに伝えました。

【他故】高さ調節ね。

【きだて】低すぎると、パソコンの画面と自分の顔が離れすぎてしんどいのよ。モニターが見づらいというか。なので、もうちょっと上げたいし、手も下げ過ぎるとしんどいし。立ち仕事のときって、程よい位置でキープしたいじゃないの。

【他故】そうだね。

【きだて】完全に手がダラーンとなっちゃうと、キーボードが打ちにくいのよ。手首だけで打たないといけなくなっちゃうので。

【他故】ああ、それはそうだ。

【きだて】それを高さ調節すると、割と上手くいくようになるので、ヒジの部分に余裕はほしい。

【高畑】ふむ。

【きだて】難点と感じたのはそこだけかな。見た目はすごいペナペナなのに、手を置いても意外としっかりした硬さを感じる。

【高畑】じゃあ、そういう不安はあんまりないんだ。

【きだて】ないね。

【他故】これ、左右に全然ブレないよね。かなりガッチリしてるよね。

【きだて】多分、かなり組み方がいいんだと思う。上手いこと考えて組むようになってるんだ。

【他故】そうだと思うよ。

【きだて】力が変なところに逃げる感じもなく。それなりに剛性感は感じる。なかなかに面白いツールだなと思って。

――これは出たばっかりの商品ですか?

【きだて】出たばっかりですよね。

【他故】出て1カ月ぐらい?

【高畑】6月17日発売ですね。

【きだて】というわけで、今日はこいつに命を救われましたよ、と。

【他故】ははは(笑)。

――これがなければ、原稿が書けなかった。

【きだて】そうです。下手すると締切を1本落としていたところだよ。これね、カウネットは在宅仕事のライター連中に配るといいと思うよ。みんな絶対にほめるよ。

【高畑】在宅で困ってる人はいっぱいいるんじゃないかな。

【他故】うん、いると思うね。

【高畑】「机合わない」とか、色々といそうだよね。

【他故】「座卓にこれを載せるとちょうどいい」というのが、どこかに出てたよね。

【高畑】座卓にこれを載せて座るのか。

【他故】それで座ると、ちょうどいい高さになる。色々と工夫できるところがいいかなと思い。

――なるほど。

【他故】これさ、直感的に組み立てられなかったんだけど、きだて氏はすぐに組み立てられた?

【きだて】えっとね、天板を乗せるななめのパーツを内向きにするか外向きにするかだけ迷った。

【他故】それだけ?

【きだて】他は特に問題なく組めたよ。

【他故】そっか。

パタスタ 2.jpg【高畑】他故さんも使ってるの?

【他故】僕も使ってるんだけど、これ直感的に組めなかったんですよ。すごい悩んじゃって。パッケージ開けたときに、説明書が入ってなかったので、「ああ、そういう時代の製品なんだな」と(苦笑)。

【きだて】中に紙ペラが入ってなかった?

【他故】なかったよ。ダンボールの表面に何か書いてあるだけだった。

【きだて】そんなんだっけかな?

【他故】そう、だから説明書的なものは入ってなくて、最初は勘でやってたんだけど、全然組めなくて。しょうがないから、カウネットのホームページで組み方を見たんだけど。

【きだて】そっか。俺はこういうのをなんとなくで組んじゃうのが得意なので気にならなかったけど、確かに迷う人はいるかもしれないね。

【他故】なので、「QRコードの一つでも仕込んでおいて下さい」という要望は伝えておいたんだけどね。

【高畑】これ、何度も組み解きをしても大丈夫なの?

【きだて】全然平気。

【他故】うちも普段は平べったくして、壁にはわせてある。

【きだて】あ、もう1個だけ気に食わないところを思い出した。このハンドルみたいなところでぶら下げて持てるようになってるんだけどさ。

【他故】ああ、持ち手っぽくなってるよね。

【きだて】この穴の内側のとこが、エッジが立ちすぎて超痛い。持つと指が切れそう。

【他故】はいはい。持つようにはできてないんだ。

【きだて】でも、持ち歩きするときに、ここ持つじゃん。家の中で移動するときとか。

【他故】まあ、ハンドルっぽいからね。

【きだて】そう、「痛ーい」と思いながら移動するの(笑)。これよくない。

【高畑】これと移動オフィスになってるウーバーイーツのバッグをきだてさんが背負って、スターバックスの中途半端な高さの机の上にこれを載っけて、その上にウーバーのバッグを載せてスタンディングで仕事をすればいいんだ。

【きだて】すげーな、未来来たな(笑)。

【高畑】スターバックスのハイチェアのところじゃなくて、普通にローチェアになっているところの低いテーブルに載っけて仕事をするんだよ。

【きだて】ウーバーはともかくとして、スタバのあの低くてイラッとする机には、これはちょうどいいかもしれないな。

【他故】いいかもね。

【きだて】ともかくも、高さの概念を持ったPCスタンドって、今までなかったなと思って。ここまで高さが出せるものは。

【他故】うん。

【きだて】角度調整とか、そういうのはPCスタンドは得意じゃない。でも、そのまま垂直に持ち上げるスタンドはなかったと思う。そういう意味で、すごく意欲的だし、実際に机やイスが合わなくて腰を痛めている俺以外の人たちも救われると思えば、もうちょっと売れるべき商品だなと思っている。

――これを開発した人も、腰を痛めてたんじゃないですか。

【きだて】その可能性はあるかも。立ちデスク使いたいというモチベーションとして、腰痛はかなりデカいぞ。

【高畑】最近ブームではあるじゃん。腰が痛くなくても、立って仕事をした方がはかどるし、体にいいよという話で。だから、腰痛を持ってなくて、使ってみたらいいかもしれないね。

【他故】そうだね。

【高畑】今時点では平気でも、将来的に腰痛になる可能性はあるからね。

【きだて】現状、在宅ワークを続ける限り、遠からずみんな腰痛になるよ。自宅は仕事をするように考えられてないから。

【他故】しかも、家の中ならそんなに立派なイスも買えなくてさ。かなり適当な状態で座ってるだろうからさ、長くはやってられないよ。

【高畑】確かに、それはあるな。

【きだて】あと、家仕事だと、昼メシ食った後って異常に眠いじゃん。

【高畑】あ~そうそう。

【きだて】だから、そういうときに立ち仕事はいいよね。

【他故】うん、立ってやるといいよね。

【きだて】立つと眠気はまず来ないので。立ってすら眠いときは、もうすぐに寝ろという話だしね。

――ははは(笑)。単純に睡眠不足という。

【きだて】ただ、立ったままだとそれはそれでしんどいので。

【高畑】時々座って戻すのね。

【他故】そうね。

【きだて】そのときも、この硬さだと、組み立てるのも早いし、戻すのも早いのよ。だから、座るときに「これを分解するの面倒だから、立ったまま仕事しよう」というのがない。

【高畑】ちょっとスペースに余裕のある人だったら、脇にひょいっと置いて、また戻すでもいいし。

【他故】全然それもできる。

【きだて】軽いし。

【他故】うん。

【きだて】そういう感じで、気軽に立ち仕事を繰り返す方が体にはいいよ。

【高畑】なるほど。

【きだて】立ちデスクを試したことがない人でも、気になってる可能性はあるじゃない。

【他故】あるある。

【きだて】試してみたいけど、高い家具を導入するわけにもいかないので、そのまま試さずに。

【高畑】だから、試さずに買うのはリスク高いじゃん。

【きだて】今は、そういうオフィス用品のショールームにもなかなか行けないじゃん。それだったら、「ダメだったらしょうがない」くらいの気持ちで、5,000円払って幸せになった方がいいんだよ。

【高畑】机を買うよりは試し買いしやすいか。あと、あんまり使わなくても、たたんで置いておけるというのはいいよね。

【他故】本当に不要なものだと、捨てるのに困るからね。

――これ、芯材がボール紙なんですね。

【きだて】そうなの? 試しに折り曲げようとしたら、樹脂っぽい弾力があると思ってたけど。

【高畑】ああ、それは気を付けた方がいいよ。本当にボール紙だったら折り目が付いちゃう。

【他故】パキッといっちゃうからね。

【高畑】折れるとクセが付いちゃうから、それは気を付けた方がいいよ。

――まあしかし、前回「カイコーンPRO」についてあれだけ熱を入れて語っていたけど、それをしのぐ感じで(笑)。

【きだて】ただ単に、タイミングの問題でしたね(笑)。

【他故】ははは(笑)。腰がいってなければ(笑)。

【きだて】そう、腰がいってなければ、まだ「カイコーンPRO」の話をしてたよ(笑)。

――まあ、文とび的には、同じ話を2回続けてやるよりは、物を替えていただいた方がありがたいです(笑)。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。ラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」が群馬県沼田市のコミュニティFM「FM OZE」で好評放送中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


*このほか、ブング・ジャム名義による著書として『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)と、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。

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