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文具王が進化したNEW「ペンカット」の開発者と対談!

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ペン型はさみはいろいろあるが、そのパイオニアといえばレイメイ藤井の「ペンカット」だ。“初代”「ペンカット」の発売は2009年。その後、シリーズ化され、さまざまなタイプが登場。累計販売数は500万丁という大ヒットシリーズに成長した。そして、2021年10月末、“初代”「ペンカット」を12年ぶりにリニューアルした“NEW”「ペンカット」が発売された。

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当サイト編集長の高畑正幸文具王も「ペンカット」愛用者のひとり。“NEW”「ペンカット」が発売されたと聞き、早速、開発者のもとを訪問。新製品を体感した。

「ペンカット」シリーズのヒストリー

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ペン型はさみ「ペンカット」は、ペン型コンパスに続くペン型文具として2009年に発売された。2011年には「ペンカット」のサイズを小さくした「ペンカット ミニ」、翌2012年に「ペンカット グロス」と「ペンカット ドット」を限定発売。続いて2013年には子ども向けの「ペンカット キッズ」を発売するなど、毎年のように新製品を投入。

また、2015年に「ペンカット ミニ」のバイカラーバージョン「ペンカット ミニ バイカラー」、2016年にチタンコートを施した「ペンカット チタン」をそれぞれ限定発売。さらに、2018年に本格的な切れ味を追求した「ペンカット プレミアム」を発売し、フッ素コート、チタンコートもラインアップに加えた。

引き続き2019年に「ペンカット ツートーン」、2020年に「ペンカット ミニ グレイッシュ」とカラーリングを一新したモデルを限定発売。そして、2021年10月末に、“初代”「ペンカット」を12年ぶりにリニューアルした「ペンカット」の新モデルを発売した。

切りやすさにこだわったハンドル収納式はさみ「ペンカット」

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“NEW”「ペンカット」は、持ち運びに便利なペン型でありながらも、はさみとしての機能性を犠牲にすることなく、 より使用感を高めることを狙って進化を遂げた。

携帯性に優れたベン型を保ちつつ切りやすさ両立させたのが独自の「収納式ハンドル」。そのハンドルループは、柔軟性のある素材で手にフィットするため、一般的なはさみと変わらない使用感が得られる。しかも疲れにくい。

また、「ペンカット」だけが持つ両利き対応の新機能として「左右切替レバー」を採用。レバーを切り替えることで、左右どちらの利き手にも対応できるようにした。それに伴って、はさみの刃の部分は両刃仕上げとなっている。

さらに、ペンケースに入れて持ち運びやすいスリム&軽量設計とした。軽量化は女性や子どもの使用を配慮したもので、重量は“初代”の23gから12.8gへと約10gも軽くなった。

デザイン面では、スマ ートかつ丸みを帯びたボディーに一新するとともに、バイカラーを取り入れ、かわいらしさも加えた。ブラック、ホワイト、バイオレット、ブルー、ピンクの5色展開。価格は税込770円。



202111pencut6.jpg 出し入れ可能なハンドルループ



202111pencut5.jpg左右切替レバーにより、ワンタッチで利き手を切り替えられる



202111pencut9.jpg右手でも左手でも使える両利き仕様



202111pencut7.jpg 両刃仕上げ



202111pencut8.jpgスリム&軽量化により、ペンケースに入れて持ち運びやすい





文具王がNEW「ペンカット 」開発者の園上さんと対談

202111pencut3.jpg文具王

【文具王】
本日はよろしくお願いします。
まず園上(そのうえ)さんの自己紹介を含めて、これまでにどのような商品を開発されてきたかを教えてください。

202111pencut2.jpg開発者の園上貴紀さん

【園上】
私はパソコン周辺機器メーカーで商品開発に携わったあと、2016年にレイメイ藤井に入社しました。
入社直後から現在まで、主に光学製品カテゴリーの開発を担当しています。ハンディ顕微鏡や望遠鏡、双眼鏡などになります。
はさみの開発は今回が初めてです。

【文具王】
「ペンカット」は、最初のモデルを2009年に発売したあと、ミニ、子ども用、ハイグレードと続きました。ラインナップが一通りそろい一巡したところで、今回は最初のモデルをリニューアルしたということですか。

【園上】
そうです。
「ペンカット」はペン型はさみの先駆けで、そのあと他社からバネ式のペン型はさみがいろいろ発売されました。「ペンカット」シリーズではこれまで、さまざまなタイプやカラーバリエーションを展開してきました。これまでのモデルでシンプルな機能のペン型はさみは一通りそろったと考えています。
最初のモデルもまだ売れてはいるのですが、すでに発売から10年以上たち、デザインが当時のままということで、今の時代に合わなくなってきました。そこでリニューアルすることになったわけです。

【文具王】
最初のモデルは新製品に置き換えるのでしょうか。

【園上】
置き換えていきます。

【文具王】
新製品のリニューアルのポイントを教えてください。

【園上】
新製品の開発にあたり、携帯型はさみに関するアンケート調査を行いました。その結果、10代、20代の女性の所持率が最も高く、最も使用されていることがわかりました。
そこでメインターゲットを若い女性に設定。女性に使っていただくため、軽さとカラーリングにこだわりました。まず軽さを優先するため、思い切ってブレード(刃)をカシメの位置まで短くしました。これは最初のモデルの約半分の長さです。これによって、最初のモデルに比べて約10g軽くすることに成功しました。ブレードを短くしましたが、肝心のはさみとしての機能は全く問題なく、自信を持っています。
それから、ブレードを短くしたことで、ボディの裏板部分にカラーリングを施すことが可能になり、明るく華やかなイメージに仕上げることができました。
キャップをしたときのデザインは、丸みを帯びた「ペンカット プレミアム」を踏襲しました。これはアイコンとしてシリーズ共通のデザイン性を持たせたかったからです。

【文具王】
デザインは最初のモデルよりも今回のほうが好きです。
リニューアルでは機能面もアップしていますね。

【園上】
最初のモデルでは右利きと左利きの切り替えにパーツを用いていたのですがこれをなくし、ハンドルループと切り替えレバーを一体化することで、よりシンプルな構造を実現しました。切り替えレバーは右利きまたは左利きに1回設定すると、それ以降の設定は必要ありませんので、戸惑うことはありませんし、パーツは使用しないので、なくすこともありません。
この左右切り替えレバーの構造の開発には、かなり多くの時間を割きました。

【文具王】
新製品でもハンドルループ式を採用していますが、バネ式ではなく、ハンドルループ式にこだわっている理由は何ですか。

【園上】
弊社はハンドルループ式の特許を取っています。バネ式で特許を取っているメーカーはないため、多くのメーカーからバネ式が発売されているのは知っていますが、ハンドルループ式は弊社しか出すことができないという強みがあります。
ハンドルループ式の特徴は、ハンドルが指にぴったりフィットすることで、一般のはさみと同じように使える“切りやすさ”にあります。切りやすさは疲れにくさにもつながります。さらに、バネ式よりも曲線が切りやすいというメリットもあります。
弊社としてはそういった強みにさらに磨きをかけていきたいと考えています。

【文具王】
若い女性がメインターゲットといことですが、どういうシーンで使われることを想定していますか。

【園上】
中・高・大学の学生を中心として、20代の社会人に使っていただくことを想定していますので、学校や職場で使われることを想定しています。
アンケートでは、どこに入れていますかという質問に対して、回答はペンケースがダントツで多く、次に化粧ポーチという結果でした。ペンケースに入れて負担にならない重さであることを重視し、しかも切りやすさにこだわって開発しました。

【文具王】
何を切るかによってはさみの構造は変わってくると思います。例えば、「ペンカット プレミアム」との違いは。

【園上】
「ペンカット プレミアム」は、小さいはさみで最高の切れ味を追求したモデルです。
新製品の「ペンカット」は、だれもが使いやすいはさみを目指しました。学校でプリント用紙を切ることや、手帳にデコレーションするパーツを切ることなど、簡易的な用途で十分な力を発揮できる性能を備えています。

【文具王】
新製品では最初のモデル同様、左右両利きのはさみとなっています。最初のモデルも左右両利きで、そのためのパーツを今回のモデルでなくしたのはうれしい進化ですが、右利き専用モデルにするという選択肢もあったはずです。
新製品は左右両利きにするため、付け刃の角度がほとんどない形状になっています。紙を切るにはいいと思いますが、最高の切れ味を求めるなら「ペンカット プレミアム」のように刃に斜めの角度を付けて、右利き専用にするという選択肢も考えられるわけです。
左右両利きはどうしても外せない要素だと考えていますか。

【園上】
最初のモデルが左右両利きというのは大きな特徴の一つで、そのリニューアルということから左右両利きは外せない要素でした。
実は私は左利きです。恥ずかしながら、弊社に入社するまで、はさみの右利き用と左利き用の構造の違いについて詳しく知りませんでした。これまで右利き用の文具に順応してきたので、左利き用の文具に触れてきませんでした。ですが、左利き用を知って使ってみると、やはり使いやすいわけです。
「ペンカット」を担当するにあたり、個人的な気持ちもあり、左利きのユーザーにも知ってもらい、触れてもらいたいと考えました。右利きだけにしないということで、左利きの方にも愛着を持っていただける存在になりたいと思います。

【文具王】
なるほど。左利きと聞いて納得しました。開発している本人が使いにくいものを作るわけがありませんね。それこそ左利きに順応できるはさみといえば「ペンカット」を置いて他にないので、前から面白いアイテムだと思っていました。
園上さんの新製品のお気に入りポイントは、やはり左右切替レバーの機構ですか。

【園上】
そうです。一番力を入れて開発したのが左右切替レバーです。左右の切り替え機構をいかにスマートにするかがリニューアルにおける最大の難問でしたので、今回採用した機構を思いついたときにリニューアルの完成形が見えたと感じました。苦労しただけに、この機構には強い思い入れがあります。

【文具王】
開発者ならではのお話だと思います。
ところで、文具メーカーでは、商品の開発者がパッケージデザインも担当することが多いのですが、「ペンカット」のパッケージデザインも園上さんが担当したのでしょうか。

【園上】
はいそうです。パッケージデザインも担当しました。
パッケージをデザインすることになり、改めて「ペンカット」の特徴を深く見つめ直しました。「ペンカット」の一番の特徴とは、何だろうかと。
そのときに気づいたのは、やはりハンドルループが一番の特徴であるということでした。そこで、しっかり指にフィットする、切りやすい、というハンドルループの特徴を強調するため、ハンドルループを片側だけ出した状態の本体を収納したパッケージデザインにしました。ハンドルループが片側だけ出ているため、パッと見たときにもしかしたら違和感を感じるかもしれませんが、それが逆にアイキャッチになり、ひと目で伝えられるのではないかと思っています。
また、刃を見せるか見せないかという点においては、スリムさをアピールする目的で、刃を見せずにキャップをつけた状態にする選択をしました。
そのほか、四隅を斜め45°にカットして、はさみで切ったイメージにしたり、5色とも台紙の下部を黒で統一し、店頭で沢山の競合品と並んでもすぐに「ペンカット」だと分かるデザインにしています。


202111pencut12.jpg「ペンカット」パッケージとディスプレイデザイン




【文具王】
開発者の一番のこだわりポイントである左右切替レバー機構ではなく、ハンドルループをパッケージデザインでしっかり伝えたいという考え方は正しいと思います。ハンドルループが出ていて、スリムでという特徴が分かりやすくまとまっています。
左右の切り替えについては、意識しなくても使えるほうがいいわけです。開発で一番大変だったところが目立たないというのは、道具としては正解だと思いますよ。

【園上】
ありがとうございます。
実はディスプレイも私が担当しました。ディスプレイでは、カッターなどを使わずに簡単に開封でき、そのまま店頭などで商品を陳列できる「バリットボックス」という新しいパッケージングにチャレンジしました。ディスプレイをセットする際に行う作業は、パッケージの両サイドをバリッと破るだけです。それだけなので、販売店の方が説明書を読まなくても、わずか約10秒で簡単に陳列できるのが特徴となっています。
また、衛生意識が高まるなかで、販売店の方があちこち触ることを減らすことができるといった効果もあります。

【文具王】
それはすごく面白いパッケージですね。

【園上】
このディスプレイは、もちろん吊り下げることができますし、陳列台に置くこともできます。できるだけ多くの販売店に置いていただきたいと思います。

【文具王】
製品の開発に加え、パッケージやディスプレイのことも考えるのは大変だったことは想像できますが、全体の開発期間はどれくらいかかりましたか。

【園上】
2年半くらいかかりました。

【文具王】
今回のリニューアルは大正解で、待ってましたという感じです。デザインがすっきりしましたし、左右切り替え機能が進化して、パーツがなくなる心配もなくなりました。実は家にパーツが片方なくなって使えなくなった「ペンカット」が1丁あるんですよ(笑)。
いろいろ進化した“NEW”「ペンカット」は、12年ぶりにリニューアルしたシリーズのセンターを飾る存在。その“切りやすさ”を多くの方々に体験してもらいたいと思います。

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