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【連載】月刊ブング・ジャム Vol.61 色にこだわった個性派文房具(その1)

文具のとびら編集部

本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回のテーマは「色」。色にこだわった文房具をブング・ジャムのみなさんに紹介してもらいました。

第1回目は高畑編集長が紹介するパイロットの「カラフル フリクションボール3スリム」です。

(写真右からきだてさん、他故さん、高畑編集長)*2021年11月9日撮影
*鼎談は2022年3月29日にリモートで行われました。

色の組み合わせが斬新な消せる3色ボールペン

フリクション 2.jpgカラフル フリクションボール3スリム」(パイロットコーポレーション、税込660円)
*2022年3月11日から数量限定で発売

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――今回は、みなさんに“色”にこだわった文房具を紹介してもらおうと思います。まずは高畑編集長お願いします。

【高畑】自分が色で驚いたアイテムが、「フリクションボール」の新アイテムで、3色ペンなんだけど。

【他故】ああ、「カラフル フリクションボール3スリム」だね。

【高畑】今回の特徴としては、今までだったら「フリクションボール3」は黒・赤・青の3色だったんだけど、それが青ばっかり3色とか、ピンクばっかり3色とか、ちょっと変わった色になってて、色のコーディネートをメーカーの方でしてありますというものなんだよね。

【他故】うん。

【高畑】多色はこれまでだったら、「ハイテックCコレト」みたいに自分で作ることはできたけど、最初から3色の組み合わせをメーカー主導でおしゃれアイテムとして揃えてきて、何となくテーマカラーみたいなのが軸色になってる、というやり方で出してきたのがちょと面白いなと思って。今回のは、インク色は今までにもあったやつ?

【他故】替え芯的には、「フリクションボールスリム038」に入ってたやつなので、前からある色だよ。

【高畑】前からある色の組み合わせなんだ。

【他故】うん、全部ある色の組み合わせ。

【きだて】えっそうかな?

【他故】新色はないと思うよ。

【きだて】ないんだ、これ。

【高畑】そこら辺が、見たことのある色なんだけど、上手いこと組み合わせて、新商品に仕立て上げてるというか。

【きだて】ベビーピンクとかあったっけ?

【他故】あったと思うよ。意外と種類があるんだよ。

――確かにありますよね。

【高畑】結構あるんだよね。

【他故】20色ぐらいあるんじゃないか。

【きだて】あっ本当だ。こんなにあったっけか?

【他故】そうそう、全20色だよ。

【高畑】それを上手いこと詰め合わせてあげたら、全然価値が上がるし。言ったら、ボディはこれまでにある「フリクションボール3」だし、中に入っているリフィルもこれまでにあるのでラインアップしているので、いきなり困らないんだよね。これ全部新色だと、「どうやって補充するの」って絶対揉めるんだけど、それがなくてあるやつが入れられるし。自分の手で作る「ハイテックCコレト」みたいなのの延長線上にあるのに、これまで誰もそういう風にやらなかったから、ちょっと目からウロコ感があって、やられた感のすごいある商品だなと思いました。

【他故】なるほど。

【高畑】この軸がまたきれいなんだよね。いい感じにカラーが付いてて。

【他故】そうね。

【高畑】「エモット」みたいに、「カラーコーディネートを最初に決めといてあげるといいよね」って、きだてさんも言ってたじゃない。「自分でおしゃれな色を選んで組み合わせるのはすごい難しいよね」という。「エモット」みたいに、最初から決めといてくれると楽にできるし、失敗がないからうれしいという話だったんだけど。だったら、それが1本になってたら良いよねという話もあるわけだよね。これは、それを1本に入れてきている。さっききだてさんが言っていたみたいに、「その色あったっけ?」っていう。

【きだて】実のところ、例えばこれを「ジュースアップ」でやっても、そんなに面白みは無かったように思うんだ。やっぱりフリクションで「こんな色あったんだ?」というのコミで、価値が出た気がするよ。

【他故】まあ、そうだよね。

【高畑】038でこんなに色を揃えてたのに、もちろん「038で好きな色を選んで使ってます」という人はいると思うけど、最近はシナジーチップの「フリクションポイントノック」とか出たりしてるわけじゃない。そういうのがあるから、こんなに色数があるのに、それを選んで、揃えて、使ってるかというと、ちょっと忘れられていることもあるかもしれない。でも、こうなってくると、また違ってくるじゃない。

【他故】ああそうね。

【高畑】これだと、またピンクとかオレンジとかそういう色を使ってもいいよね、というところにまた浮上してくるというのがあって。今までは「シナジーチップがいいぞ」とか言いながら、青・赤・緑をずっと使ってたわけですよ。それが、「こんないいのが出てきたんだ」という。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】何か、忘れてたところに引き戻されたすごさもあるし、同時にこれまで忘れてたのがもったいないというのもあるし。それと、この提案は俺らでもできたはずじゃん。

【きだて】うん。

【高畑】メーカーじゃなくたって、「こういう使い方するといいよね」というハックとして提案することもできたはずなんだよね。これを先にやってたらドヤ顔だったなと思って。

【きだて】ははは(笑)。そうな、提案してみたかったね。

【高畑】これを例えば、きだてさんが半年前に提案してたら、超ドヤ顔だったと思うんだよね(笑)。

【きだて】まさにだね(笑)。

【高畑】そうだよね。これ、ちょっと悔しい感じがするんだよ。思い付かなかったって。しかもこれ元々透明軸があるじゃん。

【他故】うん、あるね。

【高畑】3色の透明軸が出たときに、これは思い付いてもよかったアイテムだよねと思って。

【きだて】実物を前に言ってもしょうがない話なんだけど、悔しいよな(笑)。

【高畑】「そうかぁ~」と思って。枯れた商品の水平思考でできるわけだよ。全部有る物だよね。でも、やってみたらめちゃくちゃステキな商品になったぞというのがあって、このステキな雰囲気に悔しいというのがすごいある。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】だから、上手いなと思いました。いいところに目を付けた商品だなと。

【他故】ねえ。

【高畑】しかもさ、さっききだてさんが言っていたみたいに、「ジュースアップ」じゃなくてフリクションだから消せるじゃん。これは面白いところがきたなと思っていて。今後は、“3色コーデ”を他社もやる可能性があるんだよ。多色ペンを持ってて、リフィルもあればやれる話なので。でも、これはフリクションなので、真似はできないからすごいじゃん。

【きだて】ちょっと面白かったのが、それぞれ同系色で3色をまとめてるじゃん。軸の色も、そのイメージカラーに統一されていて。これ、単色のカラーペンとしても成り立つんだよね、振る舞いとしては。

【高畑】赤系、青系とかの単色ペンか。

【他故】そういうことね。

【きだて】大きなくくりとしての赤ボールペンで、その時々に合わせたニュアンスで赤を選べる、みたいな立ち位置で。お馴染みの黒・赤・青って実用3色じゃなくて、よりエモな部分で色を使い分けるという。

【高畑】コクヨの「マークタス」2トーンカラーマーカーに近い感じかな。濃いピンクと薄いピンクみたいな組み合わせで使えるし。緑だけは赤系・緑系の組み合わせで違うんだけど。3色似たような組み合わせで、濃い青・薄い青みたいな組み合わせができるのが面白いよね。

【他故】ボディの色と同じ色は1本入っているというのがシグナルの一つだよね。

【きだて】そうだよね。

【他故】グリーン系には必ずグリーンが入っているし、オレンジ系にはオレンジが必ず入っているとなってるけど、それ以外の2色が変わりダネというね。

【きだて】とはいえ、その辺も完全に同系色というわけではなくて、ちょっと変化球的な組み合わせをしているのが面白いと思って。

フリクション 1.jpg「CLASSICAL COLORS」(ブラック、ブラウン、ブルーブラック)、 「REFRESH COLORS」(ブルーブラック、ブルー、ライトブルー)、「ELEGANT COLORS」(ブラック、バイオレット、ローズ)、 「CUTE COLORS」(ワインレッド、ピンク、ベビーピンク)、「ACTIVE COLORS」(パープル、コーラルピンク、アプリコットオレンジ)、「SUNNY COLORS」(フォレストグリーン、スカイブルー、ベビーピンク)の6種類


【他故】そうそう。

【きだて】俺が面白いと思ったのが、パープル・コーラルピンク・アプリコットの組み合わせで、名前で聞くと全然違うんだけど。

【高畑】並べると、いい感じでグラデーションというか。

【きだて】ね、すごい雰囲気が良くてさ。ここを組み合わせるセンスはとてもいいなぁと思った。

【高畑】結局、色がいっぱいある中でどういう風に組み合わせて提案するかとか、どういう風に出してくるかで、こんなに価値を変えていくものだというのは、今回これを見てハッとしたところがあって。

【他故】うん。

【高畑】スリムで色が20色ありますと言っても、色鉛筆的な持ち方をしなきゃいけなくなるじゃない。その中から上手いこと選んでというやり方をさ、完全に自分の中で抜け落ちてたなと思っていて。フリクションにこんなに色数があるというのを結構忘れてた部分があって。「ハイテックCコレト」だったら、色がいっぱいあるので、最初から選ぶつもりで買いに行くじゃん。だけど、そういう風に見てなかったんだよね。随分前から目の前にあったのに価値を見落としていたものが、こうなった瞬間に「あっ欲しい」と思ってしまう。目の前にあるときに見出しておくべきだった何か、というのはあるよね。

【他故】ははは(笑)。

【高畑】あるじゃん、中学の友人でその時はそんなに気にしてなかったのに、その後突然アイドルになって世の中に出てきて「お~」って驚いたみたいな(笑)。

【きだて】婉曲表現(笑)。

【高畑】ちょっと手を加えてあげることで、この製品の価値がちゃんと浮き上がってきたというのがあるので。今までにも、いろんなカラー戦略があったじゃない。去年、一昨年ぐらいから「色、色」という話はしてたんだけど、このやり方はこのやり方で新しいなと。「エモット」もあったし、カラーコーディネート大事という話もしてたんだけど、こんなかたちもあるんだなというのが、上手かったね。色の戦略の変化球的な感じで。

【他故】「あっ」と気がついたのが、この5色というのが「ドクターグリップ」のスケルトンと同じなんだよね。

【高畑】えっ5色?

【他故】ブラックを除けば、5色全部透けてるのって「ドクターグリップ」のスケルトンと同じなんだよ。青、緑、紫、ピンク、オレンジの5色。それが、2020年代になるとこういうカッコよさになるんだというのが見えて面白かった。

【高畑】あ~そういうことか。「ドクターグリップ」のスケルトンって、iMacカラー的なやつ?

【他故】そう、iMacカラーが流行ったときのやつ。同じラインアップなのに、時間が経つとこういうおしゃれ感になるんだって。

【高畑】全然別物だよね。代表するのはその5色なんだけど、見せ方がね。

【他故】見せ方が全然違う。めちゃめちゃきれい。それで、これ店頭で見たことないんだけど、めちゃめちゃ売れてる?

【高畑】なのかな。

【他故】ここのところ店に行けてなかったんだけど、ロフトとかに行ってももうないんですよ。

【高畑】うちの近くの書店に什器が入ってるけど、かなり抜けてて、まばらにしか商品がなかったよ。

――これ、数量限定なんですよね。

【きだて】うん限定。そういえば、新宿のハンズで買おうとしたらなかったな。

【高畑】本当? すでにそんな状態なのかな。

――文とびに新製品ニュースが載ったときも、反響がすごかった記憶がありますよ。

【高畑】「これは人気出るよね」というのはすごくあるな。

【他故】うん、分かる。

【きだて】パイロットはここしばらく、ゲルのインク色のあしらいが面白いよね。

【他故】ちょっと変わってきたよね。

【きだて】「イルミリー」ぐらいから目に見えて違う感じがしてる。「クラシックグロッシー」とかあの辺も含めて。

【高畑】ああ、「クラシックグロッシー」ね。

【きだて】単に6色黒を後追いするんじゃなくて、ラメを入れてみるとかさ。ちゃんとひと技効かす感じが好感持てる。なかなか面白いね。

【他故】うん。欲しいんだけど手に入るかな。探しに行かなくちゃ。

【高畑】「この色きれいだね」みたいな、色遣いが上手というのはいっぱいあるからあれなんだけど、今回みたいに新しい要素はほとんどないのにもかかわらず、自分としてはフリクションの他の色を再発見した感じ。青とか緑とかじゃないフリクションの色のいい感じを再発見したなと思って。いい再発見だったな。

【他故】これはまた続けてほしいね。限定とは言わずに。

【高畑】本当にそう思う。もしどうしてもなかったら、クリアのボディを買って、入れ替えてやろうぜという感じの話だな。



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【きだて】せっかくだからさ、これを3本まとめることによって、“9色だけど実質3色ボールペン”ってできないかな?

【他故】9色!

【高畑】そこはきだてさんの領域じゃない。これを3本まとめるためのアタッチメントを。

【きだて】そうそう。黒系・赤系・青系という3色×3色ボールペンという。

【高畑】黒系・赤系・青系のそれぞれ3色あるやつがガショーンとなって、それがガショーンと出てきて。

【他故】ははは(笑)。

【きだて2重ノックで。

【他故】2重ノック(笑)。それはダブルノックとは言わんな(笑)。

【きだて】せっかく、3色ボールペンが単色ボールペンのようにふるまっているので、そういう遊びができると面白いなと、今ふと思っただけなんだけどね。

【高畑】ネタ的には全然そうだし、何かしら上手くやるとそういう面白さがあるよね。

【他故】そうだね。

【高畑】そういう束ね方に何かあってもいいし。とにかく、3色ペンの価値がグッと上がったなと思う。

*次回は「ペン&ツールポーチ マチ付」です。

プロフィール

きだて たく
小学生の時に「学校に持っていっても怒られないおもちゃ」を求めて、遊べる文房具・珍妙なギミックの付いた文房具に行き当たる。以降、とにかく馬鹿馬鹿しいモノばかり探し続けているうちに集まった文房具を「色物文具=イロブン」と称してサイトで公開。世界一のイロブンコレクターとして文房具のダメさ加減をも愛する楽しみ方を布教している。著書に『イロブン 色物文具マニアックス』(ロコモーションパブリッシング)、『愛しの駄文具』(飛鳥新社)など。
色物文具専門サイト【イロブン】http://www.irobun.com/

他故 壁氏(たこ かべうじ)
文房具トークユニット〈ブング・ジャム〉のツッコミ担当。文房具マニアではあるが蒐集家ではないので、博物館を作るほどの文房具は持ち合わせていない。好きなジャンルは筆記具全般、5×3カードとA5サイズノート。二児の父親。使わない文房具を子供たちに譲るのが得意。ラジオ番組「他故となおみのブンボーグ大作戦!」が好評放送中。
たこぶろぐhttp://powertac.blog.shinobi.jp/


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