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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.38 まだまだあります!注目筆記具大集合!!(その3)

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、注目筆記具を取り上げました。

第3回目はプラチナ万年筆のノック式万年筆「キュリダス」です。

写真右から他故さん、高畑編集長、きだてさん *2019年12月撮影

*今回の鼎談はリモートで行いました。

異色のノック式万年筆

1.jpgキュリダス」(プラチナ万年筆) 1965年に同社初のノック式万年筆「プラチナ ノック」を発売して以来、55年ぶりに最新技術のもとノック式万年筆を開発。ペン先収納時の気密空間の最小化とシール部分の素材選定により気密性を高めインクの乾燥を防ぎ、いつでもさらっと書き出せる。また、ペン先の出る長さを十分に確保し、クリップの取付位置を工夫して持ち手の自由度を高めて、書きやすさも追求した。ペンポイントは極細も用意して手帳への書き込みもしやすくなっている。税抜7,000円。

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――最後は「キュリダス」ですね。ノック式万年筆。ちょっと当初より発売日が延期になりましたけど、もうちゃんと売ってますね。

【高畑】何があったのかはよく分からないですけど、先行で販売したやつがすごい売れちゃって大変だったみたいですよ。

【他故】ねえ。

――万年筆としてはかなり反響が大きいですね。

【高畑】そうですね。これも何か、新世代感はあるよね。とりあえず、これまでのあれこれを放っておいて作りました感はすごいあるので。何か、いい意味で万年筆らしくないというか。

【きだて】実際に、気軽に使えるという点では、まあ大したものだよね。ノック式にプラスして、見た目がさオール樹脂で高級感がないというのも、気軽に使えるという感じでは寄与しているんだよね。

――まあ、そうですね。

【高畑】これまでの筆記具のどれとも違う感はあって。既存の万年筆と似てないというのもあるけど、じゃあボールペンと似ているのかというと、そうでもない気がするし。強いて言えば、ノック式の「マッキー」みたいな感じなんだけど、マッキーよりは高級感があってそれっぽい気がしないし。だから、新ジャンル感はある気がしますな。

【きだて】う~ん。

【高畑】これ、ちょっと長いよね。

【他故】うん、長い。

【高畑】メカのせい、というのはあるけどさ。

【きだて】ほぼ、削ってない鉛筆と同じ長さかな。18㎝とかそれくらいあるのかな。

【他故】そうか、そんなに長いか。

【高畑】それでかつちょっと太いからさ、迫力はあるよね。

【他故】うん、あるある。

【きだて】大分ボリュームが出てるというか。

【高畑】これ、最初から見たときからずっと思ってるんだけど、電子タバコにしか見えないんだけど(笑)。

【きだて】まあまあまあ(笑)。こう持って吸っちゃう感じの。

【高畑】ノックの中に何か入れておいたら、いい感じなんじゃないの?

【他故】ノックの中?

【高畑】中がからっぽだから、何か入れられるんじゃないの。

【きだて】いい香りのする何かを入れておけばいいのかな。

【高畑】「これが万年筆か」という感じがすごくあって、なかなか面白い。ギミックが好きな僕としては、これは中々楽しめますけどね。

【きだて】このノックの動く感じとか、いろいろと見ていると飽きないんで。個人的には、透明一択かなと思ってるんですけど。

【他故】あ~、中が見えるからね。

【高畑】緑色の軸もきれいだよね。

【他故】何かの記事で読んだら、緑が一番人気と書いてありましたよ。

――メーカーの人も、その色が売れていると言ってましたよ。

【高畑】メカが見たいというよりか、見た目の全体のバランスでいうとそうなるのかな。

――まあ、その色は今流行ってますからね。

【高畑】でも、中のフタが開いて出てくるところとかは、クリアだとよく見えるものね。

【他故】うん、かっこいい。

【きだて】ただ、この記事を書くときに、色々と面倒くさいんですよ。「ここをこう開けて」とか、一々言葉で説明するのが長い。

【他故】アクションが多いからね。

【高畑】それもそうだけど、初めての人に説明するのが長いんだよね。インクの入れ方が分かりづらいよね。

【きだて】そうそう。注意事項説明しているだけで、何百文字書いてんだよ俺はっていう感じになっちゃう。

【他故】ははは(笑)。

――インクカートリッジとかコンバーターを付けるのに結構手間がかかりますね(こちらの記事を参照)。

【高畑】無理くり引っ張ると壊れるからね。そこが気になるね。

【きだて】世の中には、どう動くのか見ただけで分からない人って、結構いるじゃない。

【他故】いるいる。

【きだて】「ここにヒンジが付いているだろ、ここが動くの分かってるんだろ」って言ってるのに全然分からない人とかさ。そういう人には、これインク交換すら無理だと思うんだよ。

【高畑】店頭の人にとってみたら、説明が大変かなという気がするけどね。

【他故】私、丸善で買ったときに、すごいレクチャーされましたもの。「ここをこう開けてですね」みたいな(笑)。

【きだて】それは要ると思うよ。

【高畑】あとは、クリップ外せるというのも、なかなか分かったような分からないようなね。クリップが外せるのはなかなか面白いんだけど、気をつけて外さないといけないんで。

【きだて】クリップの外し方が分からなかったので、文具王の動画で学びました(笑)。

【高畑】いや~、そういう人がいるんじゃないかとは思います。動画が案外見られているので(笑)。

【きだて】うん、助かったよ。

【高畑】あとはね、これクリップが前に付いていて特殊じゃん。ジャマな人は外すこともできるけど。それで、先端にちょっと出ている部分があるじゃん。フタが開くところ。

【他故】先端の下側のところね。

キュリダス.jpg

【高畑】僕は万年筆を後ろの方を持つので、割と平気なんだけど、きだてさんって前持ちじゃない。

【きだて】そう。だから、俺は中指の先端がちょい引っかかるのよ。

【高畑】どう、それは?

【きだて】本当は削り落としたいくらい。

【高畑】削り落としても、中からパーツが出てくるからね。

【きだて】結局ジャマにはなるので、なかなか難しい。だから、後ろの方を意識して持つようにはしてるけどね。

【高畑】僕は普通に持てるけど、人によるなと思って。クリップは外せるんだけど、先端のは外せないから、それは気になるなと思って。

【きだて】そうそう。

【高畑】ただね、書き心地としてはね、特にFとEFがめちゃくちゃ書き心地がいいなと思っていて。スチールニブの万年筆も、年々良くなってるんだろうなという気はするんだよ。

【他故】うん、なってる。

【高畑】「プロシオン」とか使ってるけど、全然「プロシオン」に負けてないよね。

【他故】負けてないよ、すごくいい。

【きだて】あと、「キャップレス」で微妙に苦手なのは、ニブが全部出てないので、何となく視界が悪いところがあるんだけどさ。

【他故】「キャップレス」は、それだけ本体が小さいからね。

【きだて】これは完全に出るじゃない。そういう意味で、スッキリするなというのもある。書き味ではなく、使い心地の点でいうと。

【高畑】でも、それも大事なんじゃない。見やすいってすごく大事なんじゃない。その代わり、「キャップレス」の方は“デシモ”みたいに細く作れるじゃん。そこは「キャップレス」の強みではあるよね。まあ、本体の持ち心地はどの辺が好きかというのはあるけどね。

【きだて】これ、値段的な部分ではどう? 7,000円という値段は。

【高畑】僕はアリだけど、安いかといったら安くはないな。万年筆好きな人には全然OKだと思うんだけど。これを使ってほしい人って、多分現役バリバリの人じゃない。そう考えると、5,000は切りたかったなという気はする。

【きだて】そうね。初心者が「えいっ」って買えるお値段ではなかった。

【高畑】「プロシオン」と比べちゃうじゃん。

――「プロシオン」は5,000円ですものね。

【高畑】「プロシオン」もモノとして高いとは思わないんだけど、ただ入門用として5,000円はそれなりにハードルがあると思うけど、7,000円というのはもう1個上になるから。中が複雑だから、しょうがないとは思うんだけどね。

【他故】でも、5,000円で作れるようには見えないな。こんだけ複雑になっちゃうと。

――パーツも多そうだし。

【高畑】だから、自分としては高いとは思わないんだけど、120円のボールペンとか見てるからさ。

【他故】ははは(笑)。

【きだて】やっぱり、「ノック式だから、ボールペンの代わりになるよ」とは気軽に言えないんだよね、この値段は。

【高畑】そうかもしれない。

【きだて】万年筆が趣味の道具というのを超えられないのは、値段の部分が大きいじゃない。それを思うと、どの層にアピールするのかなと、気にはなってたんだよ。そりゃ、「キャップレス」よりは大分安くはなるじゃない。

――まあ、向こうは金ペンですからね。

【高畑】そう、金ペンと比べてもしょうがないところだし、「キャップレス」は見た目にも高級感ですよというのを出しているから、1万円ギフトのところじゃん。

【きだて】そうそう。

【高畑】これはちょっと違うよね。僕も、今年大学入ったような人に、「じゃあ、万年筆を始めてみたまえ」といったときに、これを勧めるかというと、ちょっと特殊過ぎるかなという気はする。

【他故】そうね。それはそう思う。

【きだて】特殊過ぎるし、ギフトとしての高級感という点でもちょい難しいんだよね。

【高畑】それだと、初心者向けとして1つ下で「プロシオン」にするか、ギフトとして1つ上で「キャップレス」にするかだよ。これは、やはり自分買いなのかなという気はするんだよね。

――先行販売で品薄になるほど売れたというのは、それだけ万年筆好きの人が買っていったということですかね。

【他故】それは好きな人でしょうね。

【高畑】初回に飛びついた人は、どうみても万年筆好きの人だと思うんですよ。もうすでに何本も万年筆持っている人だと思うんだよね。

【きだて】一般の人が飛びつくには、どうしてもハードルは高いよな。

【高畑】だから、位置付けが難しいっちゃ難しいね。

【きだて】う~ん。俺も、かなり好きな万年筆ではあるけど、どう勧めていいかというと結構悩むんだよね。誰に勧めていいかが分からないのと、どうすすめていいのかが分からない。でも、すすめなくても、欲しい人は買っちゃってるだろうし。なので、わりと扱いに困ってるというのが正直なとこ。

【高畑】プラチナだと「プレピー」から入って、「プレジール」へ行って、「プロシオン」へ行って、そして「センチュリー」へという流れは何か分かるじゃん。

【きだて】順当な出世魚みたいな感じで。

【高畑】出世の仕方は何となく分かってるんだけど、でもさ、「プレピー」から「プレジール」とか飛ばして「キュリダス」だとちょっと遠いよね。

【きだて】幅がね。

――今Amazonを見ていたら、極細がかなり品薄な感じですね(*2020年4月24日の情報です)。

【高畑】これ、極細は本当に使いやすいよ。インクフローがとても良い感じで、細いけどあまりインクが詰まらないですね。本体が太いのもあるかもしれないですけど、力入れずに普通に書けるから、これはいいですよ。ギミックとかを一旦忘れて、普通に書いたら、良いペンだよね。

【きだて】構造的に重量バランスどうかなと思ったんだけど、ノックしきって書くと、気持ちよく万年筆のバランスになるんだよな。不思議と。

【高畑】それは分かる。そんな感じ。

【きだて】だから、すごい気を遣って作ってるんだというのは分かるんだ。

【高畑】今、世界的にみても、ノック式の万年筆って、基本的には「キャップレス」とこれしかないわけですよ。

【他故】うん。

【高畑】その中で、「キャップレス」はペン先でフタを開けて出てくるというのと、中の仕組みがメタルでできているんだけど、「キュリダス」はそこをあえて軟質樹脂を使って密閉性を上げるとか、ペン先が当たらないようにするとか、そういうところが実はよく考えて作られている。これ「キャップレス」がベンチマークだからさ、そこで「自分たちはこうしたい」という意志がすごくよく分かるかたちでできあがっているので、そこは面白い気はするけどね。

3.jpg

【きだて】ノックの部分の細かい構造はよくできているのに、気密に関しては樹脂の弾力で密閉というプリミティブな解決をするとかさ。ほんと面白い。

【高畑】そこで割り切っちゃうのがすごいじゃん。「柔らかい樹脂を使っちゃえ」というのは、高級ペンではあまりやらないじゃん。

【他故】やらないね。

【きだて】なかなかできることじゃないから、作った人は偉いなと思うよ。結構柔軟に作ったなというのが分かるから。

【高畑】面白いよ。こんなの出てくるんだという驚き感はすごくあったな。

――インクの気密性は高いんですかね。

【高畑】ということにはなってる。

【きだて】プラチナだから、スリップシール機構の性能を期待しちゃうけど、ノック式だからそれは無理じゃん。

【他故】まあね。

【高畑】ノック式であることを考えると、全然よくできているし、もっとスカスカになっちゃうところを抑えてはいると思う。「プレピー」のようにはいかないけど。

【きだて】やっぱスリップシールはすごいんだなという話ではあるよね。

【高畑】バネで押さえつけているのはダテじゃない感じはあるよ。

【きだて】万年筆といえば他故さんじゃん。もっと語ることはないの?

【他故】個人的に好きなのは、カバーをつけたままでインクの残量がはっきり見えるという工夫。

【高畑】なるほど。窓が付いているのね。

【他故】「キャップレス」だとメタルのカバーがかかっちゃうから、どれくらい入っているかが分からない。

【きだて】そうだよね。

【他故】これだと、カバーをかけた状態でもはっきりと残量が見えるのね。そこら辺がちゃんと分かってやってるんだなと思う。

【きだて】分解するのが面倒くさいだけで、その辺はよくできているんだよね。

【他故】うん、すごいよくできている。

【高畑】書き味はどうですか、他故さん的には?

【他故】僕はMしか持ってないんだけど、Mはすごくいいです。このMだったら、万人に勧められるね。これはすごくいい白ペン。

【きだて】全体的にヘンなクセがないというのは言えるよね。EFからMまで。

【他故】うん。すごくよくできてる。

【高畑】楽に書けるからいいと思いますよ。あと、書いていて分かったのは、パイロットのインクより、プラチナのインクの方が裏抜けしにくいので、手帳には向いているね。あとは、オリジナルのインクとの相性もあるし、普通にインクカートリッジで使うといいよ。

――ほう。

【高畑】もちろん、コンバーターで好きなインクを入れて趣味で使うのは全然アリなんだけど、「普段使ってください」というところでいうと、普通にカートリッジのインクを入れて使ってくれてもいいよという感じはする。

――そうですね。持ち歩くことを考えると、カートリッジの方がいいですよね。

【高畑】インクなくなったら、カートリッジをポンポン交換すればいいから、これはボールペンみたいに使ってくれたらいいんじゃないのかな。

【他故】うん。

【高畑】俺は今、これを普段使いしているんだけど、案外カートリッジがいいなという気がする。1本はカートリッジで、もう1本はコンバーターで使ってるんだけど、カートリッジの便利さを久しぶりに感じた。

【他故】ふふふ(笑)。

【高畑】何か、最近はコンバーターを使わないと通じゃないみたいな感じがあるじゃない。

【きだて】インク沼ってだいたいコンバーター前提の話だから。

【高畑】それを楽しむのは全然いいんだけど、普段から気軽に使うことを考えたら、カートリッジを挿して使うのはアリだなと思う。たまにはこういうのもいいかなと思って。

【他故】それはすごくよく分かるよ。

【高畑】カートリッジで使うと、扱いもすごく楽だしね。交換も楽だし。

【他故】プラチナのカートリッジは、中に金属の玉が入っていて、それがカチカチいうのが楽しくって。

【きだて】そこかい(笑)。

【高畑】ラムネ玉ね。インクが後ろに溜まらないように、ちゃんとあれで撹拌してくれるんだよね。

【他故】そうそう。

【高畑】久しぶりにプラチナのカートリッジインクを使って、これはこれでいいなと思って。しばらくメインで使っていて、いつもポケットに入れてるんですよ。なかなかいいなと僕は思ってますよ。

――プラチナは最近、万年筆に意欲的ですよね。

【高畑】いいですよね。

――「プロシオン」も文具大賞を取ったし。

【きだて】何か勢いづいて、いろいろとやろうとしているし、いいよね。

【他故】うん。

――インク沼とかありますけど、こうやって万年筆もいろいろと出てくると、もっと盛り上がるでしょうね。

【高畑】万年筆メーカーがこうやって新しいことがやれるようになってきたのは、ブームのおかげだとは思うんですよ。

【きだて】そらそうだ。

【高畑】でも、僕が「キュリダス」を好きなのは、いわゆる万年筆にとらわれないところなんだと思いますね。

【他故】あ~。

【高畑】万年筆のある定石みたいな部分を、全然ほったらかして作っている感じがすごくいい。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】万年筆メーカーなので、すごく良く書けるようにしているのはさすがなんだけど、デザインとか、クリップの付き方とか、フタの閉め方とか、万年筆のオールドファンからしてみれば「こんなの出たの」となるぐらいで、そういう意味では、世界で最も先進的な感じなんじゃないですか。今のところは。

【他故】うむ。

【高畑】海外メーカーも新作出すけどさ、こんな新しいことをやってきているところはないわけですよ。

【きだて】まあ、台湾の方ぐらいかな。

【高畑】「ツイスビー」がちょっと面白いけどね。

【きだて】ツイスビーとプラチナが、世界の中で頑張って面白いことやろうとしているのかなという印象ではある。

【高畑】でもね、ツイスビーは「ツイスビーゴー」以外は割とオーソドックスなところをキチッと作ってるんだよ。

【他故】そうだよね。

【高畑】「キュリダス」は、そことは違う鬼っ子みたいなところがあるじゃない。

【きだて】鬼っ子というか、「キャップレス」を研究し尽くして、自分たちのできるところとできないところを切り分けていった結果なのかな、という気もしているんだけどね。

【高畑】まあ、そうだと思う。「キャップレス」が世に出た2年後ぐらいには、プラチナも出しているから。

【きだて】やってるよね。

【高畑】ここまで引っ張って今出すんだから、「キャップレス」の弱点はすべて克服したというか、「お前の○○はすべて分析したぞ」みたいな。

【他故】わはは(笑)。

【高畑】そこら辺の意欲はすごく感じる。

【きだて】一般のユーザーには伝わりにくい意欲なので。そこが結局難しいなという話に戻るんだけど。

【高畑】勧めにくさね。

【きだて】やりづらい。

【高畑】ある意味、1歩前に行き過ぎたというか。その先進性が、人によって理解が分かれるよね。

【きだて】う~ん。

【高畑】これ、万年筆ファンでも意見分かれる気がするもの。

【きだて】それは分かるね。

――これは金ペンで出さないんですかね。もっと高級なタイプとか。

【他故】出してもおかしくないですけどね。

【高畑】メカがあれだから、軸を作れないと思うんですよね。金ペンに付け替えることはできるけど、もっと高級なボディを作るのが難しいと思うんだよね。これよりさらにひとまわり大きくなっちゃう。

――そうですか。

【高畑】中に、成形品じゃないとできない回転子とか入っているから、小型化が難しい気がするんだよね。

【きだて】そこら辺も割り切りの結果なので、やらないんじゃないの。

【高畑】やらないんじゃないかな。これは金ペンで出さないと思う。

――そういう意味では、高級感のある「キャップレス」とすみ分けているという感じですかね。

【きだて】ぶっちゃけ、すみ分けるほどのパイがあるのかという話なんだけど(笑)。そこは難しいところなんだけど。

【高畑】気持ちとしては、これで新しい市場ができたらいいなという感じなんだけど。きだてさんが言うところでいくと、その新しさが万年筆ファンじゃない人にどう伝わるかだよね。そこを分かってもらうのが僕らの使命でもあるんだよ。

【きだて】まあね。それが俺らの仕事だと言われれば、「すいません、頑張ります」としか言えないけど。

【高畑】「みんなに見てほしい」というのは一致した意見なので。

【他故】うん。

【きだて】売り場で試す機会があったら、ちょっと試してみてほしいなというのはあるよね。

【高畑】これって、テスターがあるっけ?

【他故】あるところにはある。

【高畑】そういうところで試してもらえたらね。

――試してみれば、絶対に面白いと思うはずですよ。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。

たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


*このほか、ブング・ジャム名義による著書として『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)と、古川耕さんとの共著『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。

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