1. 連載企画
  2. 【連載】月刊ブング・ジャム Vol.53 ブング・ジャムが選んだ2021年上半期ベスト文具(その2)

【連載】月刊ブング・ジャム Vol.53 ブング・ジャムが選んだ2021年上半期ベスト文具(その2)

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。

今回は、ブング・ジャムのみなさんが選んだ2021年上半期のベスト文具を紹介してもらいました。

第2回目は、高畑編集長おすすめの「モノグラフライト」です。

写真左からきだてさん、他故さん、高畑編集長*2021年6月30日撮影
*鼎談は2021年7月20日にリモートで行われました。

使って損なし! 書き味バツグンの極細ボールペン

4.jpgモノグラフライト」(トンボ鉛筆)

『モノグラフライト』を楽天でチェック『モノグラフライト』をAmazonでチェック

――次は高畑編集長ですね。

【高畑】僕は「モノグラフライト」です。トンボ鉛筆のボールペンって、「ZOOM」シリーズとか高級品はあるんだけど、こういう普通に使えるボールペンっていうと、複合ペンの「リポーター」はあるけど、単色でこういう安いペンはしばらくなかったんじゃないかな。

【他故】あんまり記憶がないよね。

【高畑】あんまりイメージなかったんだけど、トンボが久しぶりに出してきた。極細かつ油性のボールペンということで、どんなの出したのかと思って書いてみたら、これまで三菱とかパイロットが極細で出してるけど、それとはまた全然性格が違っていて。僕はこれが思ったより大好きだったので、いいなと思って。

【きだて】俺も、ここ1年で出たボールペンという括りの中では、一番好きかも。

【他故】うん。

【高畑】何だろうな、それこそ製図ペンっぽくて、ペン先がニードルになってるのね。僕は製図ペンタイプが好きなんですよ。シャープペンでいくと、さっきのだと「S30」よりも「S20」の方が好きなので。それで、先端が細くて狙いやすいんだけど、これが案外力をかけても剛性が強くて、しならないんですよ。

【きだて】そのニードル、強いよね。

3-2.jpg【他故】めちゃめちゃ強いよね。

【高畑】割と筆圧をかけてもしならないし、あとこのグリップパターンが最高だと思うんですよ。

【他故】それ、すごいよね。

【高畑】三角形が互い違いになってるんだけど、この三角屋根のグリップがめちゃくちゃ良くて、全然滑らないんですよ。なので、久々に200円以下のクラスで自分的にはかなりヒットした。小っちゃい手帳にちょこちょこ書くのが好きなんですけど、それはどっちかというと刻み付けるように書くボールペンなので。滑らせるというよりは、ガツガツ書いていくのに向いていて、僕は割とそういう書き方をするのが好きなので。小っちゃい文字でいわゆる日本語を楷書で書くみたいな感じと、カツカツカツというのが気持ちいいというのがあって、いいなと思っている。0.38でも油性なのでかなり細く書けるし、そこら辺がいいかなと思います。

【他故】うん。

【高畑】唯一気になるのは、「お前、モノグラフじゃないだろ」っていう。

――そこか(苦笑)。

【高畑】さっきの「S30」が、「お前、Sシリーズじゃないだろ」というのと同じで。

【他故】製図用のSじゃないというのでね(笑)。

【高畑】「モノグラフってシャープペンのブランドじゃなかったのかよ」とすごく思う。当然消しゴムは付いてないし、MONOの3色ストライプだけどボールペンっていうのはちょっと。

【きだて】確かに、アイデンティティはフワフワしてるよね(笑)。

【他故】ねぇ(笑)。

【高畑】意味は分かるのよ。モノグラフというのは、中高生の間でものすごく信頼感のあるブランドなので、そのブランドイメージのままに細いボールペンを作りましたよというところなんで。だから、3回くらい転写された感じ。元々「モノグラフ」というのが、「製図用シャープのイメージで一般筆記にしました」だよね。「製図シャープの良いところを普段のノート作りにもっていきましょうね」と言ってできたのが「モノグラフ」で、そのイメージで「ボールペンにしたらこれだよね」という、もはや元が何だったのか分からなくなってるんだけど(笑)。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】だけど、出来上がったものは、独立した製品としてものすごく良いものに仕上がっているから。

【他故】うん、そうだね。

【きだて】だから、「モノグラフ」の名前は要らなかったんじゃないの。ブランドとしてこういうのを使って売りたいというのはあるんだろうけどさ。

【高畑】だったら、「モノグラフボール」にしておけばいいのにと思ったんだけど、「モノグラフライト」って書いてあるから(笑)。

【他故】「ライト」は違うよな。でも「モノボール」にしちゃうと違うラインアップになっちゃうからね(笑)。

【高畑】そこはあるけどね。あと、強いて言うなら、グリップは最高なんだけど、クリップがちょっと弱いので、メタルのクリップに替えたくなる気分になる。もうちょっとシャープな感じの。

【他故】ああ、はいはい。

【高畑】これ、税込198円だっけ? その値段ならこのままでいいんだけど、300円ぐらいで、グリップはこのままで、クリップのあたりをもうちょっとしっかりした感じで出してくれたら、俺的にはそれで御の字だな。

【他故】ああ分かる。

【高畑】あとは「ZOOM」で、このリフィルとグリップを使って出してほしいという感じかな。

【きだて】「ZOOM」のあのお高い感じに、このグリップが合うかどうかという問題はでかいな(笑)。

【高畑】「ZOOM」も結構幅があるじゃん。だから、一番安いクラスでさ。

【きだて】ああ、そうか。

【高畑】まあ、「ZOOM」がいいかどうか分からないけど、もうちょっとしっかりしたやつで出してほしい。あと、抱きつき型でいいので、メタルのクリップとかを付けて。今のクリップが、ちょっと無理をすると開いて元に戻らなそうなので。ちょっとそこが気になるくらいかな。

【きだて】はいはい。

【高畑】でも、このグリップから前の部分は、最高にカッコいいと思ってるんですよ。すごく使いやすいので。ダークホースというか、書きやすいボールペンが色々と出てきた中で、まずトンボから出てくることすら想像してなかったし。

【きだて】ははは(笑)。

【高畑】だって、トンボはしばらくボールペンやってなかったから。

【他故】まあね。ボールペンのラインアップは減る一方だったからね。

【高畑】修正テープはめっちゃ作ってるのに、ボールペンはあんまりやらないのね。そういう意味では、良いのができたから、ここからまた広がっていくといいのかなという気はするね。

【他故】うん、分かる。

【きだて】正直なところ、トンボ従来のエアータッチインクへの不信感というかさ。俺の好みからは完全に外れてたんだよね。

【高畑】ダマになりやすかったからね。

【きだて】ダマ問題もあるし、筆記感もすごいスリッピーで、抑えの効かないインクという印象があったんだけど。ところが「モノグラフライト」のインクはものすごく良い。

【高畑】まあ、細さもあると思うんだけど、グリップも含めてコントローラブルですごく良い感じはするよ。

【きだて】だから、この中のスプリングレスの機構とかさ、そういうのを含めてすごい良いチューニングがされている感じがするんだよ。

【他故】そうだよね。

【きだて】以前「モノグラフライト」の話をしたときにも言ったと思うんだけど(こちらを参照)、「細く書けるボールペンと細く書きやすいボールペンは違う」という話だよね。

【他故】あ~。

【きだて】最新の0.28低粘度油性を使ったら、いくらでも小さい字は書けるでしょ。でも、比較すると多少字は太るかもだけど、「モノグラフライト」の方が小さい字は書きやすい。

【他故】そうね。書きやすいというのはそうだよね。

【きだて】それはもう圧倒的に感じてる。小さい行にちまちまと文字を埋めていくのは、圧倒的に「モノグラフライト」が楽しい。さっき話が出た、「製図用シャープペンの、きちんと置きたいところにペン先を置ける」という感じと同じで。それこそ、ニードルが5㎜以上あるというのも大きいと思うけどさ。とてもいいよ。

1.jpg【他故】本当に良いよね。

【高畑】普段持っている手帳が小さくて、そこにチョコチョコ書くので。他故さんみたいにマス目に絶対に入れるマンではないんだけど。

【他故】ははは(笑)。罫線でもマス目でも、大きく書きたいときもあれば、きっちり入れたいときもあって、そういうののコントロールがしやすいというのはすごくいいよね。

【きだて】うん。

【他故】M5みたいな小さい手帳に、大きく書くのもいいけど、細かく書きたいなと思ったときに、ちょうどいいぐらいのペンが欲しくて。0.28だと書き出しでペンがこうガッと刺さるような感じがあったりして書けないときがあるのよ。細きゃいいというわけでもない。書きやすさを求めて、ちょうどいい解を持ってきたなというのが「モノグラフライト」だよね。

【高畑】気兼ねなく使える価格でもあるしね。それで、前に「ブルーインクの色が良い」と言ってたのは誰だっけ?

【他故】それは僕だね。

【高畑】このブルー良いよね。すごく好き。

【他故】ブルーはすごく良い。MONOストライプの青がそのまま出ているような印象があってすごく大好きな色なんだよ。

【高畑】うん。

【他故】このグリップでシャープペンシル出ませんかね?

【高畑】ああ~分かる!

【きだて】このグリップ良いよな~。夏場の俺でも安心という(笑)。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】きだてさんが絶賛するグリップなんてそうそうないんだから(笑)。

【きだて】俺が手に持ってニヤッとしている「手汗OKマーク」をあげたいぐらいだよ。「夏場のきだても安心!」って(笑)。

――エコマークみたいな感じで?

【きだて】そうそう。「手汗に優しい」みたいな。

【高畑】そのマークが付いているのが暑苦しいわ(笑)。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】でも、それは分かる。きだてさんが絶賛しているこのグリップは、僕も良いと思うんですよね。決してこれがジャマになるようなボコボコでもないし、シャープな印象なんだけど、すごくよくできてる。

モノグラフグリップ.jpg【きだて】しれっと効くんだよね。不思議な感じ。良いグリップパターンを見つけたなと思って。

【他故】これはいいよね。

【高畑】油性極細ペンの中では、ピーキーな三菱と、いい意味で普通すぎるパイロットがあって、そこに入ってきている新しい感じ。「ああ、これは新しい」という感じがするんだよね。なので、2021年の上半期というところで考えると、新商品感もあったし、これまでにない感もあるし。その前の年は三菱とかでわーっとなってたというのもあるけど、これはいいなと思いますね。

【きだて】スペック的には、三菱の0.28パイロットの0.3の方が目立つわけじゃん。

【他故】そうだね。

【きだて】なので、希求力があるとは言い難いんだけど、とにかく「使ってみてくれよ」という。

【高畑】極細だけでなく、0.5の方も良いと思うんですよ。普通に使いたいんだったら0.5でもいいと思う。記入しなきゃいけない書類は、大体0.5でいけるので。

【他故】そうね。

【高畑】そういうときに、力を入れてそこそこ細く書けるというのは、割といいよね。伝票書いたりとか、役所の書類を書いたりとか、コロナワクチンの予診票を書いたりとかね。

――このご時世なので。

【高畑】そうですね。とにかくおすすめです。

*次回は「パタスタ」です。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。ラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」が群馬県沼田市のコミュニティFM「FM OZE」で好評放送中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


*このほか、ブング・ジャム名義による著書として『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)と、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。

「ブング・ジャムの文具放談・完全収録版~2020年Bun2大賞を斬る!~」をnoteで有料公開中!!

【文具のとびら】が気に入ったらいいね!しよう