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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.56 色にこだわった気になる最新アイテム(その1)

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。

今回は、色にこだわった気になる最新アイテムを紹介します。

第1回目は、カラー芯シャープペン「EMOTT(エモット)pencil」(三菱鉛筆)です。

写真右からきだてさん、他故さん、高畑編集長*2021年11月9日撮影
*鼎談は2021年10月29日にリモートで行われました。

色鉛筆のようなカラー芯シャープペン

三菱.jpgEMOTT(エモット)pencil」(三菱鉛筆) 色鉛筆に近い表現ができるカラー芯シャープペン。0.9㎜の太い径のカラー芯を採用し、描線の発色にすぐれているのが特徴。筆圧をコントロールしやすいので、濃淡を表現しやすい。描線は消しゴムで消せるので、書き直しが可能。耐水性もあり、サインペン「EMOTT(エモット)」と組み合わせて使うこともできる。リフレッシュカラー、トロピカルカラー、ノスタルジックカラーの3種のカラーグループ(各4色+替芯ケース)を用意。税込1,100円。カラー替芯「EMOTT(エモット)pencil 替芯」(替芯・4色×2本入り税込220円)も発売。

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――今回は、色にこだわったものを集めてみました。まあ、我々おじさんには縁遠い商品もありますが(笑)。まずは「エモットpencil」からいきましょう。前の「月刊ブング・ジャム」のときに、文具王がこれを紹介しようか悩んでいましたけど。

【高畑】そうそう。前のテーマは芸術の秋だったんだよね。画材っぽい雰囲気があったので、「エモットpencil」を紹介しようかなと思ったんだけど。なので、今回これを取り上げるのはちょうどいいかなと思います。

【きだて】立ち位置としては画材っぽい……というか、これは画材だよね。

【他故】だって、色鉛筆だものね。

【高畑】画材なのかね? ノート用というか。でも画材か。

【きだて】ノート用には、0.9㎜はちょっと太いと思うんだよ。

【他故】文字を書くにはちょっとね。

【高畑】色を最初から4色に絞って、それを使うと描けるというんだけど。画材というよりは、ノートや手帳に小洒落た感じの描くみたいな。これで万能の風景画は描けないわけじゃん。

【他故】ああ、これじゃあね。

【高畑】CMYKとかの組み合わなら、超絶技巧の点描をすると、印象派みたいな絵が描けるかもしれないけど。

【他故】いやいやいや(苦笑)。

【きだて】面倒くさいわ(笑)。

【高畑】基本、この4色を組み合わせて、絵画的なものというよりは、イラスト的なものという感じなんだろうね。

【他故】そうだろうね。

【高畑】今回、このエモットがシャープペンになったのが、驚きは驚きで。全く同じかたちの台座に立ってるじゃん。一応かたちを揃えてるんだよね。そこがなかなか面白いところだよね。

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――サインペンのエモットと全くかたちが一緒なので、勘違いしちゃいそうですよね。

【高畑】そうそう。サインペンの方も同時に新色を出しているのがややこしくて(こちらを参照)。

【他故】ああ、そうだね。そこがちょっとややこしい。

【高畑】色違いなのかと思ったら、ペンシルはペンシルで別なんだよね。エモットは最初、ペン先がつぶれないサインペンという立ち位置だったけど、今回はそうじゃなくて、最初から色を決め打ちして選んでくれているから、「センスがあろうがなかろうが、それで描くとそれっぽい色になるよペン」みたいな感じで。

【きだて】そうだよね。基本的にはこの4色のコーデがポイントなんだよね。

【高畑】そんな感じがするよね。パッケージにも、そのコーデで描いたイラストがバーンと載っていて。だから、カラーシャープとか細く書けるみたいなところじゃなくて、そういうところなんだろうね。

【他故】「リフレッシュカラー」「トロピカルカラー」「ノスタルジックカラー」という感じに分けている。

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(左から)リフレッシュカラー、トロピカルカラー、ノスタルジックカラー

【高畑】まあ、「何を描いてもノスタルジックになる」というカラーを選んだりしているわけでしょ。何か、「お前らみたいなセンスないやつのために選んでおいたぞ」ということなんでしょ。

【他故】いやいやいや(苦笑)。

【きだて】まあ、俺なんかはそれに「へへーっ!」と従うしかないんですけど。

【高畑】きだてさんは色苦手派だっけ?

【きだて】ほんと色関連はダメなのよ。だって、イロブンのサイトをオレンジ一色にしたのは、色を選ぶ自信がなかったからだもの。

――色物文具コレクターだけど色が苦手(笑)。

【高畑】そうだよ、イロブンの人なのに(笑)。

【きだて】それでオレンジ一色にしたら、「センスある」って言われちゃって、得した気分というか、申し訳ないようなというか。

【他故】引くに引けないやつだよ(笑)。

【高畑】それは全然ラッキーじゃないですか。でも、「そういうもんじゃないの」と思うけど。だから、色をいっぱい使うよりも、4色選んであげた方が失敗しないだろうね。

【他故】そうだね。「パキッとした色塗りになりますよ」とか、そういう感じだものね。

【高畑】できる人はできるという。

【きだて】正直、色は使いすぎるとダメになるじゃん。

【他故】まあ、そうだね。

【きだて】デザイン的にまとまりが保てるのって、せいぜい3色か4色なんだよ。そういう意味で、この4色セットというのは、多分正解だと思うんだけどね。

【他故】うん。

【きだて】それにしても、色の組み合わせが割と面白いなと思って。

【高畑】この間、「この色の組み合わせは最高に決まってるじゃん」ということに気が付いちゃったんだよ。

【他故】何?

【高畑】この「ノスタルジック」の4色って、ディックブルーナなんだよ。

【きだて】あっ、はいはい。そういうことね。言われてみればこれはブルーナカラーだ。

【高畑】ああそうかと思って。この4色って、何を描いてもブルーナだから。ブルーナは、この4色とあと何色かだけであの世界を描いていたわけだからね。

【きだて】白軸にこのカラーだから、特にブルーナだよね。

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「ノスタルジック」で描いた作品例

【高畑】そうそう、そんな気がしたりして。一応、赤系、青系、緑系、黄色系みたいな色になってるんだよね。「リフレッシュ」だけ紫が入っているけど。だから、トーンは違うけど、重要なところは赤系とか、同じ使い方ができるんだよね。

【きだて】ベースカラーは一緒なんだね。

【高畑】手帳なんかをデコるときに、意味合い的にも分けやすいし、そういう使い方もできるようになってますよというところなんだけど。それにしても、エモットと同じ軸でシャープペンを作ってくるとは思わなかったので、なかなかちょっとね。

【他故】これは、めちゃめちゃきれいだよね。

【高畑】サインペンとは違って、5本じゃなくて4本なんだよね。それでシャー芯のケースが入ってるんだよね。「おーなるほど」と思って。

【他故】短いやつね。

【高畑】このシャー芯ケースがかわいいよね。

【他故】これかわいいよね。バラで買うときも、芯はこの組み合わせなんだっけ?

【高畑】そう。4色各2本ずつ入ったのを売ってるんだよ。

【きだて】これに関しては、ちょっと残念というか、「高いわ」っていう。

【高畑】「オレンジだけなくなりました」というときに、オレンジだけ買えないんだよね。

【他故】ああ、そうね。

【きだて】8本入りで税込220円って言うけど、欲しい色だけ買おうとすると、実質2本220円という超高額芯になるんだよ。

【高畑】なるほどね。そういうことなんだよ。だからって、12色をこれだけのために替え芯を用意したら、お店も大変だし、どんなケースに入れるんだ問題もあるし、色々問題なんだよね。結構難しいんだよ。

【きだて】でも、画材としてガーッと塗っていくと考えたら、とんでもない高コストな色鉛筆にじゃない。

【高畑】だから、それよりは手帳とかにイラスト描いたりする方が現実的だよね。これって、昔の使い切りのシャープペンってあったじゃん。繰り出し式のやつとか。今はクツワが「クリクル」を出してるけど、ああいう感じのイメージなんだろうね。それを筆記具としてヘビーに使うとか、画材として面塗りに使うとかというのは実際問題として難しいよねと思う。

【きだて】感覚的に分かってる人なら問題ないだろうけどね。「これでちょっとおしゃれな絵とか描けるかな?」ぐらいで始めたら、金額的にとんでもないことになっちゃう可能性だってあるだろ。

【高畑】シャープ芯だから、結構すり減るしね。

【きだて】この芯はそこそこ柔いので、結構減り早いぞ。

【高畑】これ、発色が案外いいんだよね。

【きだて】ああそうね。

【他故】かなりいいよね。

【きだて】この辺は、カラー芯を色々と作っている三菱だけのことはあるなと思う。こんだけきれいに発色して、それで消しゴムできれいに消えるんだよね。

【高畑】割とそこはしっかりしているなというのはあって。そこは嫌いじゃないんですよね。

【他故】いいよね。

――この間の「ミニスケッチブック」ならちょうどいいんじゃないですか。

【高畑】あのぐらいの大きさならいいんじゃないか。

【他故】私も描いてみましたよ。このぐらいの大きさがちょうどいいですね。

【高畑】そういうのにチマチマ描いていくのにちょうどいいよ。

――そのスケッチブックをセットにすればいいんじゃないですか。

【きだて】三菱とコラボすればいいんだね。

【高畑】そういう意味では、やっぱり手帳とかの限定的な面積の中で使っていくのがいいのかなという感じにはなるな。

【きだて】でも、プレスリリースを見ると、明らかに「画材として使ってくれよ」感が出ているのは、どうしたことか。

【高畑】だから、そこら辺が雰囲気なんだろうな。

【他故】雰囲気なんだろうね。

【高畑】「エモット」という名前からしてそうなんだけど。

【他故】だから、もっと描いてほしいということでしょ。ガリガリ描いている人は、もうちょっとちゃんとした画材を買えばいいけど、そうじゃなくてちょっと描きたいという人がおしゃれな筆記具を使うときに、「おしゃれな繰り出し色鉛筆ですよ」という風に売りたいということなんじゃないの。

【きだて】う~ん。

【他故】この替え芯で何メートル描けるか知らないけど、サインペンの「エモット」1本買って使い捨てになるのと気持ちは変わらないじゃん。

【きだて】まあ、そうなんだけどね。

【他故】こっちは最低でも芯は替えられるから。

【高畑】小分けで芯が欲しいというのはちょっとあるね。

――もうしょうがないから、均等に色を使うように心がけるしか(笑)。

【高畑】そうそう、それはある。これいくらだっけ?

【きだて】1パッケージで税込1,100円。

【他故】結局1本200円でしょ。

【きだて】芯もペンシルも1本200円揃えで。

【他故】こうやって立てておけるのはかわいいと思う。僕は立てておけるのが良いです。

(一同爆笑)

【きだて】立てて置けるってだけで他故さんの点が甘くなるのは、なんとかならんか(笑)。

【他故】でもね、今回このケースで困ったのが、前のエモットのケースにはエモットペンシルが入らないんだよ。

【高畑】そうそう。今回これに合わせてケースの形状を変えているよね。

【他故】下のところは、先のとんがったところが抜けるように穴があいてたりとか形状が違うので、クリックの位置が違うんだよね。あと、ペンは同じかたちにしているけど、持ったときにロゴが逆さまになるのはどうよというのは、僕はすごく気になるんだけど。

【高畑】元々のエモットは、右手で持ったときにロゴがちゃんと見えるように作ったんだけど、スタンドに立てたとき、ペン先の向きが逆なので、立てた状態でロゴの向きを揃えると持ったときに逆向きになっちゃう。

【他故】だから、「エモットペンシル」は、使ってない状態が正しいんだよ。

【高畑】スタンドに立てたときのかたちがちゃんと合ってないとお揃い感が出ないから、描くときは逆向きだよね。これはまあしょうがないよね。

【他故】うむ。

【高畑】芯によって硬さが違っている。トロピカルの赤と水色がめっちゃ柔らかかったりとか。

【他故】水色は柔らかいよね。

【高畑】芯ごとに硬さが微妙に違うんだけど、赤と水色は描きやすいから、これを普通に丸付けペンとして、これはこれで使えるなという感じはする。

【きだて】確かに、そういう使い方はあるかもね。

【高畑】だけど、それで使うと芯がすぐなくなるんだよ。

【他故】まあそうだね。そらそうだ。

【高畑】赤芯なんかは、0.9㎜のは他に売ってないかな?

【他故】0.9のカラー芯ってあったっけ?

【きだて】聞いたことないよ。三菱は出してるのかな?

【他故】三菱のカラー芯は0.5がメインだよね。それで、パイロットが0.7だから。

【高畑】きだてさんが替え芯をケースで10本買って、赤だけのやつとか、青だけのやつとかをメルカリで売るという。

【きだて】そういう商売(笑)。

【高畑】色を揃えたい人はそれを買うとか。

【きだて】パイロットがカラーシャープ出してなかったっけ?

【他故】でも0.7だよ。

――三菱鉛筆のカラー芯は0.5と0.7ですね。

【他故】0.9㎜はノーブランドで検索に引っかかるのがいくつかあるね。あとは、建築用ではいくつかあるみたいだけど。

――三菱的には、0.9のカラー芯を初めて出したということになるんですかね?

【高畑】色も特徴的で、他にはないと思うので、本当にこれ用に作ったんだね。

【きだて】相変わらず、色鉛筆と同じ番号管理でしょ。

【他故】だと思うよ。

【高畑】16とか64とか付いているけど、この芯を他に使うところは多分ないよね。しかも、シャープペンの芯だから、普通の色鉛筆に入っている芯とは、強度的なものも含めて配合が違うのかもしれない。

【きだて】多分、違うような気がする。

【高畑】そう考えると、これだけのためによく芯を作った感じだよね。

【他故】そういう意味ではすごいよね。もっと色を増やしていきたいのか、先が読めない感じはあるけど。

【高畑】うん。

【他故】塗ったときの硬さが違うというのは、イラストで使うときは意外と不便なんだよ。「できれば薄く塗りたいな」というものがガッと塗れちゃったりするので、そこが不安定。僕の個人的な好みでは、肌色に相当する色が入ってないので、ちょっとその辺は欲しかったなと思う。このオレンジはちょっと強い。

【高畑】ペールオレンジが欲しかったという話?

【他故】肌色っぽい色があると、人物画を描くときに楽なので、そういうセットが欲しかったなというのが正直なところ。

【きだて】そういうのよりは、おしゃれイラスト寄りの使わせ方なんだろうね。

【他故】そういう意味では、ガッチリ絵を描くというペンじゃないんですよ。

【高畑】先に描きたいものがあって、そのための色という感じじゃないね。色が先にあって、その色を使って描く何かだよね。

【他故】そうそう。イラストを描きたいなと思ったら、ペールオレンジ的なものが欲しいとか、グレーの階調が欲しいとか、そういう話になってくると思うんだけど、多分そういう発想はないと思うんだよね。

【高畑】そこが、他故さんみたいに先に描きたいものが決まっている人にとってみたら、4色しかないから、何を選んでも何かしら足りないとなるのは仕方がないので。これは、きだてさん的な、「色は自分で選べないけど、何か組み合わせるといいものを選んでおいてくれると嬉しいです」という人が、これにはちょうどいいんじゃないの。

【きだて】最終的には、ぬりえとかその辺に落ち着きそうな気がするんだけどもね。

【他故】細い線を塗らせるぬりえがあるものね。

【きだて】大人のぬりえなんて、この4色だけで塗ったら、相当まとまった感じになると思うけど。

【高畑】そういうことだよね。要は具象的なものではなくて、デザイン的なものとか。風景画ではなくて、幾何学的な模様とかだったり。

【きだて】この4色で上手く塗り分けられれば、アーティスティックな雰囲気になると思うんだよね。

【高畑】それが、ちょっとした作風みたいに見えるのかな。

【きだて】リフレッシュカラーとかだけで塗ったら、鈴木英人っぽくなりましたとか、そんな感じになるんじゃないの?

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リフレッシュカラーで描いた作品例

【他故】なるか?

【きだて】いや、分かんないけど(笑)。でも、全部ノスタルジックカラーで塗ればディックブルーナになるんだから。

【高畑】そうそう。それはそうなんだよ。

【きだて】なんか、そういう提案を三菱が最初にしてくれていたら「ははーん」って思ったんだけど。画材として売ろうとしているところが見えて、その齟齬に混乱しているんだよね。

【高畑】なるほどね。

【きだて】最初に、値札を確認せずに買っちゃって、「あっ高い」と思ったので。

【高畑】ははは(笑)。これ、サインペンのエモットと同じ値段だよね。

【他故】1本あたりは同じだから。

【高畑】同じなんだけど、色鉛筆だと思ったんだね。

【きだて】そう。普通は色鉛筆4本で1,000円はしないでしょ。で、いざ支払いの段でギョッとしちゃったので、「エモットペンシル高いな」という感覚がついちゃったんだよな。

【他故】ああ~。

【高畑】レジで気が付いて、「返します」っていうのも何だしっていう(笑)。

【きだて】とりあえず必要だから、「う~ん高い」と思いながら買いはしたんだけど。こんな気持ちは「磁ケシ」以来。

――「磁ケシ」以来(笑)。

【高畑】そう。「磁ケシ」も案外高いよね。

【きだて】「あれ、磁ケシってこんなに高いんだ」っていう(笑)。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】そういう意味でいうと、替え芯がもうちょい買いやすいかたちだったらよかったけど。

【きだて】そうなのよ。そうであれば、ランニングコスト的にとりあえず「まあ、しょうがないか」で落ち着かせられるんだけど、替え芯がアソートで2色ずつしかないと言われると、「んっ」て詰まるんだよ。

【高畑】これが「アソートで10本ずつ入ってます」と言われたら、「う~ん、まあ使うか」となるんだけど、「2本ずつ」となると、使うときに自分がせこくなることがあるじゃない。色を均等に使おうとか思ったりして。でも、手帳にちょこちょこ書くぐらいだったら、あらかじめセットされている芯3本あれば、案外しばらく使わないで持ってるんだろうなという気はする。

【他故】多分、大きい面を塗らなければね。

【高畑】かなりライトユーザー向けではあるよね。

【他故】そうだね。

――ヘビーユーザーだと、普通に色鉛筆使いますよね。

【他故】まあ、そうですよね。色鉛筆で描こうと思ったら、もっと色数が欲しいですからね。

【高畑】万年筆もそうじゃない。変わった色のインクを使いたいといっても、ペンケースに入れられる万年筆は、せいぜい数本じゃない。そう考えると、これも、ペンケースに入れるにしろ、机の上に置いとくにしろ、「この4本で何でも描いたらいいんじゃない」という人が、それも手帳ぐらいの面積のところにちょこちょこ描いていくんだったら、これでいけるかなという感じだね。

――まあ、これで物足りなくなったら、色鉛筆に行ってくださいという感じじゃないですかね。

【高畑】まあね。

【他故】本当に絵を描きたかったら、他にもたくさんありますよということなんでしょうけど。

【きだて】色鉛筆的な立ち位置なのかしら。

【他故】削らなくていい色鉛筆、というのがメリットといえばメリットなんじゃないか。

【高畑】削らなくていいのは、全然良いよね。

【他故】それで、いつまでも芯が細いというのも良いね。色鉛筆は芯を細くすると折れやすくて、すぐに丸まるじゃない。だから、細く描きたいという人がいれば、それなりに価値はあると思う。

【高畑】あと、消しゴムできれいに消せるというのも、色鉛筆の中では優秀な方だよね。

【他故】優秀な方だよね。これもシャープペンなので、おしりの方に小さい消しゴムが付いているし。

【高畑】そうそう。

【きだて】この消しゴムは思ったより優秀。結構ねばりがあって、色鉛筆に上手くマッチした感じで。

【他故】ちゃんとした消しゴムだよね。

【きだて】その辺はちょっと面白かったけどね。

【高畑】四角いのがかわいいよね。

――四角いとカドで消せますね。

(一同)…。

【きだて】3人ともチョコチョコ描いてたら、話しが進まないじゃないか(笑)。

【高畑】まあ、色鉛筆を中学生以来ずっと使ってない人が大人になって、カラーサインペンは使ってるけど、色鉛筆を削って使ってないよという人は、多分いると思うんだよね。そういう人に対して、サインペンとはまた違う色の発色を楽しんでもらおうと思うと、こういうのはアリはアリなんじゃない。色鉛筆の色の塗り方は、また全然違うからね。

【他故】久しぶりに塗る行為をやってみると、楽しいんだよね。

【高畑】コスパ的には、ヘビーに使おうと考えるから僕やきだてさん的には高いかなと思うところはあるかもしれないけど、まあステキペンとしてはこんな感じなのかな。

【きだて】うん。

【高畑】昔のカラーシャープ芯よりは、書き心地は全然良くなってるんだろうね。昔のは、色が全然出なかった。

【きだて】昔のカラー芯とは、全然違うんだよ。

【高畑】色があんまり出ないし、消しゴムで消せないしというのが、自分の中で刷り込みとしてあるんだけど、今回の「エモットペンシル」は使ってみると、案外きれいに描けるよね。

【きだて】昔のカラー芯って、描いてるとすごい粉が出るか、ベタッとするかの二択だったんだよ。

【他故】ああ、ベタッとしてたよね。

【きだて】粉でるやつは発色しないし、ベタッとするやつは消しゴムで消えないしで、結構大変だったんだけど、そういう意味で、すごいバランスの取れた良いカラー芯だなと思うんだよ。

【高畑】僕や他故さんは、普通の色鉛筆も身近なところに置いているから、それと比較しちゃうんだよね。

【他故】ああ、それはあるね。

【高畑】絵を描くんだったら、それを出してきちゃえばいいじゃんとなるし、同じ1,000円で12色セット買えるじゃん。でも、シャープペンタイプだから使えるという人はいそうな気がする。鉛筆タイプだと、削り器も持ってないし、削ってゴミまで出して使うんだったら、別に使わなくていいやという人はいると思うので。それは、コクヨの「鉛筆シャープ」と近いところかもしれない。

【きだて】はいはい。

【高畑】鉛筆の良さは分かるけど、削るのが面倒くさいし、スタイリッシュに持ちたいしとなると、「鉛筆シャープ」はまさにそんな感じなんじゃない。

【きだて】それはそうだね。

【高畑】「鉛筆シャープ」と並べると、同じ空間に居そうじゃない。

【きだて】よく考えてみたら、色鉛筆で描くのも久々か。シュリシュリと広い面を塗るこの感覚は、長らく味わってなかったよ。

【他故】塗らないよね。でも、塗ってみるとそれなりに楽しかったりするんだよね。

【きだて】それは分かる。広い面を力抜いて塗る感覚を、久々に思い出してやってるよ。こうやって影付けたり、濃淡付けたりしたなぁって。

【高畑】だから、そういうのを思い出して使う分には4色でいいんだろうし、多分このぐらいの芯が入っていてくれて、ちょっと芯交換もできるよっていうぐらいで困らないんじゃないかな。

【きだて】楽しくてずっと面塗りしてたら、だいぶ芯が片減りしたな。

【他故】ははは(笑)。ダメだよ、そおっとやらないと(笑)。

――「クルトガ」が必要ですね(笑)。

【他故】次はクルトガエンジンを積んでもらいましょうか。

【きだて】そうだね。「エモットペンシル クルトガエンジン内蔵」。

【高畑】これ、お気に入りの0.9㎜シャープペンに、このカラー芯が入るんじゃない。

【きだて】うん、そらそうじゃない。

【高畑】そういう使い方ももちろんできるんだろうし。

【きだて】でも、こんだけフラットな、何も凹凸がない軸だからこそ、いろんなところを持って、使い分けができるわけじゃん。

【高畑】大人になってこういうのを使おうかと思うときって、サインペンは持ち慣れているという部分もあるだろうし、あとは単純に「カッコいいから使ってみたい」というのもあるんだろうな。

【他故】あるだろうね。「カッコいい」とか「オシャレ」だとか。「子どもの頃に使っていたような色鉛筆をもう一回買うのもな」と思っていて、「でも、別にプロ用を買う気もないし」っていう、ちょうど間に入ってきたのかもしれないね。

【高畑】ちょっとだけ筆ペン使うのと一緒で、明らかに普通のボールペン使うのと違う感じがするから、見た目にオシャレ感を演出するのにはちょうどいいツールなんじゃないのかな。ノートとかに、こういうのが入っていると、雰囲気が大分変わるからね。前回の“芸術の秋”で出た「絵を描くときの敷居を下げていきましょう」というアイテムの一つなんじゃないかな。

【きだて】うん。

【高畑】まず、ペンケースに入ってなかったら描かないし、まず鉛筆削りが必要な時点でやらないしみたいな人が多いんじゃない。大人だと。

【他故】そうだろうね。まず手に取れるところにないと使わないだろうしね。

【高畑】「鉛筆削りも一緒に買わないといけないのか。それならいいや」みたいになりそうな気がする。本当にお手軽にできそうな感じと、「全然、私絵心がないんですけど」と言いながらも、それっぽくなりそうな感じが救いなんじゃないのかな。

――みなさん気に入ってるみたいですね。

【他故】いや、楽しいですよ。

【高畑】久しぶりにこういう画材があると楽しいね。これはこれで新鮮な書き心地だし、面白いなと思うよ。

【他故】とにかく、手軽に描けるというのがすごく良いと思うので、色を付けてみたいという人は、一つ買ってみてもいいと思いますよ。何を描くかという問題はあると思うけど。

【きだて】でも、「この色の雰囲気好きだな」で買ってみればいいと思うよ。

【高畑】最近流行の、手帳イラストの指南書が出てるじゃん。

【他故】あるね。小さいイラストを描くやつ。

【高畑】そういう本を真似して描く分には、この色数で大丈夫。そういうところから入るんじゃないかな。

*次回は、サンスター文具の色見本帳風シール「iromekuri」を紹介します。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。ラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」が群馬県沼田市のコミュニティFM「FM OZE」で好評放送中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/

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