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文具王がペン型はさみ「ペンカット プレミアム」の開発者と対談!

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千葉 勇

今でこそペン型はさみは当たり前の存在になりつつあるが、ペン型はさみというジャンルを確立する先駆けとなったのは、レイメイ藤井が2010年に発売した「ペンカット」ではないだろうか。携帯性と実用性を兼ね備えたペン型はさみとして発売された「ペンカット」が大ヒットしたことで、その後は他のメーカーからもペン型はさみが続々登場。レイメイ藤井でも「ペンカット」のシリーズ化を図り、ヒット商品を連発してきた。そして2018年5月下旬に満を持して投入したのが、シリーズ最高となる本格的な切れ味を追求した「ペンカット プレミアム」である。

当サイト編集長の高畑正幸文具王は、「ペンカット」発売当初からその優れた機能に熱い視線を送っていたひとり。著書「そこまでやるか!文具王高畑正幸の最強アイテム完全批評」(日経BP社)では、「ペン型ハサミが隠し持つ“驚きの機能”に脱帽!」という表現で「ペンカット」を紹介したこともある。そんな文具王だから、「ペンカット」のプレミアムモデルが発売されたと聞けば、気にならないはずがない。早速、発売されて間もない「ペンカット プレミアム」開発者のもとを直撃、新製品を体感した。

ハンドルループが特徴の「ペンカット」シリーズ

20180611pencutseries.jpg「ペンカット」シリーズ



「ペンカット」の最初のモデルは、ペン型コンパスに続くペン型文具シリーズの第2弾として2010年に市場に投入された。現在でもその人気は継続し売れ続けているという。当初から、はさみなのにキャップをするとペンのように細くてまっすぐになるスリムな外形、中央部のスライダーを刃先とは逆の方向にずらすと現れるハンドルループ、コンパクトなのに確かな切れ味、といった基本性能をしっかり備えており、ペン型はさみとして実用性が高かったため、これまで売れ続けてきたのだろう。

「ペンカット」のあとに発売したのが、サイズを小さくした「ペンカット ミニ」、続いて子どもをターゲットにした「ペンカット キッズ」、「ペンカット」にチタンコートを施した「ペンカット チタンコート」とラインアップの拡充を図ってきた。

レイメイ藤井では、「ペンカット」シリーズのほかにも、スウィング構造の“引き切り効果”で軽い切れ味を実現した「スウィングカット」や、ドイツのブランド「ヘンケルス」のはさみも各種展開しており、これらも好評を得ている。

本格的な切れ味を追求した「ペンカット プレミアム」

20180611premium1.jpg左から「ペンカットプレミアム」「ペンカットプレミアム フッ素コート」「ペンカットプレミアム チタンコート」


ペン型でありながら、本格的な切れ味を追求した「ペンカット」のプレミアムモデルが「ペンカット プレミアム」。従来のモデルが右利きだけはでなく左利きにも対応していたのに対し、プレミアムモデルでは切れ味を優先させるため、右利き専用にした。これによって、薄手のビニール部材から厚紙までスムーズな切れ味を実現。さらに、全体的に丸みをもたせたデザインが優しく手にフィットすることで、快適な操作性を生み出している。

ラインアップは、「ペンカット プレミアム」(税抜900円)に加えて、フッ素コートを施すことでガムテープなどを切った際にのりが刃に付きにくい「ペンカット プレミアム フッ素コート」(税抜1100円)と、チタンコートを施し厚紙を切っても気持ちのいい切れ味が長持ちする「ペンカット プレミアム チタンコート」(税抜1300円)の3タイプを揃えた。

3タイプ共通の本体サイズはW15×H145×D15mmで、多色ボールペンとほぼ同等サイズなので携帯しやすい。また、本体重量は38g、刃渡りは55mmとなっている。

それでは主な特徴を紹介しよう。まず「ペンカット」のセールスポイントとなっているハンドルループから。柔軟性のある素材で手にフィットする出し入れ可能なハンドルループは、従来モデルを踏襲しながら、ループの形状を楕円に変更。ペン型ながら一般的なはさみと変わらない使用感を実現している点が秀逸である。ハンドルループの色は、ボディカラーがホワイトの「ペンカットプレミアム」は乳白色、「ペンカット プレミアム フッ素コート」と「ペンカット プレミアム チタンコート」はボディカラーがそれぞれ濃いネイビーとブラウンなので、ハンドルループの色はブラックとなっていて高級感が感じられる。

次はブレードについて。今回もロングブレードを採用しているが、これはハンドルの奥深くまで刃を入れることによって、刃先までしっかり力を伝えられるようにするため。しかも1.5mm厚刃に高角度の片刃仕上げを施しており、ビニールなどの薄いものからコートボール紙などの厚紙までスムーズな切れ味を実現している。

そして安全に持ち運ぶために必要なキャップは、刃の存在がうっすら見える透明安全キャップを採用。ペンケースに入れても安心な設計になっている。

文具王と「ペンカット プレミアム」開発者が対談

20180611bunguoogino3.jpg開発者の荻野晃一さん(左)と文具王


【高畑】 本日はよろしくお願いします。
新製品の「ペンカットプレミアム」は荻野さんが開発を担当したそうですね。はさみの開発に携わるようになったのはいつからですか。

【荻野】 初めてはさみの開発に携わったのは「ペンカットミニ」です。それから「ペンカット キッズ」のデザイン・設計を担当したり、「スウィングカット」の開発も担当しました。また、2016年に「ペンカット」にチタンコートを施したタイプを開発。そして今回、「ペンカット プレミアム」の開発を担当しました。

【高畑】 それを聞いて納得しました。「スウィングカット」と「ペンカット プレミアム」を開発した人が同じなのは、刃の形を見るとわかりますよ。「スウィングカット」の刃のカーブと「ペンカット プレミアム」の刃のカーブが似ていますから。
ところで、ペン型のハサミとして「ペンカット」が発売されたのは2010年だそうですね。今考えると先見の明があったというか早かったですね。「ペンパス」に続く細い文房具のシリーズで、いいところに目をつけたと思います。今ではペンケースが細長くなったり、立つペンケースには細い方が入れやすいよとか、学校のプリントを切る用途など、細いという必然性があります。ですが、「ペンカット」発売当時、細長いはさみは他にはあまりありませんでした。ギミックが独特で、スライドするとハンドルが出てくるのが非常に面白いと思い、熱く語ったことをよく覚えています。最初のモデルは横の方にはめ込みの蓋が付いていて、右利きでも左利きでも使えました。実は切れ刃に角度がないのがちょっと変わった特徴です。だから右利きでも左利きでも使えるわけです。はさみはカッターと違って切れ刃にほとんど角度がなくても切れるんですね。紙を切る目的だけを考えれば切れ刃がなくても成立します。

【荻野】 確かにそうですね。

【高畑】 はさみには「U字はさみ」と「X字はさみ」があります。当時あった他のコンパクトなはさみといえば和ばさみで、これはU字型のはさみでした。糸を切るときには便利なんですが、チョキチョキ切り進んでいくにはU字はさみは不向きなんですね。「ペンカット」のあとペン型はさみはライバルがどんどん出でくるわけですが、ペン型のX字はさみはほとんどバネ式でした。バネ式のメリットはコンパクトに作れること、デメリットはバネの力で常に開いてしまうことです。「ペンカット」が採用しているハンドルループのように輪っかが出てくるタイプは、機構が難しいのであまりないんです。その機構が「ペンカット」では最初のモデルからほぼできていました。基本的な機構はほとんど変わらず、しかもライバルはあまりいないということで、今まで売れ続けてきたのかもしれませんね。
前置きが長くなりましたが、新製品についてお聞きしたいと思います。「ペンカット プレミアム」ではどのようなところにこだわりましたか。

【荻野】 切れ味や刃にこだわったのはもちろんですが、一番こだわったのは形なんです。最初のモデルは角ばっていますが、プレミアムではボディーを丸くしたことによって、手の中でいい感じに動くんです。触っていただければわかると思うんですが。その部分をぜひお伝えしたいですね。

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【高畑】 手の収まりがいいのはとっても大事なことですね。特に刃物ですし。

【荻野】 ボディーだけでなくキャップも丸くしたので、指あたりもいいと思います。あまりそういうことをうたっていませんが、気づいていただけたらうれしいです。また、ハンドルループの形状を見直して楕円にしました。楕円にした理由は、指に沿う面積を最大化したかったためです。

【高畑】 凹凸の少ないフラットで円筒形になって、きれいなデザインになったと思います。

【荻野】 最初のモデルは凹凸がありましたが、今回はクリップをなくしてよりスリムな形状にしました。

【高畑】 最初のモデルはペン型を意識してクリップをつけたと思いますが、胸ポケットに挿して使うわけではないので机の上で転がらない工夫だけすれば、クリップはなくてもいいのかなとも思います。

【荻野】 以前のモデルと違う点は他にもあります。当社は左右両利きを大事にしていますので、これまでは右利きでも左利きでも使えることを優先させて商品化していました。ですが、今回の「ペンカットプレミアム」は右利き専用にしました。その理由は切り味にこだわったためです。

【高畑】 右利き専用にすることで切れ味や使い勝手がよくなったわけで、左利きの方には申し訳ないですが、こういう選択は必要なことと思います。

【荻野】 今回のモデルが好評であれば、左利き専用モデルも作りたいですね。

【高畑】 「ペンカット プレミアム」で「ペンカット」は完成したのかなとも思います。「ペンカット」発売後に、他のメーカーもペン型のはさみを出してきて、ライバルがすごく増え、しかもそれぞれ売れているじゃないですか。ユーザーの選択肢が増えてきた中で、ペン型をけん引してきた「ペンカット」にとっては今回の更新は必要だったのかなとは感じています。

【荻野】 最初のモデルを発売してから8年も経ちましたので、いろいろと見直す部分はありました。ところで、ハンドルループにこだわることについてはどう思いますか。

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【高畑】 ハンドルループにこだわらなかったら「ペンカット」じゃないし、自分で制御して細かいものを切り進んだりとか、何か細工をしたりといった使い方にはやっぱりバネ式よりもループが良い。バネ式は基本的には真っすぐ切るのと短い距離を切るのには向いていますが、途中で方向を変えたりするのには向いていません。そういう意味で自由度が高いのは明らかにハンドルループ方式です。ハンドルループが柔らかくてしなることで、多少の指の太さの違いがあっても、指のひねりを利用してブレずに持てるのはなかなか面白いところです。はさみは指をはめるところが大事。バネ式は刃と刃の擦り合わせを絞められません。それがバネ式の限界なんですが、ハンドルループに指を入れる方式は刃と刃を擦り合わせることができ、それによって切れ味が良くなるのが大きなポイントです。

【荻野】 確かにそれはメリットだと思います。

【高畑】 ハンドルループが指にフィットして止まるので、ぐらぐらしません。バネ式は上下から押さえているので、手の中でコロンと転がってしまうことがあります。ハンドルループは携帯用のハサミのひとつの形としては本当にいい考え方だと思います。なので、ペン型でバネ式のはさみを使っている方にも、ぜひこのハンドルループ式を一度実際に試してもらいたいですね。

【荻野】 その通りです。ハンドルループがあることで、普通のはさみと同じ使い勝手ができます。ぜひ、一度使ってもらいたいですね。

【高畑】 ペン型はさみはいろいろ発売されていますが、各メーカーが目標にしているのは、はさみをコンパクトに持ち歩きたい、それをできるだけしまいやすいところに入れたい、使うときにはよく切れてほしいということで、方向性は同じなんです。でも実現の方法がメーカーによって違うわけで、それはいいことだと思います。ライバルがいることによって、それぞれの良さがわかる面もあります。刃の考え方、持ち方の考え方、切れ味も違うし、携帯性や安全性も違う。実際触ってみるといろいろな違いがあるので、とにかく触ってほしいですね。

【荻野】 そうですね。ユーザーの方々に実際に触っていただけるイベントを今後開催したいと考えています。以前のモデルもそうだったんですが、触ってみると皆さんビックリされるんですね。変わった形なのに使ってみると普通のはさみで、ちゃんと切れるということにたいへん驚かれます。

【高畑】 そうなんですよ。「ペンカット」が面白いのは、触ってみると意外と普通なところです。

【荻野】 特に「ペンカット チタンコート」や「スウィングカット」はギフトとして購入されている方も多いようです。

【高畑】 最近、はさみをギフトで贈ることへの抵抗感がなくなってきました。はさみって不思議なんですが、日本で売れているはさみの数を聞くと、日本人はいったい何人いるのかと思うくらいの数量なんです。用途ごとにひとりで5、6丁も持っている人もいます。よく切れるはさみは気持ちいいですから、ついつい新しいはさみを買ってしまうのかもしれません。学生さんなら、学校で配られるプリントをノートに貼るときに切らないといけないので、ペンケースに入る携帯はさみとテープのリは必須アイテムです。

【荻野】 そうですね。当社のはさみは、どちらかと言うと大人向けが多いので、今後の課題としては学生へ向けた開発をしていきたいですね。

【高畑】 ですから話のまとめとしては、ここはひとつ、今までのはさみとは別腹ということで持ってほしいはさみですね。(笑)
「ペンカットプレミアム」は外見は特殊なデザインに見えますが、使ってみればみんなが安心して買えるし、使えるペン型はさみだと思います。切れ刃が付いて切れ味が向上しているし、最近の文房具っぽい美意識が反映され、無駄のないきれいな形です。作った人の考えていることがすごくよくわかりますし、プロダクトをちゃんとデザインするのが好きな人が作ったデザインだということもよくわかります。文具王としても、ぜひオススメしたい携帯はさみです。
本日はありがとうございました。

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