【連載】月刊ブング・ジャム Vol.07後編
ブング・ジャム秘蔵の“隠し球!?”文房具
左からきだてさん、高畑編集長、他故さん
本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。Vo.07後編では、ブング・ジャムのみなさんが秘蔵する貴重な逸品&珍品!?について熱いトークを繰り広げました。
*Vol.7前編はこちら
ノックは不要! 芯が出続けるシャープペンシル
オートマックE500
――第2部では、これまでは皆さんの逸品をご紹介いただいていましたが、今回は趣向を変えて、“隠し球”的な文房具をご紹介いただければと存じます。希少価値の高い文具とか、あるいは珍品の類いでも構わないですが、読者がちょっとビックリするようなものを紹介していただければ。まずはどなたから行きましょう。他故さんよろしいですか?
【他故】私だけ普通の文房具ですが(笑)。世の中では珍しいという部類に入ってしまいましたが、僕が会社員になった頃に新発売となった「オートマックE500」です。シャープペンなのにノックがなくて、芯タンクの芯がなくなるまでノンストップで書き続けられるという、非常にハードなシャープペンシルです。中の機械がまるでパズルのように入っていて、特定の職人じゃないと直せない。もう、その人はいないんじゃないかと思いますけど。
【きだて】オーパーツじゃん。
【他故】多分、オーパーツだと思うんだけどね。
【高畑】本当に壊さないように使うしかない。
――「オートマック」の昔のモデルということですね?
【他故】昔のものですね。
【きだて】これ、何年前だっけ?
【他故】これ自体は、1990年に発売している。その前に「オートマチック」というシリーズはあったんだけど、「オートマックE250」が出て、その後で究極のかたちとしてこれが出てきて。
【高畑】その後に出てきたやつって、機能的にはこれを超えていないんだよね。
【他故】そうそう、これはあまりにもものすごい盛り方をしちゃって、他のやつはこれを真似る理由がないというか(笑)、そこまでしなくていいという。
【高畑】ノックがそもそもないのね。
【他故】ノックのパーツがない。だから先っぽのところを押すと芯が出る。
――そうか、だから芯が出っぱなしなんですね?
【他故】完全に出っぱなしです。
【高畑】オートっていうのも、今は「オレンズネロ」とかで自動芯送りという話をしているけど、この「オートマック」に関しては、最初の芯出しすらノックがないという。
【他故】で、先端が動くとどんどん芯が出ちゃうので、キャップが付いているんだよ。
【高畑】キャップ付きのシャープペンというのがまたね。
【他故】このキャップを後ろに付けるという、絵面的にはあまりかっこよくない感じになっている(笑)。で、ここに「注意」というシールが貼ってあって、「口金の先から芯を差し込まないで下さい」って書いてある。
【高畑】あ~、前から入れようとするんだな。
【他故】「補充には、必ず新しい芯をご使用下さい」。で、「ご使用の前には説明書をお読み下さい」と書いてあるけど、説明書はなくしちゃったので分かんないんですけど、「新しい芯」ってわざわざ言っているのは、次に追随するための芯が、前の芯の頭にぴったりくっついていかないと出てこないので。一度使って先がななめになったような芯だと、追随しないらしいんですよね。
【きだて】あ~、偏減りしているとだめなんだ。
【高畑】なるほど~。
【他故】新しい状態の芯が、くっついてくることを前提に設計しているんで(笑)。
【きだて】何という!
【他故】上手く付いてこないよ、フルオートじゃなくなっちゃうよということです。
【きだて】ほ~ぉ。
【他故】元々の前提が厳しいので。
――芯を入れるのは頭のところです?
【他故】芯を入れるのは、そうですね。
――一度に何本も入れても大丈夫なんですかね?
【他故】6本内蔵してます。
――落として、芯が中折れした日にはたまらんですな。
【他故】それは、兆候を感じたら芯を出すしかないですね。
(一同爆笑)
――ハード芯じゃないとな~。
【他故】結構、そういうところで気を遣うシャープペンシルではあるんですけど、僕自身はハードに普段使いしていたので(笑)。
【きだて】俺は使ったこと無かったよー。というか実は現物もはじめて見た。
――これ、いくらだったんですか?
【他故】5,000円です。でも、当時の5,000円って、そんなに高くはなかったんじゃないですか。
――1990年前後だとそうでしょうね。
【きだて】このグリップは、タテ溝が刻んであるぞ。
――手汗をかくきだてさん的には、そのグリップは滑ります?
【きだて】滑る。
【他故】タテ溝は滑るでしょう(笑)。
【高畑】論点はもはやそこではないという話なんだけど(笑)。
【他故】普通に言えば、オートシャープの書き味なんだよ。で、別に芯が折れない機能があるわけではないので、今の高機能シャープを比べても仕方ないんだけど。
【高畑】今の「ノノック」みたいなシャープのフルオートバージョンだからね。
――この先端の感じが「ノノック」と似てますね。
【高畑】まあ、芯が自動で出てくるものは、もっと安いのからあるからね。
【他故】この数年前に「オートマチックえんぴつ」というやつが、80円で出ましたよね。
【きだて】あ~、はいはい。
【他故】鉛筆型で、替え芯が入らないという前提で。使い捨てで80円。
【きだて】「魔法の鉛筆」ね。さんざんネット紹介で出ましたな。
――ありましたね。
【きだて】いいね、この「メカニック詰まってる」っていうシャープペンにあるまじき重さが。
【他故】それが、見てもさっぱり分からないところに、物が詰まっている感があって。
【きだて】もっとすごい密度を感じる。明らかに「お前、機械だな!」っていう密度(笑)。
【高畑】確かにね。
【他故】無駄に重いとしか思えない。
【高畑】ただ重量が増したんじゃなくて、中に何かが入っている重さの気がするよね(笑)。
――現行の「オートマック」とは中のメカが違うんですよね。
【高畑】現行のやつはここまで行かなかったんだよね。
【他故】「新型(*2012年に発売された現行品の「オートマック」)は、オートマチックシャープペンシルでしかない。ノックノブがあるシャープにオートマックの名前が付いているなんて」とマニアが言っていたくらいで。僕はそこまで気にしないんですけどね。でも、「E500」を使っちゃうと、「これは唯一無二の世界だ」と。
【きだて】う~ん、いいね。
【他故】便利か便利じゃないかでいうと、便利は便利なんですよ。ノックが一切いらないというのは。
【高畑】う~む。
【他故】また、今見ると、チープな仕上げだったりするところもまたいいんですよね。
【きだて】キャップがチープだしね。
【他故】後ろのラインが、今だったらこういう線は入れないだろうと思うし(笑)。
――ああ、この金色の2本線ですね。
【他故】当時だったらこれでよかったんでしょうけど、高級品でこれは入れないよね。
【きだて】ないね。
――まあ、何か昔っぽいデザインですよね。
【他故】レトロというか、そういうのはありますね。
【高畑】まあ、機能に重きをおいているデザインではあるよね。そのストレートな軸が僕は好きだけどね。
【他故】特に装飾は必要ないということもあり、グリップだけこの当時でも変わった感じだなとは思うけど。なので、これについては、稀少なのかどうかは知らないですけど、自分の中では気に入って25年ぐらい使い続けている製品なので。たまにブログに「ゆずって下さい」という無礼なメッセージが届くけど(笑)。
――金のクリップなので、万年筆っぽい感じなのかしら。
【他故】昔の高級品って、こういうイメージだったんでしょうね。
【きだて】高級ラインのだよね。
【高畑】軸のデザイン的には、明治時代の万年筆だよね。ストーンって真っ直ぐでさ。
【きだて】そうね。
【他故】いくら何でも、当時だってもうちょっとデザインできただろうと思うけど、あえてこのデザインでやってきたというのは…。
――高級品というイメージなんでしょうね。
【他故】フラッグシップのイメージもあったでしょうし。でも、「カスタム」のラインとも違うんですよね。クリップのかたちとか全然違うので。
――「カスタム」だとクリップの先端が丸くなってますものね。この金色のラインは、パイロットの万年筆に使ってました?
【他故】どうですかね? ちゃんと調べないと分からないですけど、イメージとしてパイロットという感じはしますよ。
――黒くて金色ですからね。
【他故】それはありますよ。まあ…、この消しゴムなんかも、やっぱり昔の消しゴムが付いているんですけど。使ったことないですけどね。
【きだて】しかし、そんだけメカをキツキツに詰め込んで、わざわざこれだけ細い軸にしているのはすごいなぁ。
【他故】どういうチャレンジ魂だったんだろうというね。この技術者の方が今でもご存命だったら話が聞きたいぐらいですよね。
――これは、設計図とか残ってないんですかね。
【他故】どうですかね?
【高畑】設計図は残っているかもしれないけどね。
【他故】それがあったところで作れないという話かもしれないし。
【きだて】(軸を測って)10Φ㎜ジャストか。無理して詰め込んでるなあ。
【高畑】中味がどんなかたちかは分からないけど。
【きだて】気になるね。
【他故】確か当時、この中味をバラした写真が雑誌に載っていたんじゃないかな。パーツの状態のやつを。何かで見た記憶がある。
【高畑・きだて】へー。
【高畑】調べてみよう。
【他故】どこかで出てくるかも。
オートマックE500のカットモデル画像(*パイロットコーポレーションから画像の提供があったので、2017年10月16日に追加掲載しました)
【高畑】そんなに嫌な感じはしないね。シンプルで真っ直ぐだし。これに関していうと、メカが主役だからあんまりガワの部分が変な主張をしていないのが、返っていい感じがするね。
【きだて】そうだね。なんか上品。
【他故】むしろ、ここに彫り込んで名入れをしてもいいかなというくらい。
【きだて】そうね。それぐらいシンプルだよね。
【他故】そう。
【きだて】これだけメカが詰まっててシンプルに仕上げるというのは、ガツガツしてない感じがして、とっても好感が持てるね。
【高畑】型番が入っていたりするの?
【他故】オートマックの名前が入っているだけだよ。確か、「E500」という型番は入っていないよ。
【きだて】入ってないんだ。
【高畑】きれいだね~。
【他故】500というのは、単純に5,000円だからなんだけどね。
――今の時代にこれがあったらどうなんでしょうね?
【他故】これを作ることが、技術的にどうなのか僕には全然分からないですけど。ガチで作ったら5,000円じゃ作れないでしょう(笑)。
――まあ、そうでしょうね。
【高畑】今だともっと高くなるだろうし、安くできないんでしょうね。「オレンズネロ」もそうだけど、組み立てる部分が結局人の手になっていたりするから、今作れるから安く作れるかというと、かえって高くついちゃう。
【きだて】それはあるだろうね。
――高くても欲しいという人はどのくらいいるのかという。
【高畑】それは値段にもよるし、わざわざこれのために作ったら、個数売らなきゃいけないけど、「オレンズネロ」で3,000円でしょ。これで8,000円とか1万円でシャープペン作っても、まあ回収できないよ。
【きだて】さすがに中高生も二の足を踏むよね。
【他故】万年筆の限定とは意味が違うので、シャープペンシルの復刻といってもまあ難しいですね。
【高畑】3,000円でできた「オレンズネロ」は、それでも今の価格帯に合わせているけど、このシャープペンでそこまでやるのは無理なんじゃない。
【きだて】物理的に無理なところがあるんだろうけどね。
【高畑】中の仕組みを見ていないので、どのくらい難しいのか分からないけど、これもこの間の電卓と一緒で、そこまでやってもシャープペンはシャープペンだからさ。
【きだて】ということだね。
【高畑】当時のこの状態のままだったら、サポートセンターは大変よ。直す人いないとかさ。
【きだて】「ノックがないんですけど(怒)」とか。
【他故】最悪だよそんなの(笑)。
【高畑】だから、今からチャレンジするには、二の足を踏む要素はいっぱいあるんじゃない?
――他故さんは25年前に現行品で買ったんですか?
【他故】これ実は、会社に入った時に、「お前こういうの欲しいって言ってたよな」って上司がくれたんですよ。「使ってないから」って言って。
(一同)へぇ~。
【高畑】いい話やな~。
【他故】上司はもうシャープペンシル使わないけど、僕はバリバリ使っていたのでいただいたというのが正直なところです。買ってはいないので、偉そうなことは言えないんですけど(笑)。
――結構、使っていたんですか?
【他故】日々使ってましたよ。毎日とは言わないですけど、これを使って絵を描いたり、手帳に書いたり。当時はシャープペンシルをよく使ってましたからね。ただ、中に入っている芯がいつのものか思い出せないんですけどね。当時買った芯なのか、入っていたやつなのかちょっと分かんないんですけどね。今の芯に替えたら変わるのかなというのもありながら。
――今の芯の方が安心して使えますかね?
【他故】どうなんですかね。
【きだて】品質揃うのかな?
【他故】でも、当時の設計に合わせた芯だと言われてしまうと。
――ヘタに今の芯を入れてしまったら(笑)。
【きだて】そこまで繊細なのか、気になるところだね。
【他故】筆記具だから、そこまで繊細でも逆にまずいだろうという判断があったんじゃないかと思うけどね。いずれにしろ、詳しいことが分からないので。
【高畑】これも、この間の電卓と一緒で、ここを超えるものを作るのが、結局割に合わないから誰も作らなくなっちゃったという、最高到達点の一つなのかもね。
【他故】「オートマックE500」で調べると、自分のが出てきちゃうな(笑)。
【高畑】持っている人が少ないんだろうね。製品としての善し悪しもそうなんだけど、僕らが使った文具の極みは極みだからさ。そういう意味では、文化遺産的な凄さはあるので、これは動く状態で大事に使ってほしいね。
【きだて】完動品のままで、何とか。
【他故】しまっておく気はさらさらないので、どちらにしても使っていきたいし、まあ大事にはしたいよね。そりゃそうだよね。
【きだて】そうだね。文具系文化遺産として。
――これ、パイロットに遺っているんですかね?
【他故】さあ、ないんじゃないですか。製品一つひとつを遺してはいないんじゃないですかね(笑)。
【高畑】意外となかったりしてね。これが蒔絵のペンとかと違って、ちゃんと動く状態で遺っているのが少ないだろうな。
【他故】こういう製品だから、1回でもいわしちゃったら動かないという(笑)。
【きだて】不安がね。
【他故】でも、実際に書いていて壊れそうだという感じはないんだけどね。
【高畑】だから、落っことしたりとかぶつけなければ。これの弱点は、知らない人が無理矢理芯を押し返したりとかしちゃうんだよ。そこがやっぱりね、使い方が特殊だから。「オレンズ」でも、使い方の注意表記のシールを貼っていたりするでしょ。
【きだて】リテラシーが要る系は、量産品としてどうかなというのはあるんだけどね。
【他故】分かっている人だけが買うという。特にこれの場合は、元々「オートマック」というシリーズがあって、高くなればなるほど分かっている人用だという売れ方をしていたと思うので。
【高畑】そうだよね。先端ノック式とかいろいろあるじゃん。あんなの知らなかったら使えやしないというさ。
【他故】「1回押すと1回分書けるんですよ」って知らんがなそんなのっていう(笑)。
【高畑】で、結局普及しなかったということだからね。
【他故】そうだね。
【高畑】クルマでも、オートマチック車が普及し始めた頃って、いろんな種類のオートマチックがあって、操作方法違ってたじゃん。大分統一されてきているけど。
【他故】あったね。
【高畑】結構変なのがあったよ。
【きだて】だって、クルマで遠心クラッチ式とか出てたからね。「お前はスーパーカブか」っていう(笑)。
【高畑】試行錯誤の時代のものだから、まあ悪く言うと流行らなかったんだけど。ここまでは要らなかったという話で。
――孤高の存在ですよ。
【きだて】サーベルタイガーだよ。進化の袋小路だよ(笑)。
【高畑】それそれ。でもさ、進化の袋小路のどこかのピークで、これ以上のものが存在しないという物を持っている嬉しさがあるじゃない。
【きだて】うん、分かるよ。それは君がずっと言っている話だよな。
【高畑】ここまで何かを注いでしまったという。何か飛び抜けちゃうんだよね。「そこまでは要らない」という冷静な人が出てきて、次の市場を作るからさ。
【きだて】こういう進化に進化を重ねての袋小路ならいいんだけどさ、俺の持っている物は、大体進化の負け組の袋小路ばっかだからさ(笑)。自然淘汰の負け組みたいな(笑)。
【高畑】何かよく分からないかたちになっちゃったアンモナイトみたいな。
【きだて】そう、それ(笑)。
【他故】もうその代で終わりみたいな(笑)。
【きだて】こういう、研ぎ澄まされた袋小路はかっこいいよね。
【高畑】素敵だと思います。
――なかなかいい隠し球でしたよ。中の機能も隠し球ということで(笑)。
【他故】これからも大事にしたいと思います。
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【高畑】じゃあ、次は僕が。ずっと探していたんですが「クルタ」という計算機なんですけど。
【きだて・他故】これか~。
【高畑】機械式計算機のある種の極みというか。機械式の計算機って、日本でも「タイガー計算器」とかたくさん作っていて、机の上に置くでっかいのとかあるんだけど、その中ではものすごく小っちゃいタイプ。基本的な機能は、よくある計算機と一緒だけど、これめちゃくちゃ精度が高い。これ「シャー」って回るのが気持ちよくない?
【きだて】(いじりながら)気持ちいい! この歯車回すところと空転するところの感触がすごい気持ちいい。お~!
【高畑】ほとんど時計みたいな技術なんだよね。それが、この細いところに縦に並んでいるんだよね。横に歯車を並べていくと、数を増やせるのは当たり前なんだけど、これが円筒方向に並んでいてね。
【きだて】いや~、これは前に写真を見せてもらった時に、すごいいいなと思ったけど、実物を見るともっといいね。
【他故】めちゃかっこいいよね。
【きだて】これはいいわ~。
【高畑】リヒテンシュタインというヨーロッパのすごく小さな国ですけど、スイスなんかと同じで精密機械で有名なところ。
――新品みたいに見えますね。
【高畑】新品ではないと思いますけど、メルカリに出ていたので買ったという。
【きだて】よく出ていたなあ。
【他故】どういう風に検索したらこれが出てくるのよ?
【高畑】たまたま「計算機」とか色々入れていたら出てきて。
【他故】マジか。
【高畑】これ、今まで見たやつだと普通に8万円くらいするんだけど、これ見つけたときは3万円くらいで出てて、とりあえず「買う」ボタンを押したという。
【他故】メルカリやめられないね。
【高畑】大小あって、これは小さい方かな。ポケット式計算機としては、これ以上よくできているものがないくらいで、これも袋小路なんだよね。
――これ、中古にしては状態がいいですね。
【高畑】動かないものも3、4万くらいするんですよ。
【きだて】こんだけきれいに完動してその値段はすごいな。
【他故】ここが軽やかに回るというのがね。
【高畑】そう、そこがすごい。
【他故】周りがズラッと動くんだよ(笑)。
【きだて】回すのに従って、数字がカリカリって変わっていくのがかっこいいね。
【高畑】引き算の場合は、ハンドルを引き上げてから回す。上から数字を借りてこないといけないから、全部回るんだよね。
【きだて】これはかっこいいわ。
【高畑】「クルタ」っていう名前で、ヤフオクとかいろんなところで追いかけていたんだけど、これを見つけるまでに5、6年はかかってる。
【きだて】ある、ある。ヤフオクのアラートにずっと入れ続けているものってある(笑)。
【高畑】あるよね。それで、たまたま見つかったから買ったんだけど。計算機が好きで色々見ているけど、今までゴチャゴチャ集めている計算機の中では、手にしたときに最も興奮したのはこれかな。スチームパンクの時代みたいな話で、ICやLSIで計算できるようになってつまんなくなっちゃったものがここに残っているような気がしてさ。
【他故】うん。
【高畑】もちろん、できるのは四則演算だけなんだけど。
【きだて】すごいな~。
【高畑】スライダーのネジを切る角度がすごい縦じゃん。で、これが回って数字出てくるのがきれいに出てくるんだよ。
【きだて】これはうっとりするな、おい。
【他故】めっちゃすごいよ。
【高畑】携帯用の計算機なので、携帯用のケースが付いていくるんですよ。これがかっこいいよね、缶に入れる感じがね。
――めちゃくちゃ状態がいいですよね。
【高畑】これは当たり品です。
【他故】これは、軍隊のためとかそういう訳じゃないんだよね?
【高畑】いろんな人が使っていたみたいです。移動して計算しなきゃいけない人用なので、もちろん普通に計算するんだったら、据え置き型の方が全然計算が速いんだけど。これは測量だったり、軍事用だったりとか、移動しながら計算しなくてはいけない人用なので。
【他故】ミリタリーっぽい雰囲気があるから。
【きだて】これは、オールドカメラみたいな密度感はあるよね。
【高畑】そう、そんな感じだよね。機械式カメラのいいやつと同じ感じがするから。
【他故】知らない人に「これスパイカメラだよ」と言ったら、「レンズどこに付いているの」ってめっちゃ見るかも(笑)。
【きだて】これは、実物見れていいわ~。
【他故】これがあったら、松本零士なら漫画1本描けるよ。
――こんなものが机の上にあったら仕事にならないでしょ、きだてさんは。
【きだて】いやもう、延々とサルのように回してますよ(笑)。
【高畑】ちょっと、小型のコーヒーミルみたいなね。
【他故】このガワでコーヒーミル作ってくれないかな。めっちゃかっこいいよ。
【きだて】数字が変わる気持ちよさだよ。計算とか関係ないもの。
【他故】分かるよ。
【高畑】これも「オートマックE500」と同じで、この大きさに詰まっている密度感があるじゃん。日本人は好きなんだよね、小さいところに詰め込まれいているものが。機械式時計のすごいやつとか。
【他故】精密なものがぎっしり詰まっている感じね。
【きだて】この外見からは考えられない重さだしね。こんだけパーツ使っているのに、振ってもカラカラ音がしないし。
【他故】素晴らしい。
【高畑】これの内部構造は、誰かがCGを作ってくれていて、ネットにあがっているんだけど、まあすごいのが入っているんだよ、この中に。それもそれで面白いよね。
――ローレットのところが重いのかな。
【高畑】その枠もそうだし、ボディも鋳物でしっかりしているので。
【他故】がっしりしていた方が安定して使いやすいでしょうしね。
【きだて】ペラペラのものに歯車を詰め込めないですよ。
【他故】ボンと凹んで、使い物にならなくなったらシャレにならないしね。
【きだて】ずれちゃうからね。精度出すには、これくらいがっちりしていないと。
【高畑】回転する部品を、こんな小さい中にものすごい数を使っていて、ちょっと引っかかると動かなくなっちゃうので。状態がいいのが見つかって、本当によかったと思うよ。
【きだて】これはお宝だよね。
【高畑】お宝。
【他故】これは本当にかっこいいよ。
――これはいいものです。
修正テープがお好き?
「多巧能修正帯」(電卓付き修正テープ)
【きだて】このあと俺?
【高畑】それは、きだてさんにお願いしないと。
【他故】トリということで。
【きだて】じゃあ、俺も計算機で行こうかな(笑)。
――行きましょう。
【きだて】隠し球というか、つい先週中国で見つけてきたものなんですけど。中国製の電卓付き修正テープ。
――商品名は何になるんですか?
【高畑】「多巧能修正帯」だよ。だから、多機能修正テープだよね。
【きだて】だから、ここに「2in1」って書いてあるよね。
【高畑】すごい、「I’M APPLE」って書いてある(笑)。
【他故】大丈夫っすか。
――これはブランドの名前かな、「LPS」って。
【きだて】そうですね、それが多分メーカー名です。
【高畑】日本語も書いてありますね。
【きだて】あのね、この辺のものは割と日本語が書いてある。こういう修正テープとか。日本で売る気なのかどうなのかは分からないけど。
【他故】そうなの? 日本語がかっこいいという話ではないの?
【きだて】そうでなくて。
【他故】ちゃんとした説明なの?
【高畑】表に「I’M APPLE」って書いてあって、裏に「I’M PINEAPPLE」って書いてある(笑)。
【他故】流行り物だ(笑)。
【きだて】さっきまで、密度感がどうこうと言ってましたが、基本的に修正テープってスカスカなものじゃないですか。振っても全然密度がある感じがしなくて。
【高畑】でも、せっかくのボディーが、修正テープだけじゃもったいないから。
【きだて】というので、電卓付けましたという。
【他故】素晴らしい(笑)。
【高畑】これ、詰め替え用じゃないよね?
【きだて】ケースが開かないので、詰め替え不可だね。
――これはどっちがメインですか?
【きだて】製品名が「多巧能修正帯」なんだから、修正テープの方がメインです。
――電卓がおまけなんだ(笑)。
【高畑】電卓安くなったね~。
【きだて】中国へ行くと、あまりの修正テープの多さに、頭がクラクラするわけですよ。
(一同)ほー。
【きだて】それこそ、フリクションもへったくれもないような感じで。とにかく、中国の人は修正テープ。
【高畑】それはでも、タイミング的なもので、日本も修正テープが多かった時期があるじゃない。
【他故】あるね。
【きだて】で、中国ではフリクションが普及しなかった文房具的世界線なんだよ。そうすると、今の時代の技術とか感覚で作られた多機能修正テープがいっぱい出てきてしまう訳ですよ。付属するガジェットもお安くなって(笑)。先ほど、文具王と他故さんに中国土産で渡した扇風機付きの修正テープとか、そろばん付きの修正テープとか。
――そろばんですか。
【きだて】そろばんなんだけど、中国そろばんなので、上が二つ玉なんですよ。
【高畑】あー、はいはい。
【きだて】中国はお金の計算が16進法だったので、下5玉、上2玉で0から15まで表示できるというそろばんなのよ。
【他故】なるほど~、そうなんだ。
【きだて】だから、日本の感覚だと全然使えないんだけどね。それプラス修正テープという(笑)。
――それで、詰め替えができない訳ですね。
【きだて】詰め替えできないですね。本体が開かないものね。
【高畑】消耗品と耐久品を合体させるという(笑)。
【きだて】電卓を含めて使い捨てになっちゃうわけだよね、これは。
【高畑】日本人的にはなかなかね。
――修正テープを使い終わったら、あとは電卓機能しかないわけですよね。
【きだて】いや、それなら電卓もうちょっと小さいのあるし(笑)。だから、修正テープの寿命イコール電卓の寿命でもあるわけですよ。こっちはソーラーだから、いつまでも使えるんだけどね。
【他故】命短し(笑)。
――電卓しか使わないなら、なんか空しい感じがしますね。
【きだて】この筐体は見たことがあって、電卓を外してここに15パズルみたいのが付いているやつとかね。その辺が共通なんだと思う。
【高畑】修正テープっていうベースに、何を載せるかだ。
【他故】そういうことだね。
【きだて】パイロットが、修正テープとボールペンってやっていたじゃない。あれよりも発想がもっと自由な訳ですよ(笑)。
【他故】四角ければ何でもいい。
【きだて】何でもいいの。四角くなくてもいいんだよ。
――これは、普通に市販品なんですか?
【きだて】市販品です。
――何かノベルティっぽいですよね。
【高畑】全然市販品だよ。
【きだて】あと、iPhoneの新しいのが出る度に修正テープになるとかね。
【他故】あ~、平べったいから。
【きだて】もう「8」が出てましたから。「Phone8」になってましたが(笑)。
――Xは出ないのかな?
【他故】来月X出ますよ(笑)。
【きだて】あとは、クルマに変形する、「トランスフォーマー」みたいなロボット型の修正テープとか。
――テープのりではないんですかね?
【きだて】テープのりはほぼ見つからないです。
――テープのりは使わないんだ。
【高畑】その辺は国民性もあるかもしれないけど、テープのりはやっぱり修正テープが流行った後でしょう。
【きだて】今後だと思う。
【他故】同じかたちが使えるからね。
【きだて】日本やアメリカのイロモノ文具って、ボールペンに付けがちというのがずっとある訳ですよ。
【高畑】あ~、なるほど。
【きだて】リフィルさえ付いてりゃ書けるので、なんにでも付けてきた。
――一やりやすいですよね。
【きだて】そう、だからペンがイロモノとして一番やりやすいと思っていたんだけど、でも中国人にとってはそれが修正テープなんだというのが分かってきた。
【高畑】なるほど。この修正テープ、たるみ止めちゃんと付いているよ。
【きだて】その辺のユニットは、ちゃんと定型であるんだよ。そのユニットさえ積んでしまえばちゃんと修正テープになるんだと、あるとき中国人は気付いたんですよ。
――なるほどね。
【きだて】だから今、無限のバリエーションがある。
【他故】無限(笑)。
――それ、電卓は使えるんですよね?
【きだて】普通に使えます。
【高畑】(使いながら)ちゃんと計算してますよ。
――使えないとしょうがないですものね。
【きだて】イロモノ修正テープ、2in1の他に、巨大化っていう方向性もあって、今回の旅行で見た最長のが45m修正テープ。でかい!
――でか過ぎますね。
【高畑】どんだけ修正すんねん。
――それって、ちゃんと持ってテープが引けるんですか?
【きだて】重たいと思うんですけどね。
【高畑】フジコピアンが前に出していたのは何メートルだっけ?
【きだて】あれは30m。
【他故】それを上回る大容量。
【きだて】あと、60mというのがあったんだけど、それは20mのが3つ並んでいるだけだった(笑)。
【他故】3つ入りなんだ。
【高畑】何がそんなに心配なんだろう(笑)。
【他故】どんだけ修正すれば気が済むんだろうか(笑)。
――そんなに修正するんですね。
【きだて】要は、そこまで中国人は修正テープが好きだという。
【高畑】何か直す事情はあるんじゃない? 日本であんまり修正テープが使われなくなったのって、今は印刷コストが下がったので、ガンガンプリントし直すようになったじゃない。
【きだて】消して書き直すっていうのはあるのかな。
【高畑】何かあるんじゃない。
【他故】鉛筆が減ってきて、ボールペン文化にだんだん入ってきた時期という感じもあるんじゃない?
【きだて】あるのかな。でも、未だに小学校は鉛筆なんだよね。
【他故】学生はさすがに鉛筆なんだね。
【高畑】大人は基本ボールペンなんじゃない?
【きだて】大人はそうだろうね。だから、そんだけ修正テープなんだろうけど。だから、もし中国版のフリクションみたいなのが出てきたら、この修正テープたちはどこへ行くんだろうと思って。
――パイロットの商品って、中国では販売しているんですか?
【他故】売ってなくはないですよ。
【高畑】高いとかそういう問題もあるから。
【きだて】やっぱり普及はしてないですね。
【高畑】そういう消せるボールペンが普及したらどうだろうというのもあるし。
【きだて】ひょっとしたら、消せるボールペンが中国で普及したら、ようやくテープのりが普及するんじゃないかなと思って。こっちにガワを変えて(笑)。
――あ~、それはあるでしょうね。
【きだて】こっちに乗り換えることで、テープのりが普及することもあるかもしれないね。
【高畑】消せるボールペンに修正テープが付いていたりとかして。
【きだて】あるかもね。その辺はちょっと期待だね。
【高畑】そうだね。
【きだて】3年前に、義烏(イーウー)っていう中国の巨大な問屋街に行ったんですよ。そこへ行くと、こういう変な修正テープ専門の問屋があるくらいで。
【他故】ほ~。
【きだて】こういうのしか扱っていないという。そういうのもあって、まだまだ修正テープはいくんだろうねという印象だった。
【高畑】それで商売になるんだからすごいよね。
【他故】買う人数も使う人数も違うということでしょうね。
――日本とは桁外れでしょうね。中国人一人が1個買うと考えると、一体いくつになるのか(笑)。
【きだて】10何億ですよ。
【他故】そりゃ違いますよね。その人達が無尽蔵に修正していくわけですからね。
【高畑】無尽蔵に修正(笑)。
【きだて】中国の修正テープ需要をメートルで表してみたいよね。一人あたり何メートル使うのか。
【高畑】まあ、日本では電卓付き修正テープは売れないだろうな。
――ノベルティでも企業が選ばないですよね(笑)。
【きだて】今、修正テープを選ぶことはまずないよね。
【高畑】やっぱり、消耗品と耐久品を合体させちゃうところが不思議だよね。
――箱型で何かと考えたときに、やっぱり電卓を思いつくんでしょうね。
【高畑】それは、日本人的には納得いかないんだけど。ヨーロッパでも、消しゴムと鉛筆削りが一緒になっていたりするじゃないですか。「いや、それは消しゴムの方が先になくなるだろう」と不安になって、消しゴムが使えないけど。
【他故】替えゴムもないじゃん。
【きだて】そうだよね、モノとしてはあの辺と一緒だよね。
【高畑】耐久時間の違いね。文具メーカー勤務の頃に、爪磨きを消しゴムに付けたことがあったけど、あれ定規に付けたら怒られるんだよ。爪磨きが先に消耗するから。
(一同)あ~。
【高畑】消しゴムを使い切るのもそんなに長くないという前提で、両方消耗品だからアリという判断だったんだよ。
【きだて】そうか、爪磨きは消耗品か。
【高畑】消耗するスピードの違いはあっても、両方消耗品だと納得するんだけど、こっちは片方は絶対になくならないソーラーじゃん。
【きだて】その異常さがちょっと面白いのよ。
【高畑】そこら辺をアリと判断する感じがね。
【きだて】ただ、価格が問屋だと12元だったのよ。小売価格がちょっと分からないんだけど、12元だと200円強ですわ。それで電卓と修正テープが買えちゃうというのは、電卓どんだけ安いんだろうね。
【高畑】そういうことだよね。まあ、電卓が欲しくてこれを買う人はいないよね(笑)。
(一同爆笑)
【高畑】修正テープを買うのに、便利な機能が付いているから買うんだよ。
【きだて】修正テープありきだよね。
【他故】やっぱり、修正テープを使い切ったら捨てるんだよ。
【きだて】うん、そうなるよ。
【高畑】電卓買いに来た人は、電卓を買うよね。そりゃそうだよね。
【他故】電卓に修正テープ付いているから便利という人はいない。修正テープを欲しい人が、電卓も付いているから便利という。
【きだて】ただね、こういう2in1文具のメリットは何かというと、筆箱の中での専有面積が少なくて済むというのがあるんだよ。
【高畑】コンパクトに済むね。
【きだて】文房具2つ分のスペースが1つで済んでいるという。ただね、これの場合、修正テープの大きさが、電卓に引きずられてるじゃん。
【他故】そうか(笑)。
【きだて】すでにこの状態では、筆箱に入りづらいという。
【高畑】でもこれ、中に入っている修正テープ結構でかいよ。さっき透かして見ていたんだけど、意外とでかい修正テープが入っている。
――本当だ。
【他故】すごいリールが透けて見えますよ。
【高畑】これ12mで長さ的には標準だけど、最近の日本だと5、6mぐらいのが出てたりするから、それに比べると倍くらいの長さだからね。
――こっちが電卓で、こっちが修正テープエリアで…。
【高畑】いや、上から電卓をペタッと貼ってあるんだよ。
――じゃあ、修正テープの上にカード電卓を貼り付けている感じですね。
【高畑】これ、電卓を外してもそんなに小型化できないパターンだから。
【他故】そうね、だと思うな。
――で、修正テープが12mですか。
【きだて】ただね、中国の修正テープはすごいギアの噛みが悪かったりするので、12m使い切る前に壊れると思うけどな、テープトラブルで(笑)。
【高畑】使い始めと使い終わりで回転が違うじゃない。
【きだて】そうそう。
【高畑】そこが上手くいかないと最後まで使えるかどうかはね。
――修正テープを使い終わったら、フタを外すみたいに、電卓を取り外せるのかな。
【きだて】のりで接着してあるので、マイナスドライバーか何かでベリベリとはがせば使えるかもしれないけど。
【他故】それは、新しく買うんですよ(笑)。
【きだて】12元だから。200円強だから(笑)。
――まあ、そうですね。
【高畑】それでいいというぐらい、電卓は安いものなんだね。何かもったいない気がしちゃうけどね。安い、高いにかかわらず。貧乏根性じゃないけど、これをはがして使いたくなっちゃうよね。日本だったら絶対苦情の電話が来るよね。
――冷戦の頃って、社会主義国へ行ったら、それこそ電卓なんかあげたら喜ばれたりしたわけだけど、今は全然そんな時代じゃない訳ですね。
【他故】全然違いますよ。
――逆に、修正テープあげた方が喜ぶんでしょ(笑)。
【きだて】「モノエアー」なんかあげたら、すごい喜ばれるかもしれませんよ(笑)。
【他故】「何これ、すごい」って言って(笑)。
――「モノエアー」は喜ぶでしょうね。
【高畑】性能がいいからね。
――「何だこれは」みたいな。
【高畑】これはあれだね、ここに溝か何かを付けて、修正テープ使い終わったら電卓がはがれるとかにしておいてくれたら。
【きだて】それだったら、テープを詰め替えにしてくれた方が親切だわ(笑)。
【高畑】そっちか。
【他故】電卓を外すんじゃないね、修正テープを替えよう(笑)。
――カートリッジ式の修正テープってあんまりないんじゃないですか?
【きだて】いや、一応あるにはある。カートリッジだけ売ってはいるんだけど、あまりにも修正テープが多く出過ぎて、そのカートリッジがどれに適合するのか全然分からない(笑)。
【他故】それならば、面倒くさくて本体買っちゃうっていう人もいるんじゃないか。
【きだて】まあねえ。
【他故】本体をガンガン買ってくれた方が。
【高畑】これ引いていい? でも、ちゃんと普通に使えるね。
【きだて】それは全然問題ないと思うよ。
【高畑】使い心地はそんなに悪くないね。
【他故】標準的な。
【きだて】ただ、「電卓持って何やってんだ」っていうビジュアルにはなるけどね(笑)。
――普通ですな。
【きだて】それだけ修正テープが普及しているからということかもしれないしね。
【他故】逆に、めちゃめちゃ悪いものなんか売ってないだろうという。
【きだて】もしかしたら、現地の人は修正テープにものすごく目が肥えているかもしれないよね。
――じゃあ、「モノエアー」なんか見た日には…。
【きだて】「すごい」ってなる可能性は大きいと思うよ。
――ですよね。
【きだて】ちなみに、こっちがそろばん付きの写真。
――かわいいですね。
【高畑】むしろ、こっちまで行っちゃった方がね。
【きだて】こっちだとファニーで。
【高畑】まあ、「使い捨てです」という感じになるかな。
【他故】「おもちゃだな」っていうね。
【きだて】機械が付いている分、ちょっと抵抗があるよね。
――まだ、そっちのそろばんの方がゆるせるな(笑)。
【高畑】僕ら世代にとっては、カード電卓は出たとき高かったからね。
【他故】そうそう、カード電卓はあこがれだったからね。
――いくらチープでも、電子機器を捨てちゃうのはもったいない気がしますね。
【他故】しかも、ソーラーが付いていますよと言われると余計にね(笑)。
【きだて】ずっと使えるじゃんって思うからね。
【他故】でも、面白いな。
【高畑】まあ、でもあるもんだよね。探せばね。
【きだて】まだ、俺は世界を掘り尽くしてはいない。まだまだ知らないバカな文房具が世界にいくらでもある。
――きだてさんには、ぜひ掘り尽くしてほしいですよ。
プロフィール
きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。東京・京橋の文具店・モリイチの文具コラムサイト「森市文具概論」の編集長も務める。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
【森市文具概論】http://shop.moriichi.net/blog/
他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。「森市文具概論」で「ブンボーグ・メモリーズ’80s」を連載中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/
*このほか、ブング・ジャム名義による著書に『筆箱採集帳 増補・新装版』(廣済堂出版)があるほか、弊社よりKindle版電子書籍『ブング・ジャムの文具放談』シリーズを好評発売中。購入はこちらから。
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