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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.100 2025年上半期ベストバイ文具 その3
本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。記念すべき100回目を迎えた今回は、ブング・ジャムのみなさんに2025年上半期のベストバイ文具を紹介してもらいました。
第3回目は他故さんが紹介する「KURUTOGA Wood(クルトガ ウッド)」です。
(写真左からきだてさん、高畑編集長、他故さん)*2024年11月9日撮影
*鼎談は2025年6月27日にリモートで行われました。
クルトガに木製グリップが付いた!
――最後は他故さんです。
【他故】今年って、上半期に僕も結構いろいろなメーカーの筆記具を買ってるつもりだったんだけど、結果的に三菱鉛筆のものばっかり買ってるっていうことに気がついちゃって。だから、「ユニボールゼント」があって「ジェットストリーム」が入っているラミーがあって、「JETSTREAM Lite touch ink」のブルーブラックインクが出て、それで「クルトガウッド」が出てという感じで、みんな三菱鉛筆じゃんみたいな半年だったんですよ。正直に言えば。
【きだて】それは三菱に踊らされてるな(笑)。
【他故】いや本当に。全部買って、で全部メイン使いをしてという感じでいくつか使ってる中で、一番使ってるものは何だろうと思ったら、この「クルトガ ウッド」だったんですよ。
【高畑】なるほど。
【きだて】俺はまだ「ウッド」は使ってないんだけど、どう?
【他故】「クルトガメタル」っていう製品があったじゃないですか。「メタル」でほぼクルトガの弱点的なものは解消されて、とてもいい製品だよねっていうのを僕も感じてたわけだけど。
【きだて】そうそう、それは前にもみんなで言ってたよね(こちらを参照)。
【他故】そうそう。先っぽがカチャカチャしないとかさ、いろんな意味でこれが多分完成形に近いだろうって言われてて、手元にあったんだけども、使わなくなっちゃったんですよ。非常にすごく良かったと思って使ったはずだったのに、しばらくしたら使わなくなっちゃってて、何が不満なのか正直に言えば自分でもちょっと分かんなかった。
【きだて】うん。
【他故】「メタル」もいいペンだと思って使ってたのに。それで、今年「ウッド」が出て、「メタルもあんなに使い込まなかったし、いくらウッドになったからって大して使うことはないだろう」と思って、最初にこれ出た時には血眼で探したりしなかったんですよ。「メタル」の時はかなり頑張って探したんだけど(笑)。で「ウッド」は店頭で出会ったら買おうぐらいな気持ちだったのね。
【きだて】なんとなくの興味ぐらいで。
【他故】恵比寿の有隣堂だったと思うんだけど、出会ったので買ってきて、それで持ってみたら、「メタル」と全然違うんですよ。
【高畑】まあ違うね。
【他故】持ち心地が明らかに違う。木でできてるグリップだから当たり前かもしれないんだけども、1番衝撃だったのは今売ってる木軸ペンと言われるもののグリップの中で、こんなにザラザラしてるやつはないのよ。
【きだて】あ、ザラザラしてるの?
【他故】大抵、もっとツルツルに仕上げてきてるのばっかりなんだよね。これはね、思った以上にボコボコしてるの。
【高畑】意図したのかどうか分かんないんだけどね。
【他故】分かんないんだけど、木目の通りに凹んでるのよ。
【高畑】ここね。こういうやつね。
【きだて】本当だね。
【他故】そうそう。めちゃくちゃ凹んでるの。それで、この切り口みたいなところも欠けてたりするんだよ。
【きだて】そういうの見ちゃうと「やすれよ」って思っちゃうよな。
【高畑】多分これは、「こうしたかった」んじゃなくて、「こうなっちゃう」んじゃないかという気がするよ。
【他故】するんだけど、今まで木軸のシャープペンシルを色々と試してきた中で、僕にとってはツルツルで持てないというのが多かったんですよ。表面をツルツルに磨いてしまうのがほとんどだったので。これを持ったときに、滑らないっていうこと自体にまず喜びがあったのが 1 個と、あとこのかたちではほぼ分かんないんだけど、先っぽがほんのちょっと太いんだよね。
【高畑】そうだね。「KSモデル」と近い感じ。
【他故】そう。ほんのちょっと太い。「メタル」は思いっきりまっすぐなんだけど。
【高畑】ちょっとふくれてて、「KSモデル」みたいな感じの流れというか。
【きだて】パイロットっぽい?
【他故】ほんのちょっと先がふくらんでる雰囲気が、本当に自分の指かかりにジャストフィット過ぎて。これを持つと、他の木軸シャープペンシルが使えないんですよ。何か替えようがないというか、僕にとって代わりがなくなっちゃったんだよ。木軸のペンが悪いんじゃなくって、「クルトガ ウッド」のこの木が手に合いすぎるっていう。
【高畑】ていうか、木軸って大体もうちょっと太いんだよね。
【他故】そう。
【高畑】木軸の中ではかなり細い方。これとラダイトぐらいじゃない、細いのは。
【他故】うん。あとは「S20」ね。
【高畑】ああそうだね、「S20」ね。
【他故】これはどっちかっていうと、「S20」の対抗製品だと僕はちょっと思ってるところがあって。
【高畑】ああ、なるほど。
【他故】全身木製にはしなかったんだけども、三菱が持っている普通に握れる木軸のシャープペンシルで最高峰のものを出すっていう。「S20」も実際に何年も使ってみて、結局あれ使えば使うほどツルツルになっていくんですよ。
【高畑】時々荒らした方がいいんじゃない? ヤスリかなんかで。
【他故】これについては、今のところ僕にとっての理想に近い木軸の握りを表現してくれている。しかも、カチャカチャしないグラグラしないっていう「クルトガ」最上位の出来の良さみたいなものもあって。これで今手帳も書いてるんですね。前は「0.3じゃなきゃ書けない」って言ってたんだけど、もうこれは0.5のままで使ってるんだけど、これに慣れてしまって「クルトガの0.5がちょうどいいな」みたいな、段々と三菱教に染められていく感じがある(笑)。
【きだて】でも、これもシャープユニットが「メタル」と同じだとしたら、「KSモデル」の0.3が入るのかな?
【高畑】なんだけどさ、できないんだよ。中のネジがすごい奥のところに入っているので、これ構造が違うんだよ、ここから後ろが。
【他故】そうそう。このグリップを外すと分かるんだけど、「メタル」と「ウッド」はグリップの付け替えできないんだよ。
【高畑】グリップのここの形状がね、全く違うんですよ。ほら
【きだて】あ本当だ、逆じゃん。
【高畑】何でかっていうと、ここ木軸にして厚みを出さなきゃいけないから、グリップの内側にネジ切ったりできないんだよ。
【きだて】なるほど、なるほど。
【高畑】こういう構造になってて、中に軸入ってるんだけど、ギリッギリこの木軸を実際に使えるようにするために、他の部分が逆向きになったりとかして、要は周りが割を食ってるかたちで、「メタル」はグリップを外したらすぐ中に「KSモデル」のメカが入ってるんだけど、「ウッド」はこの中に入っているネジっていうか、枠を回さなきゃいけないのね。そうすると、専用の特殊工具を作んないと回せないんだよ。
【きだて】あーそういうことか。なるほど。
【高畑】外からドライバーとかで回せないんですよ。というのがあるし、実際にやった人がいるんだけど、接着してるか何かで、しかも奥の方でそうなってるから、よっぽど丈夫な専用工具を作らないと回せないんだって。
【きだて】はぁ。
【高畑】一応ね、真鍮か何かのパイプを削って、専用工具を作ってやったっていう人がいるんだよ。工具が負けたんだって。だから最初からちゃんとした工具として作らないと回せないらしい。しかも、真ん中の軸がジャマだから、軸を避けてこう入ってこう回すやつが要るので・・・。チャレンジするのが、工具作るところからだから、面倒くさくてやってないんだけど。だから、「メタル」を使ってるのは、やっぱ0.3使いたかったからなんだよ。
【他故】僕はどっちかっていうと、0.3の魅力よりもグリップ感みたいなものを含めて0.5でいいやっていう風になったから。
【きだて】でも、そのザラザラのウッドグリップは、ちょっと興味があるな。
【他故】ザラザラっていうかボコボコ(笑)。
【高畑】ザラザラっていうかね、やっぱ欠けてるんだよね。あの木目のところで欠けちゃう。多分、旋盤で切っていくときに飛んじゃうんだよね。多分そこは、「S20」とかの方が上手で、あれって多分樹脂含浸して強化してから削ってるから、
【他故】うん、そうだね。
【高畑】なので、割とキレイに削れてるんだけど、本当はあんな風にしたかったんじゃないんじゃないのかっていう気はちょっとするんだよね。
【他故】これではなかったと(笑)。
【高畑】でもね、「クルトガ」は中の軸が太くて、でも外側が細いからさ、実はこれめちゃくちゃ大変なんだよね。薄くして、中に金属の軸も通してとかってやってるから。要は元々難しい。かなり薄い木の軸のパイプになってるから。だから、パイプに木をはめ込んだ後で、多分削ってると思うんだけど、かなり難しい。
【高畑】最近の木軸ブームで、いろんな木軸のペンがあるけど、こういう全部作れるメーカーが作った木軸ペンってすげえなって思うんですよ。バランスが良くて。
【他故】うん、分かる。
【高畑】口金とメカは共通とかになっちゃうじゃん。工房が作る系だとどうしてもそうなるんだけど、ここまで作って、しかも中にクルトガが入れるみたいなことができるのはやっぱ三菱だからだよねってなる。
【他故】本当にそう思うね。それでまた、今回のこの緑(フォレストグリーン)がめちゃくちゃキレイでね。
【高畑】いい色だね。
【きだて】ああ分かる。
【他故】本当にいい色。最初は色が選べない状態だったから、スチールグレーを買って使ったんだけど、この間行ったお店で改めてフォレストグリーンを見て、「いや、これはフォレストグリーン買うでしょ」って。すげえいい色だったから。
【きだて】この木軸のブラウンとすごいマッチングするよね。
【高畑】分かる分かる、そんな感じ。この茶色とグリーンの組み合わせは、本当に絶妙にキレイ。
【他故】これは素敵ですよ。だから、毎日のようにちっちゃい手帳に細々と予定を書くときほぼこれを使ってるので、もう愛用品ですよ。
【きだて】「木軸になっただけでしょ」ぐらいの感じですごいスルーしてたんだけど、興味出てきたな。
――ははは(笑)。
【他故】前のとは全然違うモデルなんだよね。そういう意味では、
【高畑】まあそうだね。確かに、他故さんの言うように。それで、このちょっとふくれてるのがちゃんと効いてる感じはする。
【他故】それはそう。
【きだて】逆に、それは苦手なタイプなんだけどね。その先端が広いのは。
【他故】結局、それが気になるかどうかだろうね。このぐらいのふくれでも気になるかどうかだよね。
【きだて】そうね。だから握ってみないとちょっと分かんないな。
【高畑】逆に、それがなくて、まっすぐストレートだったら、それでも滑るような気がするので。
【他故】僕は、この先っぽのふくらみがあって良かったと思ってるので。
【高畑】ウッドとメタルの組み合わせのペンが今は何本かあるんだけど、ここへ来てウッドとメタルの組み合わせでメーカー系が頑張ってるぞっていうのがちょっと面白いかな。
【他故】うんうん。
【高畑】木軸だといわゆるインディーズがすごかったじゃないですか。そこら辺でメーカー系が頑張ってるのも面白いなと思って。
【きだて】そうだね。
【他故】特に、このシャープペンシルの場合は、色々なインディ系のメーカーが木軸を作ったり、それから工房系じゃないところが作ったのって、胴軸が木でグリップが金属になってんだよね。
【高畑】はいはい。
【他故】俺は、それはあんまり面白くないと思ってるんですよ。木の部分を握りたいんだけどなって常に思ってて。
【きだて】確かにそうだろうよ。
【他故】ここが金属だとそれは滑らないだろうし、先がヘビーになっていいだろうけどさ、そうじゃないよなって常に思ってたから。グリップ側が木になってるやつって、そうやって考えるとそんなにはないわけですよ。「4+1ウッド」とか、ああいう太い軸のやつに付いてるのはあるんだけど、細身でグリップが木って意外とないよなって思ってたところに、ズバリのものが出てきてくれたんで、ちょっとびっくりなんですが。
――ああそうか、多機能ペンとかだとありますよね。フリクションもそうだし。
【高畑】だから、グリップの太さに余裕があるやつ。
【きだて】そうなるよな、やっぱり。
【高畑】だから、「ピュアモルト」とか「ジャストミート」とか、ああいうのになるんだけど、シャープで出てきてるのってこれ以外ではどこかな? ラダイトのグリップはメタルだっけ?
【他故】ラダイトは、グリップはメダルだった気がするな。ちゃんと調べないと分かんないけど、俺が見たやつは「何で金属なんだ?」って常に思ってたから。
【高畑】ラダイトは、グリップのところから先がメタルになってるのが出てるね。
【他故】やっぱり。
【高畑】うん、そうだね。確かに、手触りは普通に「メタルじゃん」ってなるよね。
【きだて】そうだね。他故さんは、見た目で木材を楽しみたいわけじゃないんだよね。
【他故】うん、全然そうじゃないよ。
【高畑】グリップの手触りだよ。
【きだて】手触りが欲しいんだよね。
【他故】そう、グリップの手触りが欲しくって。でも、「木だけどツルツルは嫌だぜ」っていう割と難しいことを言ってるというのは分かってはいるのよ(笑)。
【高畑】まあ、そうだね。
【他故】だから、デザインで滑らないようにしてくれてもいいのよ。例えば、3本とか4本ぐらいスリットが入ってるとか、そういうのもいいんだけど、そういうのないじゃん、思った以上にないんだよね。
【高畑】もうそれね、限界ぐらいまで細くしてるから、そこにスリット入れられないと思うんだよね。
【他故】これはね。
【高畑】確かに、あの細い系のシャープで出ているやつとかでも、他故さんが言うようにあんまりないね。今すごい腹に落ちた。軸が木はあるけど、グリップに関しては、太いやつだとグリップが木のやつもあるけど、細くなると全部後ろだね。だから、多分難しいんだよ。
【他故】そうすると、今のところ形状的には「S20」しか僕が納得できる選択肢がないんだよ。
【きだて】これまでの最細だったのかな?
【他故】最細かどうかはちゃんと見てないけど、市販してるものの中では「S20」ぐらいしかない気がする。
【きだて】ちょっとつまんないこと言うと、「鉛筆シャープ」も木軸だよね。
【高畑】それもアリだと思う。
【他故】そう、それもアリなんだよ。
【高畑】「S20」は全体木だよね。
【他故】「S20」とか、あとは「大人の鉛筆」になっちゃえば、当然木軸シャープではあるけどさ。
【高畑】あれは、モロ鉛筆じゃん。
【他故】まあね。
【高畑】中に入ってるメカとか、そういうところのヘビーな仕様にはなってないじゃん。このぐらいしっかり使えるペンってなると多分、「S20」 とこれしかないぐらいかもしれない。
【他故】僕の勝手な印象として、これは「クルトガ」を積んだ、「S20」への対抗製品策なんだろうなって。
【高畑】なるほどね、そうか。
【他故】「S20」とダイレクトに勝負するってことじゃないんだけど、でも三菱鉛筆も製品ラインナップが決して分厚いとは言えないこの高価格帯で、三菱が木軸サイドに勝負かけてきてる感じがすごくしてるわけ。
【きだて】三菱がそう思ってるかどうかは分かんないけども、同じところにはある気はしてきた。
【高畑】俺は、木軸ってまとめるのがなんかモヤモヤしてたんだけど、今すごく腹に落ちた感じがすごくある。グリップが木であるかどうかっていうのはすごい大事なポイントだし、これと「S20」が同じジャンルだっていうのはすごいよく分かる。ああ、なるほどな。
【きだて】やっぱり、聞いてみるもんだな。
【他故】いやいや、これについてあんまりそういう風に語るっていうシーンがなかったからさ。
【きだて】大事な話だったよ。
【高畑】大事な話というか、ツルツルに磨いちゃってっていう話も分かるし、木軸シャープっていうのはレアな木を使っているっていうところの素敵な部分は、全然それはそれでいいんだけど、でも手触りの部分が金属じゃんって言われたら、今は「確かに」って思っちゃうところだし、どうしてもあり物の部品を使ってしまうと軸が太くなりがちっていうところで、三菱がギリギリシャープに作ってきた。それで、「S20」は両方ウッドだけど、このメタルとウッドの組み合わせも悪くないよね。
【他故】そうそう。だから、これはすごくいいのよ。
【高畑】カッコいいよね。
【他故】カッコいい。
【高畑】多分、「メタル」の設計をしてる段階では、「ウッド」は考えてなかったのかもしれないっていう。この中身が全然違わざるを得なかったっていうのが面白い。
【他故】そうね。「ウッド」を作る気でいたら、もっと簡単にグリップだけウッドにってなるだろうしね。
【きだて】とはいえ構造自体はある程度は共通なんでしょ?
【高畑】でもね。この口金のかたちが違うんだよ。これこうやって見ると口金の形状が違うの分かる? 段差の位置が違うんだよ。
【きだて】あっ違うわ。
【他故】違う違う(笑)。
【高畑】この先から全部違うんだよ。首のところとかのかたちが違うじゃん。後ろが長いじゃん。
【きだて】本当だ。
【高畑】並べると、実は違うかたちなんだよ。上と下がちょっとずつ違うんだよ。
【きだて】そうか。根元は木軸にするための幅が要ったりとかするのか。
【高畑】軸側からネジが出てるから、それをこっちは受けてるんだよ。
【きだて】そういうことだよね。なるほど。
【高畑】だから逆なんだよ。「メタル」はそれがなくてもいいから、かたちが違うんだよ。
【他故】黒い根っこごと外れるからね。そっちはね。入り方が全然違う。
【高畑】作り方も全然違うんだよ。
【きだて】そうか。先太になってるのは、しょうがなく先太になってる可能性があるんだな。
【高畑】その可能性はあるね。あと、このパーツの作り方をこんなに変えるんだったら、最初から木軸作るつもりだったら両方使えるようなパーツ作っても良かったのかもしれない。
【きだて】そうだよね。
【高畑】まあ圧倒的に数作ってるのは多分「メタル」だと思うから、コストを最適化するとそうなのかもしれなし、どっちが正しいか分かんないけど、これだけ違うんだよね。だから全然別物なんだよ。
【きだて】あー面白(笑)。
【高畑】あとね、これのいいところは、このかたちなんだけどちゃんとフロントヘビーになってるんですよ。後ろが重くならない。ここが木になってるから、普通に考えたら木の部分ってメタルに比べたら軽くなっちゃうじゃん。後ろが重くならないように、ちゃんとバランスを取ってるんですよ。
【きだて】パイプに真鍮か何か使ってんのかね?
【高畑】多分、真鍮の部品が入ってて、そこのボリュームがちゃんとあるから、バランスは全然悪くなってないんですよ。ウッドを使うときに、ここのバランスを崩さないっていう意味でも、他のメーカーのは、グリップがメタルになるんだろうね。
【他故】まあ、そうだね。
【高畑】後ろがウッドでグリップがメタルっていうのは多分そういう感じで、低重心にしつつ、ウッドにしようと思ったら後ろがウッドなるんだよね。うだから、これはそこもすごくよくできてるよね。
【他故】かたちはそっくりなんだけど、違うんだよな。
【高畑】全然別物だね。だから「ウッド」の方が全然値段も高いんだけど、木の部分があるからそりゃそうなんだけどさ。いやでも、全然この「ウッド」は本当に値段差以上にすごい、ちゃんとできてるいい製品だと思う。「メタル」も、この仕様だと安いと思うけどね。
【きだて】ひょっとして、軸の長さも違う?
【高畑】どうかね? 全長は合わせてあるっぽいね。
【他故】そうだね。
【高畑】先金の位置から後ろのこのノックの根元のところまでは合わせてあるね。途中の段差の位置がちょっとだけずれてる感じだね。
【きだて】それだけか。
【高畑】そうだね。あとここの切れ目。多分ここも一応合ってるよね。
【他故】多分、一応合ってるね。
【高畑】だから、デザインはちゃんと揃えてあるよね。でも、部品は全部別っていうね。
【他故】ははは(笑)。
【高畑】中に入ってる「KSモデル」のクルトガエンジンとこのノックパーツ以外は全部別物だね。
【きだて】何か、三菱も面白いことするな(笑)。
【他故】一般的に考えて、工業製品としてはちょっとありえないと思うんだけどね。同じようなかたちで共通パーツが少ないって(笑)。
【高畑】それこそ、「S20」のライバルとして考えるなら、「Sシリーズ」ってそうじゃん。「S3」「S20」 って似てるようで全部パーツが違うじゃん。
【他故】うんうん。
【高畑】だから、そういう意味でいくと、多分、三菱なりの材料違い、値段違いっていうのがキレイに出てる。パイロットの「フリクションボールノックゾーン」の材料違いとかは、微妙にかたちが揃ってなかったじゃないですか。
【他故】はいはい。
【高畑】こうきっちり揃えてきてるところも、まあ悪くないよねっていう。イメージが一緒だからね。
【きだて】これ、別に数量限定とかじゃなかったよね。レギュラーだよね。
【他故】レギュラーのはず。多分、単純に生産数が少なくて並ばないだけだと思う。
――他故さんは普通に買えたんですか?
【他故】店頭に並んでいて、「あっ」と思って買うっていうパターンばっかりですよ。「ウッド」は「メタル」に比べて、1番最初の段階で「ここに売ってます」っていうのをまず公開したんですよ。「このロフトにある」というのを公開した上で専用什器を入れてあって、「クルトガ」シリーズが什器内にズラッと並んで、「ウッド」だけ抜けてるみたいな。そこにPOPで「次回入荷はいつ」みたいに掲示されてたから、とりあえずロフトを張るっていう方法はあったんです。なんですけど、そうそうロフトにも行けないでしょっていうのもあって、そんなに頑張って買うつもりはなかったんですね。たまたま寄った恵比寿の有隣堂に在庫があったので、「あっ」て言って買ったのが、最初のスチールグレーです。
【高畑】確かにね、「メタル」よりある店にはあったっていう。店によるばらつきというか、そのお客さんが殺到する店と、案外置いてあるんだけどねっていうお店もなくはなかったっぽい。
【他故】あとは初速の関係かどうかはちょっと別にして、入ってる店は延々と売っているイメージがあって。例えば、この店に10本入ってるんだけど、それが即なくなるみたいな感じはあんまりない。どっちかの色だけが割と残り続けてるみたいなイメージもあって、だから「メタル」ほどみんなが殺到して買ってるわけではないのかもっていう印象はあったんですよ。今回たまたまフォレストグリーンを売ってるところを見つけたので、在庫を見せてもらったんだけど、やっぱ 10 本ぐらい持ってるんだよね。だから、そろそろ回ってきたなっていう感じはすごくあったんだけど。
――じゃあ、グリーンは探してたわけじゃなくて、たまたま売ってたのを見つけて買ったような感じなんですね。
【他故】この「ウッド」に関しては、もう血眼になって探すようなことは一切してないので、2色も買う気もなかったんですよ。全然このスチールグレーの書き心地で良かったし、満足してたんだけど、フォレストグリーンの色を見ちゃったらもう(笑)。
【高畑】それは、グリーンの方がいい。欲しくなる色だよね。
【他故】最初からグリーンを買っていれば、スチールグレーは買わなかったと思いますよ。変な言い方ですけど、別にコンプリートしたかったわけではないので(笑)。
【高畑】でも、このグリーンと茶色はね、多分最近の筆記具の中でもかなりいい配色だと思う。いろんな筆記具見てるけど、このメタル部分に細い切れ目が入ってて、そこにブラストをかけてあって、アルマイトで処理してあってっていう、めっちゃいい感じなんだよね。よく見るとキラキラしてるし、これはいい色だな。
【他故】所有欲みたいなものも満たされるし、書いて気持ちがいいということで、これは明らかに上半期ベストバイだなと思うわけですよ。
【高畑】強いて言うなら、俺は三菱さんに工具をちょっと貸してっていう。
【他故】どうして今日は改造の話ばっかりなんだよ(苦笑)。
【高畑】俺は中に0.3を入れたいんだよ。
【きだて】気持ちはすごく分かる(笑)。
――それは「0.3を出してくれ」って要望する方が早いですよ。
【高畑】いやでもね、0.3ってなかなか出ないんですよね。
【きだて】だって、「メタル」も結局出てないじゃん。
【他故】出てないねー。
【高畑】やっぱり、メインユーザーの中高生の人たちは、ノートを取る上ではやっぱり0.5の方がずっと多いんでしょうね。
【他故】多分、比率から全然違うはずなんだよね。残念ですけども。でも、0.3が出たら多分買っちゃいますよ(笑)。
【高畑】出たら勝っちゃう。
――三菱鉛筆の方がもしこれをご覧になってたら、0.3も考えてみてください(笑)。
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プロフィール
高畑 正幸(たかばたけ まさゆき)
文具のとびら編集長。学生時代に「究極の文房具カタログ」を自費出版。「TVチャンピオン」(テレビ東京系列)の「文房具通選手権」では、3連覇を達成した。サンスター文具に入社し商品企画を担当。現在は同社とプロ契約を結び、個人活動も開始。弊社が運営する文房具のWebマガジン「文具のとびら」の編集長も務めている。著書は『究極の文房具カタログ―マストアイテム編―』(ロコモーションパブリッシング)、『究極の文房具ハック』(河出書房新社)、『そこまでやるか! 文具王高畑正幸の最強アイテム完全批評』(日経BP社)、『文具王 高畑正幸セレクション 一度は訪れたい文具店&イチ押し文具』(監修/玄光社)、『究極の文房具カタログ』(河出書房新社)、『文房具語辞典』(誠文堂新光社)と、翻訳を手がけた絵本『えんぴつとケシゴム』(KADOKAWA)。新著は『人生が確実に幸せになる文房具100』(主婦と生活社)。
https://bungu-o.com/
きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/
他故 壁氏(たこ かべうじ)
小学生のころから文房具が好きで、それが高じて文具メーカーに就職。ただし発言は勤務先とは無関係で、個人の見解・感想である。好きなジャンルは書くものと書かれるもの、立つ文房具と薄いペンケース。30分間文房具のことしか語らないトーク番組・775ライブリーFM「他故となおみのブンボーグ大作戦!」パーソナリティ。たこなお文具情報室所属。
「他故となおみのブンボーグ大作戦!」番組ホームページ https://daisakusen.net/

「KURUTOGA Wood(クルトガ ウッド)」(三菱鉛筆)*

