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【連載】車椅子ライターから見た 弱い力でも使いやすい文具たち #67「片手でとじられるクリップボード」

波子

しばらく連載をお休みさせていただいておりました。
休載中の2024年2月に神戸で文具王のイベントに参加した際、来場者の方が「波子さんですか?」とお声掛けくださったんです。私の連載をお読みいただいているとのことで「再開を楽しみにしています」と仰ってくださって、本当に嬉しかったです。
なのに、なかなか再開できなくて申し訳ありません。
今後は不定期に連載させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします!

私には、「50歳」という年齢を健康に迎えられるものと思っていなかった時期があります。筋力が著しく衰え始めた37~38歳の頃、このままの推移であれば…と神経内科の主治医が私にふんわりと伝えた未来は、それこそ人工呼吸器をいつからどのように使うかというような、物々しいものでした。そしてそれは、さほど遠い未来の話ではなかったはずでした。
ところが、5年ほど経過した頃には、主治医から「あんまり近々に考えなくてもいいかもね」と笑顔で告げられる程度に筋力低下が横ばいになっていました。今もそのまま推移しています。
そして今月、思った以上に健康的に、50歳になりました。
かつて一度は諦観した「活動的な50代」を送るべく、様々なチャレンジをしていきたいです。

さて、先日久し振りに訪ねたいつもの文具店で、端からくまなく商品棚を見て回っていた私は、普段あまりじっくりと見ていなかったファイルの棚で「片手で簡単にオープン&ロック」という文字を見つけました。
すぐさま手に取り、でももちろんパッケージに入っていてその場で試すわけにはいきませんから、ワクワクしながら購入して持ち帰ったのです。
ということで、今回はこの連載で初めて「クリップボード」をご紹介します!

LIHIT LAB.「クリップボード」

日常的に使っている文具で、意識せず両手を必要とするものは意外と多いんですよね。
クリップボードを使うときに「両手を使っている」とは、普段さほど意識していないと思います。
私も、自分が「体幹の弱さを補うために左手を机について支える」ようになり、机上で両手を使う動作がやりにくくなったことで初めて気づいたんです。クリップボード、両手を同時に使ってるな、って。
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202404namiko2.jpgLIHIT LAB.「クリップボード」A4短辺とじタイプのブルーバイオレット。色は他に赤、黄、緑、青、ブラック。パッケージ裏には説明書きがある



LIHIT LAB.の「クリップボード」は、書類を片手でとじることができます。
どういうことかというと、紙を挟むクリップを「開いた状態で固定」できるんです。
それってすごくないですか?

202404namiko3.jpgクリップ中央の長方形が解除レバー。クリップ上部を押さえるとここが起き上がりロックがかかる




開いた状態で手を離せますから、一般的なクリップボードのように「片手でクリップを開きながらもう片方の手で紙を挟む」必要がありません。



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机の上に置いて、片手でまずクリップを開き、固定されたら手を離します。



202404namiko8.jpg開いて固定されているクリップに書類を差し入れて、解除レバーを押すと、クリップが閉じます。
すばらしい!

もちろん、指でつまんだり手のひらで握って開くこともできますよ。

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202404namiko12.jpg冒頭の説明書きのように指1本で開くのは私には難しいですが、ボードの後ろに指4本添えて親指をクリップに当ててつまむように開くのは何とか可能でした。
握るようにして手のひらをクリップに当てて開くと楽です。

なお、閉じるために解除レバーを押さえるのは軽い力でできますが、閉じたときにかなり大きな音がするので最初びっくりしました。特に何も書類を挟まない状態でクリップを閉じるとき、音が苦手な方は心づもりが必要かも。

202404namiko13.jpg解除レバーを軽く押すだけでクリップがパチンと閉じる



また、片手で紙をとじるにあたって便利な機能が他にも。

202404namiko15.jpgボード左側にはサイドストッパーがあるので、右手で持った紙束をここに当てて差し入れられるんです。また、クリップを手前にすると、左手でも紙を揃えられました。
クリップは開いたまま待ってくれるし、片手で紙を揃えられるし、かなりスムーズにとじることができます。すばらしい!

ペンホルダーもついていて、軸径が7.5~11cmのペンが保持できます。

202404namiko17.jpgペンを横から差すのは私には難しいですが、上から差し込むことはできました。もしペンを差すなら、グリップがなくてつるんとしたボディーのペンを使おうと思います。


202404namiko21.jpg外すときは横にずらしてすぐに外せました。

かつて自宅で入力作業をしていたとき、手書きの書類を見ながら打ち込むのにクリップボードを愛用していました。今はそういった作業をしていないので、大事な書類を一時的に目立つよう保存するのに使いたいと思っています。

あと、外出先で書類に記入する必要があるとき、その台が車椅子では届きにくい場合があるんですよね。一般的には立ったまま記入することが多いですから仕方ないんですが、そういうときに自前でクリップボードを持っていると「こんなこともあろうかと!」とドヤ顔ができますね。
車椅子の後ろに下げたカバンに常備しておこうかな。

文具マーケット(第5回)に出展します

最後に告知を。
2024年5月18日(土)の文具マーケット(第5回)に出展します。
この連載の50回目までを書籍化した『弱い力でも使いやすい 頼もしい文具たち』を販売。会場でお買い上げの方には、書籍に収録の鼎談(文具王×古川耕氏×波子)こぼれ話や書籍制作の裏話を掲載した特典「文具マーケット限定小冊子」をお付けします(数量限定)。
また、ご希望の方には書籍に(お手持ちのものにも)サインいたしますので、ぜひおいでくださいませ。

文具マーケット(第5回)開催! 
http://bungumarket.com/
開催日/2024年5月18日(土) 11:00~16:30
入場料/
・早期入場者前売チケット 2000円(11:00~16:30)
・通常入場者前売チケット 1000円(12:00~16:30)
・当日券 1200円(12:30~16:30)
(小学生以下無料)
会場/大田区産業プラザPiO 大展示ホール(東京都)

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出店名:車椅子ライター波子
ブース番号:H-06
お待ちしています!

プロフィール

波子
1974年生まれ。脊柱側弯症、先天性ミオパチーのため、2006年に杖歩行となり、2012年から車椅子、2014年12月から簡易型電動車椅子を使用。便利な道具や文具が好き。
奈良県奈良市で生まれ育ち、大阪・東京での暮らしを経て現在奈良市在住。
産経新聞奈良版および産経WESTにて連載「車いすでみるなら」2015年2月~2019年5月、全70回。
ブログ「車椅子、ときどき杖。」http://nam-kid.hatenablog.com/
初の著書『弱い力でも使いやすい 頼もしい文具たち』を2022年10月25日に小学館から発刊


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『弱い力でも使いやすい 頼もしい文具たち』をAmazonでチェック

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