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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.17 夏休みスペシャルその1

夏休みに使いたい文房具はコレ! その1

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左からきだてさん、高畑編集長、他故さん

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。Vol.17では、「夏休みスペシャル」として、ブング・ジャムのみなさんがおすすめする“夏休みに使いたい文房具”を4日連続で紹介します。第1回目は、編集部が選んだスマホで撮影が簡単にできるハンディタイプの顕微鏡です。

スマホで撮影できる顕微鏡を使って自由研究

顕微鏡2.jpgハンディ顕微鏡DX」(レイメイ藤井) 学校で使用していた透過型顕微鏡と落射型顕微鏡の2つの顕微鏡の機能が1つになった小型顕微鏡。本体に付随している透過ライトパネルを上下に回転させることで、「透過モード」と「落射モード」にワンタッチで簡単に切り替えることができる。倍率は100倍〜250倍まで対応しており、付属のスマホアダプターがスマホとハンディ顕微鏡の取り付けを補助するので、観察物を簡単に撮影できる。カメラのズーム機能を使って、1,200倍(※スマホの機種によって倍率は異なる)以上で観察・撮影することも可能。税抜3,500円。

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――今回は、夏休みスペシャルと題しまして、みなさんに夏休みにおすすめの文房具を紹介してもらいたいと思います。まずは、編集部で選んだ「ハンディ顕微鏡DX」からいきましょう。

【高畑】夏といえば自由研究ね。

【他故】自由研究だよな。

――まあ、これを持って長時間屋外にいると熱中症になるので、気をつけないといけませんが。

【きだて】家の中にあるものを見ているだけで、充分に自由研究になりえるし、面白いんだけどね。何も、外ばかりが理科の教材じゃないんだよ。

【他故】それはそうです。

【きだて】この間、実際に見て面白かったのは、500円玉の中の隠し文字を探すというやつで。

【他故】ああ、はいはい。

【きだて】あとは、パンに生えたカビを見ているだけで面白いしね。

【他故】カビ(笑)。

【高畑】それが普通に家庭にあるというのも何だしね(苦笑)。

【きだて】まあ、夏だし。冬場だと、モチに生えたカビを見ればいいんだよ。

【他故】カビ見るのばっかりかよ(笑)。

【きだて】いや、面白いよ。200倍くらいで拡大して見ると。

――まあ、夏場に痛んだ食物を二次利用ということで。

【きだて】無駄にしない。もったいない精神で教材として再活用しよう。

【他故】食べちゃダメだよ、見るだけだよ。

【きだて】あとね、DXになって新たに透過モードが付いたじゃない。それでレタスとかシソみたいな薄い葉物野菜を見るのがすごく面白い。今までだと上から光を当てて反射光で見るしかできなかったんだけど、下から光を透かしての200倍だと、細胞もそれなりに見えるから。

【他故】ああ、ここに「タマネギの皮を見てもちゃんと細胞のかたちが見える」と書いてあるね。

【きだて】タマネギは表皮細胞が大きくて見やすいから、顕微鏡観察の定番なんだよね。

【他故】分かりやすいんだ。

――それにプラスしてスマホカメラのズームで、もっと拡大して見えるんですよね。

【他故】デジタルズームで。

【高畑】デジタルズームだから、見えているものは変わらないけどね。

【きだて】実はこのDXの拡大もデジタルズームとやってることはあんまり変わらないんだけどね。倍率で画角が狭いか広いかの話なので。

【高畑】これ、スマートフォンで撮れるのがいいよね。記録できるのがいいよ。俺らが子どもの頃はさ、片目はレンズ、片目は画用紙を見ながらスケッチしてたけど、今は写真が撮れるからいいよ。

【きだて】何よりもいいのは、見ているものをその場で家族とかでシェアできるんだよね。

【他故】ああそうだね。一人で見るんじゃなくてね。

【きだて】交代でレンズのぞくんじゃなくて、「ほら、これ」って一緒に見られるから。

【高畑】クリップタイプのアタッチメントは、レンズがずれなくてありがたいけど、できれば手を離してもスマホが安定してくれるといいんだけど。

【他故】最近は、スマホも大きくなってきているからね。

【高畑】あと、スマホが勝手にズームするから、「ピントが合っていたはずなのに」ってなる。これ、結構調整が難しいんだよ。

【きだて】そうそう。これの記事書くときの用例写真撮るの、わりと苦労したわ。

【他故】そういう調整してくれるアプリなんかがあるといいよね。

【高畑】でも、記録できるのはいいよ。今の小学生は、こういうツールに恵まれているからいいよね。レイメイって、望遠鏡もやってるじゃん。望遠鏡にもスマホを付けられて、写真撮れるんだよね。

【きだて】そうそう。レイメイの「星どこナビ」アプリもすごくいい。観たい星を設定してナビの指示通りに望遠鏡を動かしたらばっちり場所が合うという。写真もノータッチシャッター使えるから手ぶれしないし。

【高畑】ハンディ顕微鏡は、前のモデルも位置だけ合わせればスマホで撮れるんだよ。でも、これが位置合わせが超大変で、すぐずれるから写真撮るの大変だった。このクリップ、共通化してくれればいいんだけど。

――あ~、前のモデルにもアタッチメントを付けられるようにするんですよね。

【きだて】コンバーターを。

――それはあってもいいですよね。

【高畑】これ、普段使うには倍率的には高すぎるんだ。レイメイさんの顕微鏡は、普通に仕事で便利なんだよ。すごい小さい顕微鏡があって。

――「ハンディ顕微鏡プチ」ですね。

【高畑】それが意外と、ライトすぐ点くし、便利なので仕事に使ってるのよ。

【きだて】俺も使っている。常時持ち歩いているよ。

【他故】持ち歩いているの!?

【高畑】ちょうど良くて、便利なんですよ。これ、倍率が全然ちがうでしょ。

【きだて】20倍だったかな。ちょっとした印刷物の検品に使えるんだ。しかもLEDライトで照らしながら見えるから、すごい楽。

【高畑】そうなんだよね。

――ルーペ代わりですね。

【他故】すごいな。そうやって考えると、“誰向け”っていうのを超えて、いろんな人が使えるね。

【高畑】それでね、見る物によって、もっと高倍率なものが欲しいときがあるので、それはそれであってもいいかなと思うけど。

【きだて】昔、印刷屋に勤めていたときに、これがあったら楽だったなあ。

【高畑】以前は、リネンテスターっていう折りたたみの小型ルーペを使っていたんだけど、それはハンディ顕微鏡DXの方が楽でさ。

【他故】いい時代になったな。

【高畑】子ども的な興味としては、これぐらいまで拡大したいよね。俺らは実用派だから、これだとどこの文字を見ているんだか分からないぐらいまで大きくなっちゃうから(笑)。

【きだて】さすがにそれだと校正に使えないからね。

【高畑】プチの方だと、文字の位置が分かるからね。まあ、どっちもアリなんだよねという気がして、まあいいかなと思うし。ルーペから三段階あってもいいかなと思う。スタンドルーペは3倍程度だけど。

【きだて】版ズレとか見るのには10倍は欲しいからね。

【高畑】このプチは、そこがちょうどいいんだよ。ほぼ地面に当ててピント合わせができるから、すごい楽なんだよね。

――ここまで小さいのは、レイメイのだけですかね?

【高畑】あるかもしれないけど、文具メーカーではね。

【きだて】普通に買いやすいものではないかもね。だいたいは理科教材の範疇になっちゃうのかも。

――値段もDXは3,500円で、顕微鏡としては破格なんですよね。

【高畑】安いんだよね。

――文房具としては高額な部類になるけど…。

【きだて】顕微鏡としては安いよ。透過モードが使える顕微鏡でこの値段はそうないと思う。

【高畑】それで、プレパラートを作れば色々と遊べるので。

【きだて】この透過モードのやり方が頭いいなと思って。アクリルを偏光させて光を出しているんだよ。

【高畑】透明な材料に入った光は、入口と出口で角度によって屈折か反射をするんだけど、うまく全反射する角度で光を誘導している。要はプリズムプリズムなんだけど、よくできているよ。2回反射させて光を上にあげるという。それがワンパーツのアクリルなのがうまい。

――これ、他故さん家にはいいんじゃないですか?

【他故】絶対欲しがりますよ。今まで、あまり物が小さいと無くすかと思って、とりあえず買ってなかったんですけど。

――あ~、プチだとちょっとね。

【他故】今年の夏は導入せざるを得ないですよ。私が使いたいですよ。

――なるほど(笑)。

【他故】これだと、親と一緒に楽しめますからね。

――スマホ付ければみんなで見られますからね。

【きだて】あとね、男の子の教育用に、トイレに置いておくといいよと、うちの奥さんに言われたよ。

【他故】何で?

【きだて】おしっこの飛び散りが、紫外線で見えるんだわ。

【高畑】あ~、このUVライトがそう?

【きだて】そう。UVライトを照らすと、床や壁に飛び散ったものが見えるんだよ。

【他故】へえ~。

【きだて】「こんなに飛び散っているんだぞ」ということで、「掃除しろよ」と「座ってしろ」ということで。

【高畑】あと、殺人事件が起こったときには、このルミノール反応で、ここに血液が付着しているのが分かるという。

【きだて】そんなシチュエーションねえだろうよ(笑)。

【高畑】沢口靖子なら使うよ。

【きだて】そうだけど、科捜研はもうちょっといい装備があるだろ。

【他故】これじゃないだろ(笑)。

【高畑】このUVは、俺にとって使いあぐねる感があって。何に使うと面白いかな。

【きだて】これでレジンが固まるかなと思ったけど、やや弱い。

【他故】そこまでのパワーはないか。

【高畑】ああ、でも基本それだよね。あの接着剤で固まるみたいな。

【きだて】「ボンディック」も、一応固まったという感じなので。

【他故】「UVライト機能で、身近な光るものを探そう」だって。身近な光るものって何だ? ヒントもないのか(笑)。

【きだて】まあ、ハガキのUVスタンプとかね。

【高畑】郵便局が印刷しているやつね。あれならあるけど。国によっては、お札に一部そういう印刷がされているみたいだけど。

【きだて】ニセ札防止のやつね。

【他故】レイメイ藤井には、「秘密ペン」みたいのはないんでしたっけ?

――あ~、ないですよ。

【高畑】昔流行ったけど、今もあるよね。

【他故】今でもあるところにはあると思うけど。

【きだて】100均とかで売ってるね。

【他故】レイメイにはないのか。

【きだて】レモンとかそういうところだよ。

【高畑】そうそう、やってっる、やってる。

【きだて】あとは中国とかだね。

【高畑】そうだよ。この間行った香港のブックフェアにはいっぱいあったよ。

【きだて】だろうね。

【高畑】俺は普段から分解派なわけで、いろいろと分解して見るわけですよ。最終的にかっちり撮るときは、カメラを使うんだけど、とりあえずこの顕微鏡で見られるじゃん。引き出しから出してさ。これ大小2つあると、それぞれの倍率で見たいものが見られるから。文具の細かいところを見るのには、使ったりしますよ。このDXは、きだてさんが言ってたみたいにカビを拡大して見るとか、あとは水中の微生物とかさ、ああいうのを見るのにはいいかと思う。

【きだて】しかし、これだけ暑いとさ、微生物もわりと活性を失ってるんじゃないかね。

【高畑】そうなのかな。カビとか生えるということは、それなりに活性してるんじゃないの?

【きだて】どうだろう。ミジンコも水温30°超えると弱ってくるよ。

【高畑】あ、そうなの。

――屋内だとともかく、野外だとだめなんじゃないんですか。

【きだて】日なた水は結構きついんじゃないか。

【高畑】でも、その辺の池で水を汲んできたら何かいるんじゃないの。

【他故】部屋に入れれば、また動き出すんじゃないか。

【きだて】でも、最近は「池に近づいちゃいけません」っていうの多いじゃん。

【高畑】それもあるけど、この顕微鏡のいいところは、持ち運びにコンパクトなところだよ。この大きさだと、カバンの中にポイッと放り込むのにちょうどいい。

【きだて】顕微鏡って、扱いが大体おっかなびっくりになるじゃん。これは確かに、カバンの中に放り込んでも罪悪感はないな。

――これは、意外と通勤カバンに入れている人がいるみたいですよ。それこそ、研究職で使っている人もいるみたいで。

【きだて】へぇ~。

――そうした仕事で使っている人たちから「もっと高倍率の顕微鏡が欲しい」という要望があったみたいですよ。

【高畑】だから、前のモデルがあってということですよね。レイメイの顕微鏡って、このDXとプチの中間のモデルで「ハンディ顕微鏡ZOOM」もあって、倍率がそれぞれ違うじゃん。それぞれに用途があるから、そこは使い分けて3つ揃えてもいいと思うんだよ。やっぱね、見たいものにちょうどいい大きさというものがあるから。

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左から「ハンディ顕微鏡petit」「ハンディ顕微鏡 ZOOM」「ハンディ顕微鏡 DX」


【他故】そうだよね。

【高畑】DXは、この3つの中では一番高倍率なので、ミクロの世界を見ようという意味では最適。繊維とか枝毛とか、毛穴とかを見てみるとかね。

【きだて】DXだと付箋の粘着部分がちゃんと見えたよ。のりがツブツブになってて、貼ってはがせる秘密が分かる。

【他故】あ~、そういうのいいね。

――家にあるそういうようなものが見られるから、わざわざ暑い中外に行かなくても。

【他故】危険な池にまで行って水を汲んでこなくても。

――それでも観察ができますから。

【高畑】まあ、すべての基本じゃないですか。見るというのは。「とりあえず見たい」というのは、レーウェンフックの時代からあったわけですよ。ガラス玉をあれこれしていたのが、今や2、3千円で買えるわけですよ。ええ時代やなぁという。電池だから、扱いやすいのがいいよ。で、丈夫だし。僕の「ハンディ顕微鏡DX」は、壊れたことないんですよ。

【きだて】うん、カバンに直入れで全然心配ないものね。

――結構丈夫なんですね。

【高畑】まあ、汚れるけどね。でも、ちょっと見たいというときには、これで充分なんだよ。そういう意味では、雑に扱っても壊れない観察道具があるのはいいな。

【きだて】最悪、雑に扱って壊れたとしても、まぁしょうがないかぐらいの値段だしね。

【他故】顕微鏡は、大体が雑に扱えないからね。出してくるだけでも、おっかなびっくりなのに。

【きだて】あの、おっかなびっくり感が、子どもから観察を遠ざけると思うんだよ。

【他故】うん、そうだと思うよ。

【高畑】あれがあこがれという部分もあるけどね。精密機械を使っている感という良さもあるんだけど。

【きだて】まあ、より見る機会が多くなるのはこっちだと思うんだよ。

【高畑】むしろ、親の方からしてみたら、こっちの方が買いやすいじゃん。

【他故】そうね。「顕微鏡買ってあげるよ」と言うのは勇気が要るよ(笑)。

【高畑】顕微鏡は、何やかんやで調節とかが難しいし、ちゃんとやらないと対物レンズがプレパラートにぶつかって「メキッ」となったりするので。

【きだて】そうやって割るね。やるやる。

【高畑】そういう部分をやらなくていいから。まあ何より、スマホで簡単に撮影できるのって、普通に「いいな」って思うよ。自由研究も、昔みたいに手描きじゃないといけないということもないだろうし。

【他故】今は、デジカメで撮ったものを貼るだけでも全然OKだし。

【高畑】そういう意味では、全然アリかなと思いますよ。

【他故】うちもこれで顕微鏡出さずに済むな。

【きだて】今年の自由研究は、これで決まりかな?

【他故】そうだね。

【高畑】これ、立体物はピント合わせるの難しいけど、ボールペンのペン先なんかだときれいに見えるんですよ。これはね、面白いです。

【きだて】「シグノRT1」のエッジレスチップも見られるよ。

【他故】いいねえ。

【高畑】ただね、ピント合わせるのが面倒。

【きだて】立体物は難しいね。

【高畑】そうだけど、分解王の文具王としては、大体そういう使い方なので。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。東京・京橋の文具店・モリイチの文具コラムサイト「森市文具概論」の編集長も務める。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
【森市文具概論】http://shop.moriichi.net/blog/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。「森市文具概論」で「ブンボーグ・メモリーズ’80s」を連載中。

たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


*このほか、ブング・ジャム名義による著書に『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)があるほか、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)も2018年3月2日に発売。

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