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【文具時評】ちょっとリッチなプレミアムボールペンが人気《水性・ゲル編》

北澤孝之

ブームが続く日本の文房具の中でもひと際人気なのが筆記具。その中で、高機能シャープペンシルとともにトレンドとなっているのが“プレミアムボールペン”。

そのプレミアムボールペンの動向について、文具のフリーマガジン『Bun2(ブンツウ)』北澤編集長が解説。第2回目は、ゲルインク&水性ボールペンについて取り上げた。

*「なめらか油性編」はこちら

サラサグランド(ゼブラ)

なめらか油性の商品が先行していたプレミアムボールペンだが、2016年後半にはゲルインクのプレミアム版が相次いで登場してくるようになった。

サラサク゛ラント゛.jpgまずは、ゼブラが2016年9月に発売した「サラサグランド」。「サラサクリップ」といえば、10年以上の長きにわたり女子学生から絶大な支持を集めているゲルインク(ゼブラではジェルインクと表記)カラーペンの代名詞的な商品で、それを税抜1,000円のプレミアム版として発売したのである。その背景には、「サラサを使っていた学生に、社会人になってサラサを使ってほしい」という同社の思いがあったという。

全体的に、高級感が感じられるデザインでありながら、例えば、サラサクリップの象徴ともいえるバインダークリップはスマートな金属製クリップとして採用し、またグリップ部にはサラサと同じくスリットを入れるなど、サラサユーザーならば一目でそれと分かる、サラサらしさを残したところが秀逸だ。このほか、クリップの下やノックボタンの頭部には半透明の樹脂を使い、ジェルインクのみずみずしさを表現している。

インク色は、デフォルトだと黒になるが、通常のサラサとリフィルが共通なので好みの色に入れ替えて使える。筆者のまわりでは、ブルーブラックやブラウングレーなどのビンテージカラーのリフィルを入れる人が目立つようだ。ちなみに、筆者は「サラサドライ」のリフィルを入れて使っている。

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エナージェルフィログラフィ(ぺんてる)

エナージェル.jpgぺんてるが2016年10月に発売した「エナージェルフィログラフィ」は、同社の定番ゲルインクボールペン「エナージェル」のプレミアム版。同じゲルインクペンでも、カラーペンのイメージが強い「サラサクリップ」に対して、速乾性にすぐれ、濃くなめらかな書き心地が特徴の「エナージェル」は、ビジネスシーンなどでの実用系ボールペンとして評価が高く、近年は履歴書での筆記に最適な“就活ペン”としても注目が集まっている。

そうした「エナージェル」の立ち位置もあってか、「サラサグランド」がフレッシャーズなどの若年層をメーンターゲットにしているのに対し、「エナージェルフィログラフィ」は20代~40代の大人の男性をメーンターゲットに想定したという。機構もノック式ではなく回転繰り出し式を採用し、価格もちょっと高めの税抜2,000円に設定した。

細身ながらも金属軸で適度な重みがあるボディは、上質感の漂うハイエンドなデザインでありながら、なおかつエナージェルらしさも感じさせるのは「サラサグランド」と同じ。従来品のキャップ式と同様に頭部をななめにカットしたほか、エナージェルを象徴するななめのラインを入れるなど、エナージェルのアイデンティティをハイエンドなボディに見事に再現している。

軸色はブラック、ダークブルー、ターコイズブルー、ホワイト、シルバーがあり、特にターコイズブルーの色味にはかなりこだわったという。2017年10月には、女性向けのカラーとして、レッド、ブラウン、ウォームシルバーの3色を追加した(写真右の3本、油性編で紹介した「ビクーニャEX Cielina(シエリナ)」と同時発売)。

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ボールサインプレミアム(サクラクレパス)

ボールサイン.jpg

これまで取り上げたボールペンは、プレミアム感を出しながらも、シリーズとしての統一感が感じられるデザインで展開していたが、これから紹介するサクラクレパスの「ボールサインプレミアム」は、それに囚われない自由な発想からデザイン展開しているのが特徴だ。

2016年11月に発売された「ボールサインプレミアム」は、ノック式多機能ペンの「4*1」(写真右の2本、黒・赤・青・緑ボールペン+シャープペンシル、税抜2,000円)と、回転繰り出し式多機能ペンの「2*1」(写真左の4本、黒・赤ボールペン+シャープペンシル、税抜3,000円)の2種類の多機能ペンをラインアップ。ゲルインクで多機能というプレミアムボールペンは、カスタマイズペンの「シャーボX」を除けば、今のところ「ボールサインプレミアム」だけだろう。

この2つのペンは、仕様も価格も異なるが、見た目的にも非常に異なる。「2*1」は、多機能ながらも細身でエレガントなイメージなのに対し、「4*1」は軸が全体的にゴツゴツと角ばったデザインとなっている。ちなみに「4*1」は、ノック式多機能ペン「ボールサイン4*1」(税抜1,000円)の上位モデルなのだが、軸の素材が違うだけで外観が一緒なのが面白い。

デザイン的に好対照な「2*1」と「4*1」だが、どちらもグリップ部分が真鍮製で重みのある設計となっており、安定した筆記ができるよう配慮している。また、「他商品にない個性的な造形」と同社が言うリブライン(軸の溝)を共に採用している。

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サクラクラフトラボ(サクラクレパス)

サクラ001.jpgサクラ002.jpgサクラクレパスは、「ボールサインプレミアム」にとどまらず、新たなプレミアムボールペンを市場に投入した。それが、2017年9月に発売された「SAKURA craft_lab(サクラクラフトラボ)」で、「大人に『かく』喜びを届ける筆記具開発ラボとして、大人の感性を刺激する筆記具をお届けして参ります」と同社では言う。

第1弾として発売されたのが、「001」と「002」。どちらも回転繰り出し式の単色ゲルボールペンで、ボディの素材に真鍮を使っているが、デザインコンセプトは異なっている。

「001」は、真鍮の素材感を全面に出した、アンティーク調のデザインが特徴。頭部にある回転用のつまみには昔ながらのサクラのマークがデザインされ、クラシカルなイメージを醸し出している。ボディ後半部分にはフロスト加工を施したアクリルを採用、より深みを感じさせる軸色となっている。その軸色は、ブラック、ブルーブラック、ブラウンブラック、ボルドーブラック、グリーンブラックの5色だが、インク色も軸色に合わせた色味を採用していて、書いたときの発色は非常に渋くていい感じだ。価格は税抜5,000円で、これまで取り上げた単色ボールペンの中では一番高額なボールペンだ。

一方「002」は、“大人のクーピー”をコンセプトに、クーピーモチーフのシンプルなデザインに仕上げており、ボディはブラスト加工を施してスモーク調にしたアクリルと塗装をした真鍮の二重構造。“クーピー”モチーフなので、ボディーカラーも10色をラインアップしている(インク色はすべて黒)。頭部のつまみは、まるでオーディオミキサーのつまみのようなかたちをしているが、そこにもサクラのマークをデザインしている。価格は税抜2,200円。

プレミアム化が進むにつれ、多少の価格設定では驚かなくなっていたが、それでも5,000円という「001」の値段を聞いたときは、「どうなの?」と思ったものだ。しかし、フタをあけてみると、ひじょうに人気で、筆者が「001」を買った店は、残りの1本、しかもディスプレーを開けて展示しているものを取り出したというぐらい、品薄状態になっていた。

それにしても、5,000円の商品が品薄になるほど売れるというのは、時代が変わったと強く意識せざるを得ない。プレミアムボールペンが市場的に認知され、「いいものは、値段に関わらず買う」という意識がユーザーに根付いてきたからこそヒットしたと思うのだが、いかがだろうか。

フリクションボール ビズ(パイロット)

パイロットコーポレーションから発売されている「フリクションボール」は、摩擦熱でインクが無色透明になる消えるボールペンとしてすっかりおなじみのものだが、このボールペンに採用されている“フリクションインキ”はゲルインクなので、同ボールペンのビジネス向け上位モデル「フリクションボール ビズ」シリーズもゲルインクのプレミアムボールペンの1種になる。

フリクションビズ.jpg「フリクションボール」が日本で発売されたのは2007年で、「フリクションボール ビズ」が発売されたのはその1年後の2008年。その当時はまだキャップ式で、価格は税抜1,500円。ノック式は、「フリクションボールノック」が2010年に発売され、その3年後となる2013年5月に「フリクションボールノックビズ」(上写真)として発売された。価格は税抜2,100円。ノックボタンを兼ねたクリップの形状など、全体的に「フリクションボールノック」のフォルムを踏襲しているが、ボディにマット塗装を施し、ビジネスシーンでの使用に相応しい仕上がりとなっている。ちなみに、消去用のラバーは従来通り頭部にあるが、ねじ込み式のキャップを被せることで「ビス」らしいデザイン性を保っている。その後、ほぼ同デザインの回転式2色ボールペン「フリクションボール2 ビズ」(3,000円)も発売。

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フリクションスリム.jpg2015年9月には、ボール径0.38㎜の「フリクションボールスリム ビズ」(税抜1,000円)が登場。フリクションシリーズの中でも最細軸となる軸径7.4mmの超スリムなノック式ボールペンで、「フリクションボール ビズ」とはテイストの異なるステンレス製のメタリックなボディとなっている。細身軸なので頭部のラバーはキャップは被せずそのままだが、黒色にしたことですっきりとした印象になっていて悪くない。

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ZOOM(トンボ鉛筆)

ZOOM.jpg《なめらか油性変》でも取り上げたトンボ鉛筆のデザイン筆記具ブランド「ZOOM」。前回は「ZOOM L102」と「ZOOM L105」を取り上げたが、ZOOMといえば1986年のブランド立ち上げの時から発売している「ZOOM505」をあげる人は多いだろう。最近発売された多機能ペンのほかに、水性ボールペンや油性ボールペン、シャープペンシルがラインアップされているが、中でも水性ボールペンのイメージが強いのではないだろうか。

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ズーム韻1.jpgズーム韻2.jpg2017年11月には、「日本のかたち」をテーマにした新シリーズ「ZOOM韻(いん)」が登場。「箸」をモチーフに金箔やプラチナ箔を施した「ZOOM韻 箸」(写真上、税抜15,000円)、庭園様式「枯山水」の砂紋をモチーフにアルミ削り出しによる幾何学的な文様を砂紋に見立てたデザインを施した「ZOOM韻 砂紋」(写真下、税抜10,000円)の2つを発売した。どちらも水性ボールペンだが、これまで取り上げたプレミアムボールペンよりも1ランク、2ランク上の存在だ。なお、この2つのボールペンは、国際デザイン賞「reddot design award 2018(レッドドット・デザイン賞)」を受賞している。

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まとめ

以上、2回にわたりプレミアムボールペンを紹介した。時系列的にみると、なめらか油性ボールペンブームの成熟によりプレミアム化が始まり、それがゲルインクボールペンにも浸透し、今年(2018年)に入り再びなめらか油性に新しい商品が生まれてきているという流れになっている。

今後もさらなる新製品を期待しているが、今年年初の「月刊ブング・ジャム 新春スペシャル」で、ブング・ジャムのきだてたくさんも話していたように、 カスタマイズ系のプレミアムボールペンが「シャーボX」しか発売されていないので、このジャンルのプレミアム化も期待したいところだ。

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