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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.80 今、このペンが面白い! 超個性的な最新筆記具をチェック! その1

文具のとびら編集部

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、超個性的な筆記具3本を取り上げました。

第1回目は、サンスター文具の「トプル」です。

写真左から他故さん、きだてさん、高畑編集長*2023年11月11日撮影
*鼎談は2023年10月24日にリモートで行われました。

シャープペンにもっと多様性を!

トプル1.jpgシャープペン「topull(トプル)S(写真上)」とボールペン「topull(トプル)B(同下)」(サンスター文具) 芯を2本の指先で引いて出す、新しいノック機構の“トッププル機構”を搭載した次世代型筆記具。ペンの先端にノック機構が搭載されているので、本体を持ち替えずに2本の指で引いて芯を出すことができ、タイパ(タイムパフォーマンス)も抜群。筆記に集中でき、勉強や仕事などの効率化にも繋がる。どちらも税込396円。

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――今回のテーマは筆記具です。最新の筆記具を3つご用意しました。まずは「トプル」からにしましょうか。

【高畑】この中で一番イロモノ感が強いのは確かだね。

【他故】そうだね、先端ノックで。

【きだて】やりたかったことは分かるんだよ。すごく分かるんだけど、なんか色々と付いてきてないなというか。

【高畑】これは、シャープペンの話とボールペンの話があると思うんだけど、今回は両方ですか?

トプル2.jpg

トプルS(左)、トプルB(右)


――まあ敢えて分ける必要もないので。

【高畑】同じ形で、シャープペンとボールペンの両方出すことってよくあるじゃん。

【他故】うんあるね。

【高畑】そういうときには、シャーペンでもボールペンでも意味合い的には大体同じみたいな感じの事が多いけど、今回はこれ違うと思うよ。

【きだて】明確に違うよ。

【高畑】シャープペンとボールペンで意味違うじゃんみたいなボディだよね。

【他故】そうそう。

【高畑】このトッププル方式っていうのが、「持ち替えずにノックできるから集中できるよ」って言ってるんでしょ。ということはさ、シャープペンに関しては、書いてたら頻繁にノックするから、確かにそこは使い勝手とかもちろんあるとは思うけど、理屈として分かるじゃん。

6.jpg
【きだて】うん。

【高畑】なんだけどさ、ボールペンに関しては、ノックは最初の1回だけじゃん。

【きだて】そう。ノックの重要度が違うんだよね。ボールペンは頻繁にノックする必要がないから、正直トッププル方式に価値が薄いんだけど、とはいえボールペンの方が軽くノックできて気持ちいいという。

【他故】ボールペンの方は、書くときに1回ノックするだけで済むから、シャープペンと比べるとこれはこれでいいぞって(笑)。

【きだて】これじゃなくてもいいけど、「まあいいだろ」っていう感じなのよ(笑)。

【他故】これじゃなくてもいいけど、これでもいいっていう。

【高畑】だから、コンセプト的にはシャープの感じなのに、ボールペンの方がなんか評価高いじゃんみたいな。

【他故】どっちかというとそう(笑)。

【きだて】あのね、シャープの方は硬い。

【他故】うん、分かる。ノック硬い。

【きだて】指をギュッと締めてから引きつける感じなので、指全体が痛い。

【他故】親指と人さし指の股を固定してからでないと。

【きだて】そうそう。人さし指と中指をギュッと閉じておかないとすっぽ抜けそうになる。変なアールついてるからさ。

【高畑】俺は普通にできてしまったので、何も考えてなかった。

【他故】これは、さすがにグリップがツルツル過ぎるだろう。

【高畑】何だろう?  引き方が違うのかな?

【きだて】文具王はノックする方に持ち方が寄せ過ぎだよ。普通に書いてる持ち方でそのままノックしようとしたら、これ絶対辛いよ。

【高畑】普通に書いてる状態でこうじゃん。だから、俺は普通に書いてるときに、中指を先端の方に引っかけるのね。すごい後ろを持つときもあるんだけど。それで、人さし指は後ろにあるんだけど、持ったままで普通にノックできてしまうので。何だろう、つまんでやる感じじゃなくて、持ってるのをギュッて握ってる感じ。

【きだて】俺なんかそれでやろうとすると、やっぱねすっぽ抜けるんだよ。

【高畑】きだてさんは、やっぱり常に滑る問題が出てくるから。

【きだて】そこかぁ(笑)。

――手汗で(笑)。

【他故】これはでも、他のやつと負荷のかかる場所が違うところがあるじゃん。

【高畑】だから、これは合う・合わないがすごいあるんじゃない。合わない人が合わないのは俺もよく分かる。使ってる人を何人も見てるんだけど、なんか使いあぐねてる人は結構多い。

――ちなみに、私は普通にできました。

【きだて】できた?

【他故】じゃあ、できる人はできるんだ。

【高畑】たまたまなんだろうけど、自分が持ってる持ち方で気にならない人は全然普通に気にならないっていうか。ほら、コクヨが出していた「ミストラル」もここで押すしさ。あとほら、昔オートが中央プッシュのやつを出してたりとか。

【きだて】あったね。

【高畑】これは後ろのノックを前に持ってきただけなので、基本的には全然一緒なんだけど。

【きだて】構造的には後ろのノックを前に持ってきただけなのに、なんでこんなに硬いのかね。個体差とかあるのかな。

【高畑】個体差じゃなくて、多分ノック感が硬く感じるんだよね。多分、ホールドのしにくさからノック感が硬く感じるんじゃないかな。

――指先で操作するのでね。

【他故】ちょっと硬く感じることは間違いないね。

【高畑】普通は、こっち側をこう握っていて、これ全部がノックパーツみたいなものだから、こっちを押してるじゃない。握ってる部分が違うから、普段指で固定してる部分じゃなくてこっちが動くから、なんか気持ち悪いんだよね。

【きだて】多分そういうことだな。……ただ、だからって「ダメだね」って言っちゃうのももったいないんだよ、これ。

【他故】そうそう、それは分かるよ。

【きだて】久々に出た変態ノックじゃん。

【高畑】それだよ、それ。

【他故】そこの価値観はすごいんだよね。

【高畑】ここで俺たちが多様性を認めなければ、シャーペンは全部、オートマチックとフレフレだけになっちゃうよね。

【他故】ははは(笑)。

【きだて】それじゃいかんのよね。もっと色々なノックがあってほしい。

【高畑】かつてカンブリア時代があったわけじゃない。

【きだて】だって、トンボなんかも変なノックを色々と作ってたじゃん。

【高畑】やってた、やってたよ。

【きだて】軸の真ん中でパキッと…。

――「オルノ」ですよね?

【きだて】トンボのが「オルノ」だったっけ?

【高畑】コクヨが「ミストラル」で、トンボが「オルノ」。その辺よりも、ほらサイドノックだってもう絶滅危惧種じゃん。

【きだて】そうなのよ。

【高畑】クリップノックがまだ生きてるけど。トンボがクリップノックを作ってるのは、長い消しゴムを入れてるからだけど、でもほとんどなくなったんじゃない。もうそもそも、ほらサイドノックって、グリップの上にスイッチが付いてるのいっぱいあったじゃない。

【きだて】そもそもサイドノックこそが最適解だと思っていた時期もあったぐらいで。

【高畑】そうそう、親指でサイドノックを押して使ってたわけよ。それこそ、持ち替えいらずで、全然スピーディーだったわけじゃない。誤動作もなく。

【高畑】あれも、いつの間にか姿を消したし。あと昔はさ、オートマチックの中間みたいなやつで、先端プッシュとかあったし。だって三菱なんてさ、先端についてるリングをちょっと指先で弾くと芯が出るとかあったんだよ。

【他故】あった、あった。

【高畑】めっちゃ小っちゃいリングが付いてて、そこを爪先でカチッてやると芯が出るとかさ。

【きだて】ああ、あったなぁ。それ何だっけ?

【高畑】それはね、普通に製図用のシャーペンでね商品名に数字が付いてるんだよ。「uniのNO.5050」みたいな感じで。

【他故】Mナンバーなんだ。

【高畑】あと、プラチナだと「ハヤーイ」とかさ。1回ノックすると、5回まではノックをしなくても芯が出るんだよ。5回目以降にもう1回ノックをすると、またちょっとずつ芯を出してくれるやつ。なんかね、変なのがあったんだよ。色々と模索して。前に調べたんだけど、三菱、パイロット、ゼブラ、トンボ、ぺんてるとかあの辺の会社は、基本的に今は普通のノックとフレフレタイプとオートマチックしかないよ。

【きだて】そうなんですよ。サイドノックが欲しくてすげぇ調べたもん。

【高畑】サイドノックは、もうないと思うよ。たまに中国メーカーがやってたりとかして、あのファンシーなやつに入ってたりするけど、ほとんどないんだよね。

――90年代ぐらいまでは結構やってましたよね。

【高畑】うん、やってた。

【きだて】でも、2000年代入ってもトンボはまだやってたんだよ。

【高畑】あったよ。「モノグラフ」はサイドノックになっててさ。

【他故】そうそう、なってたね。

【高畑】あの後ろを改造しやすいから、あれは良かったんだよ。前に全部メカが入ってるから、後ろに他のものを付けても成立するんだよ。

【他故】後ろにでかい繰り出し消しゴムが付いてるとか、そういうパターンで結構あったよね。

【高畑】そういうのがあったし、シャーペンに時計とかラジオとか、変な別の機能を付けるみたいなのも昔はあったけどさ。まあ、そこら辺が絶滅したのはしょうがないとしてもさ、基本的なノックシステムがほとんどない。あれも見かけなくなったじゃん。トップチャックというか、最後の1㎜まで使えます系のやつ。

【他故】ああ、あんまり見ないね。

【高畑】パイロットもやってたよね。

【他故】「クラッチポイント」っていう名前でやってた。今は高いやつで生き残ってるくらいかなあ。

【高畑】あと、プラチナ万年筆の「ゼロシン」とかさ。ああいうのが全然なくなった。

――「ゼロシン」の名前を聞かなくなりましたね。

【きだて】あれっ、ひょっとして「オ・レーヌ シールド」あたりが最後か?

【高畑】今すごい危惧しているのは、そうやってみんなが効率を求めた結果というか、無難に安心・安全なところを狙った結果、シャーペンのギミックとしては非常に多様性が失われているわけじゃないですか。

【きだて】もちろん、本当に優れて万人が納得の方式に収れんしていくならしょうがないかもだけど、でも軸後ろのノックが最適解とは思えないじゃん。

【高畑】その気持ちは分からなくもない。

【きだて】何でこうなったのかっていうのが、全然分かんないね。コスト的な問題?

【他故】コストね。まあ、コストは分からんでもないけど。

【高畑】ただ単に、他の方式が人気がなかったんじゃない。

【きだて】何か釈然としないなあ。

【高畑】フリフリはさ、あれはあれで中身が動いちゃうからさ。あと、勝手に芯が出ちゃうから。まあ、最近はロックが付いたりしてるけど。そういうのを考えると、サイドノックなり、ボディノックっていうボディが折れるやつとか、可能性はあったと思うんだけど。

【きだて】そうなんだよ。

【高畑】多分、売れてないんじゃない。

【きだて】何かね、無難ななところが残っちゃったなっていうのがね、すっごい嫌。

【他故】嫌(笑)。

【きだて】ぶっちゃけ、これに関しては「お前ら愚民どものせいで」とか思うよ(笑)。キミらがそういう無難な選択をし続けたせいで、サイドノックとかボディノックみたいな面白いのが無くなったんだぞっていう。

【高畑】だからきだてさんは、ジオン公国みたいな話ですよ。なんか「ビグザムみたいなのを作れ」みたいな。

【きだて】そう、「びっくりドッキリメカをもっと作らんかい」って。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】何かね、気持ちは分かる。俺もそういうのが好きだからさ。最近そういうのがない中で、あえてこのトップチャックっていうのが出てきたっていうこと自体は、頭からは否定したくないわけだよ。

【きだて】分かる分かる。

【他故】その通り。

【きだて】何だけど、練りが甘い。

【高畑】練りなのかな、何だろうね。色々と思うね。

【きだて】もうちょっと何とかできたはずだよ。滑りにくくするような方法とか、指をひっかけやすくするようなものが。多分、サンスター文具だから、ちょっとお安くしようと思って、ここにまとまっちゃった感はあるのかもしれないけど。

【高畑】事実お安いからなあ。396円というのは、お安いっちゃお安い(笑)。だからって、これを500円とか600円とかにしてもしょうがないんだろうなって気もちょっとする。

――そうか、ボールペンとシャープペンは、全く同じ値段ですね。

【高畑】そういう意味では、ちょっとクラシックだよね。あの昔と考え方が変わってないっていうか。ボールペンとシャープペンを出すなら値段一緒だろう、みたいな。

【きだて】すごいレガシーなことやってんなあって(笑)。

【高畑】シャープペンでもボールペンでも同じ仕組みっていうのも、まあそこもなんかレガシーな感じがする。

【きだて】その結果、ボールペンとシャープペンの間で変な齟齬ができちゃってる。

――きだてさんは、ボールペンの方はノックしたときに滑らないんですか?

【きだて】ボールペンのノックはね、軽いから全然これでいいんだ。これでいいんだけど、ボールペンのノックは別にこれじゃなくてもいいんだ(笑)。だって、ノックは書き出し書き終わりにしかしないんだから、持ち替えてもいいんだよ。でも、シャープペンはノックのたびに持ち直すのが面倒なわけでしょ。

【高畑】そうだよね。そこだよ。

【きだて】このトッププルというのも、発想としては絶対に間違ってないんだよ。だから、惜しい!っていうね。

【他故】何だろうね。ノックがもっと軽くなればいいのかな。

【きだて】いや、どうなんだろうね。ノックするところの段差を、もうちょっとエッジ立ててやるとか。何なら、ちょっと板かなんかを飛び出させて、そこに指が乗るようにするとかさ。

【高畑】そうすると、書く時にジャマにならないかとか、そのバランスだよね。キッチリしてるから、ここら辺のさこの納め方とかはまあまあキレイ。

【きだて】先端のウニョンってノックで縮むところあるじゃん。あそこの溝に指が当たってたまに嫌な感じになる。

【他故】ここの縮む段差のところね。

【きだて】シャープだとやっぱり回すじゃん。そうするといつの間にかその溝に指が乗ってて、何か嫌な感じになるんだよ。

【他故】俺は、この溝が割と滑り止めとして効いてるけど。

――人によりけりですね。

【高畑】溝で引っかかる感じはあるよ。

【きだて】その辺は、やっぱり色々だな(苦笑)。

【他故】それぞれ過ぎだわ(笑)。

【高畑】だから、評価がめっちゃバラつくじゃん。このバラつき感が、1本化されてめっちゃ売れるっていうことではないので。バラつきで弾かれた人たちはみんな買わないから、そうするとやっぱり、今後の変わり種だね系の機構っていうのが難しくなるっていう。

――サンスター文具は、この後にノックフリーのシャープペンも出しましたからね。

【高畑】「ノクフリー」(記事はこちら)ね。あれはオートマの廉価版で、今までなかったわけじゃないけど、アリな線じゃない。普通に、今あるメインストリームの一つじゃない。だから、別に悪くないじゃない。

【きだて】いいんだけど、サンスター文具がマジメにメインストリームやるなよって。

【高畑】きだてさんの期待しちゃうところがさ(苦笑)。

【きだて】俺の、愛憎入り混じったサンスター文具愛を何とかしてほしい(笑)。

【高畑】だってさ、きだてさんの好きなギミック系を出してくれるところなんてさ、もう最近は少ないんだから。

【きだて】そうなんだよ。

【他故】ほぼないよね。

【高畑】サカモトだって、新会社になってからは大人しいじゃん。

【きだて】もうさ、失敗のないお菓子系ばっかり作っちゃって。

【高畑】テレビ画面を飛び出して、胴上げシーンが飛び出てくるとかさ、ああいうのをまたやってほしいじゃん。

【きだて】ねぇ。本当にね、その辺はどうしようもないので、とりあえず今はサンスターが最後の砦みたいになってるわけですよ。びっくりドッキリメカに関しては。

【高畑】なるほど。

【きだて】なんだけど、サンスターってどうしても学生向けの低コスト物っていう縛りがあるじゃない。それがすごい惜しい。

【高畑】だけど、大人向けに出しても売れるのかね?

【きだて】そうなんだけど、サンスター文具に「1,000円台のシャーペン作ってみ」って言ってあげたいんだよ。

【他故】いや、どうかな?

【高畑】リスクの背負い方だよね。

【きだて】俺が石油王であったなら。

【高畑】だから、きだてさんがめっちゃ稼いで、「俺が売るからOEMで作ってくれ」って言わないと。

【きだて】いや、それをやる権力があるんだったら、俺は最初にゼブラに「ペンポッド」を作ってもらわなきゃだから(こちらを参照)。

――そうだ(笑)。

【きだて】ごめん、「ペンポッド」優先で(笑)。

【他故】「ペンポッド」を復活させないと。

【きだて】そう、まずそこだから。

【高畑】確かに。「ペンポッドを復活させよう」っていうクラウドファンディングをきだてさんがやらないと。

【きだて】うむ。

【高畑】まあ、変わったものを出すっていうのを積極的にやっているサンスターの、いろんな面が出た商品なんじゃないのかなっていう気はするよね。それこそ、「究極のシャーペンを作れ」っていうのか、それともこういうものをポンポン出している機動性を評価するのか、みたいなところがちょっとあって。

【他故】それはそうだね。これについては、発売されるまでにめちゃめちゃワクワクしたもの。「どんなものかなぁ」って。

【高畑】ちょっとワクワクしたね。

【他故】そういうペンはあんまりないよ。

【きだて】いやー、プレスリリース見てワクワクしてた分、触ったときに逆に腹が立ったという。勝手に期待して落差で腹立ててるんだから勝手な話なんだけど(笑)。でも、俺たちはそれだけ楽しみにしてたんだ、というのは分かって欲しい。

【高畑】でもあれだね、ボールペンは普通に書けるね。

【他故】ボールペンは普通だね。

【高畑】めちゃくちゃ高評価でもないけど、普通によく書けるボールペンだなと。

【きだて】相変わらず、サンスターは良いリフィルを探してくるなぁっていう。

【高畑】リフィルメーカーじゃないからね。どこかから買ってきてるんだろうけど、まあ書き心地は普通に良いし。そこでね、このメカだったらシャーペンで盛り上がらなきゃいけないところなんだけど、ボールペンが案外普通に良くって、シャープペンがちょっと重たいっていうところがなんかね。でも、やっぱりこれはシャープペンありきの商品だよなという気はする。

【きだて】それはそうですよ。

【高畑】これでシャープペン出てなかったら意味ないじゃん。

【きだて】本当、ボールペンは可哀想なぐらい無意味だなこれ(笑)。

【高畑】うん、特に意味はないけど。でもさ、令和になってから、日本の文房具ってすごい洗練されたと思うんだよ。平成の終わり頃からの洗練度の高さったら、まあすごいなあとは思うけどさ。でも逆に言うと、ばかばかしい試行錯誤がちょっと少ないなという気はするので。

【きだて】そうだね。

【高畑】そういう意味で、あの変な「ニニピー」のように、「そこ曲げるの?」みたいなのを出してくるとかね。そういうのは、みんなで暖かく応援していかねばならぬジャンルなんではないかなと僕は思うんですけどね。これに関しては、今までなかったノック方式を今出そうっていうところが面白いわけです。

【他故】もちろん、そういうことだね。

【きだて】もうちょっと進化版もやってほしいわけですよ。

【高畑】だから、これ起点でさらにもうちょっと。握り直しをしないで書けるやつ。三菱の「クルトガダイブ」は別として、俺はあんまりオートマチック好きじゃないんだよ。

【きだて】うん、俺もノックしたいんだよ。

【高畑】ペン先が引っかかるのはあまり好きじゃないから、ノックはしたいんだけど。そういう意味で、ノックタイプの色々が出てくるのはまあいいよねっていう感じではあるので。

【きだて】現状、サイドノックが復活してくれたら、それでいいんだけどな。

――何でサイドノックってなくなっちゃったんですかね?

【他故】まあ、人気がないからですよね。

【きだて】作るコストが若干かかるのかなと思って。

【高畑】高級シャープペンはいくらでもあるじゃん。だから、別に値段の問題だけじゃないんじゃない。これまで売ってたのがあるから、別に技術的に難しいってとか、金型がないとかじゃなくて、多分単純にどっと作るほど売れないんじゃないかな。

――サイドノック便利だと思うんだけどな。

【きだて】ねぇ。実際にここ何年か、トンボ鉛筆の人に合うたびに「サイドノック頼みますよ」って言い続けてるんだけどね(笑)。

【高畑】きだてさんのその情熱が通じて、「ZOOM」からサイドノックが出てくれたりとかしたら。

【他故】どんなデザインで?

【高畑】何か1万2,000円ぐらいするサイドノックシャープペンが出てきたら。

【きだて】それでも新しいサイドノックなら俺は買いますよ。でも、そういう情熱が通じるぐらいなら「ペンポット」はとっくに復活してるわ、という。

【高畑】そういうものなんだよ。そこは僕らは、地道に推すしかないんだよ。

【きだて】そうね。

【高畑】今、こういうペンをどんどん出してくるサンスターに、びっくりドッキリメカをもっと出してほしいっていう話だよ。

【きだて】まさにそこなんだけどね。

【高畑】そこだよ。だから単純に、書き味もそうだけどえ、「そんなのもアリなの」みたいなのを世の中に投入する面白さだよね。「ウカンムリです」(こちらを参照)と言っちゃうところだよね。なんか、そういうところがなんかありかなという気がするので。「やめてしまえ」ではないんだよ。そういうところはアリかなという気がするので。

【きだて】そう、やめちゃダメなのよ。

【高畑】もっと詰めて、もっといいものを、このスピリットでやってくれっていう話だよね。

【きだて】まさにこういうこと。

――あれじゃないですか、サンスター文具にサイドノックを作ってもらえばいいじゃないですか?

【高畑】そうだよ。新しい提案として、今ならまたいけるんじゃないかな?

【きだて】今こそサイドノックはアリでしょうよって。逆に「懐かしい」とか、逆に「ありじゃね」みたいな感じで出せれば。

【きだて】だって、今の中高生はサイドノック知らないわけじゃん。

【高畑】そうだね。

【他故】この間の「ピアニッシモ」の復刻はいつだっけ?

――「ピアニッシモ」の復刻は2020年だそうです(記事はこちら)。

【他故】意外と最近でしたね。

【高畑】まあ、「逆に良くない?」みたいなのを、もう1回やるというのはアリかな。

*次回は「ピタン」です。

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プロフィール

高畑 正幸(たかばたけ まさゆき)
文具のとびら編集長。学生時代に「究極の文房具カタログ」を自費出版。「TVチャンピオン」(テレビ東京系列)の「文房具通選手権」では、3連覇を達成した。サンスター文具に入社し商品企画を担当。現在は同社とプロ契約を結び、個人活動も開始。弊社が運営する文房具のWebマガジン「文具のとびら」の編集長も務めている。著書は『究極の文房具カタログ―マストアイテム編―』(ロコモーションパブリッシング)、『究極の文房具ハック』(河出書房新社)、『そこまでやるか! 文具王高畑正幸の最強アイテム完全批評』(日経BP社)、『文具王 高畑正幸セレクション 一度は訪れたい文具店&イチ押し文具』(監修/玄光社)、『究極の文房具カタログ』(河出書房新社)、『文房具語辞典』(誠文堂新光社)と、翻訳を手がけた絵本『えんぴつとケシゴム』(KADOKAWA)。
https://bungu-o.com/


きだて たく

小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。ラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」が好評放送中。ラジオで共演しているふじいなおみさんとのユニット「たこなお文具堂」の著書『文房具屋さん大賞PRESENTS こども文房具 2022』が発売中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/

「ブング・ジャムの文具放談・完全収録版~2022年Bun2大賞を斬る!~」〈前編・後編〉をコンテンツプラットフォームnoteで公開中。

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