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【年末特別企画】文具王の2022年文具重大ニュース

高畑正幸(文具のとびら編集長)

激動の2022年も残りあとわずか。今年も文具関連で様々なトピックがありましたが、その中から文具王・高畑正幸編集長が「文具重大ニュース」を選びました。

リアルイベントの復活とオンラインマーケティングの常識化

2022年は、徐々に復活の兆しを見せていた文房具関連のリアルイベントが本格的に再開され始め、特に大型のイベントが盛況だった印象があります。



大盛況だった「東京インターナショナルペンショー2022」(関連記事


また、それと同時に、SNSや動画メディア等を通したインタラクティブなオンラインマーケティングを行うのが当然という流れになってきた一年でもありました。レベル感の差はあるものの、ほぼ全てのメーカーがなんらかの形でネットを活用してコンシューマーに向けたダイレクトなマーケティングを行うようになりました。商品の情報発信は、発売前から商品情報をリークして期待を高めるケースが増えました。

また、一部のニッチな製品はクラウドファンディングサイトを利用した事前受注も珍しくなくなりました。その結果、発売前から話題が沸騰する商品が多数現れました。

例えば、サンスター文具の「メタシル」は、「削らずに16㎞も書けるメタルペンシル」として商品動画が公開されるや、爆発的に情報が拡散され、問い合わせが殺到。日経MJが選ぶ2022年ヒット商品番付に前頭として掲載されるほどで、「Bun2大賞」にも選ばれました。



メタシル

また、三菱鉛筆の「クルトガダイブ」は、数量限定と極端な情報の制限でメーカーからほとんど情報を発信していないにもかかわらず、マニアを中心とした情報拡散によって異常に加熱しました。



クルトガ ダイブ(写真は2023年3月発売予定の継続品

オンラインレッスンやサブスク…販売形態の多様化

コロナ禍による巣ごもり趣味需要と、リアルイベントの開催中止などの影響から、これまで様々な趣味の教室を開いたり、イベントでワークショップを開催していたクラフト系作家や講師がオンラインレッスンを開催することが定着してきました。

メーカーからも、三菱鉛筆の「ラキット」や、フェリシモの「ミニツク」のような、オンライン授業と商品をセットにした販売形態が数多く販売されるようになりました。詳しい説明を動画で何度も見ながら、自宅で簡単に始めることができる新しい趣味の形として、様々なアプローチが今後も試されるでしょう。



ラキット(イメージ)


また、毎月定額で、セレクトされた文房具の詰め合わせが届くという「文具のサブスク」も好調とのことで、商品そのものだけでなく、商品とユーザーの関わり方や、商品を選ぶという行為そのもののあり方についても考えさせられます。

コロナ対応からSDGs対応へ

2022年に目立ったのは、SDGsへの取り組み。特に、大手メーカーが取り組みを具体化させてきました。

2021年までは、抗菌・抗ウイルス、飛散防止など、コロナ禍に起因する改善と、それに伴った衛生意識の高い製品が目立ちましたが、今年はSDGsを意識した、脱プラスチック製品、紙パッケージの採用、廃材のアップサイクルなど多角的なアプローチが試行されています。特に脱プラのわかりやすい施策として、紙製パッケージの採用が挙げられます。ボールペンのリフィルなどの、目的買い商品への適用が進んでいますが、徐々に透明ボックスやブリスターパッケージからの置きかえも見られるようになりました。



紙製パッケージ入りにリニューアルした「ジェットストリーム 多色多機能用リフィル」(三菱鉛筆)


企業姿勢は伝わりやすいものの、肝心の製品が直接見られなかったり、製品が露出してしまうことから、店頭での売れ行きや商品管理に影響する可能性があり、少しずつ検証しながらの拡大となりそうです。

ネオ・ファンシー

今年もイラストレーターmizutamaさんの勢いは止まらず、あらゆる文具とのコラボが見られ、特に比較的ライトな文具好きの人たちを中心に人気となっています。



サンスター文具から発売されたmizutamaさんとのコラボ文具・雑貨(関連記事


同時に強かったのがアデリアレトロ。昭和のガラスやホーロー製品に見られたレトロで可愛らしいイラストが注目され、これもまた、筆記具や紙製品を中心に多数のメーカーから発売されました。

他にもシモジマ、古川紙工の「そえぶみ箋」、へそプロダクションが扱う文房具の商標や意匠の雑貨など、共通する特徴としては、かわいらしさが記号的でとてもわかりやすく、90年代のファンシーブームで育った人達にとってはある意味安心感のある「カワイイ」。でも子供の頃のファンシーが洗練されて再構築された、いわばネオ・ファンシーブームとでも呼ぶべき現象ではないかなと思っています。これらは、いわゆるインク沼や紙沼といった深い沼ではなく、もっと浅く広いプールのような気楽な世界です。

ファストデコ

ライトな文具好き層とディープな趣味層の間に、スタンプやシールがぐっと増えてきました。

手帳のデコレーションとして、コラージュ作品的にシールやスタンプをあしらうもので、個々のシールやスタンプは、従来のような記号やキャラクターとしての意味はほとんどありません。日記的な内容とは直接関係のないコラージュアートなので、外に出かけられなくても楽しめます

ポイントは、高い技術がなくても、練習をしなくても始めることができ、より手軽に、短時間でページを埋めることがきるにもかかわらず、最低限の完成度は保証される。いわば、ファスト・デコとでも言うべきジャンルです。

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