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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.45 ブング・ジャムの2020年ベストバイ文具(その3)
本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回はブング・ジャムのみなさんの2020年ベストバイ文具を紹介してもらいます。
第3回目は文具王・高畑編集長のベストバイ文具「プッシュカット」です。
(写真左から高畑編集長、他故さん、きだてさん) *2020年6月25日撮影
*今回の鼎談は11月24日にリモートで行いました。
片手で使えて超便利!
「プッシュカット」(ニチバン)
――最後は高畑編集長ですね。
【高畑】きだてさんは、「ダンボールカッター」を自宅に三つ要ると言っているわけじゃないですか。でも、開けるものはどれもダンボールなので、一緒なんですよ。だから、それ1個あったら、どんなダンボールでも開けられるわけです。で、僕は「プッシュカット」なんですけど、これが本当に良かった。
【他故】うん。
【高畑】マスキングテープも入れられる、両面テープも入れられるわけじゃないですか。これは2個要るじゃん。マスキングテープと両面テープは別ものだから。
「ナイスタック プッシュカット」(左)と「マスキングテープ プッシュカット」
【他故】ああ、それは2個だね。
【高畑】これ、どっちも良いんだよ。こんなに簡単に両面テープが切れる道具って他になくてさ。これ、両面テープ使いにめちゃくちゃ使ってます。
【きだて】両面テープをすごく小さく切るのって、すげー面倒くさいじゃん。
【他故】面倒くさいね。
【きだて】台紙は硬いし、テープ自体はうにょって伸びるしで。
【他故】そうそう。テープに付いている刃で切るのは面倒なんだよね(苦笑)。
【高畑】テープを持ってはさみで切ったら、はさみの方にテープが付いちゃったりするじゃない。
【きだて】そうそう(笑)。
【高畑】台紙からはがしたときに、あの薄いテープが指に付いちゃったりして、本当にイライラするんですよ。両面テープを切る道具としては、ベストだと思うんですよ。
【他故】うん。
【高畑】しかも今回は、まあ本体は同じなんだけど、マスキングテープも使えるじゃないですか。だから、両面テープ入れておく用と、マスキングテープ入れておく用の2個が要るじゃないですか。
――はい。
【高畑】それで、YouTubeの動画を撮影するときに、色々とあって名前を隠したりする必要があったりするので、黒のマスキングテープが要るんですよ。
【他故】はいはい。
【高畑】黒のマスキングテープは全然用途が違うんですよ。これは、動画の中ではがきなんかを紹介するときに、個人情報のところは消さなきゃいけないので。これは確実に消せるし、後ではがせるので、はがきの宛名を消すのに重宝してるんですよ。しかも、真っ直ぐ切れるから。手でちぎると汚いじゃん。
【きだて】見た目がどうしてもね。
【高畑】この黒いマスキングテープ用のも要るじゃん。あともちろん、メンディングテープも使えるわけだよ。
【他故】ははは(笑)。
【高畑】いわゆる透明テープにも使えるわけですよ。これは、マスキングテープもそうなんだけど、指紋を付けずに切れるし、真っ直ぐ切れる。こういうテープって、端っこを持ったときによれるのが嫌なんですね。さらに、これはヤマトの「メモックロールテープ」が入るんだよ。これはびっくりしたんだけどさ。
【きだて】お~(笑)。
【高畑】「メモックロールテープ」は、のりがちょっと弱いから、他のみたいに先が1.2㎝出ないのね。どちらかというと、出すときに空すべりしちゃうので、手で引っ張って出すんだけど、「メモックロールテープ」もいけるわけですよ。だから、これで「メモックロールテープ」用も要るじゃない。ここまでくると、元から入っていた青と一番よく使う3Mの黄色のマスキングテープも入れて、今手元に6個あるんだよ。
【きだて】買ったねー(笑)。
【他故】わはは(笑)。
【高畑】これを、100円ショップで買ってきたケースに入れて、並べて置いてあるんだよね。
【きだて】そのケースに入れると、どれがどれだか分かんなくね?
【他故】ああ、底が見えるんだ。
【高畑】そうそう、見えるの。だから、自分の中では使い分けできるようになってて、どれがどれだかすぐに分かるようになっている。それで、これ立てて置いておけるんだよね。これも結構重要で。
【他故】うん。
【高畑】だから、全部これにしたの。
【きだて】ニチバンは、メンディングテープに使うなと言っていたけどね。
【高畑】だから、これは完全に自己責任だから。
【他故】まあそうね。
【高畑】メンディングテープも、テープによるから。テープののりとかが、ローラーのところでうまく作用しないと、すべっちゃったりするし。あとは、のりのベタベタがくっ付いちゃったりする可能性もあるので、メーカー推奨は、標準のマスキングテープと、ニチバンの両面テープ。「メモックロールテープ」が推奨されていないのは分かるんですよ。ちょっとすべっちゃって、あんまり出てこないんだけど、「メモックロールテープ」の透明ケースに入れたままで、自分の手で切ってギザギザになるより、断然こっちの方がきれいに切れるんですよ。
【きだて】「メモックロールテープ」は、話を聞いてみて俺も真似しようと思った(笑)。
【他故】「メモックロールテープ」は確かにいいね。
【高畑】僕はちょっと特殊な使い方をしているけど、「メモックロールテープ」のこの帯状のふせんをよく使うんですよ。手帳を色々と試し書きするのに使うんだけど、そのマスキング用に使ってるので。
――はい。
【高畑】模型作りの人がマスキングテープをよく使ってるんだけど、端っこをロールからはがすときに、爪で引っかけると、そこがちょっとよれるじゃん。そこから、塗装のスプレーが染み出しちゃうんだよ。
【きだて】そう、染みるのよ。
【高畑】マスキングテープは、絶対に手でよれよれにしちゃいけないんだよね。だから真っ直ぐ切りたいし。というところでいくと、これって、みんなが絶賛するだけはあるんですよね。
――なるほど。
【高畑】案外、色んなテープに対応できるというのが良いところ。普通のテープディスペンサーでもいいんだけど、あれを何個も置けないじゃない。僕にとってこの「プッシュカット」は、ベストバイというか、「一番いっぱいバイ」なんですよ。
【他故】ははは(笑)。
【きだて】なるほどね(笑)。
【高畑】“Best”じゃなくて“Most”みたいな。
【他故】「めっちゃバイ」だ(笑)。
【高畑】そう、一番買ったアイテムみたいな感じで。だから、きだてさんの「ダンボールカッター」の話を聞いて、「そんなにいらんだろ」と言っていたのが前フリみたいな状況で、実は俺はもっと買っていたという。
【きだて】ちくしょう! 踏み石に使われた(笑)。
――ふふふ(笑)。
【高畑】さすがにここまではと思うけど、テープの種類ごとに入れて置いておくと、すぐに出せるというのが気持ちよくてさ。
【他故】でも、これいいな。
【高畑】いいんですよ。こんなものがいくつあっても困りませんからね。
(一同爆笑)
【高畑】知っている人は知っているんだけど、これは実はリニューアル版で、9年前だっけ?
――2011年に販売終了になってますよ。
【高畑】だから9年前だね。そのときに一度販売終了になっていて、久々の復活。実は、ちょっとだけかたちが変わったんだけど、プッシュじゃなくてスライドだったカッターがあったんだよね。
【きだて】前のはスライダーを親指で引いてテープを切る方式だったんだけど、あの動作がちょっと不自然だったのよ。何度もカットしてると親指の筋がつってくるぐらいで。やっぱりボタン押して切る方が圧倒的に楽だね。ボタン自体は重たいけど。
【他故】でも、本当に楽だよ。
【高畑】あとテープが、前は12㎜だったかな。
【きだて】12㎜だよ。
【高畑】ちょっと特殊なテープだったんだけど、今度は15㎜になったから。普通に売っている小巻のテープが、ほぼ合うんだよね。これはすごい良い。マスキングテープも、普通に売っているマスキングテープがほぼほぼ入るので。もちろん、純正のテープがベストなんだけど、他社のマスキングテープでも。中には、若干粘着が弱くて上手く回らないのもあるけど。
【きだて】塗装用じゃないおしゃれマステだと、粘着力がやや足りないんだよね。
【高畑】粘着力とテープのコシみたいなののバランスらしいんだけど。でもこれは、メインで使っているマスキングテープとかはこれに入れておくと、めちゃめちゃはかどるよ。
【きだて】前のスライダー版はドラパスからもOEMが出てて、商品名が「おもしろ切った貼った」だったんだよね。なんで、未だに見る度に思い出して軽く笑っちゃうんですけども(笑)。
【他故】ドラパス版(笑)。
【きだて】これは、元々韓国のだっけ?
【高畑】韓国のものがいろんなところにOEMで提供していて、今は何でやらなくなったのかは分からないけど、少なくともそこから独立したかたちでニチバンが今回出したということなので。そこには抵触しないかたちでリニューアルしているので、微妙に細かいところが違ったりしている。あと、9年の歳月がかかったというのは、特許的な理由があると思う。
【きだて】まあ、リニューアルしてくれたお陰で、工作ライフが楽になるというか、すごくいいやつですよ。
【他故】ねえ。本当にいいよね。
【高畑】これは、知っている人は、ずっと待ってたんだよね。ニチバンの人も言ってたけど、毎年何十件か問合せが来てたんだって。出せば喜んでもらえるという状況で出してくれたので、これは待望のというか、ありがたいやつですね。きだてさんも言ってるけど、器用じゃない人ほど、こういうのを使って真っ直ぐ切ったらきれいに貼れるよ。
【きだて】そうなのよ。
【高畑】特に、両面テープって、あのケースから上手に切るのって、結構難しいんだよ。普通の人がやろうと思うと。
【他故】できない、できない。
【きだて】ただでさえ、「ナイスタック」は台紙が硬いからね。
【高畑】一つ誤解があったのは、俺はあのギザギザが付いているからはがしやすいと思ってたの。
【他故】ああ、はく離紙をね。
【高畑】あれ上手くはがせないじゃん。下だけを残して、上だけはがすのって、難しくて両方はがれちゃったりして上手くはがせない。あれをはがすためには、ギザギザがある方がいいんだと思っていたんだけど、正直真っ直ぐ切ったら、真っ直ぐの方がはがしやすいことが分かった。
【きだて】その方が、粘着の面積が少なくなるのかね。
【高畑】噛み合うところがないからかね。
【きだて】確かに、真っ直ぐ切った方が、ペロンとはがれやすいと思う。
【高畑】それで、めっちゃ快適になったという。
【他故】そうそう。
【高畑】他故さんが早速「メモックロールテープ」を入れてみてるよ。若干出が悪いでしょ。
【他故】でもね、「テープノフセン」の方だとよく出るよ。
【きだて】本当に?
【他故】うん。ほら、めっちゃよく出るよ。
【きだて】何だろう、テープのコシもあるのかな。
【他故】そうだね、コシかもしれないね。
【きだて】色んな要素がからみあってる感じだな。
【高畑】その辺は、自分で調整して下さいという感じなんだけど、色々と試してみるといいよ。お気に入りの小巻テープが、これで生きてくるんだよ。
【きだて】色々と試してみたくなるよね。
【高畑】もちろん、全部使える保証はしないけど、色々とやるとテープの使い分けができていいよという感じですね。
【きだて】そうやってケースに立てて置いておくのいいな。
【高畑】案外いいよ。こうやって並べておくのが好きなので。ちょっとやり過ぎたかなという反省もなくはないけど。
【他故】ふふふ(笑)。
【きだて】パーマセルの小巻ってないんだっけ?あるなら入れて使いたいよな。
【高畑】ないよ。だから、その代わりに黒のマスキングテープなんだよ。ちょっと質は違うんだけど、撮影のときにジャマにならないテープとして黒は使えるので。
――なるほど。
【高畑】とにかく、今年いっぱい買った商品ということで。
【他故】ははは(笑)。
【高畑】そのくらい、物としても僕は大好きなのですごくいいですよ。
――これ、すごく売れてますよね。出荷停止になるくらいで。
【他故】一時そうなりましたよね。
――もう今は出荷再開になりましたが。
【高畑】モデラー界隈がすごい騒いでるから。
プラモデルの塗装マスキングに
【きだて】あとは、塗装業者の人がだいぶ待ってたみたいだからね。それもあるんじゃない。
【他故】そうね。
【高畑】プロのね。それもあるんだよね。
――それにしても、一人で6個も持っている人がいるとは思わなかったので、驚きました(笑)。
プロフィール
きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/
*このほか、ブング・ジャム名義による著書として『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)と、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。
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