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【新刊】ニューヨークの鉛筆専門店店主が書いた鉛筆の本『ザ・ペンシル・パーフェクト』日本語訳が発刊

米国・ニューヨーク各国の鉛筆を取りそろえ販売する鉛筆専門店「C.W.Pencil Enterprise」を経営しているキャロライン・ウィーヴァーさんの著書の日本語版『ザ・ペンシル・パーフェクト 文化の象徴“鉛筆”の知られざる物語』(片桐晶訳、B5版・ハードカバー・166ページ、税抜3,000円)が、2019年12月3日に学研プラスから発売された。同書の出版を監修した日本鉛筆工業協同組合が、本の発売日の12月3日13時から学研ビルで出版記念プレス発表会を行い、本の発売に合わせて来日したキャロラインさんも出席した。

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幼い頃から鉛筆に夢中だったキャロライン・ウィーヴァーさんは、年代物から現行品まで世界中から集めた木軸鉛筆の専門店「C.W.Pencil Enterprise」を2015年にニューヨークに開店。そして2017年に、今回の本の原書となる「THE PENCIL PERFECT The Untold Story of a Cultural Icon」を執筆し、ドイツ・ベルリンの出版社gestalten(ゲシュタルテン)から出版している。同書は、鉛筆の誕生からの歴史をたどり、文化の象徴として果たしてきたその役割・価値にあらためて光を当てて再検証を試みた力作だ。
ちなみに、弊社で発行している文具のフリーマガジン「Bun2(ブンツウ)」でも以前に、連載記事「ニューヨーク文具レポート」の中で、ライターの外海君子さんがキャロラインさんを紹介している。

プレス発表会では、まず同組合小川晃弘理事長(写真左から3人目)が、「キャロラインさんの店を視察した時に、この本を出版したことを知り、早速本を取り寄せて読みました。これまでの鉛筆の発展史の本とは全く違って、全ページを通じて、キャロラインさん自身の感動を書き記しています。また、4世紀にもおよぶ鉛筆の歴史を味わえる本で、それを通じて人間味のあるコミュニケーションツールとして、鉛筆の価値を再発見しています。そんなキャロラインさんのメッセージを多くの日本のみなさんに読んでいただき、今一度鉛筆の良さを感じていただこうという思いから、学研プラスさんにお願いして日本語版の出版に至りました」と、出版の経緯について説明した。

続いて、キャロラインさんがあいさつ。鉛筆専門店を開店した理由や鉛筆に対する思い、そして本の出版の経緯や本に込めた読者へのメッセージについて、次のように語った。


私は2014年に、それまで勤めていた仕事を辞めて、私のお気に入りのものをみなさんとシェアしたいと思い、Webサイトを立ち上げました。そして驚いたことに、鉛筆の愛好家やアナログツールのファンが想像以上に非常にたくさんいることが分かりました。そこで、2015年にニューヨークのロウアー・マンハッタンに世界15カ国ほどから集めた色々な鉛筆を販売する専門店をオープンしました。

鉛筆は、私の日常生活でずっと大事な友のようなものでした。大人になってからは、色々な国を旅行して、鉛筆の歴史や鉛筆の製造に携わっている人たちの話を伺うにつれ、鉛筆への愛情がますます高まってきました。鉛筆は、ただ単に書くための道具としてだけでなく、シンプルに見えるが、何百年もかけて現在の完成形の姿にたどり着いたというのが分かりました。それをみなさんにも共有してほしいという思いで店をオープンしたのです。

そこでの私の仕事は、ただ鉛筆を販売するだけではなく、鉛筆について語り、鉛筆に対する思いを共有することだと考えています。技術が進歩する時代において、鉛筆は私たちに郷愁やノスタルジアを強くもたらしてくれます。鉛筆は物理的に手に触れるものであり、私たちに喜びをもたらしてくれる道具でもあります。それをみなさんにお伝えしたいと思っています。

2016年に出版社から連絡をいただき、私が日々ショップで提供している物語や歴史を文字にして、ぜひ出版しないかとお誘いをいただいた。そこで、丸1年をかけて鉛筆の物語を書き上げ、2017年にオリジナルの英語版が発売されました。鉛筆は何百年にわたって人間とともにあったものですが、未だかつてその歴史を世界全体から網羅して、分かりやすく書かれた本ありませんでした。鉛筆の歴史は400年にもおよびますが、その中には様々な国の政治や産業、文化、とりわけ鉛筆に携わった家族の物語が含まれています。それを私は研究し、文字に起こして出版しました。

私が鉛筆で、とりわけ素晴らしいと思うのは、その普遍性です。どの国、どの文化にも鉛筆が使われており、様々な独自の位置を占めています。どのような言語で、またどのような絵が描かれようとも、それは普遍的です。その鉛筆を、単に便利な筆記具と呼ぶだけでは申し訳ない。これは表現を究極的に追求した道具なのです。

今回、私の本の日本語版が出版されるということで、大変嬉しく思っています。最初に私がお店をオープンしたときに、一度東京に来ました。その時に、日本の人たちが、鉛筆をはじめとする文房具をいかに大事にしているか、それに情熱を持っているかということを知って、大変驚きました。日本の鉛筆は最高レベルのもので、日本の文房具業界は世界においても最も影響力があると思います。

今回、私の本を日本のみなさんに紹介する機会があり、大変光栄に思います。私が鉛筆の歴史に魅せられたように、日本の読者のみなさんにも、鉛筆の歴史をご理解いただければと思っています。そして、今後鉛筆を使う新しい世代の方たちにも、改めて鉛筆の良さをご紹介させていただきたいと思います。

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キャロラインさんの腕には鉛筆のタトゥーがある



なお、今回の出版にあたり、本サイト編集長の高畑正幸文具王が次のように推薦コメントを寄せている。


この本は、幼少時代から鉛筆に魅せられ、自ら鉛筆専門店を開くほど鉛筆を愛する著者が、その過程で得た広く深い知識を元に、鉛筆の歴史を丁寧に編んだ研究書です。

鉛筆の登場から今日までを1世紀ごとにわけ、時代を象徴するトピックをならべてまとめられた明瞭な構成で歴史の全体像が把握しやすく、調査に基づく史実を押さえつつも、著者本人の偏愛を隠そうともしない筆致で熱く語られる興味深いエピソードに、つい引き込まれて読み進んでしまいます。

鉛筆史においては、世界的視野で包括的に記された唯一にして至高の参考文献と言われるヘンリー・ペトロスキーの著書『THE PENCIL』(邦題:「鉛筆と人間」)が1989年(平成元年)に上梓されて以来28年ぶりの貴重な集成本でありながら、その間(ちょうど日本では平成という一時代)に起こったデジタルツールの発達による鉛筆の位置づけや楽しみ方の変化についても言及しているアップデートでもあります。また特に日本の鉛筆の歴史やその品質に対する評価についても詳細に触れられていて、日本の文具ファンとしてとてもうれしい内容になっています。

書くことの多くがデジタルツールに置き換わり、鉛筆の存在が必要ではなくなりつつある今こそ、本書を案内としてその誕生から現在に至る歴史を辿り、鉛筆が人類にもたらした本質的な価値や、これからについて考えることには大いに意味があるように思います。

2.jpgキャロラインさんと文具王がツーショット!

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